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日本企業のビジネスニーズに応える生成系 AI – Amazon Bedrock の可能性

2023 年 9 月 28 日に、生成系 AI を簡単に利用できるサービス Amazon Bedrock の一般提供が開始されました。またイベント同日、10 月 3 日 には東京リージョンでも Amazon Bedrock が利用可能になりました。Amazon Bedrock では、複数の高性能な基盤モデルが提供されており、プライバシーとセキュリティを維持しながら、生成系 AI アプリケーションの開発を始めるための幅広い機能群を提供します。

Amazon Bedrock の一般提供が開始されたことにより、多くのお客様が Amazon Bedrock を活用して生成系 AI アプリケーションの開発を開始すると考えています。本イベントでは、 お客様の Amazon Bedrock の活用を支援するために、Amazon Bedrock の機能や価値、ユースケースなど関して、AWS の 生成系 AI の VP である Vasi Philomin によるセッションを設けました。また実際に、Amazon Bedrock を活用した事例について、株式会社竹中工務店様、アクセンチュア株式会社様、富士ソフト株式会社様から紹介いただきました。

代表執行役員社長 長崎 忠雄によるご挨拶

アマゾン ウェブ サービス ジャパン 代表執行役員社長の長崎 忠雄から、4月から Preview で提供されてきた Amazon Bedrock に対する日本のお客様の強い関心、そして、一般利用に関する強い要望があったことが説明されました。Amazon が過去25年に渡って、AI/ML に対して投資をし続けていること、具体的には、フルフィルセンターにおけるロボット、Alexaなど、AI/ML を活用した事例を挙げ、Amazon Bedock によって日本のお客様がさらに高度な AI 活用ができる可能性について言及されました。

AWS Vice President Generative AI, Vasi Philomin

AWS の生成系 AI の Vice President である Vasi Philomin からは、Amazon Bedrock の一般提供に関して、Amazon Bedrock の特徴ととも説明されました。Amazon Bedrock の特徴として、インフラを管理することなく API 経由で基盤モデルへアクセスできること、ユースケースに合わせた基盤モデルを発見するための選択肢の提供、プライベートな環境でのモデルの Fine-tuning を紹介しました。Amazon Bedrock が東京リージョンでも利用可能になるというニュースも発表されました。

Amazon Bedrock の一般提供開始および東京リージョンでの利用開始については、Amazon Bedrock のモデルプロバイダーである Anthropic 社 CEO の Dario Amodei 様および Stability AI Japan 社 GM の Jerry Chi 様からのビデオメッセージもありました。

Amazon Bedrock を利用して、生成系 AI のための基盤モデルにすぐにアクセスすることができますが、生成系 AI をアプリケーションに統合するためには、さまざまなデータやアプリケーションとの連携が必要になります。このような課題に対して、生成系 AI のためのデータソースの管理や、API を呼び出して業務を自動で実行するための Agents for Amazon Bedrock もプレビューで提供されています。

Amazon Bedrock 以外にも、生成系 AI によってコードを生成し、オープンソースに類似したコードにフラグを立てるなどの機能をもった Amazon CodeWhisperer や、社内のコードベースに基づいてそれらを実現する Amazon CodeWhisperer customization capability (近日公開予定) についても説明がありました。

最後に生成系 AI を実際に活用していくまでのステップとして、(1) 生成系AIの正しいユースケースを選択して、(2) スキルレベルが様々な開発者のスキルアップを行い、(3) Amazon Bedrock によってユースケースの検証 (PoC) を始める、という3ステップが紹介されました。AWS では生成系 AI のためのスキルアップのためのコースを提供しています。

