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顧客対応の回避はもう通用しない。これからは問題解決の時代だ。

本記事は 2026 年 6 月 17 日 に公開された「Deflection is Dead. Resolution is King.」を翻訳したものです。著者は Amazon Connect Customer 担当バイスプレジデント (VP) の Pasquale DeMaio です。

休暇先でカードが使えない。行ったことのない国で家族と食事をしていて、支払えない伝票を前に途方に暮れる。帰りのタクシー代も払えるかわからない。テキストも通知も電話も来ない。仕方なく銀行に電話する。

IVR が「ご用件をどうぞ」と尋ねてくる。まるでこちらの状況を知らないかのように。次に 16 桁のカード番号を求められる。財布をまさぐる。次に郵便番号。次に暗証番号。暗証番号なんて設定したっけ? いくつか試すが通らない。やっと「担当者におつなぎします」と言われる。

家族がこちらを見ていて、ウェイターも気にしている。電話を切り、「念のため」に用意しておいた現金で払い、明日なんとかしようと自分に言い聞かせる。

システム上はこれが「自己完結」として記録される。エスカレーションなし。転送なし。対応済みの問い合わせが 1 件増えただけ。今四半期の封じ込め率 94%。

でも、あなたはもう銀行を変えようと考えている。

静かな離反

あらゆる場所で目にする光景がある。全体の数字は悪くない。むしろ良いかもしれない。しかし、優良顧客が静かに去っている。新規顧客が入ってきて平均値は横ばいだから気づかない。封じ込め率は上昇。満足度スコアは安定。しかしその裏で、大切な顧客が次々と離れていく。

顧客の 32% は、たった一度の悪い体験でブランドを離れる。1

多くの企業は今でも「どれだけ顧客対応を回避できたか」で成功を測っている。これは医師の成功を「治療せずに帰した患者の数」で測るようなものだ。効率は追跡できている。コストは下がっている。しかし結果は壊滅的かもしれない。

30 年にわたり、「カスタマーサービス」を名乗る業界は実質的にひとつの考え方で成り立ってきた――顧客からの問い合わせはコストだ。最小化しろ。「(他のチャネルに)回避」させろ。「(IVR に)封じ込め」ろ。勝利とは対応時間の短縮、つまり体験がどうなろうと早く電話を切らせることだ。最悪のケースでは、顧客が自分から切るのを期待して保留にし続ける企業もあった。しかしこうした指標は「どれだけ早く追い払えたか」を示すだけで、その人が戻ってくるかどうかは教えてくれない。

回避をゴールにすれば、顧客を競合他社へ追いやっているのと同じだ。競合は喜んで受け入れる。あなたが封じ込め率を祝っている間に、競合は素晴らしい体験を届けて顧客を自分のものにする。

多くの企業が実際に提供しているもの

ある顧客が、カード利用不可になった場面で、現在よく見られる 2 つのパターンを見てみよう。

レガシーシステムではボタンを押し、カード番号を入力し、聞き間違えられ、すでに伝えた情報を持っていない担当者に転送される。もう一度説明する。時間だけが過ぎて何も解決しない。

あるいは新しい AI 音声エージェントがいるかもしれない。声は感じがいい。温かく挨拶して、いくつか質問してくれる。しかし取引履歴は実際には引き出せない。結局「担当者におつなぎします」と言われる。担当者は何の文脈もなく電話に出る。また一から説明する。

どちらも進歩に見える。しかし、どちらも顧客の役には立っていない。

実態はこうだ。多くの企業が AI を導入する際、エージェントがやっていたことをそのままやらせようとしている。スクリプトに従い、行き詰まったら(対応できることを期待して)上司に転送する。それはトランスフォーメーションではない。同じ壊れた体験に聞こえのいい声を被せただけだ。こんな方法では顧客との関係を育てられない。根本的な考え方が間違っている。

問題解決とは実際にどういうことか

もう一度みてみよう。同じ顧客。同じカード利用不可。しかし今回は、電話すら必要ない。

システムは 90 秒前に利用拒否を検知し、何が起きたかすでにわかっている。スマートフォンを取り出す前にメッセージが届く。

Osteria Francesca でカードがご利用いただけなかったようです。普段利用されない地域でのお食事だったため、不正利用防止システムが検知しました。ご利用内容を確認いただけるようアプリを開きます。すぐに渡航中として登録いたします。

アプリを開くと 3 つの選択肢が並んでいる。Osteria Francesca の利用を確認しながら、「銀行がセキュリティをしっかり守ってくれている」と感じる。同時に、ものの 10 秒で済んだことにも安心する。家族は何か問題があったことすら気づかない。続けてアプリが表示する。「安心のために、今すぐ利用限度額を引き上げることもできます。旅行中に便利かもしれません。」「はい」を選んでアプリを閉じる。

