Amazon Web Services ブログ
株式会社 JAPANNEXT 様の AWS 生成 AI 事例「Amazon Connect と Amazon Bedrock で営業業務とカスタマーサポート業務を刷新。対応件数を 15% 増加、引き継ぎ工数ゼロを実現」のご紹介
本ブログは 株式会社JAPANNEXT様、クラスメソッド株式会社、Amazon Web Services Japan 合同会社が三社共同で執筆いたしました。
みなさん、こんにちは。ソリューションアーキテクトの田中里絵です。
AI を活用して日常業務を効率化していきたい、と多くのお客様からお聞きします。一方で、AI ツールを導入するだけではなかなかうまくいかず、これまで馴染んできた業務プロセスと AI ツールをいかに統合させていくのかに悩んでいる、というお声もいただきます。
本記事では、JAPANNEXT 様が Amazon Connect Customer と Amazon Bedrock を活用し、二つの部門で電話対応業務を刷新した事例を紹介します。ツールを導入するだけでなく、現場でどう使われるか、将来の IT 基盤にどう繋げるかを、お客様、パートナー、AWS の三社でワクワクしながら議論して仕組みづくりをしました。ぜひ楽しんでお読みください。
株式会社 JAPANNEXT について
JAPANNEXT 様は、千葉県いすみ市に本社を置く液晶ディスプレイ(液晶モニター)メーカーです。2016 年に JAPANNEXT ブランドのモニターを発売し、ブランド 10 周年を迎えられました。大型ディスプレイ、4K ディスプレイ、ゲーミングモニター、モバイルモニターなど多様なラインナップの製品を提供されていて、良いものを最高のコストパフォーマンスで届けるという考え方が製品づくりの軸になっています。年間 150 を超える新製品を発売するスピーディーなビジネスが強みです。
事業拠点は、統合により廃校となったいすみ市の小学校を利活用した本社です。このユニークな本社に加え、いすみ鉄道の菜の花保全活動への協賛や、リファビッシュ品(再生品)をふるさと納税の返礼品として提供する取り組みなど、テクノロジーと地域活性化の両輪で事業を展開されています。
写真:本社エントランス(左)、学校の雰囲気が残る社屋内 – 想いをつないで (中央)、リフレッシュルーム – ON/OFF 両方全力で(右)
JAPANNEXT 様が直面していた課題と背景
多様な製品ラインナップを持つ JAPANNEXT 様には、購入前の製品選定のご相談から設置方法、保証や修理まで、多様な問い合わせが寄せられます。従来、1 日あたり平均 80 件の営業問い合わせを、5 名の営業アシスタント様が固定電話を介して受けていました。担当者の不在でお客様をお待たせしたり、適切な担当者へのルーティングに時間がかかったりするため、問い合わせがつながるまでに数分を要していました。また、伝言やチーム内での情報連携は属人的に行われていたため、誰が、いつ、どんな問い合わせを受けているのかをチームとして把握しきれないという課題もありました。
購入後のお問い合わせを受けるカスタマーサポートでも、情報連携に関する課題を抱えていました。エージェントは受電後にお客様対応を行い、内容を記録して CRM に入力しますが、これに 1 件あたり 15 分を要し、記録の粒度も担当者によりまちまちでした。このために問い合わせ内容がデータとして蓄積されづらく、対応の振り返りや傾向の把握が進みづらい状況にありました。重要度の高いお問い合わせをスーパーバイザーに即時連携したい場面でも、通話終了後に記録・共有する業務フローでは 10 分程度のタイムラグが避けられませんでした。
これらの課題を解決するため、既存 PBX システムの更改は 2024 年ごろから検討に挙がっていました。しかしながら、着信時に発信元のお客様情報が CRM の画面に自動で表示される連携機能を日常的に利用しており、次期システムでも同等の体験を実現できるかが重要な要件となり、技術選定を難しくしていました。さらに、既存 CRM の更改も考慮する必要があり、相互に連携するシステムをどう入れ替えていくかの整理も必要な状況でした。
ソリューション選定の経緯
技術選定の中心に据えたのは、2 つの方針です。1 つは、クラウド型のコンタクトセンターを採用し、物理的な電話デバイスから PC 上のソフトウェアを介した受電へ切り替えること。もう 1 つは、対応内容の記録と連携に、AI による文字起こしを活用することです。
