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Amazon Connect でコンタクトセンターを構築するための反復的なアプローチ

効果的なコンタクトセンターソリューションの導入は、特に独自の要件を持つ企業にとって複雑な場合があります。このブログ記事では、要求分析、文書化、開発に関する標準化されたアプローチを含む基本的なプロセスを概説します。このアプローチに従うことで、企業は現在のニーズを満たす信頼性が高く拡張可能なコンタクトセンターを確立でき、時間経過後も容易に保守および強化することができます。

要求の発見と要件定義

Amazon Connect によってコンタクトセンターを構築する最初のステップは、ユースケースの作成、つまり顧客のペルソナによって製品やサービスが潜在的に使用されうる具体的な状況を明らかにし、ビジネスニーズと要件を徹底的に調査することです。ビジネスアナリスト(BA)は、技術開発者のビジネスの仕組みの理解促進を支援する重要な役割を果たします。「エージェントはどのような種類の問い合わせ(音声、チャット、各種テキスト)を処理するか」、「エージェントは特定の問い合わせに対して特別なスキルを持っているか」、「営業時間や休日はどのようになっているか」といった運用上の疑問があります。技術変革の場面では、現在のソリューションのエージェント、その業務、運用時間について単に尋ね、最終的に知ったことを再現に陥りがちです。技術を変革する際、現行ソリューションのエージェント、その業務、運用時間について単純に調査し、その結果をそのまま再現してしまうことがあります。しかし、この機能的な同一性に基づくアプローチでは、コンタクトセンターの変革に対する、ビジネスリーダーが求めている目的を理解する機会を逃す可能性があります。例えばリーダーは、生成 AI を活用したセルフサービスソリューションを実装して通話やクエリに対応し、エージェントの作業負荷を軽減しながら、顧客とのやり取りにおける満足度を確保することを構想しているかもしれません。このような落とし穴を避けるためには、ビジネス要件と長期的な戦略的ビジョンをより深く掘り下げる、包括的なアプローチを取ることが重要です。

運用設計における標準化されたアプローチ

この記事で紹介するアプローチの重要な要素は、シンプルで補完的かつ反復可能な標準化された開発運用サイクルです。このプロセスは、ビジネス、開発、品質の三位一体なしでは機能しません。ビジネスアナリストは Amazon Connect を使う開発者とペアを組み、ユースケース開発を中心とした発見フェーズを主導します。まず彼らは協力してビジネスの実用最小限の製品として要件を満たす設計を作成します。設計後、品質保証エンジニア(組織内から参画可能な場合は参画させることを強く推奨)は、テストケースを構築し、時として主観的なプロセスに客観的な声を提供するため、設計を深く掘り下げます。組織に品質管理チームがない場合、ビジネスアナリストの役割を担う誰かが代わりにこの重要なプロセスを行います。開発者がソリューションをテストした後、テストまたはユーザー受け入れ環境に展開されます。開発 – テスト – バグ修正 – 再テストのサイクルには特定の繰り返し回数はありません。設計で合意された実用最小限の製品の機能が完成するまで、このサイクルは必要な回数だけ継続します。いずれの環境でのテストも、エンドユーザーとしてソリューションを体験する機会であり、開発チームにフィードバックを提供して、彼らのバージョンのソリューションがビジネスニーズを満たしていることを確認します。ビジネス側の承認が得られたら、本番環境に向けてソリューションを準備し、必要に応じて再度サイクルを繰り返します。

発見(Discovery)、設計(Design)、開発(Development)、テスト(Test)、ユーザー受け入れ(User Acceptance)の大まかなで高レベルな概要を以下に示します :

発見 :

BA は、ビジネスユニットのコンタクトフローなど業務要件を収集するために、既存のドキュメントを確認します

設計 :

開発者は、ビジネスユニットの要件を満たすソリューションを設計します

開発 :

開発者は、合意された設計に基づいてコンタクトフローを開発します

テスト :

QA テスターは、ソリューションが設計パラメータを満たしていることを確認するため、テストを実施します

ユーザー受け入れ :

