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Amazon Bedrock AgentCore、東京を含むAWSリージョンで一般提供開始:AIエージェントを現実の世界へ

Amazon Bedrock AgentCore Services

本記事は米国時間 10 月 13 日に公開された AWS エージェンティック AI 担当バイスプレジデント スワミ・シバスブラマニアン(Swami Sivasubramanian)の署名ブログ「Make agents a reality with Amazon Bedrock AgentCore: Now generally available」の日本語抄訳版です。

AIエージェントをプロトタイプから、セキュリティ、スケーラビリティ、信頼性を備えた本番環境へ

2006年に AWS を立ち上げた時、私たちはクラウドコンピューティングが組織のテクノロジーを構築し、スケールさせる方法を変革すると信じていました。現在、AI エージェントについても同様の転換点に立っています。私たちは、数十億もの AI エージェントが協働し、日常業務から複雑なビジネスプロセスまであらゆるものを変革する世界を思い描いています。しかし、これを現実のものとするには、フレームワークやローコードの開発者向けツール以上のものが必要です。企業がビジネスの基盤として信頼できるAIエージェントには、エンタープライズグレードの運用基盤が必要です。その基盤は、セキュアで信頼性が高く、スケーラブルで、AI エージェントの非決定的な性質を考慮して構築されている必要があります。AWS はミッションクリティカルなシステム構築支援の経験を活かし、多様な組織が自信を持ってエージェンティックシステムを本番環境へ移行できる包括的な基盤を Amazon Bedrock AgentCore を通じて提供します。

AgentCore: AIエージェントを迅速に本番環境へ

AgentCore の一般提供開始により、すべての開発者がAIエージェントをパイロット環境からフルスケールの本番環境へ迅速に移行することが可能になります。AgentCore は AI エージェントの構築、デプロイ、運用に必要な基盤を提供します。エージェントに複雑なワークフローを処理するためのツール、メモリ、データを簡単に取り入れることが可能です。数行のコードを書くだけで、現在利用可能な最も安全でスケーラブルなランタイム環境の一つの選択肢にAIエージェントをデプロイすることが可能です。また、エンタープライズグレードでの展開に必要なコントロールとアクセス管理を備えてこれらのエージェントを運用できます。これらすべてをインフラ管理なしで実行でき、任意のモデルやエージェントフレームワークを使って簡単に開始できます。

AgentCore SDK は、多様な業界のあらゆる規模のお客様に既に100万回以上ダウンロードされています。初期のお客様には、Clearwater Analytics (CWAN)、Cox Automotive、Druva、Ericsson、Experian、Heroku、National Australia Bank、ソニーグループ、Thomson Reutersなど、その他多くのお客様が含まれます。AgentCore はまた、Accenture、Cisco、Deloitte、SalesforceなどのAWSパートナーによってサポートされ、すでに変革を実現する結果をもたらし始めています。

AgentCore: 包括的なAIエージェント基盤

AgentCore, a comprehensive agentic platform

AI エージェントの構築は簡単ではありません。例えば、ID プロバイダーとの統合方法、メモリと可観測性(オブザーバビリティ)の実現方法、ツールとの統合方法などを理解する必要があります。私たちのAIエージェント基盤は、構築からデプロイ、運用までのAI エージェント開発ライフサイクル全体にわたるフルマネージドサービスを提供します。任意のモデルやフレームワークを組み合わせることができ、エンタープライズグレードのインフラストラクチャとツールにアクセスしながら最大限の柔軟性を提供します。その主要な機能を見てみましょう。

自由自在にAIエージェント構築:AI エージェント分野は急速に進化しており、新しいフレームワーク、モデル、プロトコルがほぼ毎週のように登場しています。AgentCore のサービス群はモジュールとして提供されているため、必要に応じて組み合わて利用することも、単独で利用することも可能であり、開発者はAIエージェントを望む方法で構築できます。組織としては、チームが必要とするAgentCore のサービスを選択しながら、好みのフレームワーク(CrewAI、Google ADK、LangGraph、LlamaIndex、OpenAI Agents SDK、Strands Agentsを含む)とモデル(Amazon Bedrockで利用可能なモデルや、OpenAIやGeminiなどBedrock以外で利用可能なモデルを含む)を使用できるため、望む方法で自由に構築できます。

