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大阪大学が主導する量子ソフトウェア研究拠点を AWS が支援

AWS の量子コンピューティングサービスである  Amazon Braket  が発表されて以来、量子技術の基礎を学び、量子コンピューティングの可能性を探索し、ユースケースについてコミュニティの専門家と議論したいというお客様からの声を多く頂いています。 AWS は量子ソフトウェア研究拠点を通じて大阪大学と協力し、企業やアカデミアのお客様へ教育的なコンテンツを提供し、量子技術の潜在的なユースケースを探るお手伝いをしています。

このブログ記事では、AWS が支援している量子ソフトウェア研究拠点など、大阪大学における量子コンピューティングの取り組み概要を紹介します。 2021年9月21日、AWS は量子ソフトウェア研究拠点の量子ソフトウェア勉強会で講義・ハンズオン「Amazon Braket を用いた実機・シミュレータでの開発」 を開催します。 量子ソフトウェア勉強会では、一連の講義を通して量子計算の基礎や量子機械学習、量子化学、数理ファイナンスなどの応用について学ぶことができます。 AWS の講義・ハンズオンには、Amazon Braket で量子コンピュータ実機とシミュレータを使用して量子ゲートとアルゴリズムを実装する方法に関する実践的なワークショップが含まれています。

大阪大学における量子研究

大阪大学では、量子力学を情報処理に応用する量子情報科学の研究を1993年から積極的に推進しています。 1999年、大阪大学は日本で初めて「量子コンピュータ」という名前を冠したプロジェクトを立ち上げました。 それ以来、同大学には基礎工学研究科を中心に量子情報分野の研究者が集まり、様々な部局に30名以上の量子研究者が所属しています。

量子情報・量子生命研究センターは、先導的学際研究機構の一部門として2018年 (平成30年) に発足し、その後2021年 (令和3年) 4月に世界最先端研究機構の独立したセンターとなりました。 現在、同センターには、量子物理学、量子化学、生命科学、数理ファイナンス、計算機科学など、量子計算や関連分野の専門家が65名在籍しています。 特に、同センターのグループは、 変分量子アルゴリズムと量子機械学習についてのブログでも言及されているように、量子回路学習とそのパラメータ更新則、すなわちパラメータシフト法を提案しました。

量子ソフトウェア研究拠点

大阪大学を代表機関とする量子ソフトウェア研究拠点は、2021年科学技術振興機構 (JST) 共創の場形成支援プログラムに採択されました。 研究拠点メンバーとして、スタートアップ企業から様々な業界のエンタープライズ企業まで30社以上が参画しています。 本研究拠点の目標は、クラウドベースの環境を用意し、アプリケーション研究開発を含むフルスタックの量子コンピューティング技術を実現することです。 冒頭で紹介した量子ソフトウェア勉強会に加えて、AWS は2つの方法で研究拠点に貢献しています:

  • AWS は、大阪大学が Amazon Braket で利用可能なデバイスを含むさまざまな量子ハードウェアやシミュレータにアクセスするためのクラウドベースの環境やライブラリを開発するうえで、ガイダンスとサポートを提供しています。
  • AWS は、大阪大学や加盟企業と連携し、量子機械学習、量子化学、数理ファイナンスなど様々な分野の量子ソフトウェアアプリケーションやライブラリの開発に取り組んでいます。 研究拠点のメンバーは Amazon Braket の利用をサポートするため AWS にクラウドクレジットを申請でき、 IonQ, Rigetti, D-Wave から提供される実際の量子ハードウェアで実験を行うことができます。

研究拠点のメンバーは、研究成果に基づいてスタートアップ企業を立ち上げることを奨励されています。 AWS スタートアップチームには、研究拠点から成長したスタートアップを支援する体制が整っています。

Figure: 量子ソフトウェア研究拠点の構成

まとめ

量子ソフトウェア研究拠点に協力できることを嬉しく思います。 研究拠点は現在、産業界・学術界からの新しいメンバーを歓迎しています。 今後のイベントなど、プログラムの詳細につきましてはウェブサイトをご覧ください。 特に、9月21日 AWS は「Amazon Braket を用いた実機・シミュレータでの開発」と題した講義・ワークショップを開催します。

量子コンピューティングの研究を行っている方は、Amazon Braket と AWS クラウドクレジットプログラムもご活用ください。世界中の研究者を歓迎します。

About the Author

北川勝浩 (きたがわまさひろ)

量子情報・量子生命研究センター長、大阪大学大学院基礎工学研究科教授、 量子ソフトウェア研究拠点のプロジェクトリーダー、JST ムーンショット目標6 誤り耐性型汎用量子コンピュータのプログラムディレクター。 同大学着任前は、NTT基礎研究所主任研究員。 1985年から量子情報科学の分野に在籍、先駆的な研究Physical Review A 50th Anniversary Milestones に選出されている。

 

針原佳貴 (はりばらよしたか)

AWS で量子と機械学習を専門とするスタートアップ担当のソリューションアーキテクト。Amazon Braket を活用した量子コンピュータスタートアップなど、日本のスタートアップ企業が AWS でソリューションを構築できるよう支援しています。大阪大学理学部数学科卒業後、東京大学大学院情報理工学系研究科数理情報学専攻で博士(情報理工学)取得。

 

宇都宮聖子 (うつのみやしょうこ)

AWS のシニア機械学習・量子スペシャリストソリューションアーキテクト。 東京大学大学院で博士号(情報理工学)を取得後、2017 年まで国立情報学研究所にて、量子情報科学分野の准教授としてハードウエアとアルゴリズムの両面から光半導体の量子コンピュータ応用に従事。 博士論文は光半導体における実験的量子シミュレーション。