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Valkey が 2 周年を迎えました

本記事は 2026 年 5 月 7 日に公開された “Valkey turns two” を翻訳したものです。

2 年前、Valkey は、Redis に対する真にオープンでベンダーニュートラルな代替手段の必要性に応えるコミュニティ主導の取り組みとして誕生しました。本記事では、この 2 年間の歩みを振り返り、Valkey の急速な普及、コミュニティによってもたらされたイノベーション、そしてこれらの発展がモダンなキャッシングおよびリアルタイムデータ基盤の未来にとって何を意味するのかをご紹介します。わずか 2 年という短い期間で、Valkey はほぼすべての主要なクラウドプロバイダーやオープンソースディストリビューションにおけるデフォルトの高性能キーバリューデータストアとなり、キャッシング分野におけるコミュニティ主導のイノベーションの中心的存在となりました。Valkey は Docker の累計プル数 1 億回を突破し (前年比 17 倍)、225 名を超えるコントリビューターを集め、1,500 件以上のプルリクエストが提出されています。これは同時期の Redis の開発ペースのおよそ 2 倍に相当します。

この勢いは、強力なイノベーションのフライホイールを生み出しています。クラウドプロバイダー、企業、開発者全体で採用が拡大するにつれ、Valkey オープンソースエコシステム全体からの貢献により、セキュリティ、信頼性、パフォーマンス、コスト効率、および高度な機能の改善が推進されてきました。これらの改善により、本番環境で最大 60% 優れた価格性能比や、全文検索、集計、ベクトル類似性、Bloom フィルターなどの高度な機能を利用できるようになるといった、目に見える形での向上が実現しています。こうした強化により、何万もの Amazon ElastiCache のお客様が数十万のクラスターを Valkey に移行しています。Intuit、Airbnb、Nextdoor、Tinder、Peloton、Amazon Ads、Amazon Music といった組織は現在、最もレイテンシーに敏感でビジネスクリティカルなシステムの一部を Valkey に依存しています。

このイノベーションのフライホイールは、Valkey のオープンガバナンスとコミュニティ主導の開発モデルによって実現されています。組織が Valkey を採用し、大規模に運用するにつれ、その実世界での経験がコントリビューション、ベンチマーク、運用フィードバックを通じてプロジェクトに直接還元されます。これにより、Valkey エコシステム全体のイノベーションのペースが加速します。

「Valkey が注目に値するのは、1 億回の Docker プルや 2 万 5,000 を超える GitHub スターといった目を引く数字ではなく、その背後にいるコミュニティです。Ericsson、ByteDance、Intel、Salesforce、Snap、その他数十の組織に所属する多様な開発者たちが、ほぼすべてのクラウドプロバイダーと共に Valkey を構築しています。コミュニティ主導のガバナンスによるこのような幅広いオープンなコラボレーションこそが、長期的に見て最高のテクノロジーが生み出される方法なのです。」

— Matt Wilson、AWS 副社長兼主席エンジニア

Chart showing Valkey adoption metrics

キャッシュ・ミー・イフ・ユー・キャン: Valkey の採用

Valkey の成長は、利用状況の指標だけでなく、その周りに形成されているエコシステムの広がりにも表れています。わずか 2 年で、Valkey は新しいオープンソースプロジェクトから、キャッシング、リアルタイムデータアクセス、検索、人工知能 (AI) ワークロードのために広くサポートされる基盤へと進化しました。クラウドプロバイダー、商用サービスプロバイダー、アプリケーションフレームワーク、業界全体の開発者コミュニティが参加しています。

このエコシステムには現在、AWSGoogleAlibabaOracleTencentDigitalOcean といったクラウドプロバイダーからの 10 を超えるマネージド Valkey サービスが含まれています。PerconaAivenMomento などのサービスプロバイダーや商用ディストリビューターは、このプロジェクトを中心としたマネージドサービス、エンタープライズサポートモデル、付加価値の高いサービスを構築しています。アプリケーション層では、Spring Data ValkeyLaravel といったフレームワークが Valkey のサポートを追加しています。LangChainHaystackCogneeRecall などの AI および大規模言語モデル (LLM) フレームワークでは、ベクトルストレージ、検索、エージェントメモリ用の Valkey 統合が導入されました。これらの統合により、Valkey は高性能キャッシュとしての役割から、最新のリアルタイムおよび AI アプリケーションのコアデータ層へと、その役割を拡大しています。

Amazon ElastiCache における Valkey の採用も、業界全体の同様の勢いを反映しています。ElastiCache の最大規模の顧客による実際の本番環境でのデプロイは、Valkey が今日稼働しているスケールを示しており、極めて高いスループット、低レイテンシー、継続的な可用性を求められるインターネット規模のアプリケーションを支えています:

