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AI ツールで実現する継続収益ビジネス 〜開発力を資産に変える〜 – AWS Local Executive Roadshow 名古屋編(#4/8)開催レポート
こんにちは。Amazon Web Services Japan のソリューションアーキテクト、田中 里絵 です。
本ブログは、2026 年 4 月〜5 月にかけて全国 5 拠点・計 8 回で開催した「AWS Local Executive Roadshow」シリーズの第 4 回レポートです。シリーズの背景や全体像については、シリーズ初回のイベントレポートをご覧ください。
前日(4 月 22 日)の AI を自社の業務に活かしたい企業の皆様向けセッションに続き、2026 年 4 月 23 日は同じ名古屋にて、AI で顧客を支援する IT 企業のエグゼクティブの皆様をお迎えし、「AI ツールで実現する継続収益ビジネス 〜開発力を資産に変える〜」と題したイベントを開催しました。AI エージェント時代のビジネスモデル変革をテーマに、登壇企業の実体験から「開発力をどう資産に変えるか」を共に考える一日となりました。
イベントの流れ
当日はまず、Amazon Web Services Japan のソリューションアーキテクト古屋 楓から「AWS で一歩先へ!生成 AI 時代のビジネスモデル変革の打ち手」と題したオープニングセッションを実施しました。このセッションでは、AI Agent を活用して IT 企業のビジネスの形がどう変わっていくのか、Kiro のデモを交えながら解説しました(AWS セッションの詳細については大阪・IT 企業編のイベントレポートをご覧ください)。
写真: AWS 古屋によるオープニングセッション
ここからは、中部を拠点に AI を活用したビジネス変革に取り組まれている 2 社のパネルディスカッションの内容をご紹介します。
事例紹介:エスツーアイ株式会社様 〜Kiro の仕様駆動開発で、製造業 SI の課題に挑む〜
1 社目はエスツーアイ株式会社様です。愛知県知多郡東浦町に本社を構え、製造業、特に自動車部品メーカー向けの SI を行っておられる会社です。生産準備段階から量産までの全体をカバーし、一貫して担当されています。当日はシステム開発センター 部長の與儀(よぎ) 智章 様にお話しいただきました。
背景と課題、お取り組み内容
與儀様は、製造業 SI の構造的な課題として 3 つを挙げられました。1 つ目は、新規開発における仕様のブレです。プロジェクトごとに要件定義や設計・開発を進めていく中で、同じ機能でもユーザーによって要求が異なったり、開発者が過去の経験を新しいプロジェクトに取り入れようとすることで、仕様にブレが生じ、設計や機能が肥大化してしまう。2 つ目は、運用保守における属人化です。お客様ごとにカスタマイズした構築をしているため、システムに人が紐づいてしまい、負荷分散しようとしても引き継ぎコストがかかる。3 つ目は、レガシーシステムからの再構築で発生する仕様漏れです。何十年も前のシステムを新しい仕組みに移行する際、仕様を誰も把握していない状態で進めざるを得ず、後工程で問題が発覚してしまう。
與儀様は、コーディングエージェントを活用してこれらの打ち手になりえるかを探るため、まず自社の休暇申請システムおよび出張旅費精算システムの開発で Kiro の活用にチャレンジをされました。Kiro の仕様駆動開発(Spec 駆動開発)では、要件定義 → デザイン → タスク化・実装という 3 つのフェーズを踏むため、従来のウォーターフォール型で起きがちだった仕様のブレを早い段階で防ぐことができます。実際に、画面が動作するところまで 2〜3 日で到達できたとのことで、早い段階でユーザーに見せることで後工程での問題発生を防ぐ効果が期待できると話されました。
さらに、あえてコーディングルールを縛らずに Kiro に開発させたところ、自社では通常採用しないような設計パターン(例:メール送信処理をデータベースで管理しバッチ実行する方式)が提案され、検討した結果そちらの方が設計として優れていたというケースもあったとのことです。AI を「指示通りに動く道具」ではなく「新しい設計のアイディアを一緒に作るパートナー」として活用できる可能性を実感されたといいます。
一方で、チーム開発に展開する際にはソース管理やコーディングルールの整備が必要になること、AI による変更の影響範囲をどう管理するかといった課題も見えてきた、と述べられました。
今後の展望
