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Kiro をはじめる第一歩:あなたに合った学習パスを見つける
こんにちは、ソリューションアーキテクトのいなりく㌔
11 月 18 日から 29 日まで開催した「Kiroweeeeeeek in Japan」、たくさんの方にご参加いただき、ありがとうございました!この連載イベントは、Kiro の一般提供開始を記念して、日本のお客様に向けた特別企画として実施しました。
12 日間にわたり、AWS Japan の社員が「仕様駆動から実装・運用までの道筋」をテーマに、実践的な情報をお届けしてきました。Day1 の導入ガイドから始まり、移行方法、セキュリティ、ペアプログラミング、Shell スクリプト開発、CLI ツール、仕様駆動開発、チーム開発、そしてパートナーエコシステムとの連携まで、幅広いトピックをカバーしています。
このブログでは、公開された全 10 個のコンテンツを振り返りながら、「あなたの状況や関心に合わせて、どこから読むべきか」をガイドします。Day1 から順に読む必要はありません。あなたのニーズに合ったコンテンツから始めて、Kiro の可能性を最大限に引き出しましょう。
豆知識:「Kiro」という名前の由来
本題に入る前に、少しだけ豆知識を。「Kiro」という名前、実は日本語の「岐路(きろ)」に由来しています。
岐路とは、道が分かれる場所、つまり「分岐点」や「重要な選択の瞬間」を意味します。ソフトウェア開発において、私たちは常に無数の選択に直面しています。どのアーキテクチャを採用するか、どの技術スタックを選ぶか、どのように問題を解決するか。これらの岐路での判断が、プロジェクトの成否を左右します。
Kiro は、まさにこの「岐路」に立つ開発者を支援するツールです。AI の力を借りて、複雑な選択肢を整理し、最適な道筋を見出す手助けをします。仕様駆動開発(Spec)という機能は、要件定義から設計、実装へと続く道のりを明確にし、「どこに向かっているのか」を常に意識しながら開発を進められるようにします。
また、岐路には「新しい可能性への入口」という意味も込められています。従来の開発手法から AI 駆動開発への転換点、個人開発からチーム開発への拡張、そして人間の創造性と AI の自動化が融合する新しい開発パラダイムへの入口。Kiro は、開発者が新しい時代の岐路に立ち、自信を持って一歩を踏み出せるよう設計されています。
「Kiro」という名前は、単なる選択ではなく、目的の表明です。開発の岐路に立つあなたを支え、イノベーションへの最適な道を共に見つけ出します。
あなたはどのタイプ?ペルソナ別おすすめガイド
1. 「Kiro を初めて使います」というあなたへ
こんな方におすすめ
- Kiro を初めて使う
- Amazon Q Developer の経験もない
- どこから始めればいいかわからない
おすすめの学習パス
まずは Day 1: Kiro 導入ガイド:始める前に知っておくべきすべてのこと から始めましょう。このコンテンツでは、Kiro のプラン体系(Free/Pro/Pro+/Power)、請求方法、認証方式(IAM Identity Center、Builder ID、GitHub、Google)について整理されています。特に、「自分はどのプランが適しているのか」「AWS 請求に統合するにはどうすればいいのか」といった疑問に答えてくれます。
基本を理解したら、実践的な使い方を体験してみましょう。3 つの選択肢があります。
チーム開発に興味がある方は Day 4: Kiro を使ったペアプログラミングのすすめ からはじめましょう。AWS 社内ハッカソンでの実践例を通じて、Kiro を使った新しい開発スタイルを学べます。ホワイトボーディングの画像認識、Agent Hooks による自動化、MCP ツールの活用など、具体的なノウハウが満載です。
インフラや運用が専門の方は Day 5: インフラエンジニアのあなたも!Shell スクリプト開発で Kiro を使ってみよう からはじめましょう。「Kiro は自分には不要では?」と思っている方こそ読んでほしい記事です。ディスククリーンアップスクリプトの開発や既存スクリプトの改善を通じて、Kiro がインフラエンジニアにも役立つことを実感できます。Kiro の Spec モードを使うことで、「書いた本人しか理解できない」「動いているから触りたくない」という状況を避けられ、開発プロセスの中で自然とドキュメント(セットアップ手順、実行方法、ファイル構成を含む)が生成されます。また、エラーハンドリング、適切なログ出力、セキュリティ対策などのベストプラクティスが自動的に適用されたコードが生成されます。
