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AWS Summit 2024で見たIoTの進化!多数のセッションと展示が語るIoTの真価と深化!(IoTプロダクト編)

6 月 20 日と 21 日の二日間にかけて、3 万を超えるオンサイト来場者とともに、今年の AWS Summit Japan は大盛況のうちに幕を閉じました。この二日間にわたり、150 以上のセッションと 250 以上のブース展示が行われ、AWS の最前線がここに集結しました。IoT が多岐にわたる産業に根ざし、実用的なフェーズに進む中で、今年は IoT と生成 AI を活用した革新的なソリューションも次々と試みられました。今年は実に30を超える IoT 関連のセッションと展示が行われましたが、その中のいくつかを IoT プロダクト編とインダストリアル IoT 編の二部構成にて、会場で感じた熱気とともにハイライトをお伝えしていきたいと思います。

セッション

『たまごっち』シリーズの進化と、AWS IoT で築いた『Tamagotchi Uni』でつながる世界

株式会社バンダイ トイ事業部 チーフ 坂本 大祐 氏

世代を超えて愛される「たまごっち」シリーズ初の Wi-Fi 搭載機種『Tamagotchi Uni』について、①複雑さの排除、②セキュアな接続、③大規模スケーリングのためにどのように AWS IoT を活用したかについて解説いただきました。特にグローバルで販売する大量のたまごっちへのデータ配信に時間がかかるという課題について、AWS IoT Core のダイナミックグループ機能を使ってそれを克服し、すべてのユーザーに公平に最新コンテンツを楽しんでもらうことに成功するストーリーは多くの観衆を引き込んでいました。詳細はオンデマンド配信、また「大規模台数のたまごっちへ AWS IoT Jobs で高速かつ高効率にファームウェアを配信する方法」も合わせてご覧ください。

小規模体制でも開発できた電動車椅子の自動運転サービス~ AWS IoT 、サーバレスのクラウド活用~

WHILL 株式会社 CTO 福田 慧人 氏

近距離モビリティにおける自動運転のチャレンジを AWS IoT とサーバレスを活用して小規模体制かつ短期間で実現した事例を発表いただきました。交通ルールのない世界中の空港や美術館等で歩行者と同じ空間であらゆるシーンを想定して自律走行た実現においては、機体同士の最適なデマンドプランと経路設計、エレベーターシステムとの連携、そして利用者や管理者とのコミュニケーションを一つの統合された「自動運転サービス」システムとして実現しなければなりませんでした。小規模体制ながらも、AWS サーバレスをフル活用して短期間で機能開発されました。その中で特に注目すべきは機体の位置やセンサー情報をAWS IoT を介してAWSに集約し、リアルタイムに世界各国で動いている機体の自律走行を実現した点でした。今後は WHILL OS にも注力され、モビリティ分野へのエコシステムの形成を強化される方針も伺いました。詳細はオンデマンド配信をご覧ください。

トヨタにおける車両データ利活用と社会インフラ支援への取り組み

トヨタ自動車株式会社 デジタルソフト開発センター 社会システム PF 開発部 データ活用推進室 データサービス開発 G デジタル変革推進室(兼務) 新事業企画部 事業統括室(兼務) グループ長 坪田 沙弥香 氏

街を走行するトヨタの車両からは、日々様々なデータが AWS 上の構築されたコネクティッドデータプラットフォームにアップロードされており、このデータを活用した様々な取組みやサービス事例をご紹介いただきました。少し先の未来を見て、車両情報、映像を使って消防車両の到着を助ける実証実験例をご紹介いただき、「お客様の笑顔のために、あなたの車が誰かを助ける、誰かの車があなたを助ける」社会に向けたトヨタの取り組み大変印象的でした。ここでも AWS の生成 AI の活用検討の状況や Amazon Location Service の活用をご紹介いただいています。詳細はオンデマンド配信をご覧ください!

