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AI ツールで実現する継続収益ビジネス 〜開発力を資産に変える〜 – AWS Local Executive Roadshow 大阪編(#2/8)開催レポート
こんにちは。Amazon Web Services Japan のソリューションアーキテクト、田中 里絵 です。
本ブログは、2026 年 4 月〜5 月にかけて全国 5 拠点・計 8 回で開催した「AWS Local Executive Roadshow」シリーズの第 2 回レポートです。シリーズの背景や全体像については、前回の大阪・初回レポートをご覧ください。
前日(4 月 13 日)の AI を自社の業務に活かしたい企業の皆様向けセッションに続き、2026 年 4 月 14 日は同じ大阪支社にて、AI で顧客を支援する IT 企業のエグゼクティブの皆様をお迎えし、「AI ツールで実現する継続収益ビジネス 〜開発力を資産に変える〜」と題したイベントを開催しました。AI エージェント時代のビジネスモデル変革をテーマに、登壇企業の実体験から「開発力をどう資産に変えるか」を共に考える一日となりました。
イベントの流れ
当日はまず、私 田中から「AWS で一歩先へ!生成 AI 時代のビジネスモデル変革の打ち手」と題したオープニングセッションを実施しました。このセッションでは、AI Agent を活用して IT 企業のビジネスの形がどう変わっていくのか、Kiro のデモを交えながら解説しました。続いて、AWS ファイナンス部門の Finance Manager 坂本 秀隆 から「AWS のファイナンスが語る!生成 AI による業務効率化の勝ち筋」と題したセッションを通して、AWS 社内での実際の AI Agent を活用ストーリーをお届けしました(このセッションについては、前回のレポートに同内容セッションの様子が含まれています!ぜひご覧ください)。
AWS 側のセッションを通じて生成 AI 活用の全体像とイメージをつかんでいただいたあと、お客様によるお取り組み事例の紹介セッションへ進みました。ここからは、大阪・関西を拠点に、社内に眠る知的資産を生成 AI で価値に変える取り組みを進めてこられた 2 社の事例をご紹介します。
事例紹介:ロジカル・アーツ株式会社様 〜受託開発からコールセンター特化 SaaS「HARMONY」へ〜
事例紹介の 1 社目は ロジカル・アーツ株式会社 様です。創業 1992 年、大阪・東京・福岡に拠点を構え、従業員は約 70 名。AWS アドバンストティアサービスパートナーとして、クラウドインテグレーション・SES・自社プロダクトの 3 事業を展開されています。当日は営業推進部 部長の長西 賢一 様に、自社 SaaS 「HARMONY」の開発ストーリーをお話しいただきました。
長西様がまず投げかけたのは、「開発力はあるのに、なぜ収益が安定しないのか」という問いでした。IT 企業の従来のビジネスモデルは、売上が「人数 × 単価 × 稼働率」の掛け算に縛られてしまい、プロジェクトが終われば収益はゼロ。開発力を磨き続けることが強みになる一方で、そこだけではスケールに限界がある──「開発力を資産に変えられないか」、その問題意識が SaaS 型ビジネス模索の出発点だったそうです。
ロジカル・アーツ様は、受託開発プロジェクトの中で AWS のコンタクトセンターソリューション Amazon Connect の導入支援実績を積んでおられ、コールセンター現場の課題を熟知していました。さらに Amazon Bedrock という生成 AI の選択肢が登場し、ドメイン知識をプロダクトに落とし込める手応えを得たことをきっかけに、SES や受託開発は継続しながら、SaaS 化による継続収益モデルへのシフトを進めていかれました。
こうして生まれたのが、AI コンタクトセンターソリューション「HARMONY」です。通話内容のリアルタイム文字起こし・要約生成、会話解析による CRM 自動入力、クレーム検知、1 日 1 万件の自動発信を可能にするプレディクティブコール機能など、7 つの AI 機能を搭載されています。
図: ロジカル・アーツ株式会社 HARMONY
HARMONY の導入効果は数字にも表れており、(1) アフターコールワーク(後処理)時間が 20 分から 5 分へ短縮、(2) 一人あたり従来の 2 倍の電話対応の実現、(3) プレディクティブコールによるアウトバウンドコール数の向上、(4) ランニングコストの従来比 85% 削減、といった価値を提供できるようになったとのことです。あるお客様への導入実績では、アフターコールワーク(後処理時間)が 3 〜 5 分から 1 分へ短縮され、「要約精度が高く、操作も直感的で使いやすい」との評価を得られています。
HARMONY の事業化によって、ロジカル・アーツ様の収益構造は受託中心のフロー型から、月次継続課金のストック型へと徐々にシフトしています。さらに副次的な効果として、HARMONY 導入企業から別案件の支援依頼もいただけるようになり、コールセンターソリューションを入口に DX 全体を支援するパートナーへと立ち位置が進化しているそうです。
