Amazon Web Services ブログ

Matterport と AWS IoT TwinMaker を活用した INVISTA の運用変革

製造業において効率性と冗長性の絶妙なバランスは、市場競争力に大きく寄与します。INVISTA は、ポリマーや繊維などを扱う化学中間製品のグローバル企業です。同社は先ごろ実施した全面的な業務の見直しにより、単なる改善ではなく、事実上完全な変革を成し遂げました。INVISTA はデジタルツインの取組みにおいて、Amazon Web Services ( AWS ) に支援を依頼し、AWS パートナーであるMatterport ( 空間データの先駆的企業 ) と AWS IoT TwinMaker (建築物、工場、産業機器、製造ラインのデジタルツインを簡単に開発できるサービス)の間にシナジーを見出しました。この仮想化によって、業務効率、安全性、イノベーションにおけるパラダイムシフトが起きたのです。

【 INVISTA の課題】複雑な業務を合理化

ナイロン 6,6 や ポリプロピレンの生産供給におけるリーディングカンパニーである INVISTA は、定年退職が迫る従業員の持つノウハウを維持したいと考えていました。ノウハウ継承の方法として、仮想的なナレッジベース構築が不可欠でした。他の従業員が、そこに蓄積された専門知識に基づいて業務を行うためです。さらに INVISTA は、現代の製造業に共通する課題に直面していました。それは、互いに離れた拠点にまたがる複雑なデータセットを管理しながら、保有設備の性能を維持することです。成功するためには、設備の稼働率を高め、現場作業を改善し、運営コストを削減しながら、職場の安全性と持続可能性に関する企業および社会的責任を果たしたうえで、運営コストは削減することが極めて重要でした。INVISTA は Matterport と協力し、 AWS IoT TwinMaker と Matterport の統合により、製造施設のデジタルツインを開発しました。

【解決策】AI を活用した持続可能な操業デジタルツイン

Matterport デジタルツインと AWS IoT TwinMaker の統合は、画期的なソリューションでした。AWS IoT TwinMaker で3D描画を実現することにより、INVISTA は現場作業員に対して場所や状況に応じた良質な判断材料を提供できます。すなわち現場では、デジタルツインからも状況を知ることで、問題発生時に独力で素早く問題に対処できます。加えて、システムへのナレッジ追加が容易なことから、コラボレーションも促進されます。INVISTA は現在、Matterport と AWS で稼働する、従業員が協力して作り上げたナレッジベースを保有しており、それは絶えず成長し続けています。Matterport は既に、ほぼあらゆるワークロードに対応するセキュアで可用性の高い Amazon Elastic Compute Cloud ( Amazon EC2 ) と、完全マネージドなコンテナオーケストレーションサービスである Amazon Elastic Container Service ( Amazon ECS ) を利用しているため、AWS IoT TwinMaker との統合はほぼシームレスに行えました。
二社の協業体制は、以下の分野で恩恵をもたらしています。

リモートサービス管理:

  • 施設や設備のリモート監視と管理を容易にします。この機能により、現地作業の必要性が大幅に低減し、運用コストが削減され、サステナビリティ目標の達成にも一助となります。
  • IoT センサーの生データ、映像、および基幹システムのデータを取込んだ Matterport デジタル ツインを利用することで、運用上の判断材料がほぼリアルタイムに把握できます。これにより、場所を選ばず迅速な意思決定と問題解決が可能になります。

予防保全:

  • データ分析による予防保全によって、装置の稼働時間を延ばし、ピーク性能を維持できます。この機能の統合により、劣化等の傾向を見つけ、装置の健全性を監視し、問題が深刻化する前に予防保全を行うことができます。
  • 簡単に物理環境のデジタルモデルを作成できるようにすることで、製造オペレーションの可視化と最適化が容易になり、施設資産の高い性能を確実に維持することができます。

従業員を教育し、ノウハウ喪失を防ぐ:

  • Matterport のデジタルツインを使って、システムとオペレーションの没入感を備えた 3D ビューを構築し、従業員研修のための魅力的で対話的なプラットフォームを構築します。このアプローチは、学習体験を向上するだけでなく、社内ノウハウの効率的な維持と伝承にも役立ちます。
  • 実世界の環境を正確にモデル化し、物理システム上のデータソース群を仮想空間のレプリカに連携することで、ナレッジグラフを自動生成させることができるようになり、時間効率と正確性が向上します。これは、運用ナレッジを体系的に維持する上で不可欠であり、従業員の離職で重要情報を失うリスクを軽減できます。
INVISTA Architectural Design: Matterport and AWS IoT TwinMaker Integration

【実装】データから洞察を得る

ソリューション実装のプロセスは、Matterport の技術を用いて INVISTA が保有する施設の詳細なデジタルツインを作成することから始まりました。これらデジタルレプリカは後に、AWS IoT TwinMaker を通じて IoT センサーの生データ、映像、基幹システムのデータなど様々なデータソースを統合する基盤となりました。この統合により、INVISTA は次の能力を獲得しました。

  • 統一的な 3D ビュー: 工場内各所の運用状況が没入感をもって見渡せることで、意思決定能力を向上させます。
  • ライブデータの埋め込み: 全プラントの運用状況が一元管理されたダッシュボードにアクセスし、管理が行えます。データをニアリアルタイムに分析し、洞察を得ることで、運用の最適化と予防保全を行います。
  • 遠隔での協働作業: チームメンバーがリモートで協力できる環境を整え、会社全体への効果を促進することで、コストを削減し、運用の安定性を高めます。

【成果】将来の成功に向けた青写真

INVISTA が従来型からデジタルを活用した運用に舵を切ったことは、事実上、製造業界に新しい標準を提案することとなりました。Matterport と AWS IoT TwinMaker の統合はコスト削減のみならず、明日の産業界に恩恵をもたらす変革の種をまくことができました。主な成果の例として、以下のものがあります:

  • 運用効率の向上: ニアリアルタイムの監視、シミュレーション、最適化ができるため、生産性が大幅に向上し、コスト削減につながりました。
  • 安全性と持続可能性の向上: 現地作業の必要性が減り、関連業務のマネジメントが改善されたことは、これまでにない安全性と持続可能性を備えた運用モデルが実現できることを示しました。
  • データドリブンな意思決定: 実世界のデータと既存システムのシームレスな統合により、過去に例のない立体データからの示唆が得られ、業務全体で継続的に高い能力を発揮するために、情報に基づく意思決定ができるようになりました。

上述した Matterport デジタルツインと AWS ワークロードの統合による成果は革新的なものであり、複数の重要な領域で大きな改善をもたらします。この統合は、複雑なデータセット群の管理を合理化し、推論と分析による予防保全で設備の稼働率を向上させるだけでなく、現地作業の必要性を減らすことでサステナビリティ目標達成にも貢献する上、運用コストと環境への影響を最小限に抑えられます。さらに、Matterport デジタルツインに、 IoT の生データ、映像、基幹システムのデータを組み込むことで、ニアリアルタイムの気づきと意思決定が可能となり、運用効率が一層高まります。

加えて、全てのデータソースが連携するMatterport デジタルツインに、単一の統合インターフェイスを作ることで、業務効率が向上するだけでなく、社内ナレッジ喪失のリスクが大幅に軽減されます。3D 化されたビューを活用できる研修シナリオで、効率性の向上、生産量の増加、パフォーマンス改善に特に効果を発揮します。ナレッジグラフを自動生成できるようにするために、各種データソースを物理システムの仮想レプリカに連携しています。これは、実世界の環境をモデル化するうえで重要な役割を果たし、短期間で忠実にデジタル表現を構築します。

Matterport と AWS IoT TwinMaker の統合により、INVISTA は全社的な効率性を実現するために必要なツールを手に入れました。これは伝統的な業務運用からデジタル運用への移行を促進し、直接的なコスト削減だけでなく、継続的な改革と革新の基盤が築かれました。
この戦略的アプローチにより、INVISTA は製造業界のリーダーとしての地位を維持し、自信を持って将来の課題に立ち向かうことができるでしょう。

