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IoT@Loft #22 スマート工場(IIoT)に向けた課題と取り組み 〜機器接続とデータ活用〜 vol.4
こんにちは、プロトタイピングソリューションアーキテクトの渡邉です。
2021年10月13日に開催されたIoT@Loftの22回目「スマート工場(IIoT)に向けた課題と取り組み 〜機器接続とデータ活用〜 vol.4」のご紹介をさせていただきます。
IoT@Loft とは ?
IoT 関連ビジネスで開発を担当するデベロッパーのためのイベントです。IoT の分野は、「総合格闘技」と呼ばれるほど、必要な技術分野が非常に多岐に渡ること、ビジネスモデルが複雑なケースが多く、全体を理解することは難しいと言われています。その結果、実証実験 (Proof of Concept : PoC) から商品への導入が進まないケースや、PoC でさえ十分に実現できていないケースも多々あります。
IoT@Loft は、そういった IoT 特有の課題と向き合い、情報共有・意見交換を行う場として、参加者の事業や製品開発を成功に近づけることができれば幸いです。この勉強会では、膨大な IoT 関連の情報の見通しを良くするために、各回ごとにテーマを定め、それに沿った形で登壇者に事例や技術のご紹介をいただきます。テーマは、インダストリー、ソリューション、テクノロジー、開発フェーズなどを軸に決めていきます。
IoT@Loftについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
また、下記のConnpassのグループに入っておくと、次のイベントの通知や、登壇資料の通知が受け取れますので、ぜひご参加ください。
2019年から開始したIoT@Loftですが、IIoTについて取り上げる回は今回で4回目となります。スマート工場の回は毎回多くの方々にご参加いただき盛り上がりを見せています。今回も多くの方々にご参加いただきました。
工場の IoT 化は、予知保全、生産性向上、デバイス管理、設備の安全管理など多岐にわたり、収益向上やコスト削減を実現しています。今回もさまざまな分野で工場のスマート化にご尽力されているエンジニアの方々に、現場の課題とそれに応えるソリューション事例などをご紹介いただきました。また、AWSからはIIoTに関連するAIサービスをご紹介しました。
各セッションの紹介
ここからは各セッションについての簡単なサマリと、資料と当日のQ&Aについてご紹介いたします。当日時間の関係でお答えいただけなかった質問についてもご回答いただいています。
化学プラントデータのクラウドにおける可視化・利活用
東洋エンジニアリング株式会社
エンジニアリング・技術統括本部 DXエンジニアリング部 Digital Solution Team所属 福田 健太 氏
化学プラントではプラント外での運転データの確認や活用はまだまだ発展途上で、運転業務の効率化・操業最適化のために、遠隔監視システムの構築や機械学習などによる高度なデータ活用を実施することのニーズは高まっていると現在の状況についてご紹介いただきました。そんなニーズに対して、東洋エンジニアリングがAWSを最大限活用して開発・提供している、プラントの遠隔監視、データ活用のシステムであるDX-PLANT®のアーキテクチャとそのポイントについてご紹介いただきました。