価値を生み出すAIエージェントのための基盤:AI エージェントは具体的なアクションの実行で価値を生み出します。例えば、コードの記述と実行、企業システムへの接続、ウェブサイトのナビゲーションなどです。AgentCoreはこれらに不可欠なサービスを提供します。AgentCore Code Interpreter により、AIエージェントは分離された環境でコードを安全に生成・実行でき、AgentCore Browserにより、AIエージェントはウェブアプリケーションを大規模に操作することができるようになります。また、AgentCore Gateway は既存の API や AWS Lambda 関数をエージェント互換のツールに変換し、既存の MCP サーバーに接続し、必要不可欠なサードパーティのビジネスツールやサービス(JiraやAsana、Zendeskなど)とのシームレスな統合を提供します。この統一されたアクセスポイントにより、企業システム全体にわたる安全な統合が可能になります。AgentCore Identity を使用すると、エージェントはOAuth 標準を使用した適切な認証と認可によって、これらのツール全体に安全にアクセスし、操作できます。

インテリジェントなメモリを備えたコンテキスト対応AIエージェント:AIエージェントが真に効果的であるためには、時間の経過とともに対話からコンテキストを維持し、学習する必要があります。例えば、企業向けソフトウェアを検討するお客様を支援する営業サポートAIエージェントの例を考えてみましょう。複数回にわたるお客様との会話から、お客様の業界、予算上の制約、技術要件を記憶し、同じ質問を繰り返すことを避けながら、お客様にパーソナライズされた提案を行う必要があります。同様に、複雑な技術的トラブルシューティングを支援する例では、AI エージェントは以前のデバッグ試行の結果を思い出し、より的を絞ったソリューションを提供しなければなりません。AgentCore Memory は、開発者が複雑なメモリインフラストラクチャを管理することなく、このような高度なコンテキスト対応エクスペリエンスの構築を支援し、AI エージェントがユーザーの好み、過去のやり取り、そして会話を豊かにする関連コンテキストの詳細な理解を構築・維持するのを支援します。

信頼できるエージェントのための包括的な可観測性:AI エージェントはリアルタイムで推論し、非決定的にアクションを実行します。そのため、開発者にはAIエージェントの推論とアクションに対して完全な可視性が必要です。AgentCore Observability は、リアルタイムダッシュボードと詳細な監査証跡を通じて包括的なモニタリングを提供します。組織はAIエージェントのすべてのアクションを追跡し、問題を迅速にデバッグし、パフォーマンスを継続的に最適化できます。AgentCore Observability は、メトリクス、ログ、トレースなどのテレメトリデータを収集してルーティングするための標準化されたプロトコルとツールを提供するオープンソースのオブザーバビリティフレームワークであるOpenTelemetry(OTEL)との互換性を提供しています。これにより、Dynatrace、Datadog、Arize Phoenix、LangSmith、Langfuseなどの既存のモニタリングツールと統合が可能です。

業界をリードする信頼性であらゆる規模に対応:従来のアプリケーションとは異なり、AI エージェントのワークロード持続時間は本質的に予測不可能です。AgentCore Runtime はこうした変動性に対応するように設計されており、必要に応じてゼロから数千のセッションへと自動的にスケーリングし、長時間実行タスク向けに業界をリードする8時間のランタイムを提供します。

エンタープライズグレードのAIエージェントセキュリティ:AIエージェントはユーザーに代わって行動しながら、複数のシステムに安全にアクセスし、機密データを処理する必要があるため、堅牢なセキュリティと規制コンプライアンスの実現においては一切の妥協が許されません。AgentCore はAI エージェントが安全に運用できるよう、すべてのサービスにセキュリティを組み込んでいます。バーチャルプライベートクラウド(VPC)環境と AWS PrivateLink をサポートし、ネットワークトラフィックをプライベートで安全に保ちます。最も重要なことに、AgentCore Runtime は microVM 技術を通じて業界をリードするセキュリティを提供し、各AIエージェントのセッションに独自の分離されたコンピューティング環境を与え、データ漏洩を防止し、すべての相互作用の完全性を維持します。

AgentCoreでスピード、スケール、セキュリティを両立:AgentCore は、Kiro や Cursor AI などの統合開発環境(IDE)で動作する MCP サーバーを通じて、本番環境対応の AI エージェントを簡単に構築できます。開始にはわずか数分しかかかりません。そして、これらは簡略化されたツールではありません。堅牢なセキュリティを維持しながら、ゼロから数千のセッションへと即座にスケールできる、フル機能の本番環境対応ソリューションです。つまり、お客様のチームは AI エージェントが実証済みの基盤上に構築されていることを理解した上で、アイデアからデプロイメントまで自信を持って迅速に進めることができます。