ElastiCache for Valkey の顧客採用ハイライト

  • Intuit は、重要なアイデンティティワークロードを ElastiCache for Valkey にアップグレードした結果、ダウンストリームのサービスコールを最大 80% 削減し、レイテンシを約 95% 改善したことを報告しています。
  • Sanoma は、人間のモデレーターによる判断のオーバーライドをベクトルとして保存することで、ニュースブランド全体で AI 支援によるコメントモデレーションを改善するために ElastiCache for Valkey を活用しています。現在、コメントの 30% が過去のモデレーター判断と照合されており、全ケースの 6.5% でそのコンテキストが直接 AI の判断を変更し、モデルの再学習や別途ベクトルデータベースを運用することなく、精度を向上させています。
  • Tinder は、Amazon ElastiCache の低レイテンシ性能を活用して、毎日数十億のユーザーアクションを処理し、世界規模のデーティングプラットフォーム全体でリアルタイムインタラクションをサポートしています。
  • Peloton は、ElastiCache を活用してライブリーダーボードを稼働させ、世界中のライダーがサブミリ秒の更新でリアルタイムに競い合えるようにしています。
  • Amazon Ads は、Sponsored Products 広告プラットフォームを稼働させるために ElastiCache for Valkey を使用しています。このシステムは、数百ノードに及ぶクラスターを運用し、1 日あたり数十億の広告インプレッションを配信しながら、毎秒数千万のリクエストを処理しています。この規模であっても、グローバルインフラストラクチャ全体で p99 レイテンシ 5 ms 未満、99.99% の可用性を維持しています。
  • Nextdoor は、800 以上のノードを Valkey にアップグレードすることで、地域コミュニティ向けソーシャルプラットフォームを稼働させながら運用コストを削減しました。

「組織がミッションクリティカルなワークロードをグローバル規模で実行するために採用する中で、Valkey のようなプロジェクトがこれほど急速に勢いを増していくのを見るのは非常に刺激的です。エンジニアリングの専門知識と運用経験をコミュニティに還元することで、エコシステム全体のイノベーションを加速させています。お客様は、パフォーマンス、信頼性、機能の改善がより速いペースで進むことから恩恵を受けています。」

— G2 Krishnamoorthy, AWS データベース担当バイスプレジデント

勢いの背景にある取り組み

急速な普及に呼応するように、急速なイノベーションも進んでいます。Valkey コミュニティ全体の組織からの貢献により、パフォーマンス、信頼性、コスト効率、機能性において数多くの改善が生まれています。プロジェクト開始以来、225 名を超える貢献者が 1,500 件以上のプルリクエストを提出しました。これは、同時期の Redis における開発ペースと比較して、アクティブな貢献者数とマージされたプルリクエスト数の両方でほぼ 2 倍にあたります。この急速なペースは、従来の単一ベンダーによる開発モデルを上回るオープンソースコラボレーションの力を示しています。

世界をリードするテクノロジー企業の多くがこのプロジェクトに積極的に貢献しており、ByteDance、Intel、Salesforce、Snap などの組織に加え、ほぼすべての主要なクラウドプロバイダーが参加しています。開発のペースは、各組織が共通して依存するコアインフラストラクチャの改善に共同投資する、オープンで業界全体の協力モデルの強さを反映しています。しかし、数字よりも重要なのは、コミュニティが構築しているものがもたらすインパクトです。2 年間にわたるイノベーションを 1 つの投稿で完全に伝えることは困難ですが、以下のハイライトは、この成長を続けるコミュニティから生まれたいくつかのイノベーションを示しています。これらには、最近 Amazon ElastiCache での一般提供が発表された Valkey 9 の最新のイノベーションが含まれます (詳細は別の ブログ投稿 をご覧ください)。

パフォーマンス

Valkey 9 は、インメモリデータストアの可能性の限界を押し広げ続けています。パフォーマンスの向上には、パイプライン化されたコマンドのメモリプリフェッチによる最大 40% のスループット向上ゼロコピーレスポンスによる最大 20% のスループット向上、そして Multipath TCP による最大 25% のレイテンシー削減が含まれます。これらの改善は、Valkey 8 で導入された再設計された I/O スレッディングアーキテクチャによる最大 230% のスループット向上および最大 70% のレイテンシー改善といった、以前の Valkey のパフォーマンス改善の上に積み重ねられています。ElastiCache はまた、Amazon ElastiCache Serverless でキャッシュあたり毎秒最大 500 万リクエストを達成しました。しかし、パフォーマンスは実環境下で予測可能であり続けてこそ意味があります。このため、Valkey コミュニティは、大規模環境で一貫した信頼性につながるパフォーマンス向上の提供に多大な投資を行ってきました。

信頼性

信頼性の改善は、実際の本番環境においてレイテンシーを予測可能に保ち、復旧を高速にすることに重点を置いています。最近の Valkey リリースでは、P99 レイテンシースパイクを削減する Active Defragmentation の改善と、プライマリへのメモリ負荷を軽減しながら完全同期時間を最大 50% 短縮できるデュアルチャネルレプリケーションが導入されました。TLS フル同期の最適化により、同期速度は最大 18% 向上します。これらの強化により、お客様がより大規模で要求の厳しい本番環境ワークロードを実行する際にも、レイテンシーを予測可能に保ち、復旧を高速に維持できます。

