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Amazon Monitron とパトライト社の信号灯で、設備異常の予兆を逃さない保全を実現
2024年1月31日から3日間開催された IIFES (Innovative Industry Fair for E x E Solutions) にて、パトライト社のブースで Amazon Monitron とパトライト社製のネットワーク制御信号灯 NHV シリーズとの連携による現場改革の事例が紹介されました。このソリューションによって、設備異常の予知を逃さずに、より確実に現場の対応を実現できるようになります。展示物はパトライト社と AWS の協力で制作され、このブログでは両社によるユースケースとデモの作り方を紹介させていただいています。現場で Amazon Monitron による予知保全を検討されているお客様に参考になれば幸いです。
IIFES では、ブースにご来場されたお客様は「予知/予防保全」「人手不足での巡回点検削減」「遠隔監視」用途でラインの変更不要で設置できる点に興味を示していただきました。
予知保全の異常検知を見逃さない現場へ
Amazon Monitron とは、回転機器の温度や振動データを Amazon Monitron センサーが収集し、機械学習を使って分析し、潜在的な障害を検知してダウンタイム発生を削減するために役立てるサービスです。パトライト社製の信号灯と組み合わせることで、設備の異常検出の見える化を実現できます。この展示で紹介した事例では、設備の異常状態を信号灯の色と音声で工場の現場に知らせています。Amazon Monitron サービスからはアプリとメールで通知することができますが、お客様によって業務用にスマートフォンを持たなかったり、メールを常に確認できない状況だったりします。工場で多くの実績を持っていて、現場の運用に欠かせないパトライト社製の信号灯を利用することで、ビジュアルや音声による通知を行うことができ、より確実な設備保全につながります。
NHV シリーズと AWS の IoT サービスとの親和性
パトライト社製信号灯 NHV シリーズは、パソコンなど追加の機器を必要とせずに、Ethernet ネットワーク経由で直接に AWS IoT Core と連携できる特徴を持っています。数ステップの簡単な設定で AWS IoT Core と接続できるので、導入が極めてシンプルです。また、Text to Speech 機能によって、光と音だけではなく、AWS IoT Core 経由で送信したテキストを読み上げることができ、より直感的にわかりやすい警告を現場の作業員に伝達することができます。
デモ構成の紹介
ここからは、今回の展示で実装したデモの構成のテクニカルな面を紹介します。仕組みとしては、Amazon Monitron のデータストリームから設備異常の予知結果を取得して、AWS IoT Core 経由でリアルタイムに信号灯に送信する構成になっています。サーバレスコンピューティングサービスである AWS Lambda によって Amazon Monitron から送られる設備異常の予知の状態変化イベントをキャッチして、AWS IoT Core 経由で信号灯に適切な表示状態と発声する文章を送信しています。
Amazon Monitron のデータ連携
Amazon Monitron には Amazon Kinesis Data Streams に計測値と状態変化のイベントを送信する機能があります。この機能を使って、発生するイベントを AWS Lambda が処理しリアルタイムにアクションを起こすか、自社の設備保全管理システムにデータを連携したり、さらなる分析のために Amazon S3 に蓄積することができます。今回のデモでは、AWS Lambda からリアルタイムに AWS IoT Core 経由で信号灯に状態変化を連携しました。
AWS Lambda でのイベント処理
今回のデモでは、状態変化を表す assetStateTransition というイベントタイプを解析して、イベント内の newState 値を参照して信号灯にアクションを送信します。Amazon Monitron が送信するイベントの詳細は「Amazon Monitron Kinesis データエクスポート v2」をご参照ください。以下、Python 言語のコードの例を表します。
monitron_event 変数は Amazon Monitron の v2 スキーマ形式のイベントを受け入れ、assetStateTransition イベントが発生した時に、eventPayload 要素には今回解析の対象となる assetState がセットされます。assetState の newState の値に合わせて適切な信号灯の色を設定する制御ロジックを呼び出します。例えば、newState が HEALTHY の場合は、set_nhv_state_healthy を呼び出し、WARNING の場合は、set_nhv_state_warning を呼び出します。
また、特定の newState の時だけに(この例では WARNING と ALARM)、信号灯にメッセージを発声させるためにアセット名を含んだ警告メッセージ message を生成して、色制御のロジックのパラメータとしてそのメッセージ引き渡します。
信号灯のカラー設定と発声
NHV シリーズは追加のサーバを設けずに、直接 AWS IoT Core と連携できます。利用する機能は AWS IoT Device Shadow と MQTT 通信です。Device Shadow とは、デバイスが常時に接続していなくても、クラウド側にデバイスのプロパティのコピー (シャドウ) を保存して、お互いの値の変更が双方向に伝搬させる仕組みです。この機能によって、信号灯の色の状態変更が可能です。また、MQTTトピック経由で、色の状態の変更だけではなく、信号灯のボタンの操作イベントの取得や、信号灯への Text to Speech のテキストの送信も可能です。今回のデモでは、Device Shadow を使って、newState の値に合わせて信号灯の色の状況を変更しています。
以下は、状態の変化に応じて信号灯に色の変更やテキストの発声を指示するコードの例です。
このコード例では、正常な状態を設定するもので、そのために緑色だけを点灯させて、他の黄色と赤は消灯になるように、Device Shadow の desired 要素に “led_green” を “1” に設定し、他は led_ 要素を “0” にしています。desired 要素は AWS IoT Device Shadow の仕様で定められていて、led_green などの led_ 関連の要素は NHV の仕様で定められています。
また、Device Shadow のアップデートをかけた後に、発声するメッセージがあれば、そのメッセージを IoT トピック経由で信号灯の Text to Speech 機能に送信することで、信号灯から音声が流れます。
まとめ
このブログでは IIFES のパトライト社のブースで紹介された Amazon Monitron と信号灯 NHV シリーズとの連携によって、生産設備の予知保全の異常通知を現場が逃さないように信号灯の色と音声の通知が有効であると紹介しました。また、参考に今回のデモの構成の詳細な動作を説明しました。
今から始める
自社の現場への導入にご興味のある方は、AWS またはパトライト社までお問い合わせください。
AWS のサービスに関するお問い合わせは、「AWS に問い合わせする」からお願いします。
パトライト社製品に関するご質問は、パトライト社のサイトからお問い合わせください。
著者について
シャルノ ミカエル
エンタープライズ技術本部 小売・消費財 第一ソリューション部 ソリューションアーキテクト
AWS では消費財のお客様の製造ソリューションに限らず、スマートファクトリー関連の活動をしています。今回の展示物のデータ連携の開発を担当させていただきました。