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2024 株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント

AWS 、ソニー・インタラクティブエンタテインメントの PlayStation™Network でのコンテナ活用により数百万人のプレイヤーへの快適なユーザー体験の提供を支援

製造業

概要

PlayStation®企画・開発・販売を手がけるソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)。同社は PlayStation 4 (PS4®) 向けネットワークサービスPlayStation™Network(PSN™) のプラットフォームで、初めてアマゾン ウェブ サービス(AWS)を採用しました。その後、マイクロサービス化を加速させることによりネットワークアーキテクチャをサポート。最新の コンソールゲーム機のPlayStation 5 (PS5®) では、200以上のコンポーネントからなる50以上のサービスを AWS で稼働しています。

A woman wearing headphones sits on a couch and holds a game controller, smiling while playing a video game. There is a coffee table with a mug and books in the foreground and framed artwork on the wall behind her.

課題・ソリューション・導入効果

課題

Amazon ECS を駆使することで PSN プラットフォームをコンテナ化

1994 年 12 月の初代 PlayStation発売以降、PlayStation 2 (PS2) 、PlayStation 3 (PS3)、PS4 と進化を遂げ、2020 年 11 月には PS5が発売されました。2006 年にはオンラインサービスの PlayStation Network(PSN)がリリースされ、オンラインマルチプレイやユーザー間のコミュニケーションなどが実現しました。

PSN の MAU(月間アクティブユーザー)は、2023 年 12 月末時点で 1 億 2,300万アカウントにのぼります。サービス開始当初はオンプレミスの基盤上で運用していた PSN は、2013 年 11 月リリースの PS4 世代向けサービスを前に AWS を採用しました。「AWS はデータセンターと比べてコスト優位性があることに加え、キャパシティプランニングの煩雑さやデータセンター運用の負担の課題も解決できると考えました」と語るのは、NPXG部GSRE課 兼 NPXP部DXD課の末藤悠氏です。

加えて、PS3 世代のオンプレミスとの混在環境、物理サーバーの老朽化などの課題などに対応するために、PS3 世代も AWS に移行。さらに、PS4 世代向けサービスを Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) から Amazon Elastic Container Service(Amazon ECS)ベースのコンテナ基盤へ移行し、マイクロサービス化やクラウドネイティブ化を進めました。併せて CI/CD 環境を構築し、DevOps 体制を整備しました。

ソリューション

PS5 世代ではインフラのマイクロサービス化を加速

PS5 世代向けサービス開発時には、マイクロサービス化やサーバーレス化をさらに加速。DB はスケーラビリティの向上に向けて Amazon DynamoDB を、キャッシュレイヤーとして Amazon ElastiCache for Redis を中心に採用しました。

PS5 の発売後は、キャッシュの非同期更新、連動リソースの更新、ユーザーへの通知などの各処理を行うために、マイクロサービス間の非同期通信が急増しました。そこで、リソース更新を伝える Pub/Sub メッセージが可能な仮想パイプラインを、Amazon Simple Notification Service (Amazon SNS)やAmazon Simple Queue Service (Amazon SQS)、Amazon Kinesisなどのマネージドサービスで構築。「従来は API 処理の内部で更新する必要があった『密な』依存関係を、自身のリソースを更新して通知をパイプラインに投げることで、連動する側が通知を受け取って処理する『疎な』関係にすることができました」とNPXP部の東康平氏は語ります。

PS5 では、デベロッパー向けのサブミッションシステムを AWS 上に構築し、クラウドネイティブアーキテクチャに刷新しました。これは PS4  までオンプレミス環境で運用してきた方法をアップグレードしたものです。サブミッションシステムは、大容量のバイナリーファイルのアップロードや、該当ファイルの変換処理などが求められます。従来は、他社の高速データ転送 SW を利用していましたが、PS5 からは AWS Transfer for SFTP を採用。サービス間のワークフローマネジメントや同期/非同期処理の連携には AWS StepFunctions、社内システム間の連携にAmazon SNS、Amazon SQSを採用しました。NPXG部の加澤恒央氏は「ゲームのバイナリーファイルは 100GB を超えることも多く、世界中のデベロッパーとやりとりする必要があります。そこで、グローバルに分離されたリージョンがあり、高速にデータを転送することのできるクラウドの強みを活用することにメリットを見出しました。」と話します。

プロジェクトでは、PS4 向けのサービスを維持管理しながら、PS5 の発売に向け新機能を開発する必要がありました。そこで SIEは、エンタープライズサポートの AWS インフラストラクチャイベント管理(IEM)を活用して、万全の体制でローンチに備えました。具体的にはサービスやアーキテクチャをAWSのテクニカルアカウントマネージャー(TAM)やソリューションアーキテクト(SA)と共有しつつ、AWSからフィードバックを受けながら、キャパシティプランニングに基づくリソース確保/上限緩和などを依頼しました。