SDV 時代のデータ駆動型自動車開発を支えるクラウド技術および生成 AI の適用性

日産自動車 株式会社 R&D データサイエンスグループ
Deputy General Manager 俵道 大輔 氏
Assistant Manager 葉 俊廷 氏

自動車における先進技術の研究・開発では、膨大なデータの活用が車両の性能改善や新機能の開発に貢献します。日産自動車株式会社は Engineering Workbench という開発環境により AWS IoT などによってクラウドに集約したデータを提供することで高度な実験を可能にし開発の効率性を高めています。さらに、生成 AI の活用やその評価により SDV 時代におけるデータ駆動型の自動車開発のアプローチを提案されていました。セッションはオンデマンド配信でご覧いただけます。

KDDI のロボットプラットフォームにおける 開発の裏側

アイレット株式会社 執行役員 / アジャイル事業部事業部長 平野 健介 氏
KDDI 株式会社 先端技術統括本部 先端技術企画本部 ビジネス企画室 企画 1G グループリーダー 田中 政晃 氏

配送、見回り、清掃などのさまざまな利用シーンで活躍するロボット。多様なロボットをメーカーを問わず一元管理するロボットプラットフォームの開発において AWS IoT を活用した事例を紹介いただきました。ロボットの操作には AWS IoT Core が使用されています。具体的には、ロボット認証のための証明書を手動でキッティングする手間をなくす、プラットフォームからロボットに指示を出す、ロボットの情報を常時取得するなどの目的で活用いただいています。

展示ブース

DMM オンクレ

合同会社 DMM.com

本物の500 台のクレーンゲームを 24 時間 365 日オンラインで楽しむことのできる DMM オンクレ。オンラインでのクレーン操作には Amazon Kinesis Video Stream の WebRTC を活用した映像転送によりリアルタイム性と映像品質を確保されています。またクレーン毎に複数の制御用 IoT 機器が使われており、その管理や監視のために AWS IoT Core が活用されていたり、「人気のあるクレーンは?」などのゲームデータの解析には Amazon QuickSight を使うなどマネージドサービスをフルに活かした構成になっています。

Amazon Kinesis Video Streams 対応モジュール型カメラ

i-PRO株式会社・富士ソフト株式会社

富士ソフト株式会社のブースでは、先日 Amazon Kinesis Video Streams へのデバイス認証(Device Qualification Program)対応が完了したばかりの i-PRO 株式会社のモジュール型カメラ moduca が展示されていました。小型の筐体・レンズ、通信ユニットを自由に組み替えが可能で、Amazon で購入可能な入手性を活かして、ソリューションの新規開発を高速化するカメラです。ブースでは、富士ソフト株式会社のデジタルツインとの接続と、エッジ AI 機能を用いたリアルタイム人物検知やモザイキングのデモを実施していました。

IoT Station

株式会社ゼネックコミュニケーション

IoT Stationでは、AWS IoT Coreや自社開発のIFを利用することで異なる種類のセンサーや通信規格でも1つのダッシュボードに集約できます。IoTシステムにはいろいろなユースケースがありますが、様々な業種・業務課題に対応したテンプレート(Can-D)を利用することにより、開発期間を削減し、スピーディーなDX化が可能になっています。

AWS for Robotics: ロボットの遠隔操作と映像ストリーミングをAWS IoTサービスで実現

AWS 展示

ロボットに接続されたカメラによる異常検知のデモを行っていました。AWS のオフィスにあるロボットを Summit の会場から遠隔操作し、ロボットのカメラ映像を確認して、部屋の様子を監視します。同時にマルチモーダル生成 AI(Claude 3 on Amazon Bedrock)を活用して、部屋の様子をテキストで「ソファーが写っています。異常はないです」などの様に表現していました。ロボットの操作は IoT Core を使い、カメラ映像は低遅延な Amazon Kinesis Video Streams の WebRTC を用いてを実現していました。

スマートフィットネス: IoT を活用した生成 AI トレーナー

AWS 展示

インストラクターのポーズと体験者のポーズを比較して、類似度を判定するというデモアプリケーションの展示。エッジのカメラで人の骨格情報を抽出して、それをAWS IoT Core を経由してAmazon BedRock の Claude3 へ送ることで判定します。判定結果の表示は IoT デバイス(マイコン)とも連携されており、デバイスと Web アプリを AWS IoT Core でリアルタイムかつシームレスに繋いでいました。ポーズの類似度を競うゲーム仕立てになっており、多くの来場者を楽しませていました。

生成AIが見守る!? 作業員の健康管理システムのデモ

AWS 展示

ウェアラブルな IoT デバイスによってさまざまな環境下での作業者の心拍数や血中酸素濃度を取得し、また、温湿度などの室内の情報を測定するというデモを展示。取得されたデータは生成AIにより状況を判断させた内容とともにダッシュボードにて確認できるという、いろんな現場で活用できそうな内容になっていました。

