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D2L が Amazon Quick Sight のビジュアルデータ準備を使用して教育分析を変革した方法

本記事は、2025 年 10 月 23 日に公開された How D2L transformed educational analytics using visual data preparation in Amazon Quick Sight を翻訳したものです。翻訳は Public Sector PSA の西川継延が担当しました。

この投稿は、D2L の Surekha Rao と Andrew Wooster が共同で執筆しました。

D2L では、世界の学習方法を変革することをミッションとしています。グローバルな学習イノベーションのリーダーとして、世界中の教育機関と緊密に連携し、学習をより刺激的で、魅力的で、人間的なものにしています。当社の主力学習管理システム(LMS)である D2L Brightspace は、数え切れないほどの教育体験の基盤として機能し、教育と学習成果の有意義な改善を推進できる貴重なデータを生成しています。

当社の Performance+ analytics suite は、教育者や管理者がエンゲージメントを監視し、リスクのある学習者を特定し、アセスメントやコース設計の有効性を評価できるように設計されています。直感的なダッシュボードと予測分析により、学習者へのタイムリーな介入とパーソナライズされたサポートを可能にします。しかし、学習エコシステムが拡大するにつれて、学習者のエンゲージメント指標、コースのパフォーマンス、機関の KPI など、管理する必要のあるデータの量と複雑さも増大しました。

この投稿では、D2L が Amazon Quick Sight の新しいデータ準備機能を使用して、Performance +パッケージの Brightspace Analytics 製品を強化した方法を紹介します。この進歩により、教育機関全体でデータインサイトが民主化されます。教育者や管理者は、技術的な専門知識を必要とせず、シンプルなクリック操作で生データを実用的なインサイトに変換できるようになります。

課題: ユーザビリティを維持しながら分析をスケールする

ユーザーベースが拡大するにつれて、パフォーマンスや使いやすさを損なうことなく、分析機能をスケールさせるプレッシャーが高まりました。教育機関は厳しい予算制約の下で運営されることが多く、専任のデータサイエンスチームを持たない機関も少なくありません。私たちは、コスト効率が高く予測可能でありながら、さまざまなスキルレベルでデータインサイトを民主化できるソリューションが必要でした。Quick Sight を採用する前は、分析を効果的にスケールさせる能力を制限するいくつかの技術的課題に直面していました。

  • 手頃な価格とコストの予測可能性 – 以前使用していたツールの多くは、ユーザー数やコンピューティング使用量に紐づく複雑な価格モデルを採用していました。これにより、コストの予測が困難になり、持続可能な方法で顧客に分析機能を提供することが難しくなっていました。リソースが限られている教育機関にとって、この予測不可能性は導入の大きな障壁となっていました。
  • リージョンの可用性とデータレジデンシー – 世界中の教育機関にサービスを提供しているため、マルチリージョンデプロイメントをサポートし、進化するデータレジデンシー要件に対応できるソリューションが必要でした。以前のツールには、データ主権の懸念に対処するために必要な柔軟性がなく、地理的に分散したリージョンのユーザーにサービスを提供する際にレイテンシーの問題が発生していました。
  • インサイトへの技術的障壁 – おそらく最も重要なことは、従来のデータ準備ツールでは SQL やプログラミングの専門スキルが必要とされることが多かったことです。これにより、教育者や管理者がインサイトにアクセスする前に、技術チームがデータを準備および変更する必要があったため、分析プロセスにボトルネックが生じていました。

ソリューション概要

新しい Quick Sight のデータ準備体験は、教育分析へのアプローチに⾰命をもたらしました。データ変換に GUI ベースのローコードなインターフェースを提供することで、技術的な障壁が取り除かれ、あらゆるスキルレベルのユーザーがデータを直接扱えるようになりました。

強化されたデータ準備機能により、Aggregate、Filter、Pivot、Unpivot、Append の各変換がサポートされるようになりました (更新されたナビゲーションペインのスクリーンショットに示されています)。これらはすべて、GUI ベースのローコードインターフェースを通じて利用できます。これらの機能がデータ準備プロセスを大幅に効率化しました。

