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日立グループ合同「AI-DLC Unicorn Gym」開催レポート ── 日立 AI駆動開発のキーマンに聞く、グループ展開への道筋
AWS では、AI を活用した新しいソフトウェア開発手法「AI-DLC(AI-Driven Development Life Cycle)」を提唱しています。AI-DLC は、AI を単なる補助ツールとしてではなく、要件定義から設計・実装・テストまでの開発ライフサイクル全体に組み込みながら、人間が主導権を握る(Human-in-the-Loop)ことを前提とした開発手法です。そして、この AI-DLC を 3 日間で体験・実践いただくワークショップが「AI-DLC Unicorn Gym(以下 UG)」です。
2026 年 5 月 18 日〜20 日、日立のオフィスにて「日立グループ合同 AI-DLC UG」を開催しました。本記事では、その開催レポートをお届けするとともに、ワークショップを企画・伴走した AWS Japan カスタマーソリューションズ マネージャー 早川 康平が、日立グループ社内で AI 駆動開発ワーキンググループの立ち上げを牽引されるキーマン、株式会社日立製作所 デジタルシステム&サービス AI&ソフトウェアサービスビジネスユニット マネージド&プラットフォームサービス事業部 チーフクラウドアーキテクト 早川 裕志 氏にお話を伺いました。
1. 日立グループ合同 AI-DLC Unicorn Gym 開催レポート
今回の合同開催に先立ち、2026 年 1 月には株式会社日立産業制御ソリューションズが AI-DLC Unicorn Gym に参加され、従来 3 人月規模の開発を、わずか 2 日間で動くものとして作り、AWS にデプロイするところまで完了させるという成果を出されています(詳細はこちらの記事)。この先行事例での手応えが、今回の日立グループ合同開催へとつながりました。
当日は、日立製作所 デジタルシステム&サービス AI&ソフトウェアサービスビジネスユニット マネージド&プラットフォームサービス事業部 事業主管 鈴木 肇 氏、AWS Japan エンタープライズ事業統括本部 Hitachi事業部本部長 吉井の開会の挨拶から始まりました。
今回の UG には、日立製作所、日立ハイテク、日立産業制御ソリューションズの 3 社・8 チーム・52 名にご参加いただきました。顧客向け Web ポータル、半導体製造向け検査支援ツールなど、各チームが実際の業務テーマを持ち寄りました。
開催後のアンケートでは、他社での UG 実績と比較しても非常に高い評価をいただきました。
- 全体満足度:5 点満点中 4.67
- 日立グループへの推奨意向:回答者の 100% が「ぜひ/強く薦めたい」
- 「AI-DLC は働き方を変える可能性がある」:回答者の 92% が肯定
- 開発工数の削減について、回答者の 90% が「70% 以上の削減」を、72% が「85% 以上の削減」を体感
- 回答者の 95% が、3 日間で「動作する成果物」に到達または部分到達
参加者からは「AI 駆動開発の威力に驚いた(推論プロセスの追跡や影響範囲の可視化)」「製造スピードが段違い」といった声が寄せられた一方、「Coding Agent の社内払い出しの簡素化」「大規模開発のプラクティス」「品質保証との両立」といった、本番適用に向けた改善の要望もいただきました。
この結果は、日立グループが掲げる成長エンジン「Lumada 3.0」をより高速に生み出すための開発手法の 1 つとして、AI-DLC の可能性を示すことができたものと考えています。
2. 推進キーマンインタビュー
ここからは、AI-DLC UG にも参加され、日立グループ展開に向けた AI 駆動開発ワーキンググループの立ち上げを牽引される早川 裕志 氏と、今回の AI-DLC UG をリードした AWS Japan カスタマーソリューションズ マネージャー 早川 康平との対談をお届けします。
想像を超えた、社内の反響
| 早川 康平(AWS)
では、お願いします。「早川対談」、ようやく実現しましたね。 |
| 早川 裕志(日立)
早川 × 早川、楽しみにしていました(笑)。 |
| 早川 康平(AWS)
ブログにするときは、お二人が区別しやすいように工夫します(笑)。では、さっそく。第 1 回となる日立グループ合同 AI-DLC UG、開催後の反響はいかがでしたか。 |