株式会社竹中工務店 執行役員 デジタル室長 博士(工学)岩下 敬三 様

竹中工務店 岩下様からは、建設業における Amazon Bedrock の活用検証について説明をいただきました。建設業界における課題として、生産性の向上が必要とされており、竹中工務店様はデジタル化への取り組みを進めています。具体的な取り組みとして、BIMの導入、AIによる予測、BIによる状況の見える化、デジタルツインの実現などをご説明いただきました。特に生成系 AI という観点では、知識や経験を集約して全従業員の相談や、若手の育成に活用するデジタル棟梁の実現を目指されています。デジタル棟梁は、一般的な知識をもちつつも、棟梁として社内の情報や経験を蓄える必要があります。デジタル棟梁を実現するために、一般的な知識の部分を Amazon Bedrock の基盤モデルを利用して実現し、社内のデータソースから検索して利用する RAG (Retrieval Augmented Genetation) を構築・検証されています。具体的な検証結果として、暑い時期におけるコンクリートの取り扱いについて生成系AIに問い合わせた結果をご紹介いただき、RAG の有効性をご説明いただきました。

アクセンチュア株式会社 執行役員 ビジネス コンサルティング本部
AIセンター長 博士(理学)保科 学世 様

Accenture 様では現在、生成系 AI に関する取り組みを進められており、生成系 AI のための基盤として AWS を利用されています。すでにAmazon CodeWhisperer の利用によって生産性向上を実現されていることが、生成系 AI 活用の成果として公表されています。業務改革の経験を豊富にもつ Accenture 様では、大規模言語モデルがどのような業種に影響があるかを分析されており、あらゆる業界で適用可能であると説明されました。生成系 AI を活用する手段として、Amazon Bedrock は企業向けに適用できるサービスとして評価いただいています。特に、AWS との連携やセキュリティ、Amazon以外の複数の基盤モデルの選択肢、性能とコストのバランスの良さについて言及いただきました。Accenture 様では、様々な AI の機能を利用できる AI Hub Platform をすでに構築済みで、生成系 AI を活用しつつも、生成系 AI だけでは解決できないタスクについては、AI Hub Platform で提供される機能と組み合わせて解決してくことを述べられました。それ以外にも Accenture 様が提供できる価値として、業務改革や Responsible AI に関する経験があり、AWS および Amazon Bedrock を活用して、これらを提供していくことが述べられました。

富士ソフト株式会社 執行役員 ソリューション事業本部 副本部長 山本 祥正 様

富士ソフト様では、機械学習に関する取り組みを進めており、機械学習に関する資格取得者が多数在籍、今年の AWS Summit Tokyo では DeepRacer Summit Circuit では3位に入賞する実績を残されています。Amazon Bedrock に関しても、プレビュー期間中に検証を進めていただき、特にエンタープライズ検索サービスである Amazon Kendra とあわせてRAG を構築されています。Amazon Bedrock 自体の精度の良さを評価いただきつつも、RAG によって、大規模言語モデルにおける Hallucination を抑えることで、より安全に利用できると評価いただきました。Amazon Kendra はデータソースを指定すれば利用可能で、データの正規化が不要であり、運用コスト面でもすぐれていると述べられました。さらに、もう一つのユースケースとして、デジタルツインにおける生成系 AI 活用の実証実験についても紹介いただきました。AWS IoT Twinamker 上に、Amazon Bedrock で生成した工場の状況に関する説明を表示し、管理者が状況を容易に把握することを可能にしています。

まとめ

本イベントでは、AWS の 生成系 AI の VP である Vasi からAmazon Bedrock に関する一般提供の開始と東京リージョンでの利用可能についての発表があり、様々な業種における生成系 AI のユースケースや検証の状況について、竹中工務店様、アクセンチュア様、富士ソフト様からご紹介いただきました。イベント終了後のネットワーキングにも多くのお客様が参加され、 Amazon Bedrock の利用について活発に議論いただいたり、今後の機能拡張に関する期待についても意見をお寄せいただきました。AWS ではお客様のフィードバックにもとづいて Amazon Bedrock をより便利にし、お客様のイノベーションをサポートします。