Amazon Web Services ブログ
SAP HANAに最適なAmazon EC2 High Memoryインスタンス: 簡単・柔軟・強力
Steven Jonesは、AWSパートナー組織のテクノロジーディレクターおよびグローバルテクニカルリードを務めています。
Amazonでは、製品やサービスを開発する際に、常にお客様のニーズから始めて、そこから遡って取り組みます (Working Backwardという手法)。2017年には、既に4TBメモリを搭載したAmazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) X1eインスタンス上でSAP HANAの本番環境を稼働していたお客様がいて、企業データの増大に追従する必要がありました。そこでお客様は、私たちにもっと大容量のRAMを搭載したAmazon EC2インスタンスを要望するようになりました。
私たちは、お客様に、それらのインスタンスにはどのような特徴と能力が最も重要であるか尋ねました。一貫したフィードバックは、お客様がAmazon Web Services (AWS)上でSAP HANAを稼働しているのと同じ、使い慣れた経験を期待するというものでした。お客様は特に、Amazon Virtual Private Cloud (Amazon VPC)、セキュリティグループ、AWS Identity and Access Management (IAM)、AWS CloudTrailといった、これまでと同じネットワークとセキュリティ構成を使用でき、APIとAWSマネジメントコンソールでこれらのシステムを管理でき、Amazon Elastic Block Store (Amazon EBS)の柔軟なストレージを使用でき、そして必要なときに柔軟に拡張できることを望まれていました。
手短に言えば、お客様は、大規模なインスタンスを実行するためだけにパフォーマンスや弾力性、柔軟性を犠牲にしたくないとのことでした。
型を破ること
私たちは、これらの要件を満たし、お客様を喜ばせることができる製品を開発するというミッションを掲げて旅路を始めました。2018年秋には、SAPが認定し、ミッションクリティカルなSAP HANAワークロードに対応する、最大12TBメモリを搭載したAmazon EC2 High Memoryインスタンスの一般提供を発表しました。現在、Amazon EC2 High Memoryインスタンスは、6TB、9TB、12TBの3つのサイズで利用可能です。お客様は、AWS Command Line Interface (AWS CLI)、またはAWS SDK、あるいはその両方を使用して既存のAWS環境内でこれらのEC2ベアメタルインスタンスを起動し、他のAWSサービスとシームレスに接続できます。
このブログ記事では、私たちのお客様がEC2 High Memoryインスタンスについて気に入っている主な特徴について説明します。
これらのAmazon EC2 High Memoryインスタンスは、Amazon VPCやAmazon EBSとの接続を提供、および管理する専用のハードウェアアクセラレータを含む、Nitroシステムと呼ばれる仕組みを利用しています。従来はハイパーバイザーを介してサポートしてきたこれらの機能をオフロードすることにより、これらのベアメタルインスタンスは、アプリケーションが下にある物理ハードウェアに直接接続できるようにしています。同時に、Nitroシステムはこれらのインスタンスを幅広いAWSサービスに完全かつシームレスに統合することを可能にします。
同じ仮想プライベートクラウド (VPC)内のアプリケーションサーバーに極めて近い場所でSAP HANAを稼働できるこれらのインスタンスの機能により、データベースとアプリケーションサーバー間で超低レイテンシーを実現し、一貫した予測可能なパフォーマンスを得ることができます。
データベースとアプリケーションサーバーを近接して稼働できることは、SAP HANAデータベースを含む、SAP資産をクラウドで稼働するための最良の結果を提供します。High Memoryインスタンスは、インスタンスの起動、管理、サイズ変更、Amazon EBSの柔軟なストレージ容量、および他のAWSサービスとの直接接続による恩恵を受けられるよう、AWS CLI / SDKをサポートしています。
Nitroシステムにより、EC2 High Memoryインスタンスをベアメタルサーバーとして提供しながら、完全に統合されたEC2インスタンスとして動作させることができます。ハイパーバイザーを使用せずに、SAPワークロードから直接ホスト上のすべてのCPUとメモリを使用できるため、最大限のパフォーマンスが得られます。それぞれのEC2 High Memoryインスタンスサイズは、Intel® Xeon® Platinum 8176M (Skylake) プロセッサを搭載した8ソケットのホストサーバープラットフォーム上で提供されています。このプラットフォームは、480,600 SAP Application Performance Standard (SAPS)を実現する合計448個の論理プロセッサを提供します。OLTPとOLAPの両方のSAP HANAワークロードについて、このプラットフォームのパフォーマンスを分かりやすく開示するために、ERP (Sales&Distribution、販売管理)とBW on HANAの両方のベンチマーク結果を公開しています。
EC2 High MemoryインスタンスもデフォルトでAmazon EBSに最適化されており、暗号化されたEBSボリュームと暗号化されていないEBSボリュームの両方に対して14Gbpsの専用ストレージ帯域幅を提供します。これらのインスタンスは、Elastic Network Adapter (ENA)ベースの拡張ネットワーキングを使用して、25Gbpsの総合ネットワーク帯域幅で高いネットワークスループットと低いレイテンシーを実現します。
最後に、非常に大規模で計算量の多いSAP S/4HANAシステムを大容量メモリ要件で実装したい場合は、EC2 High MemoryインスタンスでSAP S/4HANAをスケールアウトモードで稼働するという選択肢があります。12TBのHigh Memoryインスタンスで最大4ノードまでスケールアウトできます。合計で最大48TBのメモリと1,792個の論理プロセッサ/ 190万 SAPSを提供し、これはクラウドでは前例のない選択肢です。詳細については、AWS上での非常に大規模なSAP S/4HANA展開のサポートを発表を参照してください。