ハンズオンで学びたい方は Kiro 日本語ワークショップ で実際に手を動かしながら学べます。Kiro の基本的な使い方から、Spec 機能、Agent Hooks、MCP の活用まで、段階的に学習できる構成になっています。
2. 「Amazon Q Developer から移行したい」というあなたへ
こんな方におすすめ
- Amazon Q Developer の IDE プラグインを使用中
- Kiro への移行方法を知りたい
- 新機能を理解したい
おすすめの学習パス
まず Day 1: Kiro 導入ガイド で、Amazon Q Developer と Kiro の関係性を理解しましょう。重要なポイントは、Amazon Q Developer Pro サブスクリプションを維持したままでも Kiro の一部機能(Kiro CLI / Kiro IDE を Pro 相当として)を利用できることです。ただし、上位プランへの変更には Kiro サブスクリプションへの手動アップグレードが必要です。
次に Day 2: Amazon Q Developer の IDE プラグインから Kiro に乗り換える準備 で、具体的な移行方法を学びましょう。このコンテンツでは、プロファイル移行(拡張機能、テーマ、設定、ショートカットの引き継ぎ)、Rules から Steering への進化、MCP の継続利用について詳しく解説されています。特に注目すべきは、Kiro の最大の特徴である「仕様駆動開発(Spec)」と「Agent Hooks」という新機能です。移行の準備ができたら、Kiro の真価を発揮する仕様駆動開発を体験してみましょう。Day 7: イベントストーミングから要件・設計・タスクへ または Day 8: Kiro における負債にならない Spec ファイルの扱い方 で、Spec 機能の活用方法を深く理解できます。
3. 「組織での導入を検討している」というあなたへ
こんな方におすすめ
- チームや組織での Kiro 導入を検討している
- セキュリティ、ガバナンス、請求管理が気になる
- エンタープライズ利用の要件を満たしたい
おすすめの学習パス
まず Day 1: Kiro 導入ガイド で、プラン体系と請求統合の仕組みを理解しましょう。企業で利用する場合は、Kiro Pro プラン以上と AWS IAM Identity Center の組み合わせが推奨されます。これにより、AWS 請求に統合でき、組織単位での従量管理が可能になります。
次に Day 3: Kiro を組織で利用するためのセキュリティとガバナンス で、エンタープライズ利用のための統制機能を確認しましょう。このコンテンツでは、Kiro for enterprise の提供内容、データ保護(暗号化、サービス改善のオプトアウト)、利用状況の可視化、Overage と MCP の統制、ネットワーク設定(ファイアウォール、プロキシ、PrivateLink)について詳しく解説されています。特に重要なのは、Kiro for enterprise ユーザーはテレメトリとコンテンツ収集から自動的にオプトアウトされ、サービスの改善に利用されない点です。
組織での導入が決まったら、Day 8: Kiro における負債にならない Spec ファイルの扱い方 で、チーム開発における Spec ファイルの管理方法を学びましょう。機能ごとの Spec 分割、バージョン管理、複数アプリ間での共通仕様の管理など、長期的に負債化しない開発体制を構築するためのベストプラクティスが紹介されています。
チーム開発での実践例を知りたい方は、Day 9: Kiro を使ったチーム開発の実践 も合わせて読みましょう。AWS Japan の新卒メンバーが 4 人チームで Chrome 拡張機能を開発した実例を通じて、ステアリング機能の活用、適切なタスク分解、技術的境界での Spec 分割など、チーム開発で Kiro を最大限活かすコツが紹介されています。
発注元として開発会社と協業している方は、Day 10: スピードと品質の両立 – Kiro が加速する開発、GitLab AI が支えるレビュー が特に参考になります。Kiro の圧倒的なスピードと GitLab + Amazon Bedrock による品質担保を組み合わせることで、「開発が速すぎてレビューが追いつかない」という課題を解決する新しいパートナーシップモデルが提案されています。発注元の非エンジニアでも AI の支援により仕様書レベルでの品質チェックが可能になり、早期段階での問題発見によるコスト削減を実現できます。
