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MGI、Sentieon、AWS で強化するゲノムデータストレージとワークフロー
本記事は 2025 年 2 月 25 日に公開された Dr. Tomasz Zemojtel、Christopher Gatsch、Dr. Manuel Delpero、Zhan Ying、Dr. Mueller Michael による “Enhanced Genomic Data Storage and Workflows with MGI, Sentieon, and AWS” を翻訳したものです。
ゲノム研究の分野はかつてないスピードで進化しており、データストレージと解析に堅牢かつスケーラブルなソリューションが求められています。MGI、Sentieon、Amazon Web Services (AWS) は協業により、ゲノム研究を支援する機能を提供します。研究者や臨床医は、AWS HealthOmics と Sentieon のワークフローを活用することで、MGI のシーケンシング技術の能力を最大限に引き出せるようになりました。これにより、効率的なデータの保管、取得、整理と、大規模で高精度なゲノム解析が可能になります。
本記事では、この統合的な協業のソリューションアーキテクチャ、ワークフローの選択肢、そして研究ラボにおけるハイスループットなゲノム解析の実装の詳細をご紹介します。
ベルリンのMGI 欧州本社におけるハイスループットなゲノムデータ解析
ハイスループットシーケンシング施設は、膨大なデータ量と解析ワークフローの管理に大きな課題を抱えています。ローカルストレージや計算基盤を利用する従来のアプローチでは、データ生成の規模に対応しきれず、処理のボトルネック、高いメンテナンスコスト、複雑なデータセキュリティ要件などが発生しがちです。ラボには、データストレージをシームレスに扱い、スケーラブルな計算リソースを提供し、セキュリティコンプライアンスを維持しつつ、予測可能なコストで利用できるソリューションが必要です。
MGI-tech はバイオテクノロジーイノベーションのリーダーであり、次世代シーケンシング (NGS) とラボオートメーション技術を開発・提供しています。同社のフラッグシップである DNBSEQ™ プラットフォームは、精密医療、農業、ヘルスケア分野に向けて、高精度かつハイスループットな遺伝子解析ソリューションを提供します。
ベルリンにあるMGI 欧州本社には 3 台のハイスループット T7 シーケンサーが設置されており、週あたり合計で最大 63 テラベース (Tb、テラ塩基) のゲノムデータを生成しています。3 台の T7 シーケンサーが生成したデータは AWS へ安全に転送され、ゲノムデータ向けにスケーラブルかつコストを最適化したストレージソリューションである AWS HealthOmics Sequence Store に取り込まれます。AWS HealthOmics 内では、Sentieon の高性能なプライベートワークフローが実行され、高速かつ高精度なデータ解析が行われます。
この統合型のハイスループットソリューションにより、MGI 欧州本社の研究者や臨床医は、重要なアプリケーションに向けて複雑なゲノムデータから価値ある知見を引き出せます。具体的には、遺伝性疾患の診断、がん研究、医薬品開発、大規模な集団ゲノミクスの研究などが含まれます。
AWS HealthOmics と Sentieon
AWS HealthOmics は、ゲノムデータの保管、処理、解析のためのセキュアでスケーラブルなサービスです。HealthOmics Sequence Store は、大量のシーケンシングデータをコスト効率よく保管する手段を提供し、HealthOmics ワークフローとのシームレスな統合によって、下流解析ですぐに利用できる状態を保ちます。保存時の機密性の高い顧客データを保護するため、HealthOmics は AWS Key Management Service (AWS KMS) の AWS 所有のキーを用いてデフォルトで暗号化を行います。カスタマーマネージドキーもサポートされています。
Sentieon は 2014 年から AWS パートナーであり、高速かつ高精度なゲノムデータ処理のために最適化されたバイオインフォマティクスアルゴリズムを開発してきました。HealthOmics ワークフローでは、Sentieon の DNAscope および TNseq パイプラインを、あらかじめ定義された Ready2Run ワークフローとしても、カスタマイズ可能なプライベートワークフローとしても実行できます。
アーキテクチャの概要
図 1 – ベルリンのMGI 欧州本社で実装されたワークフローアーキテクチャ。
図 1 は次の流れを示しています。
- MGI DNBSEQ-T7 シーケンサーが 1 週間で最大 21 Tb (テラベース) のデータを CAL 形式 (MGI シーケンサーのベースコールソフトウェアが生成するバイナリファイル形式) で出力します。
- MGI ZTRON Lite Pro が CAL ファイルを FASTQ ファイルに変換し、データの受け渡しを可能にします。
- FASTQ ファイルは AWS 上の Amazon Simple Storage Service (Amazon S3) に安全に転送されます。
- これらのファイルは AWS HealthOmics Sequence Store にインポートされます。また、HealthOmics Transfer Manager を通じて、ローカルストレージから FASTQ ファイルを HealthOmics Sequence Store に直接アップロードすることもできます。
