Amazon Web Services ブログ
Amazon Bedrock の次世代推論エンジン Mantle におけるゼロオペレーターアクセス
本ブログは 2025 年 12 月 23 日に公開された AWS Blog “Exploring the zero operator access design of Mantle” を翻訳したものです。
Amazon では、改善点について率直かつオープンに議論する文化があります。この文化があるからこそ、お客様への価値提供の基準を継続的に引き上げるための投資とイノベーションに注力し続けることができています。2025 年 12 月初め、Amazon Bedrock の次世代推論エンジンである Mantle において、このプロセスが実際に機能している例を共有する機会がありました。生成 AI の推論処理やファインチューニングのワークロードが進化し続ける中、お客様に最適化された方法で推論を提供する方法も進化させる必要があり、それが Mantle の開発につながりました。
次世代推論エンジンのアーキテクチャを再構築するにあたり、AWS はセキュリティの基準を引き上げることを最優先事項としました。AWS はお客様と同様に、セキュリティとデータプライバシーに一切妥協しない姿勢で取り組んでいます。これは当初からビジネスの中心であり、Amazon Bedrock においても初期段階から徹底してきました。生成 AI の推論ワークロードは、お客様がデータの潜在的な価値を引き出すための、かつてない可能性をもたらします。しかし、その可能性を活かすには、最も機密性の高いデータを処理し、最も重要なシステムと連携する生成 AI システムを構築する際に、セキュリティ、プライバシー、コンプライアンスの最高基準を確保する必要があることを、AWS は当初から理解していました。
前提として、Amazon Bedrock は AWS 全体に適用されているものと同じ運用セキュリティ基準で設計されています。AWS は常に最小権限モデルを運用に採用しており、各 AWS オペレーターは割り当てられたタスクを実行するために必要な最小限のシステムにのみアクセスでき、その権限はタスクの実行に必要な期間のみに限定されています。顧客データやメタデータを格納または処理するシステムへのアクセスはすべてログに記録され、異常がないか監視され、監査されます。AWS はこれらのコントロールを無効化またはバイパスするあらゆる行為を防止しています。さらに、Amazon Bedrock ではお客様のデータがモデルのトレーニングに使用されることはありません。モデルプロバイダーは顧客データにアクセスする手段を持っていません。推論処理は、AWS が管理する Amazon Bedrock のサービスアカウント内でのみ行われ、モデルプロバイダーはこのアカウントにアクセスできないためです。この強力なセキュリティポスチャにより、お客様は安心して機密データを生成 AI アプリケーションで活用できるようになっています。
Mantle では、AWS はさらに高い基準を設けました。AWS Nitro System のアプローチに従い、Mantle をゼロから設計してゼロオペレーターアクセス (ZOA) を実現しました。これは、AWS オペレーターが顧客データにアクセスするための技術的手段を設計の段階から徹底して排除したものです。代わりに、システムとサービスは顧客データを保護する自動化とセキュアな API を使用して管理されます。Mantle では、AWS オペレーターが基盤となるコンピューティングシステムにサインインしたり、推論プロンプトや生成結果などの顧客データにアクセスしたりする手段はありません。Secure Shell (SSH)、AWS Systems Manager Session Manager、シリアルコンソールなどの対話型通信ツールは、Mantle のどこにもインストールされていません。さらに、すべての推論ソフトウェアの更新は、サービスにデプロイされる前に署名と検証が必要であり、承認されたコードのみが Mantle で実行されることを保証しています。
Mantle は、最近リリースされた EC2 インスタンスアテステーション機能を使用して、顧客データ処理のための堅牢化され、制限された、イミュータブルなコンピューティング環境を構成しています。Mantle でモデルの重みを取り扱い、顧客プロンプトに対する推論処理を担当するサービスは、Nitro Trusted Platform Module (NitroTPM) から暗号署名されたアテステーション・メジャーメントによる高い保証によってさらに裏付けられています。
お客様が Mantle エンドポイント (例: bedrock-mantle.[regions].api.aws) を呼び出すと、Amazon Bedrock の Responses API を提供するエンドポイントなど、顧客データ (プロンプト) は TLS を通じてお客様の環境を離れ、ZOA で運用される Mantle サービスまで暗号化されたまま送信されます。フロー全体および Mantle 内で、AWS、お客様、モデルプロバイダーのいずれのオペレーターも顧客データにアクセスできません。

今後の展望
Mantle の ZOA 設計は、お客様のデータのセキュリティとプライバシーに対する AWS の長期的なコミットメントの表れです。だからこそ、AWS のすべてのチームがセキュリティの基準をさらに引き上げるための投資を行うことができています。同時に、NitroTPM アテステーションなど、Amazon 社内で使用している基盤となるコンフィデンシャルコンピューティング機能を、すべてのお客様が Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) で使用できるようにしました。
AWS はここで止まることはありません。お客様のデータのセキュリティを強化するための投資を継続し、これをどのように実現しているかについて、より高い透明性と保証を提供することにコミットしています。
著者について
Anthony Liguori は Amazon Bedrock 担当の AWS バイスプレジデント兼ディスティングイッシュドエンジニアであり、Mantle のリードエンジニアです。
本ブログは Security Solutions Architect の 中島 章博 が翻訳しました。