資料をこちらで公開させていただいております、ぜひご覧ください。
Q&A
Q. プラントだと敷地がすごく広いと思いますが、どの様なネットワークを利用して設備からデータの収集を行っているのでしょうか?
A. 実際に広い敷地内に有線で張り巡らせています。
Q. 本システムは貴社が開発されたのでしょうか?それともパートナーに依頼されたのでしょうか?どこで役割分担したのか教えていただけると助かります。
A. 本日ご紹介したシステムはすべて東洋エンジニアリングで内製しています。開発にあたってはAWS側にもアーキテクチャの相談なども行いながら進めてきています。
Q. プラントのデータをクラウドにアップロードすることに対して社内やプラントオーナーからどのような懸念が上がりましたか?また、懸念をどのように解消したのか知りたいです。
A. 実際にプラントオーナーから「情報が外にもれないのか?」などの懸念が上がります。対応としては、総務省が出しているセキュリティチェックリストをお客様と1つ1つ確認していくことによってお客様の懸念を解消していきました。
Q. AWS側に接続している機器は何(PC、PLC、センサ)になりますか。データの点数はどれくらいの規模になりますか。
A. 主にプラントのセンサーデータとなり、お客様にもよりますが、数千点あります。基本これらすべてのデータをクラウドに上げています。これらのデータはリアルタイムデータを扱っていく際の対象ともなります。
Q. データはセキュリティの観点で暗号化などの方法は検討されてますか?また、具体的な手法として何かマネージドサービスの活用を考えていますか?
A. データの暗号化は実施しています。S3データはKMSを使って暗号化をしています。
Q. AWS開発を行った人数、規模感をお教えいただきたいです。また、AWSのサポートプランはエンタープライズになりますでしょうか?
A. 10人ほどのチームでAWSインフラ運用、運転支援サービスの開発を行っています。エンタープライズ相当のサポートプランです。
ものづくり現場を高度化する「Edgecross」の概要と活用事例紹介
一般社団法人 Edgecrossコンソーシアム
事務局参与/IoTエバンジェリスト 長谷川 政行 氏
モノづくり、工場のIoT実現における動向、ITとFAと連携する上での課題とエッジコンピューティングの必要性についてお話いただき、その解決手段としてのオープンなエッジコンピューティングプラットフォームとして提供されているEdgecrossの構成・機能と特徴についてご紹介いただきました。また、Edgecrossコンソーシアムが行っている普及促進の取り組みについてもご紹介いただき、Edgecrossを活用したスマートファクトリー化、DX促進の事例について課題とその対応について複数ご紹介いただきました。
資料をこちらで公開させていただいております、ぜひご覧ください。
Q&A
Q. 海外でも似たような取り組みがなさされていると想像します。動向をご存じでしたら教えていただきたいです。
A. 欧州や中国などでも同様の考え方で取り組む企業などがあります。 Edgecrossではこれらの企業とも情報交換など連携して エッジコンピューティングの普及に取り組んでいます。
Q. 日本発のプラットフォームということですが、Edgecrossのパートナーさんは海外の工場やプラントへの導入もサポート可能でしょうか。
A. 海外展開に取り組んでいる会社もあります。 世界すべての国でと言うわけではありませんが、主要国であればEdgecrossの購入等、対応可能な企業もおりますのでEdgecrossにご相談ください。
Q. スマートファクトリー化について、組立加工系の企業はかなり進んでいるイメージなのですが、プロセス系が知見成熟をするために日本企業全体でどのように取り組んでいけばいいか、何かお考え等あればお伺いしたいです。
A. プロセス系では数は少ないですが、今回ご紹介した住友ベークライトのような事例もあります。Edgecrossも会員企業と共に、データ収集点数やタイミングなど、プロセス系固有の様々なニーズに対して技術的な観点でどのように機器を接続して活用していけるか、ユーザ企業様と一緒にノウハウなどを蓄積している段階と思っております。皆様と事例を積み上げながら知見を蓄積していきたいと考えていますのでEdgecrossの活動へ参加いただければありがたく思います。
Q. OPC UAの接続は簡単だと思うのですが、OPC DAになるとOPC Server側のユーザー設定などで実際に接続する際に多くの問題が発生します。OPC Server自体は別ベンダーになるはずですが、ユーザー設定などでトラブルが発生したした際にはサポートはどのように実施されるのですか?
A. Edgecrossには認定SIパートナーという制度があり、Edgecrossを理解するシステムインテグレータの会員企業様がおります。OPC-DAを理解するSIパートナーをご紹介することができると 思います。Edgecrossにご相談いただければと思います
Q. テーマ別ソリューションはどの様なテーマで実施されていますか。
A. 今まで金属加工業向け、食品業向けと業種軸でのソリューションについて情報提供などを行ってきましたが業種に限らない共通的な課題もあることから、今年度は課題テーマを軸にしたワーキングを作り、検討しています。コロナ禍での移動制限などに対応するニーズもあることから「リモート」の他、「トレーサビリティー」と、SDGsもふまえ「エネルギーマネジメント」の3つの課題テーマに取り組んでいます。成果は10月29日にEdgecrossのHPで公開する予定です。
Q. エッジコンピューティングによる利便性は確かに高いとは思いますが、一方でトラブル時や欠損を考えた時の冗長化、また各アプリの疎結合な構成はどのようになっていますでしょうか?
A. ハードウェア的な冗長化という観点では、Edgecrossの基本ソフトはWindows対応であり、動作が確認できたものを推奨産業用PC(IPC)としてご紹介しており、この推奨IPCの中に無停止コンピュータがあり二重化構成が組めたりします。また、アプリの結合度については、Edgecross基本ソフトのインタフェース仕様に従ってアプリが開発されていますので、仕様をご確認いただくと参考になるかと思います。仕様入手は、会員登録(無償ランク有)頂ければ入手可能です。
エッジコンピュータそのものの冗長化から、そのレイヤを含めたシステム的な視点での冗長化(リモートでの死活監視、リカバリなど)まで、ダウンタイムや検出精度、コスト等含めた総合的な視点が重要かと思います。具体的なお困り等がございましたら、システムインテグレータのご紹介なども可能と思いますのでEdgecrossまでご相談ください。
Amazon Lookout for Equipment を使った設備の予知保全と活用イメージの紹介
アマゾンウェブサービスジャパン株式会社
Machine Learning Solution Architect 卜部 達也
機器の異常を前もって検知し故障の前に手を打つことができれば、設備の保守・管理に関わるコストを効果的に下げることができます。このセッションでは、2020年12月に発表されたセンサデータの異常検知サービスであるLookout for Equipmentの特徴をご紹介し、製造現場やプラントなどで予知保全システムを構築する活用イメージや事例についてお話しました。
