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リアルタイム広告テクノロジーワークロードのための AWS RTB Fabric の紹介

10 月 23 日、リアルタイム入札 (RTB) 広告ワークロード専用に構築されたフルマネージドサービスである AWS RTB Fabric が発表されました。このサービスは、アドテクノロジー (AdTech) 企業が Amazon AdsGumGumKargoMobileFuseSovrnTripleLiftViantYieldmo などのサプライパートナーやデマンドパートナーにシームレスに接続して、一貫的な 10 ミリ秒未満のパフォーマンスを備え、ネットワーキングコストが標準のネットワーキングコストよりも最大 80% 低い Amazon Web Services (AWS) でレイテンシーの影響を受けやすい大容量の RTB ワークロードを実行するために役立ちます。

AWS RTB Fabric は、RTB ワークロードとパートナー統合専用の高性能ネットワーク環境を提供し、コロケーションされたオンプレミスインフラストラクチャや事前の契約は必要ありません。以下の図は、RTB Fabric のおおまかなアーキテクチャを示しています。

AWS RTB Fabric にはモジュールも含まれています。これは、お客様がセキュアな方法で独自のアプリケーションやパートナーアプリケーションをリアルタイム入札に使用されるコンピューティング環境に取り込めるようにする機能です。モジュールは、コンテナ化されたアプリケーションと、トランザクション効率と入札効果を高めることができる基盤モデル (FM) をサポートします。リリース時点での AWS RTB Fabric には、トラフィック管理の最適化、入札効率の改善、入札レスポンス率の向上のためのモジュールが含まれています。これらはすべて、一貫した低レイテンシーでの実行のために、サービス内でインライン実行されます。

プログラマティック広告の成長は、RTB ワークロードをサポートするための低レイテンシーでコスト効率性に優れたインフラストラクチャに対するニーズを生み出しました。AdTech 企業は、パブリッシャー、サプライサイドプラットフォーム (SSP)、デマンドサイドプラットフォーム (DSP) の全体で 1 秒あたり何百万もの入札リクエストを処理します。RTB オークションのほとんどは 200〜300 ミリ秒内に完了しなければならず、複数のパートナー間での OpenRTB リクエストとレスポンスの確実かつ高速なやり取りが必要となるため、これらのワークロードはレイテンシーの影響を非常に受けやすくなります。多くの企業は、主要パートナー近隣のコロケーションデータセンターにインフラストラクチャをデプロイすることでこの課題に対処してきましたが、レイテンシーは削減されても、運用上の複雑性が増し、プロビジョニングサイクルが長期化して、コストが高くなります。伸縮性を得てスケールするためにクラウドインフラストラクチャを活用する企業もありますが、この場合は複雑なプロビジョニング、パートナー固有の接続性、コスト効率性を実現するための長期的なコミットメントといった課題にしばしば直面します。こうしたギャップは、運用オーバーヘッドを増やし、俊敏性を妨げます。AWS RTB Fabric は、RTB ワークロード向けに構築されたマネージド型のプライベートネットワークを提供することでこれらの課題を解決します。このプライベートネットワークは、コロケーションの維持やカスタムネットワーク設定といった負担を課すことなく、一貫したパフォーマンスを実現し、パートナーのオンボーディングを簡素化して、予測可能なコスト効率を実現します。

主な機能
AWS RTB Fabric は、RTB ワークロードを大規模に実行するためのマネージド型基盤を導入します。このサービスでは、次の主要機能が提供されます。

  • AdTech パートナーへの簡素化された接続 – RTB Fabric ゲートウェイを登録すると、選択したパートナーと共有できるセキュアなエンドポイントをサービスが自動的に生成します。AWS RTB Fabric API を使用することで、さまざまな環境で RTB トラフィックをセキュアに交換するための、最適化されたプライベート接続を作成できます。オンプレミスやサードパーティのクラウド環境で業務を行っているパートナーなど、RTB Fabric を使用していないパートナーと接続には、外部リンクも利用できます。このアプローチは、統合時間を短縮し、AdTech 参加者間のコラボレーションを簡素化します。
  • 低レイテンシーの広告トランザクションのための専用ネットワーク – AWS RTB Fabric は、OpenRTB 通信向けに最適化されたマネージド型の高性能ネットワークレイヤーを提供します。SSP、DSP、パブリッシャーなどのアドテック参加者は、一貫的な 10 ミリ秒未満のレイテンシーを実現する高速なプライベートリンク経由で接続されます。AWS RTB Fabric は、予測可能なパフォーマンスを維持し、ネットワーキングコストを削減するためにルーティングパスを自動的に最適化するので、手動でのピアリングや設定は不要です。
  • RTB エコノミクスに即した料金モデル – AWS RTB Fabric は、プログラマティック広告エコノミクスに合わせて設計されたトランザクションベースの料金モデルを使用しています。お客様には 10 億トランザクションごとに料金が請求されるため、アドエクスチェンジ、SSP、DSP の運営方法に応じた予測可能なインフラストラクチャコストを実現できます。
  • 組み込みのトラフィック管理モジュール – AWS RTB Fabric には、AdTech ワークロードを効率的かつ確実に運用するために役立つ設定可能なモジュールが含まれています。Rate Limiter、OpenRTB Filter、Error Masking などのモジュールを使用することで、ネットワークパス内で直接リクエスト量を制御し、メッセージ形式を検証して、レスポンス処理を管理できます。これらのモジュールは AWS RTB Fabric 環境内でインライン実行され、アプリケーションレベルのレイテンシーを増加させることなくネットワーク速度のパフォーマンスを維持します。すべての設定は AWS RTB Fabric API 経由で管理されるため、ワークロードの拡大に合わせてルールをプログラム的に定義および更新できます。

