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AI による物理的な現実世界の進化 : インテリジェントな自動化の最前線

本記事は 2025/10/13 に公開された “Transforming the physical world with AI: the next frontier in intelligent automation | Artificial Intelligence” を翻訳したものです。

昨今の人工知能と物理のシステムの統合は、技術的進化の重要な転換点となっています。特にフィジカル AI は、アルゴリズムがデジタルの境界を超え、形のある物理世界を認識し、理解し、また操作します。そのためフィジカル AI は、各業界の企業で、運営方針を根本的に変えるものになります。これらの人工知能のシステムは、デジタルの情報と物理的現実の間のギャップを埋め、効率性とイノベーションをもたらす前例のないほど大きな機会となります。多くの組織にとっては、このことは顧客満足を向上させる斬新な方法となり、結果として、全ての業界を変革することになります。

この変革を加速するため、AWS Generative AI Innovation Center は、MassRobotics とNVIDIA と協業し、Physical AI Fellowship を立ち上げました。これにより、次世代のロボティクスと自動化ソリューションを開発しているスタートアップが、必要なサポートを享受することが可能になり、先端を進むスタートアップとの協力ができるようになりました。以下はそのリストです。

  • Bedrock Robotics – 既存の建築業のシステム群に、自律性を追加提供するためのハードウェアとソフトウェアを、1日でインストールすることを可能にします
  • Blue Water Autonomy – ハードウェア、ソフトウェア、AI を統合して、無人の船が長期間にわたり、外洋での運航を行うことを可能にします
  • Diligent Robotics – 動的で人間と対面する状況で稼働する、自律型ヒューマノイドロボットに使用される基盤モデルを開発しています
  • Generalist AI– 器用さに焦点を当てて、汎用ロボット向けのエンドツーエンドの AI 基盤モデルを開発しています
  • RobCo – 機械の管理、パレタイジング(パレットにまとめる作業)、ディスペンシング(分配や塗布)、溶接などのタスクを初期投資や専門知識なしで自動化するためのモジュラーハードウェアとノーコードシステムを提供しています
  • Tutor Intelligence – AI 駆動のロボットを構築し、メーカーや倉庫がすぐに投資対効果を得ることを可能にしています
  • Wandercraft – リハビリテーションや在宅、または外来センターにおいて、歩行能力の回復を支援する外骨格ロボットを開発しています
  • Zordi – AI、ロボティクス、機械学習を組み合わせて、温室農業を革新しています

この AI と物理システムの統合は、企業や公共団体などの組織にとって、従来の少しずつ発展してきた改善とは全く異なる、業務や顧客体験で可能だったことの範囲を根本的に変えるものとなります。

フィジカル AI の段階:自動化から真の人工知能へ

フィジカル AI の能力スペクトラム

組織がフィジカル AI を推進するプロジェクトを評価する場合、戦略的に行なわなければなりません。そのためには、一つ一つのソリューションでできる自動化が、自動化の段階のどこに位置するかを理解する必要があります。自動化の各段階は、自律性と自然さにおいて下記のように明確なレベルに分けられます。

  • レベル 1:基本的な物理的な自動化: この基礎段階では、厳密に制御された環境で事前定義されたタスクを実行するシステムの段階です。組立ラインの産業用ロボットを想像してみてください。とても効率的ですが、画一的で、完全に人間のプログラミングと指示に依存しています。
  • レベル 2:適応した物理的な自動化: この段階では、システムは柔軟にタスクを実行することができます。個々のアクションは事前にプログラムされていますが、リアルタイムの環境では、トリガによりタスク実行の順序を調整します。たとえば人間が近くにいるときに動作を変更することができる協働ロボットが、こういった適応の例といえます。
  • レベル 3:部分的に自律的なフィジカル AI: この段階では、システムが人間のわずかな入力でタスクの計画、実行し、環境にふさわしい、知性的な動きを行えます。このレベルで獲得される自律性は、たとえば、デモンストレーションを実行することにより、新しいプロセスを学習することが可能なロボットです。
  • レベル 4:完全に自律的なフィジカル AI: 最も高度なレベルでは、わずかな人間の監視の下で、様々な領域で動作できるシステムの実現が可能となります。このレベルのシステムでは新しいシナリオや環境の変化に柔軟に対応します。ほとんどの商用ソリューションはレベル 1 または 2 にとどまっていますが、完全な自律性に向けた進化は現在どんどん加速してきています。