今後は、自社が持つ製造業関連のノウハウを最大限活用し、例としてプロジェクトの上流工程段階でのモック開発や、会議ログをもとにしたユーザー向けドキュメントの自動作成など、AI を活用してビジネスのスピード向上を目指したい、と述べられました。また、人間がどう統制し、AI がどう自律的に動くか、といったルールやフレームワークの整備を行うことで、より効果的に AI を活用していきたいとも述べられていました。今回は社内システムの事例についてお話いただきましたが、こうしたお取り組みを通して、SI の業務でどう AI を活用していくかも探っていかれるとのことです。
事例紹介:i Smart Technologies 株式会社様 〜IoT × AI で製造現場の意思決定を変える「AI 製造部長」〜
2 社目は i Smart Technologies 株式会社様です。愛知県碧南市に本社を構え、自動車部品メーカーであるアサヒ鉄工様のグループ会社として、アサヒ鉄工で培った IoT の改善ノウハウを他の製造業に展開されている会社です。当日は COO の松下 隼人 様にお話しいただきました。
背景と課題、お取り組み内容
i Smart Technologies 様は、製造業のお客様向けに IoT ソリューションで生産性データを収集し、データベースに蓄積するところまでは実現されていました。課題は、蓄積されたデータを現場の意思決定にどうつなげるか、でした。製造現場の担当者は日々の業務に追われており、ダッシュボードを見に行く余裕がない。データはあるのに活用されない、という状況にありました。これを解決するために開発されたのが「AI 製造部長」です。
AI 製造部長は、IoT で収集した生産性データを Amazon Bedrock で解析し、製造部長のように分かりやすい言葉で現場スタッフに通知するサービスです。現場での朝礼代わりに使ってもらい、製造現場の意思決定に活かすことを目指して開発をスタートしました。
開発にあたって、まず課題となったのが AI の回答が安定しないことでした。当時の生成 AI の言語モデルは、2026年現在と比べると能力の制約も大きくありました。ときに抽象的な質問、ときにコンテキストが多い質問など、ユーザーの様々な質問に対して効率的に回答を得るために、モデル頼みではなく、データを含めたサービス全体の設計が必要だと気づかれたとのことです。
この壁を乗り越えるために取られたアプローチが 2 つあります。1 つ目は、ルールベースとのハイブリッド設計です。よくある質問に対しては、事前に情報を整理して AI に提供しておくようにして回答品質を担保しつつ、それ以外の質問に対してはAIが情報を動的に取得して回答するようにしました。2 つ目は、AI を表面上見せない設計です。製造現場のユーザーは AI に質問を書くこと自体にハードルがあるため、プッシュ型でユーザーに情報を届ける方式も採用しました。
今後の展望
導入後、現場からは「面白い」という声があり、積極的に使ってもらえるようになったとのことです。AI への抵抗感の強いメンバーもいたため、まずは正確性のある情報を通知するところから運用を開始し、AI の信頼感を少しずつ醸成していきました。このこつこつと実績を積み上げていったことで、今では「人間が書いてるのでは?」と時折聞かれるほど現場に溶け込み、信頼感を獲得されているといいます。
「製造業は、業界の性質上属人化している業務も多く、会社全体のモデルを変えるような AI 活用にはチャレンジがある。同じような業界で情報交換をしたり、会社と会社で関係づくりをして、収益モデルを業界全体で変えていくような動きができれば」と述べていただきました。会場ではこのようなメッセージで、大きく共感しながら聞いているお客様が多くおられました。
写真: エスツーアイ株式会社 與儀様、i Smart Technologies 株式会社 松下様、AWS 植木によるパネルディスカッション
まとめ
名古屋でご登壇いただいた 2 社に共通していたのは、AI を「道具」ではなく「パートナー」として位置づけ、自社のドメイン知識と掛け合わせることで新しい価値を生み出すという発想でした。S2I 様は Kiro の仕様駆動開発で製造業 SI の構造的課題に向き合い、i Smart Technologies 様は IoT データと Amazon Bedrock を組み合わせて製造現場の意思決定を変えるサービスを生み出されました。
このブログシリーズでは、本イベントの開催レポートを各拠点の開催順にお届けしていきます。今回お届けした名古屋編に続き、次回は広島編を予定していますので、どうぞお楽しみに。
そして読者の皆様へ…もし本ブログを読んで「うちの会社の取り組みもぜひ発信したい」「AWS と一緒に何か取り組みたい」「AI で日本をもっと元気にしていきたい」と感じていただけたなら、ぜひ担当営業、あるいはお近くの AWS メンバーまでお気軽にお声がけください。