教育機関では、教育者や管理者が以下のことを行えるようになりました。

  • データへのアクセスと変換を独立して実行 – 教職員は、SQL やプログラミングの知識を必要とせずに、データのクリーニング、変更、結合を行うことができます。これにより、技術チームへの依存が減り、より多くの人がデータを直接扱えるようになり、より迅速なインサイトの獲得とより機敏な意思決定につながります。
  • 実用的なインサイトを迅速に生成 – ポイントアンドクリックのインターフェースとビジュアルワークフローにより、ユーザーはワークフローとダッシュボードを迅速に構築できます。これは、タイムリーな介入が学生の成功に大きな影響を与える可能性がある、ペースの速い教育環境に最適です。
  • 部門全体で分析をスケール – 直感的なツールにより、教育機関は複雑なコーディングや Extract、Transform、Load (ETL) ツールについて全員をトレーニングする必要なく、部門全体で分析をスケールできます。このデータアクセスの民主化により、組織全体でよりデータに基づいた文化を創出できます。
  • リソース配分の最適化 – 専門的なデータエンジニアリングリソースの必要性を減らすことで、Quick Sight は限られた予算の教育機関にとって、分析をより手頃で予測可能なものにします。

次のワークフローは、Brightspace の生データセットが視覚的に変換され、統合された洞察に富んだデータセットになる様子を示しています。この変換により、学習者の登録情報とユーザーの人口統計情報をより深く分析できるようになり、カリキュラム計画とサポート戦略全体でデータドリブンな意思決定が可能になります。

データソースと統合

Quick Sight 実装の主な強みの 1 つは、複数のソースからデータを取得できることです。Quick Sight は、Brightspace Learning Management System (LMS) と Data Hub の Brightspace Data Sets (BDS) と統合され、学習者のエンゲージメント、コースのパフォーマンス、インストラクターのアクティビティに関する豊富なデータを取得します。また、以下を含むさまざまな Quick Sight データソースを通じて、お客様が追加データを取り込むことをサポートしています。

  • 1 回限りの (アドホック) 分析のためのファイルアップロード
  • データベース接続 (MySQL、PostgreSQL、Oracle、SQL Server、Amazon Aurora、MariaDB)
  • データプラットフォーム (Databricks、Spark、Teradata)
  • クエリエンジン (Presto、Starburst、Trino)

この柔軟性により、教育機関は運用の包括的なビューを作成し、学習データを他のシステムからの情報と組み合わせて、運用全体の改善を推進できます。

実世界への影響: 教育における意思決定の変革

Brightspace と統合することで、Quick Sight は教育における データに基づいた意思決定の推進力として機能します。学習分析を日常のワークフローに組み込むことで、教育者や管理者がより賢明でリアルタイムな意思決定を行い、学習成果にポジティブな影響を与えることを支援します。

たとえば、教員は学生のエンゲージメントデータのパターンを迅速に特定し、問題になる前に潜在的な課題を発見できるようになりました。教授は、学生が特定のモジュールに他のモジュールと比較して著しく少ない時間しか費やしていないことに気づけ、そのコンテンツの改訂や追加のサポートリソースが必要である可能性を示唆できます。

同様に、管理者は部門全体の組織的な KPI を追跡し、優れた領域と改善の機会を特定できます。技術チームがデータを準備するのを待つことなく、コース修了率、アセスメント結果、プラットフォーム採用トレンドを分析できます。

その影響は、運用効率以外の領域にも及びます。Quick Sight はデータインサイトへのアクセスを民主化することで、教育機関全体でエビデンスに基づく意思決定の文化を育むのに役立ちます。教員は自分でデータを探索できるようになることで、データへの関心が高まり、教育と学習に対するより革新的なアプローチにつながります。

教育エコシステム全体にわたる分析のスケーリング

現在、D2L の顧客の大部分が当社の分析ソリューションにアクセスしており、教育におけるデータの価値に対する認識が高まっていることを示しています。Performance +アドオンパッケージをご利用のお客様は、機関のニーズに応じてスケールする組み込み分析機能にアクセスできます。

このアプローチにより、予測可能なコスト構造を維持しながら、さまざまな規模の機関全体で分析をスケールすることが可能になります。リソースが限られている教育機関にとって、この予測可能性は長期的な計画と持続可能性にとって極めて重要です。

Quick Sight のローコードなデータ準備機能は、このスケーリングの取り組みにおいて特に価値がありました。技術的な障壁を取り除くことで、さまざまなスキルレベルのユーザーがインサイトにアクセスしやすくなり、教育者、管理者、ビジネスチームが日常業務でデータを活用できるようになりました。

