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Amazon Quick Event 東京リージョンローンチ記念イベント 開催報告
2026 年 3 月 27 日、Chat Agent や Flows をはじめとする Amazon Quick の AI Agent 機能の東京リージョンローンチを記念したイベント「Amazon Quick Event」が開催されました。本イベントでは、Amazon Quick の製品紹介や Amazon 社内での活用事例に加え、AWS パートナー企業やお客様による具体的な導入事例が共有されました。会場には多くのお客様にお越しいただき、オンラインでも多数の方にご参加いただきました。本記事では、イベントの模様をレポートします。
オープニングご挨拶
イベント冒頭では、 AWS Japan Data & AI 事業統括本部 の井形健太郎がオープニングの挨拶を行いました。

本イベントの趣旨として、Amazon Quick が東京リージョンで利用可能になったことを紹介し、参加者の皆様への感謝を述べました。
Amazon Quick のご紹介と Amazon 内部での活用紹介

AWS Head of GTM, APJ-C, AI & Agents のMichael Armentano は、ハーバードビジネススクールの Karim Lakhani 教授の言葉「AI を活用する人間が、AI を活用しない人間を置き換える」を引用し、Amazon Quick が目指す世界観を示しました。生成 AI がチャットボットから単一エージェント、そして複数エージェンティックシステムへと進化してきた流れを解説し、Amazon Quick が提供する 4 つのチームメイト(インサイトアシスタント、データアナリスト、PhD リサーチャー、オートメーションエキスパート)を紹介しました。Amazon Quick は AWS コンソールだけでなく、Word、Outlook、Slack などのプラグインからもアクセス可能です。

続いて AWS Sr. WW Specialist, Amazon Quick, WWSO Generative AIの Jihwan Ko が、Amazon 社内で 20 万人以上が Amazon Quick を利用し、30 万以上のワークフロー自動化を実現している実績を紹介しました。導入にあたっては、ステップバイステップの展開、ユーザー理解に基づくユースケース選定、チェンジマネジメントの徹底、社内ユースケースライブラリの構築という 4 つの戦略を実行しました。具体的な事例として、Amazon カナダの税務チームが Amazon Quick を使い、複数システムに散在していた税務データを統合ダッシュボードに集約し、コードを書かずに情報の可視化と分析を実現した事例を紹介しました。
Chat Agent から始める Amazon Quick におけるデータの活用
AWS Japan 技術支援本部 テクニカルアカウントマネージャー の服部 洋明 は、EC サイトを題材にした 3 つのデモを通じて、チャットエージェントの活用を実演しました。デモ 1 の売り上げ分析では、ダッシュボードの概要把握から時間帯別・日次の特徴分析、さらに分析手法の提案まで、チャットエージェントとの対話で段階的に深掘りしていく様子を示しました。Amazon Quick リサーチを用いて本格的な分析レポートを自動生成する流れも紹介しました。

デモ 2 のサポートデスク対応では、カスタムエージェントを使い、注文ステータスの確認からマニュアル参照、Slack への通知、顧客への一報作成、Salesforce へのケース登録までを Amazon Quick の中で一気通貫で完結する内容を紹介しました。

デモ 3 のシステム運用では、アラートの一次調査や AWS コスト分析をチャットエージェントで効率化する様子を紹介しました。服部は「Amazon Quick の中で完結できていることが重要」と強調し、Amazon Aurora、Amazon CloudWatch、Google Drive、Salesforce、Slack など多様なコネクターとの連携を紹介しました。
Flows と Automate でデータ活用を自動化し効率アップ
AWS Japan 技術統括本部 Sr. Solutions Architect 加藤 菜々美は、Amazon Quick の Flows と Automate を使ったデータ活用の自動化をデモで紹介しました。

Flows のデモでは、商品の売り上げ分析を題材に、Amazon S3 や SharePoint 上の散在データを専門エージェントが横断的に活用し、週次売り上げの分析からリスク判定、Notion への自動アラート通知、Amazon Quick リサーチによる深い分析レポート生成までを、ノーコードで一つのフローとして構成する様子を示しました。

