導入事例 / 建設業

2023
株式会社竹中工務店

竹中工務店、建設事業のあらゆるデータを蓄積・活用する建設デジタルプラットフォームを AWS 上に構築し、デジタル変革を推進

百本以上

AWS 上で開発する アプリケーションの本数

19 か月

建設デジタルプラットフォームの開発期間(構想期間を除く)

データ活用の浸透

業務効率化や働き方改革への貢献

概要

1610 年の創業以来、数多くの建築作品を手がけている株式会社竹中工務店。同社はデジタル変革の土台となる『建設デジタルプラットフォーム』をアマゾン ウェブサービス(AWS)上に構築し、2021 年 11 月より運用を開始しました。データ収集・蓄積、AI、BI、IoT の機能を実装したプラットフォームにより、DX に必要なアプリケーションを効率的に開発。建設現場を含めたすべての業務のデジタル化による抜本的な生産性向上やデータ高度活用による付加価値創造を目指します。

ビジネスの課題 | 建設プロジェクトの各種データの統合管理を検討

2025 年のグループ成長戦略に“グループで、グローバルに、まちづくりにかかわり、新たな価値を創る”を掲げ、サステナブルな建築・まちづくりを目指す竹中工務店。実現に向けた取り組みの 1 つがデジタル変革です。事業部門とデジタル室が一体となり、すべての業務をデジタル技術で効率化しながら、部門や企業の壁を超えてデジタル変革を推進することをデジタル戦略としています。

「背景にあるのは、製造業が過去 20 年で生産性を着実に向上させているのに対し、建設業界では、生産性がほぼ横ばいであるということです。技能労働者の高齢化も進み、人材不足が深刻化しています。時間外労働の上限を原則月 45 時間とする改正労働基準法の建設業への適用が 2024 年に迫っています。デジタル化による業務効率化と生産性向上は、当社が成長していくうえで不可欠となっています」と語るのは、デジタル室 先進デジタル技術グループ長の北原英雄氏です。

デジタル戦略の施策において、中核となるのが事業に関わるすべてのデータを集約し、活用できるようにする『建設デジタルプラットフォーム』です。営業、設計、生産準備、施工、維持保全、人事、経理といった事業に関するあらゆるデータを統合管理し、新たな価値創造を進めることが狙いです。デジタル室 データマネジメントグループ長の松本陽子氏は次のように語ります。

「これまで営業、設計、管理といった業務ごとにシステムがサイロ化しており、建設プロジェクトのデータ活用は業務単位で閉じていました。そこで、全社横断的にデータの利活用ができる共通基盤として、建設デジタルプラットフォームを構築しました」

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AWS のサービスを活用して、全社横断的にデータの利活用ができる建設デジタルプラットフォームを構築することで、生産性向上の基礎を築くことができました

北原 英雄 氏
株式会社竹中工務店 デジタル室 先進デジタル技術グループ長

ソリューション | データ収集・蓄積、AI、BI、IoT の機能を実装した建設デジタルプラットフォーム

2019 年 5 月より、建設デジタルプラットフォームの検討を開始した同社は、クラウドを前提にインフラを検討し、複数サービスを比較した中から AWS を採用しました。デジタル室 先進デジタル技術グループチーフソリューションクリエイターの美里晋一氏は次のように語ります。

「当社では 2025 年を目処にグループ全体の業務システムをオンプレミスから AWS に移行を進めており、クラウドリフトと建設デジタルプラットフォーム双方の観点で採用を決めました。既存システムの移行のしやすさ、市場シェア、クラウドサービスとしての持続性、AI、IoT、ビッグデータ等のデジタルトランスフォーメーション(DX)に求められる先進サービスの充実度などを総合的に評価して AWS を採用しました」

2020 年 4 月から構築を開始し、要件定義を経て基盤構築、データ収集と進み、2021 年 11 月より運用をスタートしました。建設デジタルプラットフォームは、データ基盤と DX のためのアプリケーション群の 2 つで構成されています。

データ基盤は、建設プロセスにおけるプロジェクト業務や人事・経理など、事業にかかわるすべてのデータを管理・分析するためのものです。データ収集・蓄積基盤は、Amazon Simple Storage Service (Amazon S3)、Amazon Relational Database Service(Amazon RDS)、AWS Glue を活用。人工知能(AI)基盤には Amazon SageMaker、ビジネスインテリジェンス(BI)基盤には、従来より同社で利用しているツールに加え、Amazon Redshift も採用しています。

IoT 基盤は Amazon Kinesis を利用し、データ収集・蓄積基盤や AI 基盤とのスムーズな連携を実現しています。

「データ基盤は、AWS のマネージドサービスを積極的に活用し、データ量の増加や機能追加に柔軟に対応できるようにしました」(美里氏)

