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【開催報告】Amazon QuickSight事例祭り ~クラウドBIを使ったデータビジネス~

2020年12月9日に「Amazon QuickSight 事例祭り ~クラウドBIを使ったデータビジネス~」を開催いたしました。今回の事例祭りではAmazon QuickSightを社外に向けて提供するユースケースに焦点をあて、登壇者の東日本電信電話株式会社とソフトブレーン株式会社からお話しいただきました。本ブログでは各発表内容をご紹介します。また、関連資料はこちらからダウンロードいただけます。

Amazon QuickSightで始めるデータビジネス

アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社 アナリティクス事業本部 事業開発 伊東 大騎

 

このクラウド時代において益々ビッグデータの価値は高まっており、その活用方法に各社が頭を悩まされています。社内のデータ分析に活用するのは定番ですが、データを社外に開放することで企業価値をアピールする動きも広まってきています。

蓄積されたデータを社外に展開する
一方、こういった仕組みを内製で実現するのは難易度が高いです。クラウドBIサービスのAmazon QuickSightであれば、社外提供におけるセキュリティ要件を満たしつつ、豊富な分析機能を安価かつ迅速に提供することが可能です。

データの外部提供における要件

QuickSightを利用した小売店むけ顧客レポートサービス

東日本電信電話株式会社 設備企画部 小暮 哲平 様

最初はNTT東日本の小暮様にご登壇いただき、小売店むけ防犯システムにおけるデータの可視化・分析サービスについてお話しいただきました。

現状の小売業における万引き被害は深刻で、年間4兆円以上もの影響があると報告されています。そこで、小売店舗での万引きを阻止すべく、NTT東日本ではアースアイズ社のAIカメラを駆使した防犯システム「AIガードマン」を運営しています。AIカメラで不審行動を検知し、それを店舗スタッフのスマホに通知することで、いち早く不審者にお声がけし万引きを防ぐという仕組みです。また、サポートセンターでは店舗からのお困りごとやデータレポートの提供に対応しています。

従来はサポートセンターからExcel形式のレポートサービスを顧客に提供していましたが、アースアイズ社のデータベースからExcelを抽出および加工し、各顧客にメール送信という手作業が発生したため、1週間に1度の対応が限界でした。他にも、メール誤送のリスク・レポート作成におけるExcel機能の限界・別店舗との比較が困難、のような課題もありました。そこで、BIサービスの導入により稼働を削減しつつ、エンドユーザーに対するレポート価値を高めるという取り組みを開始しました。

選定においては、レポート作成における機能性・マルチテナント管理・セキュリティ・コストを最重要指標としていました。Amazon QuickSightの場合、アースアイズ社とのデータ連携(AWS同士)が容易・AWSプラットフォームによる拡張性・安価(閲覧者は上限$5/月)というメリットがあり導入を決定しました。検討を開始してから約5カ月でリリースとなりました。

AWS構成として、まずアースアイズ社のデータベースからAmazon CloudWatch Eventsで起動したAWS Lambdaによりデータを抜き出しNTT東日本のAmazon S3に保存しています。Amazon S3上のデータは顧客の契約IDごとでプレフィックスを分けて管理し、その単位でAmazon QuickSight上においてもデータセットとダッシュボードを作成しユーザーに共有しています。

今回はAmazon QuickSight上でユーザーを追加するのではなく、AWS IAMユーザーにAmazon QuickSightのポリシーを付与して運用しています。理由はAmazon QuickSightを運用するうえでセキュリティチームから2点の要件を提示されたためです。多要素認証(MFA)を設定することと認証および操作ログを取得することです。これらはAWS IAMユーザーとして管理することで実現しました。AWS IAMユーザーであればMFAの設定が簡単ですし、必要なログもAWS CloudTrailに記録されます。従来の方法では、どのユーザーがレポートをどれくらい使っているか把握する術がありませんでしたが、今は各ユーザーのダッシュボード活用状況もAmazon QuickSightで分析できています。

新規ユーザーを追加する際の流れも自動化しています。まずNTT東日本のエンジニアが新しいオーダを投入すると複数のAWS Lambdaが起動し、各種API使ってIAMユーザー・マニフェストJSON・データソース・データセット・ダッシュボード・Amazon QuickSightユーザーの作成をAWS Step Functionsで順番に実行しています。これはAmazon QuickSightで提供しているAPIが豊富であるからこそ実現できた運用フローとなります。