AIエージェントの価値を実現するお客様事例

Cohere Health の規制された医療環境から、Ericsson の複雑でテクニカルなシステム、そしてソニーグループのグローバル規模での変革まで、先進的な組織がAgentCoreを活用して業界を超えた次世代のAIイノベーションを推進しています。AI 時代に成功する組織は、未来を完璧に予測する組織ではなく、進化する柔軟性を維持しながら実証された基盤の上に構築する組織でしょう。AgentCore を基盤とすることで、AI エージェントの展開と運用のための専用サービスにアクセスできるだけでなく、グローバル規模でセキュリティを確保しながら、企業の変革を支援してきた約20年の経験を持つパートナーも得ることになるでしょう。

世界最大の広告会社 Publicis Groupe に所属するEpsilon が、AgentCore を使用して大手ブランドのキャンペーンをパーソナライズし、革新する様子を以下のビデオでご覧ください。同社の Intelligent Campaign Automation ソリューションは、複数のチャネルにわたるキャンペーン設計、オーディエンスターゲティング、リアルタイム最適化を自動化し、実行時間の短縮と顧客ターゲティング精度の向上を大規模に実現しています。

インテリジェントなワークフロー自動化による製造業の変革:Amazon Devices Operations & Supply Chain チームは、AI エージェントを活用した製造アプローチの開発にAgentCoreを使用しています。この新しいアプローチの一環として、AIエージェントは製品仕様を使って協働し、手動プロセスを自動化します。あるAIエージェントは製品要件を読み取り、品質管理のための詳細なテスト手順を作成し、別のエージェントは製造ライン上のロボットが必要とするビジョンシステムをトレーニングします。その結果、従来はエンジニアリング時間に数日を要していたオブジェクト検出モデルの微調整が、高い精度で1時間以内に完了できるようになりました。この実証実験は、AI エージェントが初期製品要件から最終生産までの過程を効率化するスマートな製造へのビジョンの始まりに過ぎません。

AIエージェントによる医療判断の迅速化:医療現場では、1分1秒が重要です。Cohere Health® は臨床インテリジェンス企業で、保険者(Payer)、医療機関(Provider)の連携を強化し、ケア前後の臨床的意思決定のスピードと正確性を向上させることに焦点を当てています。同社の臨床トレーニングを受けたAIは、患者ケアへのアクセスを加速し、患者のアウトカムを改善し、医療機関の管理負担を軽減し、ケア継続全体にわたって医療サービス提供におけるエコノミクスを改善します。

例えば、Cohere HealthはAgentCoreを利用して、医療保険における医療の必要性審査の精度と効率を最適化するAI搭載コパイロットであるCohere Review Resolve™ を構築しました。Cohere Review Resolve™ は、臨床記録、患者メモ、FAX などの構造化データと非構造化データの両方を分析し、要求された治療の医学的必要性を検証するための証拠を迅速に特定して表示します。このコパイロットは、医療保険の審査担当者に事前承認リクエストの審査に向けて必要な臨床コンテキストを提供し、審査担当者の質問にもインテリジェントに対応します。

Cohere Health は、高度に規制された医療業界においてエージェンティックAIを初めて本番環境でデプロイするためのエンタープライズグレードのインフラを求め、AgentCore を選択しました。AgentCore で利用可能な包括的な監査証跡、拡張セッションサポート、複数時間にわたる複雑なワークフローを通じて履歴を維持する機能は、Cohere Health のユースケースに不可欠となっています。

Cohere Health は、Review Resolve™ が今後レビュー時間を30~40%短縮し、重要な義務付けられた処理時間を満たすのに貢献するだろうと予想しています。より迅速な意思決定は、患者にとりケアへのアクセスを早め、治療への順守を増やし、結果を改善し、コストを削減します。Review Resolve™ はまた、医療保険が臨床的決定の正確性を約30%向上し、それによって医療費の削減と患者のアウトカム改善に貢献する見込みです。

信業界におけるAIエージェント — 複雑なシステムの簡素化: 通信技術における世界的リーダーであるEricssonは、AIエージェントのデプロイにおける課題に取り組むためにAgentCore を使用しています。Ericsson で、ビジネスエリアネットワークにおけるAIと先進テクノロジーを担当する責任者であるDag Lindbo 氏は次のように述べています。「Ericsson において、私たちの3G/4G/5G/6Gシステムは数百万行ものコードで構成され、数千の相互接続されたサブシステムに及んでいます。これは、国レベルの重要インフラストラクチャにおける数十年にわたるエンジニアリングイノベーションを示しています。AgentCore は、データと情報の重要な融合を実現し、実世界のR&Dにおいて前例のない能力を持つAIエージェントを提供し、数万人規模の社員全体で二桁の価値創出につながるでしょう。また、AgentCore は任意のエージェントフレームワークを使用できるため、多くのチームとユースケースにわたって拡張する上で不可欠です」