これまでにない柔軟性
私たちのお客様は、将来の需要を満たすために事前に過剰なプロビジョニングをするのではなく、現在のニーズに基づいてAWS上のインフラストラクチャをサイジングする機能を気に入っています。EC2 High Memoryインスタンスは、SAP HANAワークロードに対して仮想化されたEC2インスタンスと同じスケーラビリティを提供します。実際に、今必要なものから始めて、需要に応じて需要を満たすように簡単に拡張できます。
例えば、今すぐ6TBのEC2 High Memoryインスタンスから始めて、6か月以内に必要に応じて9TBや12TBのインスタンスに簡単に変更できます。数回のAPIコールで9TBや12TBのインスタンスに簡単にサイズ変更できます。バックエンドの永続的なブロックストレージはAmazon EBSを基盤にしているため、これも必要に応じて数回のAPIコールで拡張できます。通常、他のプライベートホスティングの選択肢では、サーバーを移行するために長時間の停止とデータのやり取りが必要です。
次の図は、6TBのHigh Memoryインスタンスを12TBのHigh Memoryインスタンスに数分でサイズ変更する例を示しています。これが本当に簡単であることを確認するには、AWS re:Invent 2018のWhirlpoolのデモの該当箇所をご覧ください。また、WhirlpoolがどのようにEC2 High Memoryインスタンスを革新的な方法で使用しているかについても学んでください。
商業的には、これらのインスタンスは3年間の予約で利用可能となっていますが、3年間の予約期間中により大きなサイズに移行する柔軟性も提供しています。この柔軟性により、最高の総所有コスト (TCO)が得られ、過剰なプロビジョニングを防止できます。現在のデータベースのサイジング要件を満たすインスタンスサイズから始めて、データベースサイズの増加に応じてより大きなインスタンスサイズに移行することができます。お客様が現在必要としているものだけを使ってください。そして、それはお客様が今から1年か2年必要とするかもしれないものにではありません。
完全に統合された経験
管理に関しては、これらはベアメタルインスタンスであるため、異なる方法で運用、または設計する必要があると考えるかもしれません。そうではありません!お客様は、AWS CLI / SDKとAWSマネジメントコンソールを使用できます。さらに、既存のAWSアーキテクチャパターン、フレームワーク、およびプロセスを使用して、EC2 High Memoryインスタンスで実行されているSAP HANAインスタンスを保護、維持、および監視することもできます。
例えば、これらのインスタンスは他のすべてのAWSサービスとネイティブに統合されているため、次のようなサービスを使用できます。
- EC2 High Memoryのリソースへのアクセスを安全に管理するためのIAM
- インスタンスの監視のためのAmazon CloudWatch
- 運用上の洞察を得るためのAWS Systems Manager
- ガバナンスとコンプライアンスのためのAWS CloudTrail
そして最後に、真に変革的な機能は、例えば機械学習用のAmazon SagemakerやAWS IoTサービスなどの他のAWSサービスとシームレスに統合できることです。
始める準備が整ったら、既存のワークロードをEC2 High Memoryインスタンスに移行するためのいくつかの選択肢があります。数回のAPIコールで新しいシステムを構築するか、Amazon Machine Image (AMI)を使用するか、あるいは利用可能なSAP用のAWSクイックスタートのいずれかを使用します。次に、SAP HANAシステムレプリケーション、データベースのエクスポート、またはバックアップ/リストアを使用する、SAPシステム移行のガイドラインに従います。
移行中のシステム停止時間をさらに最小限に抑えるには、SAP Rapid Migration Test Program (別名FAST)を使用します。さらに、EC2 High Memoryインスタンスを使用して、高可用性と災害対策のお客様要件を満たす回復力のある環境を構築するために、ダウンタイムとコスト最適化の選択肢を利用してください。移行やAWS上でSAP HANAを稼働するためのその他の運用面に関するリソースについては、SAP on AWSの技術ドキュメンテーションサイトを参照してください。
サマリー
AWSはクラウドでSAP HANAデータベースを稼働させるパイオニアであり、今も最も包括的なインスタンスポートフォリオと認定済みの構成を提供し続けています。SAP HANAのOLAPとOLTPワークロード用のEC2インスタンスのSAP 認定済みのスケールアップおよびスケールアウトの展開オプションの概要を次に示します。今秋の後半には、大規模なスケールアップのワークロードのためにさらに多くの選択肢を提供できるよう、18TBと24TBのRAMを持つ2つの追加サイズをリリースする予定です。
SAPPHIRE 2019 – もし、オーランドで開催しているSAPPHIRE NOW 2019カンファレンスに参加している場合は、#2000のブースまで立ち寄って、Amazon EC2 High Memoryインスタンスについて聞いてください。実際のデモを通じて実際に動作していることを確認し、私たちのソリューションアーキテクトの1人に相談して、始めるのがいかに簡単かをもっと知ってください。また、SAPPHIREでは、インフラストラクチャだけでなく、SAPワークロードへの投資に役立つ、わくわくすることをその他にもいろいろ用意しています。私たちにたどり着く場所の詳細については、Amazon Web ServicesのSAPPHIRE NOWウェブサイトを参照してください。SAPPHIREには参加していませんか?詳細については、直接お気軽にお問い合わせください。もっとエキサイティングなニュースをお楽しみに、そして今後開催予定のウェビナーにも登録してください。さぁ、やってみましょう!
翻訳はPartner SA 河原が担当しました。原文はこちらです。