進化する技術:フィジカル AI の構成要素

上記の基本的な自動化から、完全な自律性を実現するための進化には、高度な技術基盤が必要です。進化を推進する技術には下記があります:

  • 高度な制御理論 は、精密で信頼性の高い作動を可能にします
  • 高精度知覚モデル は、マルチモーダル(複数の異なる)センサーが稼働し、機械が周りの複雑な環境を理解することを可能にします
  • エッジ AI アクセラレータ は、アクションの時点でリアルタイムの推論をサポートし、遅延を許容しないタスクの実行をします
  • 基盤モデル は、マルチモーダルのデータセットでトレーニングされ、ドメイン全体で一般化できる人工知能を提供します
  • デジタルツインシステム は、実環境での本稼働前に、物理システムのシミュレーション、検証、そして最適化するための調整し、開発サイクルを大幅に加速します

業界からの後押しと投資の好機

フィジカル AI は複数の他の急成長産業の中心に位置しています。、AI ロボット分野だけでも 2034 年までに $1,242.6億 にすら到達すると予測されています。同時に、デジタルツイン技術産業も関連する産業となり、$3,790億 まで成長すると予測されています。企業にとってこういった予測は、自動化と効率性、ならびにデジタル変革に対してのアプローチを抜本的に変えるべきであると示唆になります。

投資ビジネスもこのチャンスを察知しており、フィジカル AI 分野で特にいくつかの重要なテーマに注視しています。その一つとしてヒューマノイドロボティクスはよく話題にあがり、第一線に立つだろうと言われています。いくつかのスタートアップビジネスは既に大規模な資金調達を実現しており、人間の活動環境でシームレスに動作する、汎用ロボットワーカーを開発しています。同時に、ロボティクスのための基盤モデル、つまり様々なタスクに適応し、多様なロボットシステムを制御できる高機能の「ロボット脳」の開発への関心が高まっています。各業界では業界内でしか使用できないアプリケーションの存在が共通の課題となっており、この課題に迅速に取り組むために柔軟で高度な知能を持つシステムの実現に継続して投資しており、この取り組みの分野は倉庫の物流の効率化から農作業の革新にまで多岐にわたります。フィジカル AI の幅広い能力により斬新なアプリケーションが出現し、手術用ロボティクス、自律型配送システム、高度な防衛技術など、さまざまな分野での活用が実証されています。新しい領域への拡大により、各業界で フィジカル AI の多様で大きな変革力が浮き彫りになってきています。

現実世界への影響:フィジカルAI 変革の定量化

投資市場での傾向で将来への期待が高いことは明らかではありますが、さらにフィジカル AI はすでに各業界で具体的な成果を上げています。例えば、Amazon のサプライチェーンはインテリジェントな自動化によって効率を 25%向上させ、Foxconn は製造のデプロイに要する時間を 40%を削減しました。ヘルスケアでは、AI が支援した手術により合併症の発生率が 30%減少し、手術時間を 25%削減し、多大な成果を上げています。

2024 年の製造業とエネルギーに関する AI レポートによると、製造に AI を使用している製造業の 64%が ROI の改善があり、約 3 分の 1 の企業が 1 ドルの投資に対して 2〜5 ドルの収益を見込んでいます。こういった企業では 20〜40%の効率改善、ならびに 15〜30%のコスト削減、そして Robot-as-a-Service のような革新的なビジネスモデルの提供へと進化しています。

