Tom Soderstrom:
私は欧州の AI 関連法令に興味があります。あなたは既に取り組みを始めているのですね。それに準拠する予定なのですね?
David Villaseca 氏:
そのとおりです。欧州におけるこれらの膨大なコンプライアンス要件に対して、当社は人間中心のアプローチを採用しています。これは、当社全員が足並みを揃え、人間中心のアプローチを確実に採用する必要があるという考え方です。例えば、データと人工知能の共同ガバナンスモデルがあります。また、ビジネス部門の同僚と連携して、適切なデータ所有者を確実に設けておくために、新しいデータ管理オフィスを構築しました。これは重要な要素だと考えています。そして、データと人工知能の民主化です。当社は、すべての従業員がこれらの人工知能ソリューションの取り扱い方を理解できるように取り組んでいます。例えば、当社では、約 2,000 人の従業員にデジタルスキルのトレーニングを実施しています。そして、当社は専門的なスキルを習得し、ビジネスやプロセスのエキスパートである約 250 名のシチズンデータサイエンティストを擁しています。これらのシチズンデータサイエンティストは現在、当社のデータサイエンスツールや人工知能ツールを使用しています。これは重要なことだと考えています。
そして、当然のことながら、欧州連合 (EU) の人工知能関連法令を遵守する必要があります。これらの規制は、人工知能を利用して何をしてよいのか、何をしてはいけないのかについて具体的な制限を設けています。さらに、当社は独自の倫理原則を策定しました。そして、最終的には、これらのガバナンスの複雑さを軽減する必要があり、そのために人工知能のガバナンスおよびオブザーバビリティプラットフォームを構築しました。これは 100% 社内で構築したという点で興味深いと思います。このプラットフォームはガバナンスと、すべての人工知能ソリューションにおける倫理原則の管理という考え方に重点を置いています。さらに、同僚やお客様とともに適切なソリューションを生み出していけるように、適切なヒューマンインサイトに基づくアプローチを採用する必要があります。そして、最終的には、当社の持続可能性へのコミットメントを踏まえて、人工知能が関係するあらゆる開発において、エネルギー消費が最適化され、潜在的な二酸化炭素排出量が削減されるようにする必要があります。これは、これらの規制をどのように活用し、コンプライアンスを超えて取り組んでいくという点で、非常に重要な点だと考えています。
Tom Soderstrom:
私は Jet Propulsion Laboratory の Chief Technology Innovation Officer を務めていました。Jet Propulsion Laboratory は NASA の一機関です。シチズンサイエンティストについて言及がありましたね。それを聞いてうれしくなりました。シチズンサイエンティストは実に多くのことを成し遂げることができます。私たちの助けになってくれますし、無償労働であるにもかかわらず、関わりたい、良いことをしたいと考えています。シチズンサイエンティストはどのようにして関わることができるのですか? 良いことをする機会をどのように与えているのでしょうか?
David Villaseca 氏:
当社はさまざまなアプローチを組み合わせています。まず、これらのシチズンサイエンティストのデジタルスキルと人工知能スキルの育成を行っています。そのため、この領域では多くのトレーニングが提供されています。また、適切なツールとソリューションを提供する必要があります。例えば、シチズンサイエンティストを強化およびサポートするために適切なサポートとエージェントを開発できる生成 AI ファクトリーを構築しました。このプラットフォームとファクトリーは、シチズンサイエンティストを確実にサポートできるように、生成 AI を利用して構築されています。適切なモデルを再利用することで、効率的な方法で取り組みを進めています。
持続可能性という点に戻りますが、当社は最適な LLM ソリューションを選択できるよう努めています。コストや精度だけでなく、繰り返しになりますが、エネルギー消費の観点も踏まえて選択しています。例えば、サービスステーションやエネルギーパークの現場の労働者へのサポートも行っています。これは、シチズンサイエンティストが適切な手順を理解する上で非常に役立つと考えています。また、エンジニアリングチームや HR にもサポートを提供しています。これらのさまざまな機会で、シチズンデータサイエンティストや多くの同僚に活躍してもらっています。
Tom Soderstrom:
興味深い内容に言及がありましたね。さまざまな LLM モデルについてです。もちろん、AWS は、「一つの指輪は、すべてを統べ」を信じていません。実際、各大規模言語モデルは改善とイノベーションを続け、お客様は自らのユースケースに最適なものを選択することになります。御社では最終的に、言語モデルをいくつ使用する予定ですか?
