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IoT@Loft #25 進化するIoTカメラソリューション – 生成AIで拓く新時代
こんにちは、プロトタイピング ソリューション アーキテクトの市川です。
2024 年 10 月 30 日に開催された 「IoT@Loft #25 進化する IoT カメラソリューション – 生成 AI で拓く新時代」の内容について紹介させていただきます。
今回の IoT@Loft では i-PRO 株式会社と株式会社 USEN のお客様セッションだけではなく、短い時間ですがデモの展示も行いました。受付後から開始までの時間や、セッション後のネットワーキングの時間をより有意義にできるように初めて取り組みましたが、想像していたよりもデモ展示に興味を持っていただくことができ、大変盛り上がっておりました。
IoT@Loft とは ?
IoT 関連ビジネスで開発を担当するデベロッパーのためのイベントです。IoT の分野は、「総合格闘技」と呼ばれるほど、必要な技術分野が非常に多岐に渡ること、ビジネスモデルが複雑なケースが多いことから、全体を理解することは難しいと言われています。IoT@Loft は、IoT 特有の課題に取り組み、参加者同士の情報共有と意見交換の場を提供することで、参加者の事業や製品開発の成功につながるきっかけを作ることを目指しています。
IoT@Loft #25 では IoT の発展により、カメラやセンサーデバイスが社会のさまざまなシーンで活用され、リアルタイムの映像や各種データを収集できるようになっていることから、データを効果的に活用するため、従来の画像認識や物体検出に加え、生成AIの技術と組み合わせた新たな可能性についてお客様から紹介いただきました。
お客様登壇
生成 AI/IoT ネイティブなカメラを目指して
1 つ目のセッションは i-PRO 株式会社 高橋様と荒井様より、「生成 AI/IoT ネイティブなカメラを目指して」という内容でご登壇いただきました。
i-PRO 株式会社では moduca シリーズという AI/IoT ネイティブカメラを提供しています。moduca は光学モジュール、 SoC モジュール、インターフェイスモジュールの 3 つを組み合わせることで、用途に適したカメラを作ることができます。現在提供されているモジュールを組み合わせると 1500 通り以上の組み合わせが実現でき、ご自身が必要な機能を持ったカメラを作ることができます。
Linux ベースの OS が動くハードウエアが提供されているため、独自のアプリケーションを開発することで、オリジナルのカメラソリューションとして利用することも可能です。もちろん AWS の SDK を利用することもでき Amazon Kinesis Video Streams にも対応しています。
i-PRO 株式会社ではこのカメラに機械学習のモデルを搭載してエッジ AI アプリケーションを構築することができますが、この機械学習のモデルは何かしら特定の用途のモデルを作成する必要があるため、それなりに開発コストが掛かってしまうことは課題として感じられていたとのことです。
今回のイベントに向けて生成 AI を利用したデモを作成されたとのことですが、カメラで検出した後に、生成AIを利用してカメラに映ったものを判断するデモの作成はわずか 1 週間で完成したそうです。
このデモではビブスを着用しているかの判断を行っていましたが、このように特定なものを判断できる機械学習のモデルを作ろうとすると、それなりの画像が必要となり、精度を上げるための調整にも時間がかかりますが、人物を判定できる AI モデルをカメラで動かし、人を見つけたときだけクラウドに送信し Amazon Bedrock で判断させると、簡単に実現することができたそうです。このように生成 AI を使った新規事業へのアイディアも紹介していただきましたので、ぜひ資料をご覧いただければと思います。
IoT×AI カメラソリューションが拓く店舗 DX の近未来
2 つ目のセッションは、株式会社 USEN の 野村様より、「IoT×AI カメラソリューションが拓く店舗 DX の近未来」という内容でご登壇いただきました。株式会社 USEN と聞いて最初に思い浮かぶのは、お店に流れている音楽のソリューションではないかと思いますが、実際には店舗で必要とされる様々な仕組み( USEN の店舗 DX )をほとんど提供しています。
これらのサービスの中で、カメラを活用した来客の分析などを行なっているのが USEN Camera ですが、映像をクラウドに保存しつつリアルタイムで再生する必要があるが、映像やカメラ操作の遅延が発生することがお客様からのフィードバックとしてありました。
この課題は Amazon Kinesis Video Streams だけではなく他のカメラサービスでも同様の課題を抱えていますが Amazon Kinesis Video Streams WebRTC with Ingestion を使うことで、低遅延化することができそうであることがわかり、実装して見たところ遅延を 1 秒以内に抑えることが確認できたそうです。