エンターテインメント業界におけるエージェント活用:セキュリティ、オブザーバビリティとスケーラビリティを両立:世界有数のテクノロジー・エンターテインメント企業であるソニーグループでも、AgentCoreがインパクトを生み出しています。「Agentic AI は、これまでにないレベルでの業務の高度化と効率化を実現するために不可欠な技術です」とソニーグループ株式会社 D&Tプラットフォーム AI Acceleration 部門 部門長の大場 正博氏は述べています。「一方で、エージェンティックAI の活用には、多くの技術的課題があることも事実です。Amazon Bedrock AgentCore を活用することで、グループ全体のAgentic AI Platform を構築し、エンタープライズレベルのセキュリティ、オブザーバビリティそしてスケーラビリティを実現し、さらにクロスプラットフォームでのシームレスな AI リソースへの接続を実現しました。Amazon Bedrock AgentCore を 私たちの AI エコシステムの中核に置くことで、膨大なAIを管理・共有する能力を獲得し、確信と安全性を持ってAIトランスフォーメーションを加速することができます」

AgentCore は現在、アジアパシフィック(ムンバイ)、アジアパシフィック(シンガポール)、アジアパシフィック(シドニー)、アジアパシフィック(東京)、ヨーロッパ(ダブリン)、ヨーロッパ(フランクフルト)、米国東部(バージニア北部)、米国東部(オハイオ)、米国西部(オレゴン)の9つの AWS リージョンで一般提供され、お客様の世界規模での展開をサポートしています。AgentCore上で動作するように予め設計・構築されたAIエージェントとツールを提供する AWS Marketplaceを活用することで価値実現までの時間を加速することも可能です。

Amazon Bedrock AgentCoreをご利用の日本のお客様からのコメント
(日本語抄訳版における追加記載、五十音順)

株式会社ウェザーニューズ 執行役員 テクノロジー・プロダクト責任者 出羽 秀章氏
ウェザーニューズでは、BtoC 向けの「お天気エージェント」やBtoB 向け SaaS サービスにおいて、AIエージェントの β 版をリリースし、天気に関連するデータやソリューションの提供を開始しています。正式リリース後により多くのユーザーに安心してご利用いただくためには、性能・セキュリティ・ガバナンス・スケーラビリティといった観点が不可欠です。今回、Amazon Bedrock AgentCore のマネージドサービスを活用することで、これらの課題解決に向けて大きく前進できると考えています。新たに提供されるフルマネージドなサービス群と共に、お客様へこれまで以上に大きなビジネス価値をお届けできることを楽しみにしています。

TIS株式会社 IT 基盤技術事業本部 IT基盤ビジネス事業部長 黒田 訓功氏
当社のお客様には、安全性とガバナンスを重視するエンタープライズ企業に加え、AI活用による成長を目指す中堅・中小企業まで、幅広い層が含まれます。Amazon Bedrock AgentCore によるアイデンティティ管理、セッション隔離、運用の透明性の確保は、そうしたお客様にとって“安心して業務を任せられる AI エージェント”の基盤となります。応答の質、対話の一貫性、サービスの稼働安定性が整うと、利用者にとって使いやすく、心地よい体験となります。そのような体験が信頼を育み、選ばれ続けるサービスにつながると考えています。Amazon Bedrock AgentCore があるからこそ、TIS はお客様から信頼される AI エージェントソリューションの提供者として、これからも期待に応え続けられると確信しています。

株式会社ディー・エヌ・エー ML Ops Engineer 外山 寛氏
弊社ディー・エヌ・エーでは AI オールインを掲げ全社で AI 活用を推進していきます。その際に大規模言語モデル(LLM)を業務で安全に活用するためにデータセキュリティに配慮したシステム設計が重要になってきます。 Amazon Bedrock AgentCore ではそのようなシステム設計を支援するための機能が提供されていると感じます。 今後のさらなるきめ細やかなデータセキュリティ機能の発展に期待しています。

株式会社野村総合研究所 AI 担当 経営役 生産革新センター センター長 稲葉 貴彦氏
Amazon Bedrock AgentCore は、企業のデジタル変革を根本的に変える可能性を秘めています。多様なオープンソースフレームワークとの柔軟な連携や、独自の機能を提供する 7 つのサービスの選択肢、完全なセッション分離機能と最大 8 時間の長時間ワークロード対応により、より高度な業務での安定運用が期待できます。プレビュー版からの検証を経て、現在、社内外の複数プロジェクトで利活用を進めており、今後も検証を重ねながら、当社のお客様の競争優位性確保に貢献してまいります。

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