- DNAscope や TNseq パイプラインなどの Sentieon Genomics ソフトウェアは、HealthOmics ワークフロー上で Ready2Run ワークフローとしても、カスタマイズ可能なプライベートワークフローとしても実行できます。
- ワークフロー実行の最後に、AWS HealthOmics は生成された BAM および VCF ファイルを S3 バケットへ転送します。
- 結果は臨床研究者などのユーザーによって参照されます。
Ready2Run ワークフロー: 迅速かつ簡単なセットアップ
迅速でシンプルなソリューションを求める研究者向けに、Sentieon の Ready2Run ワークフローは、あらかじめ構築・最適化されたパイプラインを提供します。数クリックまたはシンプルな API 呼び出しでデプロイでき、固定料金かつ予測可能な実行時間で動作します。これらのワークフローは、次のようなさまざまなゲノム解析タスクに対応するよう設計されています。
- DNAscope: MGI シーケンシングプラットフォーム向けに最適化された、生殖細胞系列バリアントコール用パイプライン。
- TNseq: 体細胞バリアントコール用パイプライン。GATK の Mutect2 と同等の精度を達成しながら、MGI データではより短い実行時間を実現します。
AWS HealthOmics ワークフローを利用することで、研究者は Sentieon の Ready2Run パイプラインから選択でき、さまざまな解析ニーズ、リファレンスゲノム、シーケンシングプラットフォームに対応する柔軟な選択肢を得られます。これらのワークフローは実行単位で課金されるため、コストを予測しやすく、ハイスループットなゲノミクスプロジェクトに必要なスケーラビリティを提供します。
プライベートワークフロー: 高度なユーザー向けの完全なカスタマイズ
より高度な制御やカスタマイズを必要とするチーム向けに、Sentieon は AWS HealthOmics 上でパイプラインをプライベートワークフローとして実行することもサポートしています。これらのワークフローは完全な柔軟性を提供し、研究者が固有のニーズに合わせてワークフローをカスタマイズ・最適化できるようにします。
Sentieon のプライベートワークフローを実行することで、ユーザーは次のことが可能になります。
- AWS 向けの Sentieon コンテナイメージを独自に構築する。
- パラメーター、リファレンスゲノム、解析結果の出力内容をカスタマイズする。
- パイプライン構成を制御しつつ、AWS HealthOmics のインフラストラクチャを活用する。
プライベートワークフローを始めるには、Sentieon GitHub リポジトリで提供されている詳細なセットアップ手順に従ってください。このリポジトリには、コンテナイメージ、セットアップスクリプト、WDL および Nextflow の両エンジン向けのワークフローサンプルなど、カスタマイズしたワークフローの構築とデプロイに必要なものがすべて含まれています。プライベートワークフロー向けに Sentieon ライセンスサーバーを有効化する手順については、Requesting Sentieon licenses for private workflows を参照してください。
まとめ
MGI、Sentieon、AWS の協業は、ゲノミクスラボ向けの堅牢なソリューションを提供します。MGI のシーケンシング技術を活用することで、合理化された、かつカスタマイズ可能なワークフローを AWS インフラストラクチャとシームレスに統合して利用できます。また、Sentieon の Ready2Run ワークフローを実行する場合でも、プライベートワークフローをセットアップする場合でも、研究者は AWS HealthOmics を活用して、セキュアでコンプライアンスに準拠した環境で大規模にゲノムデータを保管・解析できます。これにより、より迅速かつ高精度な発見が可能になります。
AWS KMS 暗号化などの組み込みのセキュリティ機能により、コンプライアンスに準拠した環境でのデータ保護が確保されます。また、固定料金の Ready2Run ワークフローは、予測可能なコストと自動化されたリソース管理を提供します。
MGI、Sentieon、AWS のこの協業は、MGI シーケンシング技術を活用するゲノミクスラボ向けに堅牢なソリューションを提供し、より迅速かつ高精度な発見を可能にします。このソリューションは、ハイスループットシーケンシング業務に一般的に伴う処理のボトルネックの解消に役立ちます。
この統合ソリューションをゲノム研究や臨床アプリケーションに実装する方法について詳しくは、AWS HealthOmics のウェブページや Sentieon GitHub リポジトリをご覧ください。また、この技術がお客様のゲノム解析ワークフローをどのように加速できるかについて、個別のご相談を承ります。AWS 担当者までお問い合わせください。
謝辞
本ブログの作成にご協力いただいた MGI-tech のバイオインフォマティクスサイエンティスト Dr. Liene Astica、フィールドバイオインフォマティクスサイエンティスト Ying Zhan、フィールドアプリケーションサイエンティスト Ongeziwe Mbhele の各氏に感謝申し上げます。
参考資料
- AWS for Genomics Solutions
- AWS Healthcare & Life Sciences Blog Collection
- AWS Healthcare & Life Sciences – Security and Compliance
- Genomics Unlocked: MGI-tech の最新ウェビナーシリーズを視聴できます
著者について
翻訳は Solutions Architect の吉村が担当いたしました。