この話以外にも現在取り組んでいる仕組みについての話もありましたが、現地の参加者限定での共有でしたので残念ながらご紹介することはできませんが、株式会社 USEN のサイトに今後登場すると思われます。
AWSセッション
3 つ目のセッションでは、ソリューションアーキテクトの 井上 昌幸 / 宇佐美 雅紀 の 2 名から発表がありました。
前半は SA の井上より「Amazon Kinesis Video Streams – アップデートとエッジで役立つ構成パターン」と題して Amazon Kinesis Video Streams を紹介しました。
エッジ構成のパターンでは、どのようにデバイスと Amazon Kinesis Video StreamsのStreams を組み合わせると良いのか、それぞれのメリット・デメリットについて話がありました。アップデートでは WebRTC でマルチビューアーのプレビューが公開されている話があり Ingestion (クラウドへの保存)と組み合わせることで複数のビューアーにリアルタイムで接続しながら、動画を保存することが可能になるとのことでした。
後半は SA の宇佐美より 5 月に開催された AWS Summit Japan で展示されたカメラ+生成 AI のデモについての紹介がされました。
AWS Summit Japan では多くのデモが展示されており、今回はカメラと生成AIが直接関係するデモのみを紹介しました。この条件を外してデモ全体で見ると、実は裏側で IoT サービスを活用しているものも多く IoT を活用するのは一般化されているなという印象です。紹介いただいたデモは別途ブログでも公開しております。
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デモの展示
i-Pro 株式会社
i-PRO 株式会社のデモはセッション内で紹介されていた Amazon Bedrock を利用した検出と通知について紹介されていました。開発したデモだけではなく、複数種類のカメラモジュールも展示されており、非常に小さいことに驚きました。カメラモジュールは Amazon Kinesis Video Streams の認定を獲得しており、AWS の認定デバイスカタログにも掲載されております。最後まで多くの人が訪れ、大変賑わっていました。
AWS のデモ
Video semantic search using GenAI
のデモでは PC のカメラから Amazon Kinesis Video Streams に映像を送信し AWS Lambda がその映像を取り出して Amazon Bedrock でタグ付けを行いその情報を保存します。Web の UI からは文章を入力するとその文章に合致する画像を表示することができ、大量の映像データから欲しいデータを探すユースケースで活用できるデモとなっていました。
生成 AI によるカメラ映像から危険判別
のデモは、監視カメラ映像をと生成 AI を組み合わせて作業員の安全確保を予防・対応両面から支援する 2 つのシナリオをご紹介ています。1 つはカメラ映像と生成 AI を使用して従業員の危険な状況を生成 AI が記述し、状況に応じて警告を出します。もう 1 つは作業員の安全装具の装着状況をカメラ映像から分析してレポートします。このデモは AWS Summit Japan でも展示されており、詳細な情報はこちらから見ることもできます。
さいごに
IoT のユースケースで少しずつ生成 AI の話も出てきていますが、まだまだ手探りな状況かなと思います。今回のようにすでに試したり、考えられているお客様の話を聞いていると、今後が非常に楽しみな組み合わせと思いました。
IoT@Loft に関しては、今回はセッションと合わせてデモを展示する取り組みを行いました。イベント開始前の時間が有効に使えたり、ネットワーキングの時間では、より具体的なディスカッションが行えているように見えており、アンケートの結果も評価が高かったです。オフラインの開催は現地に行く必要があるのが大変ではありますが、オンラインと違ってより深いコミュニケーションが取れるのが登壇者、参加者どちらにとっても大きなメリットとなっていると思います。次回は来年になると思いますが、より有意義な場となるように改善を続けたいと思います。
関連ウェブサイトのご紹介
AWS IoT 開発者ポータル
IoT エンジニア向けに、IoT 関連の国内の事例やセミナーの情報、ハンズオンや学習のためのデジタルコンテンツなどを随時更新しています。ぜひ定期的にチェックしてみてください。
https://aws.amazon.com/jp/local/iot/
著者について
市川 純
プロトタイピングソリューションアーキテクト
AWS では IoT に関連するプロトタイピングを支援する、ソリューション アーキテクトとして、お客様の IoT 関連案件を支援しています。