4. 「実践的な使い方を知りたい」というあなたへ
こんな方におすすめ
- 基本は理解済み
- 実際の開発での活用方法を知りたい
- 具体的なユースケースや開発フローが見たい
- ターミナルベースの開発を好む
おすすめの学習パス
まず Day 4: Kiro を使ったペアプログラミングのすすめ で、AI 時代の新しい開発スタイルを体験しましょう。このコンテンツでは、AWS 社内ハッカソンでの実践例を通じて、Kiro を使ったペアレビューの効果(認知負荷の分散、即座のフィードバックループ)が紹介されています。ホワイトボーディングの画像認識、Agent Hooks による日英ドキュメント翻訳、MCP ツールの活用など、実践的なノウハウが満載です。
次に Day 7: イベントストーミングから要件・設計・タスクへ で、ビジネス分析から実装への橋渡しを学びましょう。イベントストーミングで可視化したビジネスフローを、Kiro の Spec 機能を使って要件定義・設計・実装タスクへと変換していくプロセスが詳しく解説されています。EARS 記法での要件定義、プロパティベーステストの自動生成など、ドメイン駆動設計と相性が良いプラクティスが組み込まれています。
Day 8: Kiro における負債にならない Spec ファイルの扱い方 で、Spec ファイルの長期的な管理方法を理解しましょう。Day7 で Spec の作り方を学んだら、Day8 で管理方法を学ぶという流れです。機能ごとの Spec 分割、requirements.md からの変更適用、Vibe から Spec への変換、バージョン管理など、実践的なベストプラクティスが紹介されています。
チーム開発での実践例を知りたい方は、Day 9: Kiro を使ったチーム開発の実践 も必読です。AWS Japan の新卒メンバーが 4 人チームで約 2 ヶ月かけて Chrome 拡張機能を開発した実例を通じて、ステアリング機能の活用(技術選定とバージョン管理、Spec との連携、AI からのヒアリング促進)、適切なタスク分解(MVP 思考での Spec 分割、技術的境界での切り分け)など、チーム開発で Kiro を最大限活かすコツが詳しく紹介されています。
ターミナルベースの開発が好きな方は、Day 6: Amazon Q Developer CLI から Kiro CLI へ:知っておくべき変更点 も合わせて読みましょう。ファジー検索機能(Ctrl+S で全コマンドを検索可能)、カスタムエージェント機能、スクリーンショット貼り付け機能(Ctrl+V でクリップボードの画像を直接チャットに貼り付け)、実験機能(/knowledge、/thinking、/tangent、/todos、/checkpoint など)が紹介されています。CLI でも IDE でも、Spec 機能は同じように活用できます。
特に注目:Kiro の真価を発揮する「仕様駆動開発」
Kiroweeeeeeek in Japan の中でも、特に注目していただきたいのが Day7 と Day8 で紹介された「仕様駆動開発(Spec)」です。これは Kiro の最大の特徴であり、他の AI コーディングツールにはない革新的な機能です。
Day 7: イベントストーミングから要件・設計・タスクへ。Kiro を活用した仕様駆動開発
イベントストーミングは、ビジネスの流れを可視化し、業務のエキスパートや開発メンバーが同じ理解を持てるようにするためのプラクティスです。しかし、「どこから実装に落とし込むのか」「どうテストするのか」という部分は、開発者がつまずきやすいポイントでした。
Day7 のコンテンツでは、EC サイトの注文プロセスを題材に、イベントストーミングの成果物を Kiro の Spec 機能を使って要件定義・設計・実装タスクへと変換していくプロセスが紹介されています。
コンテンツのハイライト:
- イベントストーミングの画像を Kiro に添付するだけで、要件の初版が生成される
- EARS 記法(WHEN / IF / THEN 形式)での構造化された要件定義
- 設計フェーズでのデータモデルとサービスメソッドの自動生成
- プロパティベーステストの自動生成(「任意の〜に対して、〜すべきである」という形式)
- イベントストーミングの「〜したら、〜になる」という因果関係が、プロパティテストの「任意の〜に対して、〜すべきである」という考え方と相性が良い
