- AWS›
- 導入事例
オタフクホールディングス、Amazon QuickSight で全社共通データ分析基盤を構築。SAP データや社内データを可視化し、意思決定の迅速化へ
概要
オタフクホールディングス株式会社は、広島を拠点に調味料の開発・製造・販売を手がけるオタフクソースをグループ会社に持つ企業です。同社は SAP ECC6.0 を RISE with SAP にリプレースするにあたり、BI ツールを Amazon QuickSight に移行し、全社共通データ分析基盤を構築しました。ダッシュボードによる可視化により、売上実績や経費の早期把握を実現。併せて、社内システムから取得した各種データを活用し、販売店の地図マッピングやライン稼働状況の可視化に取り組んでいます。
課題・ソリューション・導入効果
ビジネスの課題
SAP ERP の更改にあわせて全社共通データ分析基盤の構築へ
『お好みソース』でおなじみのオタフクソースをグルーブ会社に持つオタフクホールディングス。IT 活用を重視する同社は 2004 年に SAP ERP を導入し、会計・購買・在庫管理のシステムとして利用してきました。
2023 年には ECC6.0 のサポート終了を見据えて SAP S/4HANA Cloud Private Edition を中核とするクラウドオファリング RISE with SAP への移行を決定し、BI ツールとして利用してきた SAP NetWeaver Business Warehouse (SAP BW) のリプレースを検討しました。「従来のツールでは Excel ベースの GUI で操作できるものの、グラフ表示には加工する必要がありました」と語るのは IT 推進部 システムデザイン課 課長の岩井基氏です。
加えて同社は、SAP BW を SAP データに限定した分析で利用しており、SAP データ以外は社員が各自で Excel などを駆使し分析していました。
「2010 年代に全社共通の BI ツールを導入しようと PoC を実施したものの、データセットやコストの問題から見送った経緯があります。そこで、改めて全社共通データ分析基盤の構築にチャレンジすることにしました」(岩井氏)
ソリューション
SAP BW から Amazon QuickSight に移行
BI ツールの選定にあたり、同社は複数を比較した中から Amazon QuickSight を採用しました。選定理由は、従量課金(2021 年当時)によりスモールスタートが切れること、地場のベンダーから伴走支援が受けられること、直感的な操作で帳票やダッシュボードが作成できることにありました。
「ゴールを模索しながら少額投資で検証を進めていくうえでは、従量課金が不可欠でした。自社の開発リソースが不足する中、AWS や Amazon QuickSight に詳しいパートナーから支援が受けられることも決め手になりました」(岩井氏)
導入の第 1 ステップは、SAP と切り離した状態でゼロから実施。まずは、社内データを活用してオタフク商品が置いてある販売店を日本地図上に表示するダッシュボードと、工場のラインの稼働状況を可視化するダッシュボードを独自に開発しました。IT推進部 システムデザイン課の土江亮介氏は次のように語ります。
「自分たちが新しい技術を習得するためと、BI ツールを初めて使う社員にビジュアルのインパクトを感じてもらうために、汎用性の高い地図ダッシュボードを作成しました」
第 1 ステップの過程で RISE with SAP への移行と SAP BW のリプレースが正式に決まると、第 2 ステップとして SAP BW の帳票を Amazon QuickSight に移植してダッシュボードを開発するプロジェクトをスタート。SAP BW で管理していた売上実績と経費の 2 つのうち、売上実績の帳票を先行し、2024 年 4 月より全社に展開しました。その後、経費関連の帳票も移植して 2025 年 5 月より全社利用を開始しています。
売上実績の移植に際しては社内の既存帳票をすべて調査して棚卸を実施。グラフで可視化済みの『ダッシュボード帳票』、利用頻度の高いレイアウトを定義した『固定帳票』、ユーザーが SAP BW 上のデータを Excel で自由に加工して作成した『自由分析帳票』があることを把握しました。特に、行・列・集計項目を自由に選択できる自由分析帳票は 500 種類近くあったことから、17 種類に絞り込みました。
「自由分析帳票はパターンを分析し、Amazon QuickSight の画面上で項目を選択することで行・列・集計項目が切り替えられるようにした結果、17 種類まで集約することができました。自由分析帳票は安価な閲覧者のライセンスで利用できるように工夫することでコストを抑えました」(土江氏)
