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AWS Supply Chain によるライフサイクルの異なる製品の需要計画の改善

製品の戦略は、消費者の需要、技術、競争の組み合わせによって形成されます。業界では、変化のたびに新製品が登場します。多くの場合、最新のテクノロジーを活用した新機能が追加され、ユーザーエクスペリエンスが向上します。 これにより、以前のバージョンの製品の段階的な廃止も開始されます。 その代表的な例が、スマートフォンの新しいモデルの導入と前モデルの段階的な廃止を特徴とする年間リリースサイクルです。

新製品には需要の実績がないため、組織や需要計画担当者にとって運用上の重大な課題となります。新製品の導入にあたって、新製品の需要に対応し、古い製品や従来製品の予測をスムーズに減らすために、精度の高い予測が必要です。需要の実績がないため、需要計画担当者は新製品と従来製品の類似点を導き出すのに勘・コツに頼りがちです。このような手動の予測調整は最適ではなく、非効率的で、予測の精度向上の難しさによって複雑になります。組織は、より迅速かつ効率的な需要計画のための自動化されたソリューションを求めています。

このブログ記事では、過去の売上データがない新製品の導入に伴う課題に対処するために AWS Supply Chain Demand Planning が提供するソリューションについて詳しく説明します。製品系統と製品ライフサイクルの両方の機能を検討し、データと設定を行うための重要な手順をご案内します。

ライフサイクルにおける段階の管理

正確性を確保するために、製品の予測は、製品の実際に提供販売されている期間にのみ適用させる必要があります。このアプローチを見落とすと、過剰在庫など在庫に関する重大な問題が発生する可能性があります。AWS Supply Chain Demand Planning を使用すると、製品ライフサイクルを定義できるため、製品のアクティブなライフサイクルについてのみ予測を作成できます。製品の導入と廃止のための予測パラメータを設定することで、新製品の不足と廃止製品の過剰在庫のリスクを最小限に抑えることができます。

段階的な販売プロファイルを持つ製品のライフサイクルの境界を定義するには、製品マスターデータファイルに発売日 (product_available_day 列), 販売終了日 (discontinue_day 列) の日付を取り込むことができます。以下のスクリーンショットは、製品マスターのサンプルデータの設定例で、フィールドが強調表示されています。

Product master data setup sample

データ設定の詳細については、製品ライフサイクル ユーザーガイドを参照してください。さまざまなレガシーシステムからデータを変換およびアップロードする手順と前提条件については、以前のブログをご覧ください。

柔軟性を高める追加の設定

次に、以前のブログで取り上げた設定に基づいて、発売日販売終了日の値を変更して、特定のビジネス要件に合わせて調整できます。これは、特に戦略的な在庫管理の目的で、標準的な発売日や販売終了日を超えてさらなる柔軟性を求める場合に重要になります。次のスクリーンショットに設定画面が示されています。ここで、製品ライフサイクルに合わせて、予測開始日と終了日を設定できます。

Forecast configuration setup screen

正確な予測のためのデータ収集

効果的な需要計画には、計画担当者が以前のモデルや代替製品の販売履歴を含めて、正確な予測を作成する必要があります。製品系統を使用すると、製品とその前のバージョンや代替製品との間にリンクを確立できるようになりました。このリンクには、予測のために使用する履歴の範囲を定義するルールが組み込まれ、製品の製品履歴の代替データが作成されます。

以下の手順で 履歴がほとんどない、または全くない製品に対して product_alternate エンティティを利用して、データを取り込むことができます。

  1. alternative_product_id 列で、予測パターンをコピーする元となる製品を定義できます。予測パターンのコピー元製品は、product_id 列で指定されたターゲット製品にコピーされます。
  2. alternate_product_qty は、代替製品の過去の販売実績に割り当てられた重みを示しています。有効期間は、考慮する代替製品の過去の販売実績の期間を示しています。product_alternate エンティティを設定したサンプルデータを次のスクリーンショットに示します。強調表示されたフィールドは、代替製品とターゲット製品について複製できる履歴の範囲を示しています。
    Additional data setup screenshot
  3. データセットアップの詳細については、製品系統のユーザーガイドを参照してください。

需要計画を実行に移す

データを取り込み、予測開始と終了の設定を行った後、アプリケーションは需要計画を生成します。画面上では、製品ライフサイクルフェーズ NPI ( New Product Introduction:新製品の導入 ) または EOL ( End of Life:廃止 ) が状況確認のために表示されます。予測に製品系統の履歴が組み込まれている場合は、透明性のために、その旨が注釈として追記表示されます。

Deman plan output

まとめ

製品系統と製品ライフサイクルの機能は、重要なプロセスを自動化し、予測の精度を向上させ、手動による調整の必要性を低減させます。この洗練されたアプローチは、業務効率を向上させ、新製品の先進的なサプライチェーン管理を容易にします。

AWS Supply Chain は、前払いのライセンス料や長期契約なしで利用できます。ニーズに合わせて拡張できるソリューションを提供します。そして、AWS Supply Chain Demand Planning はすべてのお客様が利用できます。詳細と開始の仕方については、AWS Supply Chain をご覧ください。また、インスタンスの作成、データの取り込み、ユーザーインターフェースの操作、インサイトの作成、需要計画の生成に関する技術的な概要を自分のペースで確認できる AWS Workshop Studio もご覧ください。

本ブログはソリューションアーキテクトの水野 貴博が翻訳しました。原文はこちら

著者について

Vikram BalasubramanianVikram Balasubramanian は、サプライチェーンのシニア・ソリューション・アーキテクトです。Vikram は、サプライチェーンの経営幹部と緊密に連携して、彼らの目標や問題点を理解し、解決策の観点からベストプラクティスと連携させています。Vikram は17年以上にわたり、サプライチェーン分野のさまざまな業種のフォーチュン500企業で働いてきました。Vikram は、パデュー大学でインダストリアルエンジニアリングの修士号を取得しています。ヴィクラムはノースダラス地域を拠点としています。

Harini Kidambi Harini Kidambi は AWS Supply Chain Demand Planning のプロダクトマネージャーです。 BlueYonderとアマゾンウェブサービス (AWS) の両方でサプライチェーンと分析の分野で5年以上の経験があります。 彼女は AWS Supply Chain のお客様と協力して、お客様のビジネスニーズを理解し、技術ソリューションとユーザーエクスペリエンスを調整し、最大のビジネス価値を実現できるよう支援しています。