例えば小売業では、デジタルツインを使用してそれぞれの店舗レイアウトが買い物客の行動に与える影響を調査しています。この調査では、自律型の在庫管理システムとフィジカル AI を組み合わせたテストをして、店舗での物理的なスペースの活用と運営の効率を上げるために役立ちました。一方、農業ではデータ活用による作物品質の向上、作物のモニタリング、自動収穫の発展に恩恵を受けています。このように、フィジカル AI は広い範囲で各産業にどんどん強い影響をもたらしてきています。

将来への展望

フィジカル AI の影響はすでに業界全体で明らかになってきています。多くの企業はすでに概念実証の先に進んで、測定可能なビジネス的な価値を立証しています。この潮流に参加する組織にとっては、Physical AI Fellowship の助力が重要な役割を担い、共に新しい技術を研究から商用アプリケーションへ発展させる役割を担う道を歩むでしょう。さまざまな規模とそれぞれの業種の企業にとって、AI と物理システムの統合を成功させることが、今後 10 年間で業界のリーダーを決めることになるでしょう。

詳細情報:

お問い合わせ先:みなさんの企業でチーム一体となり、フィジカル AI の活用計画やスキル開発の準備、またリスクについて検討をご希望される場合はこちらのリンク先からご連絡をください。

実験から本番環境まで専門的なカスタマイズされたサポートを提供する Generative AI Innovation Center についてはこちらをご覧ください。

著者

Sri Elaprolu は AWS Generative AI Innovation Center のディレクターであり、企業や政府組織向けに最先端の AI ソリューションを実施するグローバルチームを率いています。AWS での 13 年間の在籍中、彼は NFL、Cerner、NASA などの組織と提携する ML サイエンスチームを率いてきました。AWS 以前は、Northrop Grumman で 14 年間製品開発とソフトウェアエンジニアリングのリーダーシップの役割を担っていました。Sri は工学修士号と MBA を保持しています。

Alla Simoneau は 15 年以上の経験を持つ技術および営利法人分野のリーダーであり、現在 Amazon Web Services(AWS)で Emerging Technology Physical AI Lead を務め、AI と実世界のアプリケーションの交差点でグローバルなイノベーションを推進しています。Amazon で 10 年以上を過ごした Alla は、戦略、チームビルディング、運用卓越性のリーダーとして認められており、スタートアップや企業顧客のために最先端の技術を実世界の変革に転換しています。

Paul Amadeo は人工知能、機械学習、IoT システム、RF 設計、光学、半導体物理学、および先進工学にまたがる 30 年以上の経験を持つ経験豊富な技術分野におけるリーダーです。AWS Generative AI Innovation Center の フィジカル AI のテクニカルリードとして、Paul は AI 機能を具体的な物理システムに変換し、概念から生産までの複雑な実装を通じてお客様をガイドすることを専門としています。彼の多様な背景には、エッジ環境向けのコンピュータビジョンシステムの設計、世界中で何十億ものデバイスを生産したロボットスマートカード製造技術の設計、営利法人および防衛分野の両方でクロスファンクショナルチームをリードすることが含まれます。Paul はカリフォルニア大学サンディエゴ校で応用物理学の修士号、カリフォルニア工科大学で応用物理学の学士号を取得し、光学システム、通信デバイス、製造技術にまたがる 6 つの特許を保持しています。

Randi Larson は、AWS Generative AI Innovation Center で AI イノベーションと経営戦略のギャップを埋め、組織が技術的なブレイクスルーをビジネス価値に変換する方法を実現しています。Randi は戦略的なストーリー構成とデータ駆動の洞察をグローバルな基調講演、Amazon 初のtech-for-good ポッドキャスト、そして AI 変革に関する業界や Amazon のリーダーとの対話を通して提供しています。Amazon 入社前、Randi は Bloomberg のジャーナリストとして、また経済機関、シンクタンク、中小オフィスのテクノロジーイニシアチブのアドバイザーとして、分析的精度を上げてきました。Randi はデューク大学フーカビジネススクールで MBA を、ボストン大学でジャーナリズムとスペイン語の学士号を取得しています。