Amazon QuickSight を中心とした全社共通データ分析基盤は、AWS のサービスでアーキテクチャを構成しています。SAP システムやライン管理システム、社内 Web アプリケーションのデータは CSV 形式で抽出し、AWS Command Line Interface (AWS CLI) によるバッチ処理で Amazon Simple Storage Service (Amazon S3) に取り込みます。その後、Amazon Redshift で加工し、Amazon QuickSight でレポート化する流れです。パフォーマンスが必要なダッシュボードに関しては、Amazon QuickSight の高速なインメモリエンジンである SPICE を活用しています。
導入効果
社内全体にデータ活用による意思決定が浸透
RISE with SAP への移行プロジェクトは 2025 年 5 月末で完了し、本格的な利用を開始しています。RISE with SAP の IT インフラについても、信頼性を評価して AWS を採用し、安定稼働を実現しています。
Amazon QuickSight は、2025 年 7 月現在、約 350 名の社員がアクティブユーザーとして利用しています。経営層や管理職は主に SAP の売上実績のデータを確認して経営や事業の意思決定に活用し、営業担当者は日々の実績データを追いながら営業計画の参考にしています。経費データについてもスタッフ部門を含めて経費の予実管理に活用しています。第 1 ステップで作成した販売店マップは幅広いユーザーが Amazon QuickSight を使うきっかけとなり、ライン稼働状況のダッシュボードは工場内に設置した大型モニターに表示し、誰もが見られる状態になっています。
「ユーザーからは直感的な操作でわかりやすいという反響があり、経営層からもデータが可視化されて見やすいという声が届いています。利用開始前には導入教育やハンズオンを実施し、希望者は誰でもサインアップして利用できるようにしました。私たちとしては現在の 350 名のアクティブユーザーでは満足していませんので、今後は SAP の在庫データや生産データを取り込んだり、SAP 以外の社内データを取り込んだりしながら可視化の範囲を拡大し、PC を持つ社員全員が利用している状態を目指していきます」(岩井氏)
導入効果としては、Amazon QuickSight では、直感的に操作ができるようになり、ユーザーがシステムを習得するまでにかかる時間が半分以下に低減されていることを実感しています。これにより、トレーニングや問い合わせにかかる IT 部門の負荷も月 5 時間程度削減できました。
また、SAP BW からの移行を契機に 20 年来利用してきたデータ分析基盤や帳票を見直すことになり、ブラックボックス化も解消されました。
「既存環境の棚卸と分析基盤の刷新でよりデータ活用が推進しやすくなりました。これによりデータに基づく意思決定が社内全体で加速することが期待できます」(岩井氏)
今後は AI や生成 AI を積極的に活用していく方針です。
「生成 AI の活用は経営方針として全社的に打ち出し、各所で PoC を行っています。データ分析基盤についても積極的に活用しながら生産性の向上に寄与していきます。AWS は新しい技術が次々と出てきますので、引き続き情報提供や活用事例の提案などの支援をいただければと思います」(岩井氏)
Amazon QuickSight への移行により、データ活用が推進しやすくなりました。これによりデータに基づく意思決定が社内全体で加速することが期待できます
岩井 基 氏
オタフクホールディングス株式会社 IT 推進部 システムデザイン課 課長アーキテクチャ
企業概要 オタフクホールディングス株式会社
1922 年、広島市横川町で醤油類の卸と酒の小売業「佐々木商店」として創業。お多福造酢、オタフクソースなどへの社名変更を経て 2009 年に持ち株会社制に移行。現在は「笑顔をデザインする会社に」をビジョンに、お好みソース、酢、たれ、お好み焼材料などの開発・製造・販売を手がける。近年は海外の和食ブームを追い風に、海外における調味料販売が好調に推移し、海外の売上高比率は 2024年度の実績で 17.6 % に達している。
取組みの成果
- 500 種類近くあった帳票を 17 種類に集約
- 約 350 名:Amazon QuickSight のアクティブユーザー
- 売上実績や経費の早期把握
- データ活用の社内への浸透
- データ分析基盤のブラックボックス化解消
本事例のご担当者
岩井 基 氏
土江 亮介氏
PDF版
ご利用中の主なサービス
今すぐ始める
あらゆる業界のさまざまな規模の組織が AWS を活用してビジネスを変革し、日々ミッションを遂行しています。当社のエキスパートにお問い合わせいただき、今すぐ AWS ジャーニーを開始しましょう。