使用の開始
AWS RTB Fabric での構築は、AWS マネジメントコンソールAWS コマンドラインインターフェイス (AWS CLI)、または AWS CloudFormationTerraform などの Infrastructure-as-Code (IaC) ツールを使用して今すぐ開始できます。

AWS RTB Fabric コンソールダッシュボードにあるように、コンソールは RTB ゲートウェイとリンクを表示して管理するための視覚的なエントリポイントを提供します。

AWS CLI を使用して、ゲートウェイの設定、リンクの作成、トラフィックの管理をプログラム的に行うことも可能です。私が AWS RTB Fabric での構築を始めたときは、ゲートウェイの作成から、リンクのセットアップ、トラフィックの監視まで、あらゆる設定を AWS CLI を使って行いました。セットアップは私の Amazon Virtual Private Cloud (Amazon VPC) エンドポイント内で実行され、ワークロードを接続する低レイテンシーインフラストラクチャは AWS が管理しました。

はじめに、入札リクエストを送信するためのリクエスタゲートウェイと、入札レスポンスを受信して処理するためのレスポンダーゲートウェイを作成しました。これらのゲートウェイは、AWS RTB Fabric 内のセキュアな通信ポイントとして機能します。

# Create a requester gateway with required parameters
aws rtbfabric create-requester-gateway \
  --description "My RTB requester gateway" \
  --vpc-id vpc-12345678 \
  --subnet-ids subnet-abc12345 subnet-def67890 \
  --security-group-ids sg-12345678 \
  --client-token "unique-client-token-123"
# Create a responder gateway with required parameters
aws rtbfabric create-responder-gateway \
  --description "My RTB responder gateway" \
  --vpc-id vpc-01f345ad6524a6d7 \
  --subnet-ids subnet-abc12345 subnet-def67890 \
  --security-group-ids sg-12345678 \
  --dns-name responder.example.com \
  --port 443 \
  --protocol HTTPS

両方のゲートウェイがアクティブになったら、リクエスタからレスポンダへのリンクを作成して、OpenRTB トラフィック用の低レイテンシーのプライベート通信パスを確立しました。ルーティングと負荷分散はリンクが自動的に処理します。

# Requester account creating a link from requester gateway to a responder gateway
aws rtbfabric create-link \
  --gateway-id rtb-gw-requester123 \
  --peer-gateway-id rtb-gw-responder456 \
  --log-settings '{"applicationLogs:{"sampling":"errorLog":10.0,"filterLog":10.0}}'
# Responder account accepting a link from requester gateway to responder gateway
aws rtbfabfic accept-link \
  --gateway-id rtb-gw-responder456 \
  --link-id link-reqtoresplink789 \
  --log-settings '{"applicationLogs:{"sampling":"errorLog":10.0,"filterLog":10.0}}'

また、外部リンクを使用して外部パートナーとの接続も行いました。これらのリンクは、同一のレイテンシーとセキュリティ特性を維持しながら、RTB ワークロードをオンプレミス環境またはサードパーティ環境に拡張します。

# Create an inbound external link endpoint for an external partner to send bid requests to
aws rtbfabric create-inbound-external-link \
  --gateway-id rtb-gw-responder456
# Create an outbound external link for sending bid requests to an external partner
aws rtbfabric create-outbound-external-link \
  --gateway-id rtb-gw-requester123 \
  --public-endpoint "https://my-external-partner-responder.com"

トラフィックを効率的に管理するために、データパスにモジュールを直接追加しました。Rate Limiter モジュールはリクエスト量を制御し、OpenRTB Filter はメッセージ形式のネットワーク速度での検証をインラインで行います。

# Attach a rate limiting module
aws rtbfabric update-link-module-flow \
  --gateway-id rtb-gw-responder456 \
  --link-id link-toresponder789 \
  --modules '{"name":"RateLimiter":"moduleParameters":{"rateLimiter":{"tps":10000}}}'

最後に、スループット、レイテンシー、モジュールパフォーマンスを監視するために Amazon CloudWatch を使用し、監査と最適化のために Amazon Simple Storage Service (Amazon S3) にログをエクスポートしました。

すべての設定は、AWS CloudFormation または Terraform を使用して自動化することもでき、複数の環境全体で繰り返し可能な一貫したデプロイが可能になります。RTB Fabric を使用すると、AWS が AdTech パートナー全体で予測可能な 10 ミリ秒未満のパフォーマンスを維持してくれるので、私は入札ロジックの最適化に集中できました。

詳細については、「AWS RTB Fabric User Guide」を参照してください。

今すぐご利用いただけます
AWS RTB Fabric は、10 月 23 日から米国東部 (バージニア北部)、米国西部 (オレゴン)、アジアパシフィック (シンガポール)、アジアパシフィック (東京)、欧州 (フランクフルト)、欧州 (アイルランド) の各 AWS リージョンでご利用いただけます。

AWS RTB Fabric は、AdTech 業界の変化するニーズに対応するために絶えず進化しています。このサービスは、高度なアプリケーションのセキュアな統合と、リアルタイム入札ワークフローにおける AI 駆動の最適化をサポートするように機能を拡張します。これは、お客様が AWS での運用を簡素化し、パフォーマンスを向上させるために役立ちます。AWS RTB Fabric の詳細については、AWS RTB Fabric ページをご覧ください。

Betty

原文はこちらです。