生成 AI 車両データのリアルタイム分析デモ

AWS 展示

目の前のサーキットを走るレース用ミニカーから回転数、スピード。サーキットの路面状況などのセンサーデータを AWS IoT Core や AWS IoT SiteWise を駆使して収集し、その場で分析するデモを行っていました。収集、分析、可視化での AWS サービス活用、さらに生成 AI によって作られたアナウンス、レースに勝つヒントやレース状況がドライバーに対して音声で読み上げられています。AWS らしく必要なブロックがうまく組み合わされて表現されているデモで興味深いものでした。

コネクテッドビークル AI解析による運転体験の最適化

AWS 展示

車から上がってくるセンサーデータとカメラ画像から路面状況把握し、AI 解析を通じて、ほぼリアルタイムに車のセッティングが自動で変わる世界をめざした HL Mando の MiCOSA の中で、AWS IoT FleetWise とその新機能である Vision System Data がどのように活用されているかをご紹介していました。車メーカーだけでなく、物流会社や保険会社など多くの業種の方がどのように AWS が車のデータ収集、活用に利用されているのか興味を持って聞かれてました。

仮想化で組み込みソフト開発・改善の高速化

AWS展示

スマートな製品の提供においては顧客ニーズを理解していち早く市場に製品を投入し、出荷後も DevOps の考え方により改善し続けることが重要です。そのための障害となっていた組み込みソフトウェア開発を含む DevOps 化の展示を行いました。空調機のコントローラーを題材に、ユーザーの機能利用状況を監視するダッシュボードを契機に、組み込みソフトウェアをクラウドでビルド・テストしAWS IoT Greengrass を介して更新する流れをデモとして提示しました。詳細はこのブログから参照可能です。

生成AIによるカメラ映像からの危険判別

AWS展示

製造現場などでの危険を検知するために、監視カメラの映像をクラウドに送って生成AIにより分析するデモを展示しました。カメラ映像はエッジの PC を介して Amazon Kinesis Video Streams によりライブ配信され、また画像フレームを Amazon Bedrock に入れ状況の記述や危険判定を行います。生成 AI の持つ汎用性により専用のモデル開発不要で様々な危険な状況に対応でき、マルチモーダルの生成 AI の可能性を感じさせるデモでした。展示資料はこのブログから入手可能です。

新価格体験を実現する次世代自販機

AWS展示

このデモでは、AWS のサービスを活用し、動的に価格を変動させる新しい自動販売機の体験を展示しました。自販機に内蔵されたコントローラに AWS IoT GreenGrass を搭載し、温度、商品の在庫状況、カメラによる混雑状況を考慮し、動的に商品の価格を変更(ダイナミックプライシング)するデモを紹介しました。自動販売機の商品展示用の液晶パネルも、購入ボタンも、AWS IoT Greengrass が搭載されたコントローラが制御し、AWS IoT Core 経由でリアルタイムで価格判定用の値と価格の変動を大画面のダッシュボードで表示し、お客さんに新しい体験を実感していただきました。

まとめ

IoT のさまざまなユースケースが、会場の各所で見られた AWS Summit Japan 2024 でした。IoT がいかに多様な形で進化しているかを如実に示す機会だったと思います。また、新しい流れとして、IoT と生成 AI をさまざまな形で組み合わせたソリューションのアイデアも注目を集めており、これからの新しい流れになりそうで楽しみです。AWS では、今後も IoT の可能性とビジネスを追求するカスタマの支援を加速していきます!

著者

山本 直志 – Industry Solutions Architect (MFG)
製造業のワークロードを担当する Specialist SA として、お客様が AWS クラウドを活用し、今までにないソリューションを提供するお手伝いをしています。
真保 安憲 – IoT Sales Specialist
日本のIoT事業開発を担当しています。AWS IoTでモノとクラウドをつなぐだけでなく、人と人もつないで、皆様のIoT実現を一緒に進めるお手伝いをさせていただいています。
井上 昌幸 – IoT Specialist Solutions Architect
Internet of Things と Robotics 界隈で面白い事を探しながら、今日もこつこつリアルな世界とクラウドを繋いでいます。とっておきのアイデアを AWS と一緒にカタチにしましょう。