「Amazon DynamoDB では数百万規模のキャパシティをリクエストしましたが、TAM にアーキテクチャと併せて需要を共有することでスムーズに対応できました。PS5 の発売日近辺では、TAM や SA とリアルタイムのコミュニケーションを取る体制も用意していただきました。ローンチ直後、あるサービスで Amazon ElastiCache の Redis Cluster で負荷にバラツキが生じた際には、TAM による踏み込んだ調査/検証に助けられました」(末藤氏)

導入効果

日常的に数十万 RPS を処理し、イベント時のスパイクにも対応

マイクロサービスで構成される PSN は、東京以外にサンディエゴ、サンフランシスコ、ロサンゼルスにも開発運用チームがあります。各拠点はフラットに連携しています。現在、東京チームが開発/運用するPSN のサービスは PS5 向けで 50 以上あり、200 以上のマイクロサービスコンポーネントで構成しています。

東京チームは、PS5 世代向けのサービスは継続的に機能強化を続けており、1 年前の同時期と比較して 4 倍近い回数の本番環境へのデプロイを実施。デプロイのリードタイムも従来の 10 分の 1 となり、バグの修正などスピーディに対応しています。

スケーラビリティにおいても、AWS ならではのメリットを享受しています。近年は運営型のゲームが増え、コントロールしきれないアクセススパイクが発生します。日常的に数十万 RPS(Request per second)を処理できているものの、大規模なイベント時には数分間でさらに 2 ~ 3 倍にリクエストが増加することもあります。こうしたスパイクにはサードパーティの開発者からイベント情報を入手し、事前のリソース拡張によってイベントに備えます。

「特にPS5の発売を機に、プレイステーションネットワークのオンラインサービスのニーズは一変しました。ゲームプラットフォームは、想定外のトラフィックが発生することがあります。そうした場合でも1クリックでサーバーが増設でき、 AWS のマネージドサービスが利用できます」(末藤氏)

今後に向けてSIE では、 PSNのプラットフォームを、CI/CDまで含めて全拠点で共通化したAmazon Elastic Kubernetes Service(Amazon EKS)へマイグレーションしていきます。

「今回は各拠点の独自要件を基盤に取り込む必要があるために、自由度と柔軟性の高い Amazon EKSが当社のビジネス要件を満たすことができると実感しています」(末藤氏)圧倒的な没入感を実現した PS5 とそれを支えるPSN。ユーザー体験のさらなる向上に向けて、今後も進化を続けていきます。

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特にPlayStation 5 の発売に際しては、PlayStation Network のオンラインサービスのニーズに応える上で大変重要なサービスでした。予測できないレベルのトラフィックが発生するゲームプラットフォームにおいて、AWS のマネージドサービスを活用することで、1 つのコマンドでサーバーを簡単にスケーリングすることができました。

末藤 悠 氏

株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント NPXG 部ゲーミングSRE課 課長 兼 NPXP部デベロッパーエクスペリエンス開発課 課長

アーキテクチャ図

Architecture diagram illustrating Sony Interactive's AWS cloud infrastructure and service integration, featuring components like Amazon EKS, ElastiCache, Lambda, DynamoDB, SQS, SNS, S3, and ALBs organized across multiple domains for microservice deployment and integration.

株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント

1993 年 11 月、ソニー株式会社と株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメントの合弁で株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメントを設立。2010 年 4 月、会社分割により、株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメントを新たに設立。2016 年 4 月、ソニー・インタラクティブエンタテインメントLLC(SIE)を設立。現在、PlayStation に関するハードウェア、ソフトウェア、 コンテンツ、ネットワークサービスの企画、開発、販売と、toio (トイオ)およびソフトウェア、コンテンツの企画、開発、販売を行う。

取組みの成果

  • 1 億 2,300万アカウント
    PSNのMAU(2023年12月末時点)
  • 50 以上
    東京チームが開発/運用する PSN のサービス数
  • 200 以上
    マイクロサービスのコンポーネント数
  • 4 倍
    1 年間のデプロイの増加率
  • 10 分の 1
    デプロイのリードタイムの短縮率

本事例のご担当者

末藤 悠 氏

A man seated at a white table, smiling, dressed casually in a dark sweater and gray shirt, in a modern, neutral-colored setting. This image is used for a solution case study for Sony Interactive Entertainment on the AWS Japan website.

加澤 恒央 氏

Portrait of a speaker from Sony Interactive Entertainment, wearing glasses and a dark blue shirt, seated at a table and speaking with hands gesturing.

東 康平 氏

Portrait of an East Asian man wearing glasses and a dark suit jacket, seated and smiling, against a plain background. Professional speaker photo for Sony Interactive Entertainment.