Amazon Web Services ブログ

PartyRock 展示で見えた生成 AI の可能性 – 業務活用への道筋 (AWS Summit Japan 2024)

はじめに

2024 年 6 月 20 日、21 日に AWS Summit Japan を開催し、“あなたのアイデアをその場でアプリ化!生成 AI プレイグラウンド PartyRock” というタイトルでブースの展示を行いました。当日は、絶えずたくさんの来場者の方々にブースにお越しいただき、PartyRock でのアプリケーション作成を体験してもらうことができました。

本ブログでは、ブース展示のサポーターとして参加した新入社員の九曜と山本が、当日の様子や来場者の皆様から頂いた声を通し、PartyRock の魅力についてより皆さんにご紹介いたします。

PartyRock とは

PartyRock とは、“誰でも生成 AI のアプリケーションを作成でき、実験を通して学べる教育ツール” です。メールのドラフトを作成したり、アイデアについて意見を求めたり、ちょっとした資料に使うイラストを作成したりなど、生成 AI は様々な用途で利用され始めています。PartyRock は、様々なユースケースをコーディング一切不要でアプリケーション化できる、AWS アカウント不要の Amazon Bedrock の生成 AI プレイグラウンドです。こんなアプリケーションが欲しいな…を言語化するだけで誰でも簡単にアプリケーションを作成することができます。また、自分で作成したアプリケーションを他の利用者にシェアすることも可能です。

そんな PartyRock の良さを、より多くの人に知ってもらいたい!という気持ちから、今回のブースの展示が企画されました。

また、PartyRock に関しましては、PartyRock : 誰でも生成系 AI のアプリケーションを作成し共有できるサービス | Amazon Web Services ブログにてより詳しく説明しています。

ブース紹介

今回の AWS Summit Japan 2024 PartyRock ブースでは、PartyRock をきっかけに、AWS での 生成 AI の可能性を来場者の方々に体験してもらおう!というテーマで展示制作を行いました。

当日は、AWS Summit Village にて PartyRock ブースを展示し、来場者の方々にあらかじめ用意したアプリケーション体験してもらったり、アイデアをその場でアプリケーション化していただきました。

あらかじめ用意したアプリケーションは、

AWS Summit Japan 2024 で紹介したサンプルアプリ集

誰でも簡単に生成 AI を活用! AWS Japan メンバーが作った PartyRock アプリ集 | Amazon Web Servic…

にてより詳しくご覧いただけます。

実際の様子

当日は絶えずたくさんの来場者の方々にブースにお越しいただきました。著者たちも当日ブースを対応しました。そこで特に人気だった PartyRock のアプリケーションをご紹介させていただきます。

人気だった PartyRock のアプリケーションのご紹介

  • 難しいドキュメントも博士と太郎くんが何でも解説アプリ
  • こちらのアプリケーションは、ドキュメントのファイルをアップロードし、“難しいドキュメントでも、博士と太郎くんが会話しながらわかりやすく解説してくれる” というものです。それぞれ博士と太郎くんの言葉遣いなども細かく再現されており、難しいドキュメントの内容がスラスラと読める便利アプリケーションです。博士と太郎くんイメージ画像も 生成 AI を用いて作成されます。
  • お客様からは「会話形式で解説してくれるのは面白い。」「博士の口調が『〜じゃ。』のようになっていて親しみやすい。」というように会話形式のスタイルに好印象を持った感想や、「わからない部分も追加で聞くと博士が答えてくれるので便利。」「会社のドキュメントを使って似たようなことができると良い。」といった利便性を評価した感想もいただきました。

難しいドキュメントも博士と太郎くんが何でも解説アプリ

  • 新サービス企画支援アプリ
  • こちらのアプリケーションは、サービス名と概要を入力するだけで、Amazon 流の新サービス検討プロセス「Working Backwards」に従って、新サービスの「プレスリリース」をドラフトします。サービス名と概要のインプットからアイデアを膨らまし、簡単に Amazon 風のサービス紹介、サービスイメージ画像を生成します。
  • お客様からは「一つの入力だけで、画像やテキストなどの様々なフォームの出力がチェーン状に繋げられて面白い」「出力結果を元にさらに詳しい内容をチャットで聞けるのはのはすごい」などの声をいただきました。

新サービス企画支援アプリイメージ画像

ブース全体を通して、ご来場いただいた方からは、

「AWS アカウント不要で使えるのは素晴らしい。」

「エンジニアでなくても簡単にアプリが作れる。IT を身近にするための良いサービス。ハッカソンに活用できそう。」

といったように、アプリに触れて PartyRock の良さを実感したコメントを多くいただきました。

PartyRock ブース展示中の様子 PartyRock ブース展示中の様子

PartyRock ブース展示中の様子 (新入社員でデザイン・発注を担当した PartyRock オリジナルグッズ)1/2 & PartyRock ブース展示中の様子 2/2

PartyRock から始まる、生成 AI 業務活用の可能性!