| 早川 裕志(日立)
実は私どもでもアンケートを取らせていただいたのですが、満足度は 5 点満点で 4.7 を超えていました。社内で改善というと「2 割」「15%」といった数字が並ぶなかで、開発工数が大幅に減ったという結果は劇的で、インパクトがすごかった。一方で、数字が大きすぎたことで「小さなテーマだからそうなんでしょ」という声も生まれました。それをどう払拭していくか、というところに、むしろモチベーションが湧いてきた感覚です。 |
| 早川 康平(AWS)
先日、今回ご参加いただいたチームの本部長の方にもご報告したのですが、同じような反応をいただきました。「2 カ月の開発が 2 日になった、と聞いたが、本当なのか」と。ここは正直にお伝えしています。今回 UG で各チームが取り組んだのは、実際の業務テーマで動くものを作り、AWS にデプロイするところまでで、その速さは確かな成果です。ただ、それをお客様に提供する本番システムとして世に出すには、日立が積み上げてこられた品質保証の工程──テスト、承認、レビューなど──を通す必要があります。つまり「動くものをデプロイするまでの速さ」と「本番リリースまでの工数」は別物で、今回の数字は前者にあたります。だからこそ、その品質保証の工程まで織り込んだ「日立版 AI-DLC」にしていく必要がある、と考えています。 |
最大の壁は、技術ではなくマインドセット
| 早川 裕志(日立)
今回、参加者の多くが AI-DLC にとても前向きで、感銘を受けました。その一方で、「AI に仕事を奪われるのではないか」という、いわば積み重ねてきたアイデンティティへの不安を抱える人もいます。どんなにいいと思っていても、どこかに反発するラインがある。そこをどう越えるかは、トップダウンでもボトムアップでも、技術だけでは解決できない問題だと感じています。 |
| 早川 康平(AWS)
大事なのは発想の転換だと思っています。たとえば 10 人で 1 年かけて 1 つのプロダクトを作っていたなら、これからは同じ 10 人で 1 年に 10 プロダクト作ろう、と。リリースと改善のスピードを何倍にも上げていく。とくに AI 時代はあらゆるプレイヤーが一気に立ち上がる群雄割拠の世界です。これまでのリリーススピードのままでは、もう他社に太刀打ちできない。AI-DLC は、人を減らすための手法ではなく、生み出す価値を増やしスピードを上げるための手法です。そういうポジティブな方向に向けられたら、と思っています。 |
| 早川 裕志(日立)
UG を見学していて、最初はみんなギクシャクしているなと感じました。でも、どこかで一気に盛り上がるラインがある。AI-DLC UG では、ビジネスサイド(PdM)とエンジニアが膝を突き合わせて、常に議論しながら一緒に意思決定していきます。「誰が何を、どう決めるか」というプロセスそのものが従来と変わるので、最初は慣れないんですね。でも、そのラインを越えると一気に変わります。その場で議論して決めたことが、すぐ目の前で形になっていく。役割の壁を越えて一緒に作っている感覚があって、見ていてもチームが生き生きしてくるのが分かりました。この協働の体験そのものが、何よりの価値だと思いました。 |
AI-DLC は「品質を犠牲にスピードを出す」手法ではない
| 早川 康平(AWS)
ここはよく誤解されるところなので、この場でもはっきり言っておきたいのですが、AI-DLC を「品質を犠牲にして生産性を爆上げする手法」だと捉える方がとても多い。それは違います。AI-DLC の本質は、人間が開発の主導権を握り続けること(Human-in-the-Loop)にあります。AI が計画や実装の草案を担い、何を作るか・採用するかという重要な判断は人間が下す。だからこそ、AI が解釈した「それっぽいもの」ではなく、意図したとおりのものを、速く作れるのです。 |
| では、どこで品質を担保するのか。AI-DLC では開発ステップを明確化し、工程ごとに人間の承認ゲートを設けます。AI が作るのはあくまで草案で、承認を経て初めて人間の成果物になる。速さのために品質を犠牲にしているわけではなく、むしろ人間が要所を押さえることで、速さと品質を両立させる──ここは正確にお伝えしていく必要があると考えています。 |
| 早川 裕志(日立)