一方のアプリケーション群は、ユーザーがデータを業務で活用するためのものです。デジタル室が業務部門と連携しながら試行的に開発を進め、2020 年 9 月頃には一部をリリースしました。松本氏は「初めて作ったアプリケーションは、作業計画を作成するために技能労働者の労務工数の予定と実績を可視化するものでした。その後も、PC ログをベースに働き方を可視化するなど、2022 年 11 月までに約 25 のアプリケーションをリリースしました」と語ります。

アプリケーションの中で象徴的なものが、施工管理に必要な人員数を予測・シミュレーションする『人員山積みの予測アプリケーション』です。工事の概要データと、施工実績のデータを学習し、ビルの施工に必要な人的リソースを予測します。これまで支店ごとに Excel などを用いていた人員予測が、統一した基準で算出することが可能になりました。デジタル室 先進デジタル技術グループの山西利明氏は次のように語ります。

「人員山積みの予測アプリケーションは、過去の実績を教師データに Amazon SageMaker で機械学習を実行して予測モデルを作成しました。初期段階の建築工事に対してこのモデルを適用して人員数を予測しながら BI でデータを可視化しするものです。データ収集・蓄積基盤と AI 基盤の連携の作り込みを工夫しながら、セキュリティにも配慮しました」

建設デジタルプラットフォームの構築中は、AWS の担当者から定例会や個別の質問を通して設計レビューや改善提案などさまざまな支援を受けました。その中でも、効果を発揮し

たのが AWS のトレーニングでした。北原氏は「プロジェクトメンバーの半数以上が初めての AWS 体験でしたが、トレーニングを通して底上げを図った結果、スムーズにプロジェクトが進むようになりました」と語ります。

導入効果 | 業務でのデータ活用の拡がり

建設デジタルプラットフォームの運用開始から約 1 年が経過し、データ活用は徐々に拡がりを見せています。デジタル室では、現在もデータ収集・蓄積基盤に格納するデータの拡充や、AI 基盤、BI 基盤、IoT 基盤の拡充、DX のためのアプリケーションの開発を進めながら、業務部門にデータ活用を呼びかけています。

「AWS のサービスを活用して、全社横断的にデータの利活用ができる建設デジタルプラットフォームを構築することで、建設現場の生産性を向上する基礎を築くことができました。現在は業務システムのデータが中心ですが、順次文書ファイル・映像・音声系のデータや、IoT 基盤を通して取得した施工現場系のデータ等を蓄積し、さまざまな用途に活用できるようにしていきます。2023 年度中に合わせて百以上のアプリケーションの開発を目指します」(北原氏)

そのうえで、現在は AWS IoT TwinMaker の活用などを視野に、建設デジタルプラットフォームと実世界である建設現場を融合したデジタルツインの構築を進めています。

「デジタル戦略での 2030 年のマイルストン達成に向けて、3 次元の BIM データと、建設工事の工程進捗データ、環境データ、作業員データなどを連携し、事前にシミュレーションすることで工程遅延の解消、品質の向上、安全性の確保などに活用していきます」(北原氏)

さらにその先として、自社開発のスマートビル管理プラットフォーム、建設ロボットプラットフォーム等との連携を深め、地域社会のデータプラットフォームとの連携も図りながら、新しい建築・まちづくりサービスの提供を目指していく考えです。

企業概要 株式会社竹中工務店

1610 年の創業以来、棟梁精神を源に建築を専業とし、ランドマークとなる数多くの建築物を手掛ける。「最良の作品を世に遺し、社会に貢献する」という経営理念のもと、設計施工一貫体制・技術開発力を強みに時代のニーズに的確に応える建物の建設に携わる。グループメッセージ「想いをかたちに、未来へつなぐ」を志に、グループの総合力により、社会課題の解決と豊かで安全・安心なまちづくりの実現を目指している。

北原 英雄 氏

美里 晋一 氏

松本 陽子 氏

山西 利明 氏

ご利用中の主なサービス

Amazon S3

Amazon Simple Storage Service (Amazon S3) は、業界をリードするスケーラビリティ、データ可用性、セキュリティ、およびパフォーマンスを提供するオブジェクトストレージサービスです。

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Amazon RDS

Amazon Relational Database Service (Amazon RDS) を使用すると、クラウド上のリレーショナルデータベースのセットアップ、オペレーション、スケールが簡単になります。

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AWS Glue

AWS Glueは、分析、機械学習、アプリケーション開発のためのデータの検出、準備、結合を簡単に行える、サーバーレスデータ統合サービスです。

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Amazon SageMaker

Amazon SageMaker は、すべての開発者やデータサイエンティストが機械学習 (ML) モデルを迅速に構築、トレーニング、デプロイできるようにする完全マネージド型サービスです。

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