David Villaseca 氏:
当社が事業を展開している中、この数年で、当社の能力は大きく拡張されました。Amazon が、新しいソリューションや、Amazon Nova という新しい基盤モデルを発表すると、当社はリアルタイムでさまざまなソリューションを比較して、当社のニーズに最適なものを選択できるようになります。将来的には、さまざまな LLM を使用するようになると考えています。現在、当社はさまざまなニーズに合わせてさまざまな LLM を使用しています。規模の点で、より低コストの LLM が必要になる場合もあるでしょうし、より高度なモデルが必要になる場合もあるでしょう。最終的には、これらを自分たちで決定できるようにしておく必要があります。この点に鑑みて、例えば、当社の生成 AI プラットフォームにおける、Amazon Bedrock ソリューションとの連携は極めて大きなメリットをもたらしていると思います。各アプリケーションのために最適な LLM モデルを選ぶうえで、非常に役立っています。
Tom Soderstrom:
なるほど。御社の実験から多くの学びが得られることでしょう。生成 AI に関して私たちが目にしているもう 1 つの状況は、データの重要性が認識され直しているということです。当然ながら、御社は膨大なデータをお持ちです。データの量、データ戦略、データの多様性、それが御社の今後の取り組みにどのような影響を及ぼすのかについてお話いただけますか?
David Villaseca 氏:
たしかにそのような状況にありますね。当社が学んだことは、すべての人工知能ソリューションが強固なデータ基盤に基づいて構築される必要があるということです。Moeve の場合、過去 6 年間にわたって、クラウドジャーニーに取り組んできました。そして、約 400 のデータ駆動型のソリューションを開発し、12 のデータドメインにまたがって取り組みを進めています。つまり、当社はデータ戦略のこの領域で豊富な経験を積んできました。そして重要なのは、それでは不十分だということです。
現在、当社は人工知能を利用し、投資収益率を高めている一方で、データ収集における取り組みを強化しています。さまざまなタッチポイント、さまざまなアセットから、より多くのデータを取得する必要があります。
そして、適切なデータ品質が重要となります。当社の場合、先ほどお話ししたように、データ管理オフィスが情報の質を管理しています。また、適切なメタデータも必要です。これらは常に考慮すべき要素だと思います。データ管理と人工知能関連の開発の組み合わせが重要なのです。
Tom Soderstrom:
なるほど。すばらしいお考えですね。興味深いです。ところで、Moeve の 2030 Positive Motion 戦略について耳にしました。それについて少し教えていただけますか?すばらしい取り組みのようですね。
David Villaseca 氏:
はい。Positive Motion は Moeve の変革におけるビジョンだと考えています。当社は皆、同じ目的を持って取り組んでおり、ビジネスが正しい方向に進むようにするために必要となる強力な指標も設けています。先ほどお話いただいたように、当社は上流のビジネスにおける投資の大部分を売却し、バイオ燃料とグリーン水素ソリューションに投資しています。これは意義深いことだと思います。当社は電気自動車と世界中のさまざまなソリューションを組み合わせています。例えば、グリーン窒素は、B2B の世界における輸送および産業分野のお客様にとって非常に重要です。当社は、最終的には、南ヨーロッパにおいて持続可能なエネルギー分野のリーダーとなることを目指しています。そして、それは当社全員にとっての真の目的です。デジタルチームとすべての同僚は、同じビジョンを持って働いています。当社が共有するこの目的は、非常に力強いものだと思います。
Tom Soderstrom:
そのミッションは非常に重要ですね。NASA 時代のお話をさせてください。John F. Kennedy 大統領が NASA を訪問し、「我々は 1962 年に人類を月に送り込む。容易だからではなく、困難だからだ」と述べたときのことです。 大統領は清掃員に「あなたは NASA のために何をしていますか?」とたずねました。 清掃員は「エンジニアのために、この場所をきれいにするのを手伝っています」と答えることもできでしょう。 しかし、答えは違いました。その清掃員は、「私は人類を月に送り込むお手伝いをしています」と答えたのです。 このことからもおわかりのように、ミッションステートメントは非常に明確でした。Moeve のミッションステートメントはどのようなものだとお考えですか?