席を外して電話する必要もない。保留音もない。3 人に同じ説明を繰り返すこともない。誰もあなたを「封じ込め」ない。聞く前にパーソナライズされたサポートを受けた。

それだけではない。銀行が自分のことを本当に理解してくれている、気にかけてくれている、大切にされていると感じる。

これこそがあるべき姿だ。スライド上で見栄えのいい指標ではない。自分が大切にされ知得ると感じている顧客。顧客との関係を弱めるのではなく、強くすることだ。

そして、顧客対応の回避はコスト削減にもならない

誰も語らない部分がある。

顧客に同じ質問を 3 回聞くのは、1 回で正しく対応するよりコストがかかる。エージェントが 5 つのツールを切り替える。取得できないデータを待つ。今日何も解決しなかったから顧客が明日また電話する。

回避で経費が浮くと思っているなら、コストを隠しているだけだ。転送やリピートコンタクトとして表面化する。さらには、解約、離れていった顧客の生涯価値 (LTV) として表れる。

新規顧客の獲得コストは、既存顧客の維持コストの 5〜25 倍2

顧客にとって本当に重要な瞬間を回避するということは、電話を1件減らしたということではない。顧客を1人失ったので。

自分の子ども、あるいは若い世代を思い浮かべてほしい。普段は誰にも電話しない。すべてテキストで済ませる。しかし本当に大事なことがあるとき――PlayStation が動かないとか――突然電話をかけてくる。わざわざ電話してくるということは、それだけ切実だということだ。その瞬間に回避すれば、その人があなたにとってどれほど取るに足らない存在か、をはっきり伝えてしまったのと同じだ。

CX の次世代指標

この先どこへ向かうべきか、私の考えを述べたい。

かつてスポーツアナリストはクォーターバックをタッチダウン数とインターセプト数で評価していた。シンプルな数字。テレビ映えもする。しかし、その選手が本当に優秀かどうかはほとんどわからない。殿堂入りクラスのオフェンシブラインの後ろに置けば、ディフェンスがいないかのように 30 タッチダウンを投げる。同じ選手を弱いラインの後ろに置けば、途端にダメ選手に見える。優れたクォーターバックは適応する。2 倍の速さでパスを出す。ラインを直すわけではないが、試合の流れを変える。

だから優れたコーチは測定方法を変え始めた。プレッシャーを受けている状況で、あのスローはどれだけ難しかったのか? 置かれた状況に対して、優れたプレーをしたのか?

カスタマーサービスにも同じ発想の転換が必要だ。重要なことを測定し、ゴールを変えること。顧客対応において、今ほど面白い時代はない。

封じ込め率は中身のない指標だ。見栄えはするが何も教えてくれない。本当に知りたいのは、この顧客の、この問題に対して、彼らの人生のこの瞬間に、私たちは応えたのか? すぐに? 6 か月後もまだ私たちの顧客でいてくれるか?

それが本当の問いだ。「封じ込められたか」ではない。重要な瞬間に、顧客のニーズを理解し、応えたかどうかだ。

これを理解している企業は「もっと回避するには?」とは聞かない。代わりに顧客対応を回避してくれる外注先を探すこともない。「この人が今必要としていることは何か?」と問いかけている。そして問題が本当に解決されたかどうかを追跡している。システムが顧客を回避したかどうかではなく。

長期的な顧客ロイヤルティ。大切にされていると感じるから留まる人々からの収益。それこそがCX の目指すべき指標だ。封じ込めではない。回避でもない。

もう「選択肢」ではない

今これを重要と思わないなら、何が起きようとしているか見えていない。顧客と向き合わないことが競争上の不利になる時代が来る。それだけだ。

そして今、初めてそれが実現できる。すべての接点にトップセールスを配置する必要はない。深夜の寮にクッキーを届ける企業でも、世界最高のホテルコンシェルジュと同じパーソナルで丁寧な体験を提供できる。テクノロジーはもう揃っている。複数のタッチポイントにまたがる複雑なライブインタラクションであっても。唯一の障壁は、古い考え方だ。

最も重要な瞬間に正しく対応すること。それが長く続くものを築く方法だ。顧客があなたにとってより価値ある存在になり、あなたが顧客にとってより価値ある存在になる方法だ。この 2 つは別々のものではない。

どれだけ早く追い払えたかを測るのをやめよう。戻ってきてくれるかどうかを測ろう。

顧客対応の回避はもう通用しない。これからは問題解決の時代だ。


この記事は Solutions Architect の Yoichiro Sakata が翻訳を担当しました。原文はこちらです。