チャットボットや画像生成など、個人として生成 AI を利用している方は多いかもしれませんが、仕事や会社で活用を進めているという方はまだ比較的少ないのではないでしょうか?

AWS では、これまでに 100 以上の本番環境での生成 AI 活用を支援してきました。業種業界を問わず、早期に生成 AI 活用を実現しビジネス成果を上げたお客様には 3 つの共通点があります。

1 つ目は、生成 AI 活用プロジェクトに最大 4 人の少人数で取り組んでいること、2 つ目は、3 ヶ月以内というスピーディー企画・開発期間で本番導入に至っていること、そして 3 つ目は、システムを定量的に評価していることです。

これらの共通点は、AWS Japan のあらゆるお客様の生成 AI 活用を継続的に支援してきた経験から見えてきたものです。AWS Japan は 2023 年に AWS LLM 開発支援プログラムを提供し、基盤モデル開発を行う国内企業 17 社に技術支援を提供しました。2024 年には生成 AI 実用化推進プログラムを発表し、生成 AI の活用によってビジネス課題の解決にチャレンジする企業・団体に、包括的な支援を提供しています。

このセクションでは、PartyRock で触れていただいた AI の可能性を、実際に業務活用するための道筋をご紹介します。

AWS を用いた生成 AI 業務活用への道のり

AWS を用いた生成 AI 業務活用への道のり

Phase 1:生成 AI 活用の計画を探索

生成 AI 業務活用への第一歩は、活用アイデアを探索することから始まります。ビジネスでの業務活用にあたり、まず「生成 AI でどのようなものが作れるのか」「それをどのように業務に活かすことができるのか」というアイデアを膨らませることが大切です。

そこで役に立つサービスが、今回 Summit でご紹介した PartyRock です。

PartyRockホームページ画像

PartyRock ホームページ画像

PartyRock で業務活用のアイデアを膨らませた次のステップでは、生成 AI に対する理解を深め、展開のためのアクションプランを立てていきます。

生成 AI を用いたシステムを導入するにあたり、社内で多くの人々が関係者となります。IT 知識の有無に関わらず、「導入を検討しているシステムがどのようなものなのか」「生成 AI でどのような効果が得られるのか」など、AI リテラシーを高めると共に、組織全体で計画を立てていくことが必要になってきます。

このような具体的なアクションプランを練る一つの方法は、AWS の提供する ML Enablement Workshop (MLEW) の実施です。MLEW は、生成 AI を含めた AI/ML 技術を自社ビジネスに適用し、成長につなげるための実行計画を策定するワークショップです。ワークショップでは、組織横断でのチームの組成企画を行い、ビジネス側と開発側が一体となり取り組みます。ビジネスオーナーと開発者が一体となり、生成 AI が生み出すビジネス効果のコンセンサスを共有することが、プロジェクト成功の鍵となります。

株式会社ココペリ AWS 生成 AI 事例: ML Enablement Workshop

株式会社ココペリにおける AWS 生成 AI 事例: ML Enablement Workshop によるユースケース特定とその検証 | A…

PartyRock からのスタートではないですが、MLEW を実際に行ったお客様を紹介します。

ココペリ様は「中小企業にテクノロジーを届けよう」というビジョンのもと、IT 技術で全国の金融機関と共に中小企業同士を繋ぐサービスを提供しています。提供サービスの一つに、中小企業 DX 支援プラットフォーム「Big Advance」があります。

Big Advance に AI/ML を活用する際に、技術的な側面のみならずビジネス視点での成長戦略を含めて練りたいとのことでワークショップを実施し、生成 AI のユースケースの特定、タスクと効果測定 KPI の決定に繋がりました。