このコンテンツを読むことで、ビジネス分析から実装までの一貫した流れを理解でき、ドメイン駆動設計と相性が良いプラクティスを学べます。
Day 8: Kiro における負債にならない Spec ファイルの扱い方
Spec ファイルは「仕様駆動開発」を構成する要素であり、仕様を起点として設計・実装を進めることで、仕様と実装の同期を保ちながら開発を進めることができます。しかし、正しく扱わないと負債になる可能性があります。
Day8 のコンテンツでは、「Spec ファイルの切り方」「Spec ファイルの更新方法」「Spec ファイルの共有方法」の 3 つの視点から、負債にならないための工夫が紹介されています。
コンテンツのハイライト:
- Spec の切り方:プロジェクト全体を一つの巨大な Spec ファイルで管理せず、機能ごとに分割する(例:user
- authentication、product-catalog、shopping-cart など)
- Spec の更新方法:requirements.md → design.md → tasks.md → 実装の順で更新し、一貫性を保つ。または、Vibe モードで実装してから Spec に変換する
- Spec の共有方法:バージョン管理により実装と実装意図をまとめて管理。複数アプリ間の共通仕様は専用リポジトリで一元管理
Day7 で Spec の作り方を学んだら、Day 8 で管理方法を学ぶという流れです。この 2 つのコンテンツを合わせて読むことで、Kiro の仕様駆動開発を実践的に活用できるようになります。
まとめ:Kiro で変わる開発パラダイム
Kiroweeeeeeek in Japan を通じて、Kiro が単なる AI コーディングアシスタントではなく、開発パラダイムを変える可能性を持つツールであることをお伝えしてきました。
従来の AI コーディングアシスタントは、プロンプトを入力すればすぐにコードを生成してくれますが、そのコードが本当に要件を満たしているのか、どのような設計判断がなされたのかは不透明でした。Kiro の仕様駆動開発は、この問題を解決します。要件(Requirements)、設計(Design)、タスク(Tasks)という 3 つのフェーズを経て、構造化された開発プロセスを実現し、仕様と実装の同期を保ちながら開発を進めることができます。
また、Agent Hooks による自動化、MCP による外部システム連携、Steering によるプロジェクト固有のルール適用など、チーム開発を支援する機能も充実しています。Kiro は、個人の生産性向上だけでなく、チーム全体の開発効率と品質を向上させるツールとして設計されています。
次のステップ
Kiroweeeeeeek in Japan のコンテンツを読んで、Kiro に興味を持っていただけたでしょうか?
次のステップとして、以下のアクションをおすすめします。
Kiro をダウンロード
Kiro の公式サイト から Kiro IDE または Kiro CLI をダウンロードしましょう。まずは Free プランから始めて、基本的なコード生成機能や仕様駆動開発を体験できます。
自分のペルソナに合ったコンテンツから読み始める
このブログで紹介したペルソナ別ガイドを参考に、あなたに最適なコンテンツから読み始めましょう。すべてのコンテンツを読む必要はありません。必要な情報から順に学んでいきましょう。Kiroweeeeeeek in Japan で公開された記事に関しては定期的にお客様からいただいた質問をベースに可能な限りメンテナンスしていく予定です。ぜひお気に入りなどに登録しておいてください。
実際に Kiro を使って開発を試す
小さなプロジェクトから始めて、Kiro の Spec 機能や Agent Hooks を試してみましょう。実際に使ってみることで、Kiro の真価を実感できます。
コミュニティに参加
X(旧 Twitter)で #kiroweeeeeeek をつけて、あなたの体験や疑問を共有してください。どんな業界・規模・開発スタイルの方からの投稿も大歓迎です。AWS Japan チームも引き続き情報発信を続けていきますので、ぜひフォローしてください。Kiro は、生成 AI とエージェント時代における新しい開発パラダイムを提案しています。この Kiroweeeeeeek in Japan が、皆さまの開発体験を向上させる一助となれば幸い㌔
それでは、Kiro を使った新しい開発の旅を楽しんで㌔