長西様は最後に、「開発力は最強のビジネス資産──ただし、プロダクトに変える”決断”が必要」「AI は脅威ではなく武器」「ドメイン知識こそが差別化の源泉」という 3 つのメッセージを残されました。今後は AI エージェント機能の拡張や外部カンファレンスへの出展を通じて、さらなるビジネス拡大を目指していかれるとのことです。
写真: ロジカル・アーツ株式会社 長西様によるセッション
ビジネスモデルの転換という切り口で語ってくださったロジカル・アーツ様に続き、もう 1 社も同じく「自社プロダクトに挑戦した企業」ですが、取り組まれている領域と切り口はかなり違ったものでした。
事例紹介:株式会社アプリズム様 〜AI × IoT で「作って終わり」にしない見守りプロダクト「aiba」〜
事例紹介の 2 社目は 株式会社アプリズム 様です。2011 年設立、大阪市に本社を構え、従業員 100 名の IT 企業で、基幹系・業務系・Web システム開発に加え、AI・IoT・フィジカル AI 領域の研究開発にも取り組まれています。大阪大学産業科学研究所との産学連携も進められており、最先端技術の実用化に力を入れておられる会社です。当日は AI プロダクト本部 事業戦略室 室長の湯元 章彦 様、および同本部 プロダクト推進部の舛野 亮介様にご登壇いただきました。
アプリズム様もまた、受託開発中心のビジネスで感じていた「作って終わり」の課題について触れられました。実績は積み上がるものの、技術力や知見が案件ごとに分断されてしまい、会社として資産化されていかない──この課題意識から、受託で得たドメイン知識やアルゴリズムを抽象化し、再利用可能な形で提供する、つまり技術を「納品物」ではなく「資産」に変えるという方針のもと、自社プロダクト開発に舵を切られました。
こうして生まれたのが、競走馬の見守りプロダクト「aiba」です。馬房に設置した AI エッジカメラ(RGB カメラと暗視カメラの 2 レンズ搭載)が、独自開発の骨格推定アルゴリズムで馬の運動量の変化を 24 時間常時解析し、異常を検知するとクラウド経由でスタッフのスマートフォンにアラートと動画が即時配信される仕組みです。対応記録もシステム上に残せるため、「検知 → 通知 → 対応 → 記録・共有」までが一つの流れとして完結します。
図: 株式会社アプリズム様 aiba サービス概要
開発は試行錯誤の連続だったそうです。夜間・暗所での馬の骨格推定は撮影条件が難しく、高精度なモデル開発には何度もトレーニングを繰り返す必要がありました。この壁に対しては、Amazon SageMaker AI で GPU を必要な時だけ利用する反復的な開発サイクルを確立して乗り越えられたとのことです。また、施設ごとに異なるネットワーク環境や馬房構造への対応も課題でしたが、AWS IoT Core のフリートプロビジョニングを活用し、カメラをネットワークに接続するだけで認証が完了する仕組みを構築。プロビジョニング工数を約 90% 削減し、非技術者の現場スタッフでも扱える展開体制を実現されました。
進め方で徹底されたのは「小さく始める」ことだったといいます。PoC から入り、特定の業界で磨き、実際に使われる中でプロダクトを強くしていく。AWS のマネージドサービスを活用することで、インフラ運用にリソースを割かず、プロダクト価値そのものの改善に集中できたことも大きかったそうです。
登壇の締めくくりで印象的だったのが、舛野様の次の言葉でした。
「我々のサービスは、AWS を使うことが目的ではありません。現場を支え、事業として続けるために、余計なことで悩まなくて済む基盤として AWS を選びました。」
プロダクト開発の主語はあくまで現場の課題であり、テクノロジーはそれを支える手段にすぎない、という姿勢が強く伝わってくる一言でした。
写真: 株式会社アプリズム 舛野様によるセッション
まとめ
大阪でご登壇いただいた 2 社に共通していたのは、自社のドメイン知識と開発力を「資産」へと転換するという発想でした。そして、「開発力は十分ある。あとはそれをどう自社のビジネスに変えていくか」という段階で、クラウドのスモールスタートのしやすさや、必要なリソースを即日調達できる柔軟性といった AWS の価値に触れていただくことができました。
セッション後の懇親会では、収益構造を変えることで生まれるリスク、取り組みの中でうまくいった点・うまくいかなかった点なども含めて、参加者同士・登壇者・AWS チームとの間で活発な議論が交わされていました。サービスや技術そのものだけでなく、こうした実際の取り組みの事例や知見を発信していくことは、私たちの大切なミッションの一つだと考えています。
このブログシリーズでは、本イベントの開催レポートを各拠点の開催順にお届けしていきます。今回お届けした大阪編に続き、次回は名古屋編を予定していますので、どうぞお楽しみに。
そして読者の皆様へ──もし本ブログを読んで「うちの会社の取り組みもぜひ発信したい」「AWS と一緒に何か取り組みたい」「AI で日本をもっと元気にしていきたい」と感じていただけたなら、ぜひ担当営業、あるいはお近くの AWS メンバーまでお気軽にお声がけください。
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執筆者
Amazon Web Services Japan 合同会社 ソリューションアーキテクト 田中 里絵