Phase 2:本番データを用いた検証

生成 AI でできることを理解し業務活用のアイデアを練ることができたら、次は、本番データを用いて実験を行ってみましょう。AWS ジャパンでは、お客様の AWS アカウント上に簡単にデプロイできる生成 AI アプリケーションのサンプル実装を公開しています。これらを利用することで、セキュアな実験環境を作って検証を行うことができます。ここでは、サンプルアセットを 2 つ紹介します。

Bedrock Claude Chat イメージ画像

Bedrock Claude Chat

Bedrock Claude Chat (BrChat)は生成 AI を用いたチャット機能をすばやくかつセキュアにデプロイできるアプリケーションです。検索拡張生成(RAG, Retrieval Augmented Generation)、またシステムプロンプトを埋め込んだカスタムボットの共有などチャットに特化した機能を提供しています。BrChat を使ってチャットボットを作成したブログも公開されていますのでご参照ください。

Generative AI Use Cases JP イメージ画像

Generative AI Use Cases JP

Generative AI Use Cases JP (GenU) は生成 AI の様々なユースケースをワンストップで試せるアプリケーションです。チャットだけでなく、要約、画像生成、検索拡張生成、文書校正、翻訳、 Web コンテンツの抽出といった機能をすぐに試し効果を体感できます。

独自の生成 AI ワークフローをすばやく構築する際には Amazon Bedrock Prompt Flows を使うこともできます。Amazon Bedrock Prompt Flowsは 7 月にプレビューが公開された機能で、GUI を使って基盤モデル、Knowledge Base、AWS Lambda などのAWS サービスを簡単に統合し、生成 AI ワークフローをデプロイすることができます。

実験の結果、狙ったユースケースを実現できたら、早期にテストユーザーに実験で作成した生成 AI ユースケースを試してもらい、想定したビジネス効果が得られそうかを確認します。

Phase 3:ユーザーへの展開を開始

Phase 2 で実験を重ね、一定の効果が見込めればユーザーへの本格的な展開に移行します。この段階では、Amazon Bedrock や Amazon SageMaker などの生成 AI アプリケーションを構築するためのサービスをフルに活用しましょう。この段階でも継続的に改善を重ね、必要に応じて Phase 1 や Phase 2 に立ち返ってみましょう。

ユーザーへの展開に成功しているお客様の事例を 2 つ紹介します。

北海道文化放送様では、Amazon Bedrock を活用し FAX 受信からニュース原稿および動画までの作成フローを自動化し、毎月 100~120 本のコンテンツ増加を実現しました。三井物産株式会社様では、入札書類の解析を自動化するソリューションを開発し、解析作業を 70 % 短縮することに成功しました。

最後に

初めてブース展示に立ち、サービスをお客様に紹介するという経験は、私たち新入社員のソリューションアーキテクトとして非常に緊張するものでした。しかし、PartyRock を実際に体験していただき、お客様の生の反応を直に感じ取ることができ、貴重な機会になりました。

今回の AWS Summit Japan は、多くの人に PartyRock を体験していただき、新たなビジネスアイデアを考えるきっかけとなる有意義なイベントであったと思います。

生成 AI に興味をお持ちの方は、まずはぜひ PartyRock で気軽にアプリを作ってみてください。PartyRock が、生成 AI の業務活用ジャーニーをスタートさせるきっかけになると幸いです。

本ブログは、ソリューションアーキテクトの九曜と山本が執筆し、ソリューションアーキテクトの松本が監修しました。

著者について

筆者:九曜 克之

九曜 克之(Katsuyuki Kuyo)

アマゾン ウェブサービス ジャパン合同会社 ソリューションアーキテクト

2024 年 4 月入社のソリューションアーキテクトです。

趣味はマンガを読むことです。

筆者:山本ひかる

山本 ひかる(Hikaru Yamamoto)

アマゾンウェブサービスジャパン合同会社 ソリューションアーキテクト

2024 年 4 月入社のソリューションアーキテクトです。

お客様の技術課題に Dive Deep できるよう毎日勉強中。

筆者:松本敢大松本 敢大(Kanta Matsumoto)

アマゾンウェブサービスジャパン合同会社 ソリューションアーキテクト

普段は小売業のお客様を中心に技術支援を行っています。好きな AWS サービスは AWS IoT Core。趣味はカメラで、動物が好きです。