次にマルチテナント管理です。要件として、まずダッシュボードは各社の店舗単位で存在するため、各店のユーザーは自店の情報のみ閲覧可能です。一方、エリアマネージャーは店舗またいで閲覧する必要ありますが、他社のダッシュボードは閲覧できません。最後に、NTT東日本サポートサービスのユーザーに関しては各社ダッシュボードを横断的に閲覧できる必要があります。このような権限設定は従来のExcelおよびメール送信では困難でしたが、Amazon QuickSightの場合、グループによる管理で容易に実現できました。1ユーザーは複数グループに所属できます。

Amazon QuickSightにした結果、レポート内容も充実させることができました。円グラフによる売り場ごとの検知状況・ゲージグラフと散布図による声かけ率の分析・ヒートマップによる売り場ごと声かけ状況の分布など、視覚的に表現することで数字への理解が容易になりました。もちろん既存レポートにあるグラフも踏襲して提供しています。Amazon QuickSightは最新データをレポートに自動反映することも可能であるため、レポートの更新頻度は従来の週1から毎日に改善することができ、かつ都度データを抽出・加工・送信するという手間も省けました。

まとめると、Amazon QuickSightの採用によりレポート作成における稼働を削減し、レポート内容の品質も大幅に改善することができました。また、Amazon QuickSightのAPIと他AWSサービスを活用することで導入を効率的に進めることができました。今後、AIガードマンの販売が進む中で、4年後には年750万円の稼働削減効果が見込めると考えています。Amazon QuickSightに期待する点としてはフロアマップの上にデータを重ねる機能とより柔軟なAuthor料金が追加されることです。そうすることでより豊富な分析サービスを顧客に提供しやすくなると考えています。

 

営業支援SaaSにおけるデータ分析サービスの活用

ソフトブレーン株式会社 製品開発部 矢田 和人 様

次はB2B SaaSへのAmazon QuickSight組み込み事例をソフトブレーンの矢田様よりお話しいただきました。

ソフトブレーンは営業イノベーションを軸にサービスを展開しており、主力事業として営業支援システム(CRM/SFA)のeセールスマネージャーRemix Cloudがあります。このサービス上におけるデータ活用でBI機能を採用していますが、課題がいくつかありました。まずデフォルトで自社開発のグラフレポート機能を提供していますが、機能性が限定的であり、コア機能の開発を優先していることから中々BI開発にリソースを投入できませんでした。そこでサードパーティの高機能BIと連携してオプション提供していましたが、高額のため一部顧客にしか導入できておらず、かつ分析をするにはクライアントアプリのインストールが必要であるため利便性に課題がありました。また、コスト削減のために最安価プランを検討するも機能が限定的でやりたいことが実現できませんでした。

そんなときAmazon QuickSightに出会い、必要としている要件を満たしていることに気付きました。まず分析機能と表現力は十分揃っており、機能アップデートが速いため将来性にも期待できました。全機能がWebブラウザで完結するというのも大きいポイントでした。利用料金は安価であることから末端の営業マンまで導入しやすくなります。導入までの道のりにおいてAWS Japanおよび本国のAmazon QuickSight開発チームから手厚い支援も得られ、一緒に良いモノを作っていくことができました。

Softbrain Quicksight 1
本件で特に重要視していたのが、Amazon QuickSightをシームレスにeセールスマネージャーへ組み込むという点です。顧客に異なるシステムを使っていることは意識させるべきではないので、1つの仕組みとして使いやすくする必要がありました。その実現にはAPIの充実が必須であるため、Tokyo Summit 2019にてプロジェクトを発足以来、Amazon QuickSightチームとの密なコミュニケーションを通じて要件を洗い出し、ベータ版の機能開発を開始しました。10カ月におよぶトライ&エラーを経て、まずは社内での本格利用を開始し、更に機能・性能改善をしたうえで正式にAmazon QuickSightを組み込んだeセールスマネージャーをリリースしました。