資料をこちらで公開させていただいております、ぜひご覧ください。
また、セッションの動画も公開させていただいておりますので合わせてご覧ください。
Q&A
Q. Lookout for EquipmentのAWSコンソール画面は日本語で設定できますでしょうか?
A. 現在は日本語には対応していません。英語のみになっています。
Q. Lookout for Equipmentをトラックなど自動車のセンサーデータなどに利用することは可能でしょうか?
A. 時系列のデータでcsv形式であれば利用できます。ただし稼働頻度が低かったり、動作の変動が大きい機器を対象とはしていないため、機器によっては精度がでないものもあります。
https://aws.amazon.com/jp/lookout-for-equipment/faqs/
Q. 使用可能な、代表的な異常検知手法の種類をお教えいただきたいです。
A. Lookout for Equipmentの内部で動作するアルゴリズムは公開されていません。複数のアルゴリズムをパラメータを変えながら最大約2万8000個のモデルを作成し、最適なモデルとしきい値を決定します。
Q. 機器のの故障を予測するにあたって季節要因、例えば気温や湿度、営業日などの情報もパラメーターとして入れると精度が高くなることもあると思います。そのようなデータを学習時にのデータとして入れることも可能でしょうか?
A. 機器データと同じ時間間隔の時系列データとしてデータに追加することができればこれらの情報をデータとして使うことができます。ただし、天気のようなカテゴリーデータは精度を下げる可能性もありますので、実際に学習に使うデータ項目を追加・削除して精度を確認することが必要です。
Q. 多品種少量生産の生産装置のように、時系列データの波形がかなり変動するような装置データにも適用可能なのかお教えいただきたいです。
A. モデル作成は可能ですが、変量の大きいデータは一般的には向いていません。
https://aws.amazon.com/jp/lookout-for-equipment/faqs/
Q. このサービスはAWS Lambdaのような、ノンサーバーなシステムのイメージでしょうか?
A. 学習に必要になるインスタンスは自動起動・停止しますので、その管理を意識していただく必要はございません。ただし、実際の運用(推論)の際には推論用のインスタンスが立ち上がります。起動中は推論の頻度に関わらず課金が発生します。
Q. auto MLによる最適なモデル作成と推論とありますが、そのモデルやパラメタを選んだ根拠やモデルごとのスコア比較など、適正かどうかを判断できるログや表は見ることができますか?
A. アルゴリズム間の精度指標の比較や判断根拠などは見ることができません。Lookout for Equipment内部で選択されたモデルのみを利用する形になります。
お知らせ
次回のイベント
次回のIoT@Loft #23は「スマートプロダクトの最適化と改善」と題して2021/11/10(水) 16:00〜18:00で開催します。イベントの詳細や申込についてはこちらのサイトからお願いします。通常のIoT@Loftと開催時間が異なりますので、ご注意ください。
関連製造イベントのご紹介
都市を、移動を、暮らしを、変えるセミナー
日本の産業界もつリアルな物づくりの強みを活かしつつ、新たな時代のニーズに対応したビジネスアイデアを、デジタル技術を活用して素早く実現するためのメカニズムとお客様事例をご紹介するセミナーを2021/11/4(木) 13:00 〜 17:00で開催します。イベントの詳細や申し込みについてはこちらのサイトからお願いします。
DX推進におけるIoT導入を阻む技術課題とその解決に向けて
AWSのSAとお客様にもご登壇いただき、共通の課題を掘り下げながら、その解決方法について、技術課題のリストと対応するソリューションをご紹介するセミナーとなります。こちらの開催は2021/11/17(水) 10:00 〜 12:00で開催します。イベントの詳細や申し込みはこちらのサイトからお願いします。
AWS の機械学習を使った製造業における業務活用
製造業のさまざまなシーンでAIの活躍が見受けられるようになりました。一方、作成したAIモデルを本番環境にて安定的に稼働するためには、MLモデルの精度評価を行い精度劣化が見られた場合にはモデルの再学習を行うことで継続的に精度を維持するMLOpsの仕組みが必要となります。本セミナーでは、AWSのテクノロジーを使った製造業での活用事例のご紹介いたします。こちらの開催は2021/11/25(木) 14:00 〜 16:00となります。イベントの詳細、申し込みはこちらのサイトからお願いします。
関連ウェブサイトのご紹介
日本のお客様向け AWS の製造業に対する取り組み
AWS では、日本国内に製造業を専門にしたチームを有し、国内のお客様におけるビジネストランスフォーメーションをご支援しております。こちらのサイトでは日本国内のイベント情報やお客様事例、登壇コンテンツなどをご紹介しています。ぜひチェックしてみてください。
https://aws.amazon.com/jp/local/manufacturing/
AWS IoT 開発者ポータル
IoT エンジニア向けに、IoT 関連の国内の事例やセミナーの情報、ハンズオンや学習のためのデジタルコンテンツなどを随時更新しています。ぜひ定期的にチェックしてみてください。
https://aws.amazon.com/jp/local/iot/
著者について
渡邉 聡 (Satoshi Watanabe) AWS では IoT に関連するプロトタイピングを支援する、プロトタイピング ソリューション アーキテクトとして、主に製造系のお客様を中心にご支援をさせて頂いております。 |