David Villaseca 氏:
当社は明確なビジョンを持っています。すなわち、当社は、持続可能なエネルギーによって、世界、さまざまな産業、さまざまな人々を支え、この成長を可能にすると同時に、持続可能なものにしたいと考えています。これは当社にとって非常に力強いビジョンだと思います。この「Positive Motion」という考え方は、当社がプラスの影響をもたらす必要があるという考え方を強化し、当社が今まさに行っているすべての活動は、非常に力強いものとなっています。そして、デジタルスキルを持つ人材を引き付けるのにも...
Tom Soderstrom:
はい。
David Villaseca 氏:
非常に役立っています。例えば、ご想像いただけるように、データサイエンティストというスペシャリストを見つけるのは困難です。しかし、すばらしいことに、当社がこのビジョンを持っていることで、この人材を引き付けることができるのです。そして、自社のモビリティを持続可能な方法で変革したいと考えている意識の高い B2C のお客様だけでなく、自社が属する業界を変革したいと考えている B2B のリーダーも引き付けることができます。欧州では、エネルギー転換を促進する新しい規制が導入されており、当社は航空業界のリーダー企業と多くの話し合いを行っています。これらの企業からは、例えば、「御社の新しいバイオ燃料工場で生産している持続可能な航空燃料をどのように活用すれば、持続可能な方法で事業を加速できるでしょうか?」とたずねられます。 このような話し合いは本当に興味深いものです。そして、当社は、これらの企業とともに、データと人工知能に基づいたソリューションを生み出しています。これは、当社自身の脱炭素化の取り組みを支えるだけでなく、これらの企業自身の脱炭素化の取り組みを支えることも目的としています。これは非常に力強いことであり、当社は、Positive Motion のビジョンを社会の共有ビジョンとして拡大していくことができると考えています。これは非常に力強いことだと思います。
Tom Soderstrom:
1 つの質問が頭に浮かびました。デジタルトランスフォーメーションを進めなければならないことについて、世界中のお客様と話す中でわかったのは、企業文化を変えるのが難しいということです。これについてはどのように感じていますか? 御社では大変でしたか?
David Villaseca 氏:
私たちの場合、2022 年に新しいビジョンとミッションを掲げたことが、文化の変革の最初のレバーでした。文化の変革は本当に大変な取り組みだと思います。だからこそ、当社は明確なビジョンを掲げています。また、デジタル化も、この文化を加速させるための別のレバーとなっています。新しいデザイン思考、アジャイル、さまざまな方法論は、当社自身の文化の変革にも役立ちます。当社は 90 年を超える歴史のある企業です。しかし同時に、この新しいビジョンを掲げてからまだ数年しか経っていません。これは、当社全員を支える非常に強力なビジョンです。
Tom Soderstrom:
この強力なミッションが、この文化の変革を実現するのに役立つのですね。90 年の歴史を持つ企業ですから、目の当たりにしているとおり、変化は困難でしょう。しかし、おめでとうございます。着実に前進していますね。
David Villaseca 氏:
現在、取り組みを進めています。
Tom Soderstrom:
あなたは Chief Digital Officer ですよね?
David Villaseca 氏:
はい。
Tom Soderstrom:
ということは、これはあなたの挑戦でもありますね。
David Villaseca 氏:
はい。私がシリコンバレーに住んでいて、この企業から電話を受けたとき、これは本当に重要なことだと思いました。なぜなら、当社は歴史を作っているからです。当社はこれを「ツイントランジション」と呼んでいますが、実際には「トリプルトランジション」です。「ツイントランジション」とは、デジタル化でエネルギー転換を加速させる必要があることを意味します。しかし、最終的には、ビジネスも変革していくことになります。これは、さまざまな業界で働く多くの人々が抱えている問題だと思います。同じようなニーズに対応しなければならないでしょう。これらの人々は変革を必要としています。そして、データと人工知能は、まさにこの変革を推進する力となるのです。アシスタントやエージェントでさえ、私たちがいくつかの共通の考えを共有できるようサポートしてくれていると思います。これらは、私たちが同僚と共有しているとても強力なツールだと考えています。
Tom Soderstrom:
「トリプルトランジション」という言葉を気に入りました。新しいですね。他の誰からも聞いたことがありません。