教育分析の未来

今後を見据えて、私たちは学習成果と業務生産性能向上のため、導入の加速と分析の日常業務への組み込みに注力しています。

  • 教育ワークフローとのより深い統合 – 分析機能を教育体験にさらに組み込むことで、データに基づいた意思決定を別の活動としてではなく、教育業務の自然な一部にすることを目指しています。
  • 予測機能の強化 – Quick Sight の機械学習 (ML) 機能を基盤として、リスクのある学生をより高い精度で特定し、的を絞った介入を提案できる、より高度な早期警告システムの提供に取り組んでいます。
  • 機関間ベンチマーク – プライバシーとデータガバナンスの要件を尊重しながら、機関がより広い文脈で自らのパフォーマンスを理解できるよう、匿名化されたベンチマークを提供する機会があると考えています。
  • セルフサービス分析の拡張 – Quick Sight のローコードアプローチを基盤として、技術者以外のユーザーが特定のニーズに合わせた独自のレポートやダッシュボードを作成できるよう、さらに支援する予定です。

まとめ

D2L では、スケールし、コンプライアンスをサポートし、データへのアクセスを民主化するツールを教育機関に提供することに取り組んでいます。Brightspace と統合された Quick Sight は、その約束を実現する上で重要な役割を果たしています。

この新しいデータ準備エクスペリエンスは、教育エコシステムのすべての人々が分析にアクセスできるようにするための大きな前進を表しています。技術的な障壁を取り除き、データ変換のための直感的なツールを提供することで、Quick Sight はさまざまな規模の教育機関が、教育と学習における有意義な改善のためにデータを活用できるよう支援します。

教育機関が影響力を示し、成果を向上させるプレッシャーが高まる時代において、アクセスしやすいアナリティクスは不可欠です。Quick Sight を使用することで、技術的な専門知識や予算の制約に関係なく、さまざまなお客様に強力なデータインサイトを提供できるソリューションを提供できることを誇りに思います。

この取り組みを続ける中で、私たちは核となるミッションに集中し続けています。それは、イノベーション、エンゲージメント、データに基づいた意思決定を通じて、世界の学習方法を変革することです。AWS のようなパートナーや Quick Sight のようなサービスとともに、私たちは教育機関がこれまで想像もしなかったような成果を達成できるよう支援する能力に自信を持っています。Quick Sight が教育分析をどのように変革できるかについて詳しく知るには、以下のリソースをご覧ください。

著者について


Surekha Rao
は、D2L のプロダクトマネジメントディレクターであり、過去 14 年間にわたって教育テクノロジーのイノベーションを推進してきました。プロダクトリーダーシップにおいて 4 年以上の経験を持ち、生成 AI、アナリティクス、アセスメント、エンゲージメントツールにわたる変革的なソリューションの戦略と立ち上げを主導してきました。これらの取り組みは、教育機関が学習成果を向上させ、教育者の効率を強化し、よりつながりのある学習体験を創出することに貢献しています。現在は、データとアナリティクスに注力し、教育者や管理者に実用的なインサイトを提供し、大規模なエビデンスに基づく意思決定を可能にする取り組みを推進しています。


Andrew Wooster
は、D2L のシニアディレクター オブ エンジニアリングです。Andrew は、データ、分析、AI 製品および機能の全体的な技術戦略と提供に責任を持ち、チームが品質、パフォーマンス、スケーラビリティの高い方法で顧客価値を最前線にもたらすことができるよう取り組んでいます。


Barret Newman
は、カナダ アルバータ州カルガリーにある Amazon Web Services (AWS) のプリンシパルソリューションアーキテクトです。15 年以上の IT 経験を持つ Barret は、EdTech のお客様が AWS 上で移行、モダナイゼーション、イノベーションを実現できるよう支援することに注力する技術的なソートリーダーです。仕事をしていないときは、パートナーと 2 匹の猫と過ごしたり、家中のあらゆるデバイスを自動化して統合したり、たくさんのコーヒーを飲んだりすることを楽しんでいます。


Vignessh Baskaran
は、Amazon Quick Suite の機能である Amazon Quick Sight において、データ接続とデータ準備ドメインを担当するシニアテクニカルプロダクトマネージャーです。ビジネスインテリジェンスとデータウェアハウジングのバックグラウンドを活かし、Quick Sight の新しいデータ準備エクスペリエンスの製品戦略と開発を主導し、複雑なデータ変換をすべてのユーザーがアクセスできるようにすることに注力しています。仕事以外では、クリケット観戦、ラケットボール、シアトルでのさまざまな料理の探索を楽しんでいます。