Automate のデモでは、受注時の顧客与信リスク判定を題材に、REST API による基幹システム連携、AI エージェントによる名寄せとリスク評価、構造化アウトプットによる正確なデータ引き継ぎ、そしてリスクレベルに応じた並列処理(ローリスクは自動承認、ハイリスクはヒューマン・イン・ザ・ループで人間が介入)を実演しました。加藤は「まず Flows で小さく始めて、Automate で本格的な自動化にチャレンジしてほしい」とまとめました。
AWS の AI エージェントと一緒にチャレンジする車両保全 DX
東急電鉄株式会社の清水 想太 氏からは、鉄道車両保全業務における Amazon Quick 活用事例を紹介いただきました。東急電鉄様は 2024 年 3 月 25 日に公表した 2024 年度 ~ 2026 年度中期事業戦略において、データ活用による DX(CX・EX・CEX)推進を掲げています。車両部では、これまで取得してきたデータの分析による故障予防と、ベテラン社員の暗黙知の形式知化を目指し、車両の走行データや故障履歴データの活用に 2023 年からチャレンジをしています。一方でデータ分析には業務経験やシステム知識、 BI ツール習得、データ集計等の負荷が伴い、高いハードルが存在しました。今回 Quick を活用し、簡単なデータクレンジングやグラフ化、仮説検証を自然言語を用いて簡単に自動化することで複数のユースケースを試みています。以下はご紹介内容の抜粋です。
(1)故障履歴のテキストデータから AI が装置名を推定・補完し、機器分類表を根拠に正しくカテゴリー分け。これまではベテラン作業員が時間をかけていた作業を約 5 分で完了し、故障による遅延防止や安全性を考慮した保全優先度の算出をサポート
(2)別の AI ツールも組み合わせながら、車両のコンプレッサーデータ 378 万行を分析し、蓄圧時間の乖離から故障兆候を把握する検証
清水氏は「Amazon Quick を使うことで分析のゴールイメージが早期に見え、それが学習意欲の向上につながる」と述べられ、今後は AI とベテランの経験を組み合わせた「共存型のデータ駆動保全」の実現を目指されています。
業務改革を実現する Amazon Quick 戦略 〜個人の知見を組織知へ〜
株式会社ポーラ・オルビスホールディングスの佐々木 哲哉 氏からは、Amazon Quick を組織変革の武器として選択した戦略についてご紹介いただきました。佐々木 氏は、AI 活用において「個人の生産性向上」にとどまることの危険性を指摘され、RPA 導入時の経験も踏まえ、組織の生産性に貢献できるツールとして Amazon Quick を選択いただきました。
また、Amazon Quick を選択いただいた理由を4つ挙げていただきました。第一に、ほぼすべてのシステムが AWS 環境にあるため Amazon Quick から直接データに接続できるシームレスなデータ連携が可能ということ。第二に、Amazon QuickSight の統合により「観測→解釈→実行→記録→再学習」のサイクルを回し、個人の学びを組織知へ変換できる点。第三に、お客様データへのアクセスを厳格に制御する AWS のセキュリティ設計。第四に、最適なモデル選択による将来のコスト最適化の可能性です。
2026 年度はまず 500 名に教育とセットで展開し、2027 年には本社従業員への展開を目指されています。KPI を起点に部門の枠を超えた業務プロセスの一気通貫の変革を目標とされています。
Amazon Quick で実現する”脱管理”と CRM の未来
ソフトブレーン株式会社の富岡 大裕 氏は、国内シェア上位の CRM/SFA 製品 eセールスマネージャーに Amazon Quick を組み込んで顧客に提供する立場からの発表をされました。同社は 2019 年から Amazon QuickSight の SaaS 埋め込み機能を活用し、ギャップ分析や行動マネジメントなどの営業データ可視化基盤として組み込みを行っており、現在は月間 15 万回以上利用されていると話されました。

