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サンリオのエンジニア 6 名が 2 日間で体感した AI 駆動開発の可能性 — AI-DLC Unicorn Gym 座談会

AWS では、AI を活用した新しいソフトウェア開発手法「AI-DLC(AI-Driven Development Life Cycle)」を提唱しています。AI-DLC は、AI を単なる補助ツールとしてではなく、要件定義から設計・実装・テストまでの開発ライフサイクル全体に組み込みながら、人間が主導権を握る(Human-in-the-Loop)ことを前提とした開発手法です。この AI-DLC を短期間で体験・実践いただくワークショップが「AI-DLC Unicorn Gym(以下 UG)」です。

2026 年 6 月 11 日〜12 日、株式会社サンリオ デジタル事業開発部の皆様と 2 日間の「サンリオ AI-DLC UG」を開催しました。本記事では、開催レポートと、参加メンバーの皆様に体験を語っていただいた座談会の様子をお届けします。

1. サンリオ AI-DLC Unicorn Gym 開催レポート

サンリオ AI-DLC Unicorn Gym 参加メンバーの集合写真
サンリオ AI-DLC Unicorn Gym 参加メンバー

サンリオのデジタル事業開発部は、「キャラフォリオ」(公式とファンがつながる創作プラットフォーム)や「オモイデバッジ」(イベント参加記録・ユーザー交流 SNS)など、デジタルプロダクトの企画・開発を担っています。2025 年から開発の内製化に舵を切り、少数精鋭のチームで Claude Code を中心とした AI 活用開発を実践してきました。個人の生産性向上の先にある「チームとして、上流工程からどう AI を組み込むか」という課題への答えを求めて AI-DLC に着目されたことが、今回の開催のきっかけです。

当日はデジタル事業開発部 プロダクト開発課 シニアマネージャー 倉井 龍太郎 氏をはじめとする 2 チーム 6 名のエンジニアとプロダクトマネージャーが参加し、実際のプロダクトを題材に AI-DLC の全フェーズを体験しました。ツールには Kiro を利用し、AI エージェントを中心に据えた開発ワークフローを実践しています。AWS 側はアカウントマネージャーの荻原 賢大、ソリューションアーキテクトの山澤 良介・瀧田 直斗が各チームに伴走しました。

チーム テーマ 技術構成 成果
チーム A(オモイデバッジ) オモイデバッジ 管理機能拡張 — パッケージ詳細への URL リンク設置 TypeScript / Kiro inception から本番マージまで約 5 時間で完了。デプロイ済み。
チーム B(新規アプリ) 新規アプリの立ち上げ TypeScript / Kiro 管理者向け管理画面まで構築完了

チーム A の成果 — 「作らない」判断と、約 5 時間での本番マージ

チーム A では 2 つのユーザーストーリーを検討しました。1 つ目は、AI と一緒に価値と実現方法を掘り下げた結果「機能を実装しなくても運用でカバーできる」と判断し、あえて実装しないことを選択。AI で実装が速くなるほど「何を作らないか」の判断に価値が生まれることを示す成果となりました。

2 つ目のストーリー「パッケージ詳細への URL リンク設置」では、AI-DLC の全フェーズを一気通貫で体験しました。

時刻 フェーズ 内容
Day 2 10:59 Inception インタビュー型の add-inception スキルを作成
Day 2 13:59 Inception AI のインタビューを受けて inception ドキュメントを作成・マージ
Day 2 15:03 Construction 既存の設計スキルで設計書を作成し、自律実装へ
Day 2 15:58 マージ backend / API / 管理画面 / アプリの実装をマージ

inception 開始から本番マージまで 約 5 時間

2. 座談会 — 参加メンバーに聞く

荻原(AWS)今回の AI-DLC UG が実現した経緯を教えてください。

倉井氏(サンリオ)日頃から Claude Code を使って開発していましたが、個人の生産性は上がっても「チームとして、上流工程からどう AI を組み込むか」がずっと課題でした。AWS の AI-DLC のブログを見つけたとき、まさにこれだと思って、すぐにミーティングで相談しました。

荻原(AWS)AI にインタビューされながらユーザーストーリーを作るプロセスはどうでしたか。

チーム A メンバー(サンリオ)「何を・誰に・どんな価値を・どう検証するか」を AI が順番に聞いてくれるので、抜け漏れを防げました。価値のコンフリクトや成功指標など、一人では飛ばしがちな観点を確実に通過できたのが大きいです。またインタビューをスキル化し、改善ステップも組み込んだので、誰がやっても同じ品質のインセプションプロセスを踏めるようになりました。

荻原(AWS)AI-DLC を体験したことで、今後の開発にどう活かしていきたいですか。

倉井氏(サンリオ)大きく 2 つあります。1 つ目は、インセプションプロセスで言語化することで、企画側の目的をしっかり理解した上で開発が進められ、手戻りを大幅に減らせること。2 つ目は、ユーザーストーリーを書くことでプロジェクトメンバー全員が同じ情報を持った上で開発が進むことです。非常にスムーズでした。

チーム A メンバー(サンリオ)今後は実際の開発フローに PM の作業も組み込みたいと考えています。PM・エンジニアの「作業」をエージェントに任せて、人間は設計とレビューに専念する — それが目指す姿です。

倉井氏(サンリオ)内製化を進める中で「少人数でいかに大きな価値を届けるか」が常に課題です。AI-DLC はそのための方法論として非常に手応えを感じました。AI-DLC の旅はまだ始まったばかりです。

3. 今後の展開と AWS の支援

サンリオ デジタル事業開発部では、今回の UG で得た知見を実プロダクト開発に本格導入していく予定です。

  • Inception の標準化 — 今回作成したインタビュー型スキルをチーム標準プロセスとして運用開始
  • 「人間は設計とレビュー」モデルの実践 — AI が実行し、人間が監視・判断する AI-DLC の本質を日常の開発に浸透させる

ワークショップを運営して感じたのは、AI-DLC の Inception フェーズが Amazon の Working Backwards(お客様の体験から逆算して考える手法)と本質を同じくする、ということです。「誰に・どんな価値を・なぜ届けるのか」を AI のインタビューに答えながら言語化し、チーム全員で合意する。AI が「問い」を投げかけることで議論の抜け漏れが構造的に防げるため、経験の浅いチームでも質の高い要件定義ができるようになります。

AWS は、サンリオの AI 活用パートナーとして、UG で作成したスキルの実プロダクトへの適用と AI 駆動開発の定着を引き続き支援してまいります。倉井氏をはじめ、ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

本記事は、2026 年 6 月 11 日〜12 日に開催した「サンリオ AI-DLC Unicorn Gym」および参加メンバーの皆様との座談会をもとに構成しました。

著者プロフィール

荻原 賢大荻原 賢大
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 営業部 広域事業部門。株式会社サンリオを担当するアカウントマネージャー。お客様のビジネス変革を技術で支援することに情熱を注いでいます。最近は AI 駆動開発ライフサイクル (AI-DLC) の日本のお客様への展開にも取り組んでいます。

山澤 良介山澤 良介
AWS のソリューションアーキテクトとして、製造業を中心にエンタープライズ企業の支援をしています。その活動の傍ら、最近は Claude Code / Cowork の国内展開に向けた技術支援やコンテンツ作成に取り組んでいます。