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エムシーディースリー株式会社様:AI-DLC Unicorn Gym による3日間の開発変革
はじめに
エムシーディースリー株式会社様(MCD3:以下同社)は、三菱商事グループの一員として、AI・デジタル技術を活用したオペレーティングモデルを構築することで顧客価値の最大化を目指し、社会課題の解決に取り組まれています。
同社では、建設業界向けの Vertical SaaS「グリーンサイト」「ワークサイト」や、流通・食品を取り扱う小売業界向けに特化した、マーケティングDXサービス「cacicar(カシカル)」など、複数の事業領域で産業DXを推進されています。三菱商事グループの持つ幅広い産業ネットワークと、AI・データサイエンスの専門性を掛け合わせ、各産業に特化したデジタルプロダクトを通じて顧客企業のオペレーション変革を実現されています。
同社では、プロダクトの急成長に伴い、開発生産性の抜本的な向上という課題への取り組みとして生成AIの活用にも注力されています。本ブログでは、2026年6月8日から10日の3日間にわたり実施された AI 駆動開発ライフサイクル(AI-Driven Development Life Cycle、略称 AI-DLC)Unicorn Gym について、その実施内容と成果を紹介いたします。
開発生産性向上への課題とこれまでの取り組み
同社のプロダクト群
同社が開発・運用するプロダクト群は多岐にわたります。
建設業界向けプロダクト
- グリーンサイト — 建設現場の労務安全書類をクラウドで一元管理するSaaS。元請け・協力会社間の書類やり取りをデジタル化し、建設業界の生産性向上と安全管理の高度化を支援。全国数万の建設現場で利用されている業界スタンダードのプラットフォーム。
- ワークサイト — 建設現場の施工管理・工程管理を支援するSaaS。現場の進捗状況のリアルタイム共有、帳票作成・カスタマイズ、作業員の入退場管理など、現場業務のデジタル化を包括的にサポート。
流通・小売業界向けプロダクト
- cacicar(カシカル) — 食品を取り扱う小売業界向けに特化した、マーケティングDXに関わる多様な機能を有するクラウドサービスです。データ分析機能(cacicarBI)/1to1マーケティング機能(cacicarMA)/お客様向けアプリ(cacicarCommu)を提供。
直面していた課題
これらのプロダクトが成長し利用者が拡大する一方で、開発生産性の向上が不可欠でした。
主な課題
- 機能カスタマイズ要望の開発リードタイムが長い — 複数のお客様の要望を広く満たせるほど機能の柔軟性が高くない
- レガシーワークロードのモダナイゼーションが不十分 — グリーンサイトの基盤アプリケーションをコンテナ環境へ移行できていない
- 運用業務の属人化 — 一部業務で多くの関係者が手動対応しており、オペレーションミスが発生しやすい状況にあった
- 新規プロダクト開発への挑戦 — AIネイティブな新サービスプロダクトの構想があり、開発機会を求めていた
こうした課題を解決し、生産性向上を実現するためには、従来の延長線上の改善ではなく、開発プロセスそのものを根本的に変革する新しいアプローチが必要でした。
AI-DLC:新しいアプローチ
このような課題に対し、同社はAI-DLCを実践しました。AI-DLC は、コーディング支援にとどまらず、要件定義からリリースまでの開発プロセス全体に AI を深く組み込む開発手法です。AI-DLC の詳細については、 解説ブログ をご覧ください。
お客様に AI-DLC を体験いただくにあたり、AWS は「AI-DLC Unicorn Gym」という体験型プログラムを提案しました。これは、AI-DLC を組織の特徴やニーズに合わせてカスタマイズし、実際のプロダクト開発を通じてその効果を検証するプログラムです。
AI-DLC Unicorn Gym の実施と成果
実施概要
今回の AI-DLC Unicorn Gym では、同社から 7つの異なるチーム が参加し、それぞれが実際のプロダクトや業務課題に対して AWSのAIエージェントであるKiroを使ってAI-DLC の手法を適用しました。エンジニアだけでなく、ビジネス部門のメンバーも参加し、3日間で実際に動くプロダクトの開発に挑戦しました。
参加チームとテーマ
| チーム名 | 人数 | 取り組み内容 | 成果 |
|---|---|---|---|
| グリーンサイトチーム | 4名 | 業務の一部自動化ツール作成(手動オペレーション・属人化の解消) | マスターデータ自動取得、PDF→CSV変換、重複チェック、SQL自動生成を実装。属人化していたID採番ルールを明文化 |
| グリーンサイト インフラチーム | 3名 | グリーンサイトの AWS 稼働環境のモダナイゼーション(最小構成での検証) | 既存アプリのコンテナ化完了。AWS環境デプロイ・ブラウザ操作確認まで達成。ローカル環境ワンコマンド起動も完成 |
| DataHub
チーム |
4名 | エンジニアだけでなくビジネスサイドも気軽にグリーンサイトの環境を立ち上げ・削除できるワンコマンド構築ツールの開発 | Docker Composeワンコマンド起動を実現。テーブル自動作成、ログイン・操作確認まで達成 |