この方針のもとで選定したのが、クラウド型のコンタクトセンターサービスである Amazon Connect Customer でした。オンプレミスの PBX 基盤や固定電話を必要とせず、問い合わせを自動でルーティングし効率的に対応を振り分けられること、通話の文字起こしや感情分析といった AI 通話分析機能(Amazon Connect Customer Contact Lens)をフルマネージドで使えること、そして従量課金により低価格でスタートできることが、選定のポイントとなりました。
選定の過程で重要な論点になったのが、課題の段でも触れた CRM との連携です。お客様の中でも議論を重ね、ユーザーからみて従来と同等以上の体験が得られると確認できたことで、最終的には CRM 自体の更改も同時に進めることを決断されました。
AWS パートナーとの協業
Amazon Connect Customer、Amazon Bedrock、新 CRM との導入支援と連携を総合的にお願いできる導入パートナーとして、AWS プレミアティアサービスパートナーであるクラスメソッドとの協業を決定し、AWS サービスの設計とともに CRM 更改も含めたプロジェクト計画を進めていきました。
本プロジェクトの技術リードの大野様は次のように述べています。
「AWS の知見、AI に対する知見、細かな要件のすり合わせに加え、CRM の更改も見据えた支援をしてくれるという点が非常に大きなポイントでした。」
ソリューションの構成
営業支援のユースケースでは、Amazon Bedrock が要約機能を担いました。Amazon Connect Customer の文字起こしと Amazon Bedrock によるカスタマイズされた要約を組み合わせて、AWS Lambda で担当者が日常的に使っているチャットツールへ連携し、イベントドリブンアーキテクチャによって終話後数分で届きます。必須の要件として残ったお客様情報の表示は、CRM から Amazon Connect に定期連携するロジックを追加で作成しました。
この構成の設計を主導したクラスメソッド様は、設計の狙いを次のように語っています。
「本プロジェクトで最も重視したのは、『CRM が変わっても、継続活用できる設計にする』という点でした。Amazon Connect Customer との連携を疎結合に設計することで、CRM に依存しない柔軟な環境を実現しています。
通話要約のモデルは、精度と運用面を総合的に考慮して Claude を提案しました。大野様が日常的に活用され、JAPANNEXT 様の社内指針でも推奨されていたことが重なり、現場に最も馴染みやすい選択になったと感じています。
また、オペレーターの役割と状況を丁寧にヒアリングし、ルーティングプロファイルを部門ごとに分離することを提案しました。営業時間外の対応についても、カレンダー管理や追加手順を共有することで、お客様が自走して運用を続けられる体制を整えました。」
図:営業部門で利用する新システムのアーキテクチャー概要
導入の成果
先行して運用を開始した営業部門では、初日から前向きなフィードバックが得られました。具体的には、次のような効果が生まれています。
- 1 日の電話対応件数が 15 % 増加
- 担当者への電話引き継ぎに要していた時間が、自動ルーティング機能によりゼロに
- 不在着信や業務時間外の着信も可視化され、引き継ぎ漏れがゼロに
- 1 件あたりの対応時間短縮の結果、担当者の残業時間が 15 % 削減
数字に表れない変化もあります。対応そのものに集中できるようになり、通話しながらの情報検索や応対品質の振り返りも可能になったことで、単なる問い合わせへの受け答えにとどまらず、情報収集や分析など顧客体験を高める取り組みに時間を割く余裕が生まれています。
プロジェクトを推進された大野様は、SE の視点から効果をこう分析されています。
「Amazon Connect Customer を導入してから、記録に追われなくなったことで、電話対応とエスカレーション判断を、担当者がいずれも落ち着いて対応できるようになりました。就業時間に目途が付きやすくなり、働きやすさも向上したとフィードバックを得られています。また、物理的な電話が撤廃されたことで、執務室の静音化という副次効果もありました」
リーダー業務には、問い合わせ対応に加え外部との調整作業がありますが、導入後はこの業務にも変化が生まれました。主運用部門担当の高野様、植村様およびチームリーダー押尾様からは、次のような声が寄せられています。