そこは私も強く共感するところです。今後、必ず「AI が生成するコードの品質はどうなんだ」という指摘が出てきます。ただ、これは「人間のほうが AI より品質が高い」という単純な話ではないんですよね。日立には、長年積み上げてきた品質保証のプロセスがあります。事業部によってそのかたちは違いますが、その積み重ねこそが私たちの強みです。AI に任せきりにするのではなく、その品質保証のプロセスを AI-DLC の進め方そのものに織り込んでいく。そこができて初めて、日立として安心して本番に使える、と言えるのだと思います。 |
| 早川 康平(AWS)
おっしゃるとおりで、まさにそこが「日立版 AI-DLC」の肝になります。 |
「日立版 AI-DLC ワークフロー」を、各現場で育てる
| 早川 康平(AWS)
そのために、日立版の AI-DLC ワークフローを作る必要があります。AWS が GitHub で公開している AI-DLC Workflows をベースに、まずは日立として最低限守るべきものを 1 つの「汎用版」として整える。それを各事業部・グループ会社が Fork(複製)して、それぞれに合わせてカスタマイズしていく──というのが現実的だと考えています。 |
| 早川 裕志(日立)
日立グループは幅広いんです。SIer としての顔もあれば、事業会社としての顔もある。金融、公共、鉄道……それぞれ品質基準がまったく違います。共通化できる「ベーシックなライン」は AI-DLC で一緒に作り、最後のカスタマイズ(ラストワンマイル)は各現場が地道に埋めていく。そのバランスが大事だと思っています。 |
日立 AI 駆動開発ワーキンググループの立ち上げ
| 早川 康平(AWS)
その推進母体として、日立社内に AI 駆動開発ワーキンググループを立ち上げる、と。 |
| 早川 裕志(日立)
はい。詳細は今後発表していきますが、特定の事業部に閉じず、各 BU・グループ会社から広くメンバーを集めたいと考えています。AI-DLC を一緒にやりたいと言ってくれている熱意あるフロントのメンバー、そして品質保証の担当者を巻き込んで。「小さく始めて大きくする」とよく言いますが、私はむしろ「広く、小さく」始めたい。熱意のある人たちで、AI 駆動開発をグループ全体に広めていきましょう。やり方はいくつもありますが、そのなかでも最も有力なアプローチとして、AI-DLC を使って始めていく考えです。 |
| もう「AI を活用するかどうか」を議論する時代は終わったと思っています。AI が当たり前になる時代です。AI の効果は複利で効きます。早くやらないと本当についていけなくなるし、早く動けば、その分だけ事業リターンも大きい。だからこそ、AWS さんには単に支援していただくというより、日立グループのための AI 活用パートナーになってほしい。ぜひ、ご一緒させてください。 |
3. AWS の今後の支援
AWS は、日立グループの AI 活用パートナーとして、全力で支援してまいります。
まず認知を広げるために、今後日立グループ向けの AI イベントを毎月企画していきます。Coding Agent(Kiro、Claude Code)のハンズオン、AWS Ambassadors と連動した社内向けイベント、AI 活用事例の紹介などを予定しています。あわせて、人材育成の研修プログラムについても提案していきます。
認知の次は実践です。UG の定期開催で実プロジェクトへの適用を進め、日立版 AI-DLC ワークフローの策定にも並走します。日立グループの AI 活用を全力で支援し、日立が掲げる Lumada 3.0 の実現に向けたパートナーとして、これからもご一緒させていただきます。
早川 裕志 氏、本日はありがとうございました。
本記事は、2026 年 5 月 18〜20 日に開催した「日立グループ合同 AI-DLC Unicorn Gym」の開催レポート、および 2026 年 6 月 9 日に実施した開催後インタビューをもとに構成しました。
著者
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早川 康平
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 カスタマーソリューションズ マネージャー。金融勘定系システムの PM、Web エンジニア、SaaS プロダクトマネージャー、ソリューションアーキテクトを経て現職。幅広い経験を活かし、日立グループ専任の CSM として、SaaS アプリケーション開発や AI 活用を含むクラウド活用と開発プロセスの変革を支援している。宮城県仙台市出身。 |