| CTO室チーム | 5名 | 新プロダクト SaaS のフルスクラッチ開発(マルチテナント対応、ガントチャート、リアルタイム共同編集) | 3日目だけで219コミット・20件超のPR。ガントチャート、リアルタイム共同編集、AI自然言語工程修正など高度機能を実装しデモ可能な状態に |
| BD部チーム | 5名 | AIで業務を効率化する新プロダクト開発(過去案件のナレッジDB化+ベクトル検索による類似案件検索・見積もり支援) | 5ユニット完成・16PR作成。Next.js/PGVector/Bedrockフルスタックアプリ構築。App Runnerデプロイまで完了 |
| cacicarチーム | 3名 | Amazon Personalizeを活用したリコメンドAPIの開発、および iPad 会員入会フォームWebアプリの開発 | リコメンドAPIの設計・実装完了、入会フォームWebアプリをローカル動作確認まで完了。本番運用アーキテクチャ(DynamoDBキャッシュ方式)を確立 |
| ワークサイトチーム | 6名 | 新規機能の開発(お客様にてカスタマイズ可能となるよう機能の拡張) | エクセル取込→マッピング→プレビュー出力のUIモック完成。ユーザーストーリー整理・詳細設計完了 |
各チームのAI-DLC Unicorn Gym からの学び
最終日には成果発表会を開催し、各チームからAI-DLC Unicorn Gymを通じて得られた学びを共有いただきました。
AI-DLCの醍醐味である要件定義からAIに委ねる手法を取り入れたことで、「人間は判断・方向性決定・レビューに集中することができた。」という声や、「暗黙知がAIへのインプットを通じて明文化し、要件に落とし込むことができた。」というコメントをいただきました。
全チームが対面で集まり実施できたことで、AIの実装待ち時間を活用して仕様確認や議論ができること、リアルタイムでのフィードバックが可能なこと、複数部門のドメイン知識を即座に引き出せること、ユニット分割により2名以上が同時にユニットを並列実装し、3日間という短期間で商用レベルに近いアプリケーションを構築できることが大きな利点として挙げられました。
また各チームが、AIによる開発生産性を最大化するために、以下のような工夫をして活用されていたことも印象的でした。
- HTMLモックで事前にUI合意を得て、共通仕様(ドメインモデル・API仕様)も最初に固めたことで翌日からの並列開発を可能にする
- 複数の案がある時は、それぞれのメリットとデメリットも一緒に出させることで、チーム内の意思決定を高速化させる
- 人間が軌道修正に介在する手間を減らすために、レビュー専用のAIを導入し、要件充足を自動チェックする仕組みを入れ込む
今後の展望
同社では、今回の AI-DLC Unicorn Gym の成果を踏まえ、以下の取り組みを進められる予定です。
1. 各チームの成果物のブラッシュアップと本番環境への適用
2. AI-DLC の他プロジェクトへの適用
3. AIの活用拡大による開発速度と品質の両立
まとめ
エムシーディースリー株式会社様との AI-DLC Unicorn Gym は、実際のプロダクト開発・業務改善に取り組むという大規模な実践の場となりました。
特筆すべきは、単にAIでコードを生成するだけでなく、要件定義からアーキテクチャ設計、実装、テスト、デプロイまでの開発ライフサイクル全体でAIを活用し、従来数か月かかっていた開発を3日間で実現可能なレベルまで圧縮できることを実証した点です。
今回の取り組みについて、同社の本間 嗣崇様は、
「今回のAI-DLC Unicorn Gymでは、グリーンサイトやcacicarなど実際のプロダクト課題に7チームで同時に挑み、3日間でここまで形にできたことに正直驚いています。Kiroを中心としたAI-DLCという開発手法を体験する場を提供いただいたAWSの皆様に感謝します。”コードを書く”から”意図を伝える”へという開発体験のシフトは、私たちエンジニアの働き方を根本から変える可能性を感じました。この体験を社内で広げ、各プロダクトの現場へ着実に展開していくことが、次のステップだと捉えています。」
とコメントしています。
著者について
エムシーディースリー株式会社
エンジニアリング部 チームリード グループマネージャー エンジニアリングマネージャー
本間嗣崇
新卒でSI会社へ入社し、一貫してシステム開発に携わる。
2019年より大手通信会社へ転職後も複数のBtoCシステム開発に従事。主に新規システム構築に強みを持つ。
その後、ソフトウェアエンジニアとして旧エムシーデジタル(現 MCD3)に入社へ入社。
入社後は物流最適化、プロダクト開発、LLM を活用した SaaS システムの開発など多岐にわたって開発を推進。ビジネス検討から運用・問い合わせ窓口、また開発プロセスの最適化も行うフルスタックエンジニア 兼 エンジニアリングマネージャー。
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
ソリューションアーキテクト
三宅穂波
主に商社業界、サービス業界のお客様に対して技術支援しています。好きなサービスはAmazon Quick、GlueなどのAnalyticsサービスです。