「電話のピーク対応処理が従来の80件程度から100件/日可能になり、加えて受話できなかった問い合わせもガイドによりメール問い合わせ担当へ振り替わるため、業務量が平準化されました。これにより担当者がリーダーのサポートも出来るようになりました。またチームリーダーは本業務と問い合わせ対応のサポートも並行作業で可能となりました。今までは不可能か、とても難しかったことです。」
また、営業部門での成果を受け、フェーズ 2 としてカスタマーサポート部門への展開を進めました。開発段階から現場担当者を交えてクラスメソッド様と要件定義を重ね、標準的な機能を中心に活用してカスタマイズを最小限にするために、運用側の見直しも含めた機能の選定や社内調整を積み重ねました。
この要件定義に参加したコーチングリーダーの本良様は、その経験を次のように語っています。
「現場の意見を取りまとめ、クラスメソッド様のエンジニアと密に会話を重ねることで、要望がかたちになっていきました。ユーザーとシステム、両方の立場や悩みを経験できたことも大きな収穫です。この仕組みは、カスタマーサポートとシステム部門がワンチームで築き上げたものです。」
写真:プロジェクトにご尽力された高野様(写真左)、本良様(写真右)
お客様の声と今後のお取り組み
一連の取り組みについて、伊丹様、剣持様、大野様から、それぞれ次のような声をいただいています。
伊丹様「単に業務効率が向上しただけではなく、問い合わせ内容が漏れなく記録されることで、今後の営業活動の分析やさらなる向上が見込めるようになりました。これから本格化するカスタマーサポートへの展開にも、大いに期待しています。」
剣持様「JAPANNEXT では、毎年 150~200 機種の新商品を発売し、市場に無いものでもチャレンジして製品開発、発売を行っています。それを支える社内システムは自社開発が基本姿勢ですが、クラスメソッド様、Amazon Web Services Japan 様との連携で新しい仕組みをスピーディーに構築することが出来ました。あわせてカスタマーサポートも刷新し、これまで担当者ごとに散在していた顧客との接点が、営業組織全体で共有できる情報基盤になりました。今後はこの基盤を活かし、外部の有識者の知見も取り入れながら、新たな顧客開拓につなげていきます。」
大野様「本共創の立ち上げを経験したことで、JAPANNEXT 社内全体で『新しい考え方がないか?』といったことを考える雰囲気が醸成され始めました。単に効率改善のためだけのプロジェクトに留まらず、仕組みづくりに様々なステークホルダーを交えて取り組めたことが最大の成果でした。」
クラスメソッド様からは、次のようなフィードバックをいただいています。
「単なるツールの入れ替えではなく、業務課題そのものに向き合いながら仕組みを作り上げられた点が良かったと考えております。電話対応の現場で何が起きているかを丁寧にヒアリングし、ツールと業務プロセスを一緒に設計することで、担当者が『記録に追われる仕事』から解放される仕組みが生まれました。今後も JAPANNEXT 様の業務改善に継続的に伴走していきます。」
今後 JAPANNEXT 様は、RMA(返品や交換)の一連の作業を担うチームにも、Amazon Connect Customer の利用を広げていく想定です。また、本プロジェクトで導入された CRM のさらなる活用や、クラウドに蓄積され始めたデータをビジネスに活用を目指して継続的にお取り組みをしていくご想定です。
まとめ
本事例では、業務の目的に立ち返って、機能と運用の両面から設計を重ねたことが、初日から現場に定着する仕組みにつながりました。AI 活用を検討される際は、ツールの選定とあわせて、現場の運用にどう溶け込ませるかの議論に、ぜひ時間をかけてみてください。AWS へのご相談もお待ちしています。
コンタクトセンターの業務刷新や AI 活用に興味を持たれた方は、Amazon Connect Customer の製品ページや、Amazon Bedrock の製品ページをご覧ください。
株式会社JAPANNEXT : General Manager 伊丹 利政 氏(写真中央左)、Senior System Engineer 大野 浩司 氏(写真中央右)、Head of Sales & Marketing 剣持 開 氏(写真右から2番目)
クラスメソッド株式会社 : 営業 平田 梨紗(写真右)
Amazon Web Services Japan : アカウントマネージャー 倉知 達哉(写真左)、ソリューションアーキテクト 田中 里絵(写真左から2番目)
ソリューションアーキテクト 田中里絵