コスト効率

Valkey 9 では、クラスターモードにおける numbered databases (番号付きデータベース) の対応により、コスト効率がさらに向上します。チームは、ネームスペースごとに個別のインフラストラクチャを過剰にプロビジョニングする代わりに、同じ分散クラスター内でアプリケーション、テナント、または環境を論理的に分離できます。これらの改善は、Valkey 8 および 8.1 におけるコアデータ構造の最適化など、これまでの Valkey の効率性向上の上に構築されており、ElastiCache の Redis OSS と比較して最大 60% 優れた価格対性能を実現できます。その結果、クラスターは小さくなり、インフラストラクチャコストは低減し、成長のための余裕が広がります。コアエンジンがより効率的になることで、Valkey はより少ないインフラストラクチャで大規模なワークロードを実行できるよう支援し、従来のキャッシュを超えた新しいカテゴリのアプリケーションへも拡張し続けます。

新機能

Amazon ElastiCache 上の Valkey 9 を利用することで、お客様は最新の Valkey search 機能にアクセスできます。これは、以前に追加されたベクトル検索を拡張し、フルテキスト検索、サーバーサイド集計、ハイブリッドクエリを提供することで、リアルタイム検索、セマンティック検索、フィルタリング、分析をキャッシュ内で直接実行可能にします。これらの機能により、お客様はマイクロ秒レベルのレイテンシーと毎秒数百万リクエストのスループットで、継続的に更新されるテラバイト規模のデータを検索および分析できます。ユースケースには、商品カタログ検索、ドキュメント探索、レコメンデーションシステム、異常検知、ログ分析、会話メモリ、検索拡張生成 (RAG) などがあります。

Valkey 9 では ハッシュフィールドの有効期限 も導入され、ハッシュ内の個々のフィールドに対してきめ細かい TTL 制御が可能になります。これにより、キー全体を一度に失効させたり、アプリケーション側に有効期限のロジックを追加したりする必要がなくなります。これらの革新的な機能は、Bloom フィルター、JSON サポート、LDAP 統合、地理空間ポリゴンクエリなど、最近の Valkey エンジンのリリースおよびモジュールに追加された他の機能の上に構築されています。

私たちの主要な価値観に基づいた構築

過去 2 年間における Valkey の急速な普及は、業界規模でのオープンなコラボレーションの力を示しています。開発者による広範な利用、クラウドプロバイダーやテクノロジー企業からの幅広い参加、そして中立的なオープンガバナンスが、強力なフライホイールを生み出しました。より多くの組織が Valkey を本番環境にデプロイするにつれて、その運用経験が直接プロジェクトにフィードバックされ、パフォーマンス、信頼性、スケーラビリティ、コスト効率の継続的な改善を推進しています。

数十万のクラスターと、世界で最も要求の厳しいリアルタイムアプリケーションで Valkey を運用することで、イノベーションの新たな機会が次々と生まれています。Valkey のオープンソースエコシステム全体からの貢献により、コアエンジンが強化されるとともに、開発者が構築できる範囲が拡大しています。ユースケースは現在、従来のキャッシュやセッション管理から、リアルタイム分析、検索、AI 駆動型ワークロードにまで広がっています。

開発者、運用者、そしてあらゆる規模の組織の皆様に、Valkey の GitHubSlack でのご参加をお待ちしております。コードの貢献、フィードバックの提供、本番環境での Valkey の採用など、形式は問いません。最新のイノベーションは Valkey のブログ でご覧いただけます。また、世界中のコントリビューターやユーザーが集う、今後の コミュニティイベント や技術セッションへのご参加もお待ちしております。

2 年が経過し、Valkey は、オープンでコミュニティ主導のテクノロジーが、単一ベンダーモデルよりも迅速にイノベーションを起こし、より大きくスケールし、より多くの価値を提供できることの証となっています。この旅はまだ始まったばかりです。

著者について

Mas Kubo

Mas Kubo

Mas は、AWS のインメモリデータベースチームのプロダクトマネージャーで、Amazon ElastiCache のオープンソース高性能データストアエンジンである Valkey に注力しています。仕事以外では、フリーダイビング、パラグライディング、カイトサーフィン、セーリングを通じて風と海を追いかけています。

Meet Bhagdev

Meet Bhagdev

Meet は AWS のシニアマネージャー PMT-ES です。Amazon ElastiCache および Amazon MemoryDB のプロダクトマネジメントチームを率いています。Meet はオープンソース、データベース、分析に情熱を持ち、お客様の要件を理解し、優れた体験を構築するために時間を費やしています。

Madelyn Olson

Madelyn Olson

Madelyn は Valkey プロジェクトのメンテナーであり、Amazon ElastiCache および Amazon MemoryDB のプリンシパルソフトウェア開発エンジニアです。Valkey エンジンの安全で信頼性の高い機能の構築に注力しています。余暇には、長いハイキングや穏やかなサイクリングを通じて、太平洋岸北西部の自然の美しさを楽しんでいます。


本記事は、Valkey turns two を翻訳したものです。翻訳は Solutions Architect の Hayato Tsutsumi が担当しました。