総じて、Matterport と AWS IoT TwinMaker の統合は効率的で柔軟性があり、製造オペレーションの可視化、監視、最適化を実現するための持続可能なプラットフォームを提供することから、INVISTA 従業員の効率性向上と社内ノウハウ喪失防止に、大きく寄与しています。この技術的進歩は、INVISTA のデジタル変革を後押しし、革新的なデジタルソリューションを通じて操業を管理し、高パフォーマンスを維持するための、業界における新しい標準を確立しています。

INVISTA のデジタルツイン その道のり をハノーバーメッセ 2024で紹介

ハノーバーメッセ2024では、Matterport と AWS が共同ブースを出展します。そこでは、INVISTA にフォーカスした「Unlocking Operational Excellence: Invista’s Digital Twin Journey」(操業の卓越性を解き放つ : INVISTA のデジタルツイン導入の道のり)と題するプレゼンテーションが、ハイライトの1つです。4月22日の午後3時(中央ヨーロッパ時間)に予定されているこのセッションでは、INVISTA の Grant Johnson 氏、AWS の Pallavi Chari 氏、Matterport の Brittany Schramm 氏が登壇します。参加者は、INVISTA がデジタルツイン技術を採用した先進的な取り組みについて貴重な洞察を得ることができるでしょう。MatterportとAWS IoT TwinMaker の統合がどのように運用を革新し、業界に新基準を打ち立てたかを深く理解できるでしょう。

【まとめ】イノベーションを導く

INVISTA の事例は、Matterport のデジタルツイン技術と AWS IoT TwinMaker の持つ堅牢な機能との組合せが、大きな力を生むことを証明するものです。企業が将来を見据える中で、この統合の成功は、テクノロジーを活用して運用の卓越性を実現するための青写真を提供しています。Matterport と AWS のパートナーシップは、製造業界における可能性を実質的に再定義するだけでなく、デジタルイノベーションがどのように実際のビジネス成果に繋がるかを示しています。

今後、INVISTA のデジタルツイン導入から得られた教訓は、間違いなく様々な業界での実現に影響を与えていくでしょう。Matterport と AWS IoT TwinMaker によるたった1つのデジタルツインが、運用に革命を起こす可能性を秘めていることの証です。

Matterport と AWS が製造業の運用の未来を形作っていく方法についてさらに学びましょう

Krishna Doddapaneni

Krishna Doddapaneni

Krishna は、AWS で IoT 分野における業界パートナー向けのワールドワイドテクニカルリードです。日頃、パートナーと顧客が構築する極めて挑戦的で革新的な IoT 製品やソリューションの支援をしています。Krishna は、無線センサーネットワークで博士号、ロボットセンサーネットワークでポスドク研究員を務めました。彼は「コネクテッド」ソリューション、テクノロジー、セキュリティとそのサービスに情熱を注いでいます。

Katie Lameti

Katie Lameti

Katie Lameti は、Matterport で AWS とのグローバルパートナーシップを率いています。彼女は AWS 内の各チームや AWS パートナーネットワーク内の他組織と協力し、顧客がビジネス価値を促進するデジタルツインソリューションの構想、調達、実装、拡張を支援する市場開拓の戦略を策定しています。

Paul Park

Paul Park

Paul Park は、Matterportのパートナーマーケティングディレクターであり、AWS との共同マーケティングの戦略、企画、実行を主導しています。Paul は製品マーケティングとビジネス開発の思考を組合せ、共同のメッセージング、マーケティングコンテンツ、キャンペーン計画を立案しています。

Roberto Quintana

Roberto Quintana

Roberto Quintana は、IoT、エッジコンピューティング、アナリティクス分野でイノベーションと成長を牽引する経験豊富なテクノロジーリーダーです。20年以上にわたるキャリアの中で、Amazon Web Service ( AWS ) や Nokia Networks などの業界大手企業で重要な役割を果たしてきました。現在、Roberto は AWS の IoT およびエッジテクノロジーパートナーシップグローバルマネージャーを務め、戦略的なテクノロジーパートナーシップを通じて、戦略、市場開拓の主導、最先端ソリューションの開発を推進しています。

この投稿は、「 INVISTA’s operational transformation with Matterport and AWS IoT TwinMaker 」 を AWS Japan SA の田中豊洋が翻訳しました。