このベータ開発期間において3つの課題がありました。まず当初はAPIが不足していたため、機能開発をしては実際に組み込んで動作確認をするという繰り返しで解決しました。また、社内利用において1つのダッシュボード上で複雑な関数を多用すると処理が遅くなるという課題がありましたが、それをフィードバック後、迅速に改善が進み性能が4倍以上も改善しました。もう1点、プロジェクト発足当初はAmazon QuickSightのSaaS組み込み事例がなかったという点も課題でした。ですが、顧客にとって使いやすいことが全てであり、その点においてAmazon QuickSightが最適だと確信したため、チャレンジ精神を持って進める決断をしました。

eセールスマネージャーではAmazon QuickSightのAPI機能(ネームスペースによるマルチテナント管理、ダッシュボード組み込み、ユーザー追加、シングルサインオンによる自動ユーザー認証、データソース・セット連携)をふんだんに使い連携しています。まず新顧客にeセールスマネージャーのアナリティクスライセンスを導入時、ネームスペース・データソース・ユーザーグループを自動的に追加します。また、顧客側で社員にライセンスが付与される度にAmazon QuickSight側でもユーザーを作成しグループに追加するという制御をしています。次に、eセールスマネージャーでの帳票作成時、データソースを作成するとAmazon QuickSightにも追加されます。Excelファイルをアップロードする場合はAWS Lambdaを起動してCSVファイルに変換後、Amazon S3へ格納という方法を取っています。Amazon QuickSightの分析画面へ遷移する際はAPIでトークンを発行してシングルサインオンしています。分析を作成後はダッシュボードを公開します。分析およびダッシュボードの一覧はAPIを使ってeセールスマネージャー側で表示しており、クリックでダッシュボード画面に遷移する際はその組み込みURLを取得します。

全体の構成として、まず顧客の会計・基幹システムに蓄積されているデータをeセールスマネージャーに取り込むと自動的にAmazon S3へ格納されるようになっており、Amazon QuickSightで扱いやすいようにデータベースへも保存しています。

Softbrain Quicksight 2

組み込みの画面イメージです。

Softbrain Quicksight 3

Amazon QuickSightの導入効果として、まず提供価格が安くなったため、すべてのお客様へ提案する標準BIオプションにすることができました。また、全機能が自社製品のWebアプリケーション上で完結することから、顧客の利便性が劇的に改善しました。BIをサーバーレス化したことで運用・改善の負担がなくなり、より自社のコア領域に注力できるようになりました。

計1年4カ月のプロジェクトとなりましたが、AWSからの手厚い支援もあり無事にリリースを実現することができました。今後の展望として、新規顧客に対してはAmazon QuickSightのオプションサービスを標準提案していき、価格で足踏みしていた既存顧客にも展開していく予定です。Amazon QuickSightに関しては、ピボットテーブルのようなビジュアルやSaaS事業者向けの機能・料金体系が更に進化していくことを期待しています。

ソフトブレーン株式会社の公開事例はこちらでもご紹介しています。

 

今年のQuickSight機能アップデートを総まとめ!

アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社 アナリティクス事業本部 事業開発 伊東 大騎

 

Amazon QuickSightは猛スピードで進化しており、今年も多くの機能をリリースしました。計65機能以上と1週間に1機能以上のペースで機能を追加しました。その対象は可視化・分析機能からセキュリティ・運用機能まで幅広く、中でも組み込みアナリティクスの使い道が増えました。まず組み込んだ状態でもAuthor機能を扱えるようになったため、SaaSにおけるリッチな分析サービスの提供が容易になりました。それに付随してネームスペースやカスタムAuthor権限のようなセキュリティを強化する機能もリリースしました。また、匿名アクセスによるサポートも開始したため、Amazon QuickSight上でのユーザー登録および認証を設定することなく使い始めることが可能です。今後、あらゆるシーンにおいてBIがコア機能として組み込まれることを見据え、より充実した分析サービスを簡単に展開できること目指しています。

まとめ

今回もAmazon QuickSightの活用術が盛り沢山でしたが、AWS IAMやAWS Lambdaのような別サービスと組み合わせることで運用の効率化が図れることも分かりました。Amazon QuickSight の利用に興味を持っていただいたお客様あるいはAWSのサービスを利用することをご検討いただいているお客様がいらっしゃいましたら、無料で個別相談会を開催しておりますので、こちらのリンクからぜひお申し込みください。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン 伊東 大騎