ユーザーからは Amazon Quick を使っていると意識されないレベルでシームレスに統合されているとフィードバックがあるとのこと。また、SaaS に Amazon Quick を組み込めるレベルで豊富なインターフェースが用意されているため、企業が Amazon Quick を単純利用する際にも将来的な拡張に対応できる安心感があると強調されました。
同社では「オートインプット・ジャストアウトプット(AI-JO)」をコンセプトに、AI 議事録からの商談情報自動反映や見積書のドラッグ&ドロップによるデータ展開など、入力の自動化と分析の即時活用を実現されています。
富岡氏は、Amazon Quick のチャットエージェントで「今期の予実を出して」と話しかけるだけでグラフが自動生成される世界を示し、SFA が「脱管理」のツールへと進化すると展望されました。
複数社パートナー企業による Amazon Quick に関する支援内容のご紹介
後半のパートナーセッションでは、5社のパートナー企業がライトニングトーク形式で Amazon Quickの活用支援サービスを紹介しました。なお、本イベントでご紹介できなかったパートナー企業の Amazon Quick 活用支援サービスについては、本記事末尾にリンクを掲載しておりますので、そちらもぜひご覧ください。
KDDIアイレット株式会社: Amazon Quick で加速させる現場の DX(北野涼平氏)
KDDI グループの一員として、Amazon Quick の標準機能と独自のサーバーレス構成を組み合わせたデータ利活用アプローチを紹介。現場のワークフローまで見据えた設計を強みとしています。長崎ブルーエコノミー様のブリ養殖 DX 基盤では、IoT センサーデータの可視化、Bedrock 連携による養殖場状況の言語化、画像のセキュアな組み込みを実現した事例が共有されました。
株式会社サーバーワークス: 痒いところに手が届くサーバーワークスの Amazon Quick 活用支援(村上博哉氏)
Amazon Quick の多彩な機能から顧客のやりたいことに最適な組み合わせを提案し、すぐに使える実践的なユースケースによるジャンプスタート支援を紹介。建設業・製造業向けの入札情報の自動チェック・優先度付けや、請求書などの書類チェック業務の自動化などのユースケースに加え、初期費用無償の伴走支援キャンペーンも案内されました。
株式会社電通デジタル: 可視化の先へ — Amazon Quick が変えるデータ分析の深さ(田中淳朗氏)
電通グループの総合デジタルファームとして、デジタルマーケティング領域で散在するデータの統合・分析を Amazon Quick で実現する支援を紹介。観光情報サイトの多言語チャットボット分析で Amazon Quick リサーチにより数十分で示唆を導出した事例を共有し、ライト・ミドル・フルコンサルの 3 段階の支援プランを案内されました。
株式会社 TOKAI コミュニケーションズ: ハイブリッドクラウド活用術(山本祐也氏)
自社の専用接続回線「ブロードライン」を活用したハイブリッドクラウド構成で、オンプレミスのデータを FSx for NetApp ONTAP の S3 アクセスポイント経由で Amazon Quick に連携するアーキテクチャを紹介。静岡・東京・大阪・名古屋・岡山の営業拠点を活かした伴走型サポートと、接続回線から運用までワンストップで対応するパッケージも案内されました。
富士ソフト株式会社: AI カメラと Amazon Quick で実現する新たな価値(吉田祐史氏)
AI カメラソリューション「ビジョン AI ナビ」と Amazon Quick の連携を紹介。カメラや IoT センサーで人・設備の動きを検知し、異常検知からチャットエージェントによる対処提案、レポート自動生成、Automate/Flows によるフロー管理、ナレッジベースによるトラブル対応の標準化まで、検知のその先の自動化を実現する構成が示されました。
クロージング
最後に、 AWS Japan Data&AI 事業統括本部 の井形 健太郎がクロージングを行い、東京リージョン GA の技術的意義を補足しました。

今回の GA により、Amazon Quick の推論処理通信が国内に閉じるようになり、企業データを生成 AI で活用する際のセキュリティ・コンプライアンスが大きく向上しました。

ただし、インターネット検索機能のみ海外リージョンで処理されるため、必要に応じて機能をオフにすることが可能です。日本語サポートについては UI・チャット入力・対象データいずれも対応済みで、実用上快適にご利用いただけるレベルであると説明しました。また、生成 AI 実用化推進プログラムとして、お客様の生成 AI の利活用を加速させるための支援プログラムとして、モデルカスタマイズコースとモデル活用コースの 2 つを紹介しました。
パートナー Expo
今回ライトニングトークに参加いただいたパートナー企業5社による、それぞれの強みを活かしたAmazon Quickの活用のデモンストレーションを行いました。
アイレット:デザインからインフラまでワンストップ、現場のワークフローを見据えた一気通貫の支援
サーバーワークス:痒いところに手が届く実践的なユースケース提供と伴走支援
電通デジタル:最大規模のデジタルファームとして、データを「動かす」ための段階的支援
TOKAIコミュニケーションズ:ハイブリッドクラウドと地方企業への伴走型支援
富士ソフト:エッジとクラウドの両面から AI カメラ × Amazon Quick で現場 DX を実現


おわりに
本イベントでは、 Chat Agent や Flows をはじめとする Amazon Quick の AI Agent 機能の東京リージョンローンチ という節目に、製品の全体像から社内活用事例、お客様による実践的な導入事例、そしてパートナー企業による支援サービスまで、幅広い内容が共有されました。鉄道車両の保全 DX、化粧品企業の組織変革、CRM/SFA への組み込みなど、業種を超えた多様なユースケースが紹介され、Amazon Quick がビジネスの現場で具体的な価値を生み出しつつあることが実感できるイベントとなりました。
AWS ジャパンは、今後も Amazon Quick をはじめとする生成 AI サービスの活用支援を通じて、お客様のビジネス変革を後押ししてまいります。
本ブログは、テクニカルアカウントマネージャーの服部洋明が担当しました。