BA は、ソリューションが彼らのニーズを満たしていることを検証するために、ビジネスユニットと ユーザー受け入れテスト(UAT)を実施します

組織変更の管理

Amazon Connect のようなクラウドベースのコンタクトセンタープラットフォームへの移行には、慎重な組織の変更管理が重要です。製品のサポートを受ける側から提供する側への移行は、オーナーシップの移行を意味します。責任あるオーナーシップには、組織内の人材、現在使用しているプロセス、そして目指す製品の責任の所在について内部的な検討が必要です。まずは「成功とは何か」という問いに答えるためのビジネス戦略の検討から始めることをお勧めします。AWS のオンラインドキュメントブログを確認し、カンファレンスやワークショップに参加し、それらの経験を活かして製品ビジョンとサポート戦略を策定してください。適切な人材はいますか? 製品ロードマップはありますか? 製品ロードマップの完了まで予算は確保できていますか? 変更管理には、エグゼクティブスポンサー、プロジェクトマネージャー、そして専門知識を持つ機能/コンポーネントの所有者など、主要な関係者の役割と責任を明確に定義した階層構造の確立を推奨します。同様に重要なのは、従業員の懸念に対応し、賛同を得て、組織全体での導入を推進するための綿密なコミュニケーション計画です。

Amazon Connect のセンターオブエクセレンス

Amazon Connect の実装の成功を持続させるために、Amazon のクラウドセンターオブエクセレンスと同じ原則を用いた専門のセンターオブエクセレンス(CoE)を確立することをお勧めします。この中央集権的なガバナンスモデルは、ベストプラクティス、継続的なサポート、そして継続的な改善とイノベーションのためのフレームワークを提供します。CoE は、複数の技術部門とビジネス部門にわたる効率的な知識共有とコラボレーションを促進し、時間とともにコンタクトセンターを最適化できるようチームの能力を高めます。CoE には、以下のようなさまざまな専門的な役割とスキルセットを持つ人々を含める必要があります :

  1. コンタクトセンター業務のエキスパート : コンタクトセンターの運営、カスタマーエクスペリエンス戦略、人員管理について深い知識を持つ熟練の専門家です。全体的なビジョンとロードマップを導くための専門知識を提供します。
  2. 技術スペシャリスト:Amazon Connect 環境の設計、実装、保守を担当する開発者、アーキテクト、DevOps エンジニアです。技術基盤が堅牢で、スケーラブルで、ベストプラクティスに沿ったものであることを確保します。
  3. 変更管理とトレーニングのリーダー:ユーザー採用を推進し、抵抗に対処し、組織の能力を構築するための戦略を開発・実行する変更管理の専門家です。また、コンタクトセンターチームのスキル向上のためのトレーニングプログラムを監督します。
  4. 継続的改善と分析のエキスパート:パフォーマンスを継続的に監視し、最適化の機会を特定し、コンタクトセンターにデータ駆動型の改善を実装するデータアナリストとプロセス改善のスペシャリストです。

まとめ

企業は、この包括的で標準化されたアプローチに従うことで、Amazon Connect を活用したコンタクトセンターをより効率的に、反復可能なステップで設置し、再利用可能な成果物を作成することができます。このフレームワークは、発見、設計、開発、組織変更における主要な課題に対応し、組織が独自の要件を満たす、カスタマイズされた効率的なコンタクトセンターソリューションを迅速に確立できるようにします。

コンタクトセンターの変革において、ほとんどの企業は使用するプラットフォームの決定や調査に時間とお金をかけています。Amazon は豊富なコンタクトセンターリソース顧客事例、そして変革の支援サービスである AWS プロフェッショナルサービスを提供しています。Amazon Connect は業界をリードするコンタクトセンタープラットフォームです。特に特別な点は、実装、運用、利用に関わる人々です。彼らがクラウドへの移行を実現する推進者となります。

Amazon Connect のロゴとイメージ

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筆者について

Author, Corey MillerCorey Miller は、AWS プロフェッショナルサービスのシニアエンゲージメントマネージャーです。彼の職務は、お客様向けの導入プランを策定し、AWS、AWS パートナー、お客様チーム間の相乗効果を生み出すことです。AWS に入社する前は、米空軍に 28 年間勤務していました。Corey は旅行、ゴルフ、そして妻と 2 人の娘と過ごす時間を楽しんでいます。
Author, Ramesh NatarajanRamesh Natarajan は 15 年の業界経験を持つ Amazon Connect コンサルタントです。彼は Amazon Connect 向けの最先端 AI/ML アプリケーションの構築を専門とし、生成 AI の変革的な可能性を活用できるコンタクトセンターソリューションの提供を担当しています。仕事以外では、ランニング、スポーツ、そして様々なガーデニングプロジェクトに取り組み、活動的に過ごしています。また、2 人の娘との時間を大切にしています。

翻訳はテクニカルアカウントマネージャー高橋が担当しました。原文はこちらです。