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基調講演:国土交通省の語る「スマートシティ x テクノロジー」の未来

今回のブログでは、 AWSジャパン・パブリックセクターより、2021年11月4日(木)に開催された、AWSセミナー「都市を、移動を、暮らしを、変えるセミナー〜今後の社会と暮らしを見据えた、日本の産業界が注力する、新しい街づくり、コトづくり、ヒトづくり〜」における、国土交通省 都市局 都市計画課による基調講演の模様をお届けします(全32ページの投影資料は、“こちら”。ご不明の点、「Contact Us」までお問合せください。

国交省では都市・移動など幅広い政策を所管

基調講演の開始に先立ち、AWSジャパン シニア事業開発マネージャーの和田健太郎から「本日のセミナーでは、“都市・移動・暮らし”を変革するテクノロジーを主題として取り上げるが、これらのテーマ全てを横断的に所管しているのが国土交通省」であるとして、基調講演のスピーカー紹介が行われました。

今回、基調講演をご担当いただいたのは、国土交通省 都市局 都市計画課 都市計画調査室 室長の東智徳様(以下、「東室長」)です。以下に、「国土交通省におけるスマートシティの取組」と題した講演のサマリーをご紹介します。

東室長の講演は、冒頭、都市局のミッションの紹介から始まりました。都市局は、「公共団体、民間事業者双方のまちづくり、都市開発を支援している部署」、「都市計画の様々なデータを扱っている部署」であり、昨今のEBPMの潮流を受け、都市局としてもスマートシティの取り組みを応援しているところである──と、当日のセミナーに参加しているオーディエンスの関心に近い政策分野を所管している旨、ご紹介をいただきました。

取り組みの柱①
スマートシティモデルプロジェクトの支援、全国への普及展開

東室長からは、「官民のデータを持ち寄り、都市が抱える諸課題の解決や、新たな価値の創出を支援」している──との活動を第一に紹介いただき、具体的な例示として「リアルタイムデータによる防災情報の発信」や「自動運転・MaaSによる快適な移動・物流」などのトピックを、投影スライドに基づきご説明いただきました(投影資料 p.3)。

政府全体の「骨太の方針」としても、「スマートシティを2025年度までに100地域構築する」という取組を進めていく構想の説明があり、国交省だけでなく府省横断的な取り組みが行われている旨、東室長より参加者にメッセージングをいただきました。

さらに、国交省 都市局では、複数の政策分野を横断した「まちづくり」、総合政策局での新たなモビリティサービスに関するプロジェクト──という2つの大きなテーマを追っており、データ連携基盤の整備も重点施策としている旨、紹介がありました。

国交省では、官民の連携の「場作り」にも注力しており、「官民連携プラットフォーム」を軸として支援を行っています。都市局が実施しているスマートシティ先行モデルプロジェクトの支援に際しては、「民間と公共団体がいっしょになったコンソーシアムであることが条件」にもなっています。一例では「柏の葉スマートシティ実行計画」では、三井不動産や日立製作所、柏市がいっしょに取り組みを進めるなど、連携を加速する触媒として、国交省の施策が機能しています。

また、そもそも「スマートシティを何のために目指すのか」という地域課題や目的意識の明確化にもこだわっている──と、東室長は述べます。地域課題に対する明確な目的意識を持つことが、多様な官民のステークホルダーの役割分担の明確化にも役立ち、プロジェクトが推進力を保ち続けるための秘訣になる──との洞察を、国交省では長年の経験から得ているためです。

こうした面的な施策が奏効するかたちで、投影資料 p.7のように、50を超える地域で「スマートシティ モデルプロジェクト」が走り始めています。

例えば、「竹芝」の「Smart City Takeshiba 実行計画(東京都港区)[p.9]」。港区は防災体制の検討をするなかで、帰宅時の混雑リスクを軽減するために3Dで人流のシミュレーションを行い、それを協議会で分析・避難訓練に活かすという検証サイクルを回すことを目指しています。こうした備えにより、高潮発生時の災害リスクに対しても、このモデルが役立つと見込まれているのです。

また、「すさみスマートシティ実行計画(和歌山県すさみ町)[p.10]」では、南海トラフ地震に備え、物資輸送をシミュレーション。道の駅を防災拠点にする取り組みを進めています。他にも、「スマートシティモデルプロジェクトの事例(愛媛県松山市)[p.11]」、「スマートシティモデルプロジェクトの事例(静岡県藤枝市[p.12])など、各地で回遊性を高め、「実際にテクノロジーを、使ってみる」ということに、こだわった取り組みが進められています。たとえば東京都大田区[p.13-15]では38種類のロボットの活用が既に実証されており、「エレベーターとの親和性に課題が残る」、など課題の洗い出しにも役立っていると言います。大阪府大阪市[p.16-17]など、ぜひ他自治体の取り組みを紹介した投影資料も御覧ください(全32ページの投影資料は、“こちら”)。

講演の前半の総括として東室長は、これまでは調査研究のステージだったが、令和4年度からは地域が主体となる「補助事業化」を進めていることを大きな方向性として言及いただきました。今後は、官民のコンソーシアムを推進主体として、地域に根付いた取り組みが加速されていくステージとなっていきます。

取り組みの柱②スマートシティを支える
都市データ等の整備(3D都市モデル)

続いて、国交省の追求する「まちづくりのDX」の実装の仕方のひとつが、「3D都市モデル」であると、東室長は述べます。現在、下図のとおり、56都市が整備対象都市として選定されています。では、「3D都市モデル」とは、いったいどういったモデルなのでしょうか?

東室長は、「Google Earthとの違いは、そこにセマンティクス、意味情報を読み込むことができるかどうかということだ」──と説明します。例えば、皆さんにもこんな経験がないでしょうか? Google Earthを用いてビルのすぐ近くまでは迷わず行くことができても入り口がどこか分からない・・・と。 こうした困りごとにも、どの方角に「入り口」が設けられているかという意味情報をデジタル地図に付属させることで、自動運転で移動した場合にもぴったりとドアの前に停める──という移動体験の向上が可能となります。

こうしたセマンティクスを保持した「3D都市モデル」の展開により、たとえば浸水シミュレーションを行うことで、実際の浸水発生時に「逃げ込めるところ」を予め特定することが可能になります(鳥取市時系列浸水シミュレーションを活用した防災計画立案・防災意識啓発)。従来、こうしたシミュレーションでは建物の「属性」や避難場所の「高さ」といった意味情報を考慮要素に含めることは不可能でした。

さらには、オープンデータを商用利用し、街づくりに活かす(“バーチャル新宿”、PLATEAU × EC バーチャル都市空間における「まちあるき・購買体験」)など、多様なデータ活用も可能となります。この新宿の取り組みでは、「実際にビルの中を通過して外に出てみたら、どういった風景が開けるか」──という仮想的な散歩を、バーチャルに、驚きをもって体験することが出来ます。

国交省としても、上記のような「3D都市モデル」と組み合わされる「オープンデータの活用」を歓迎し、支援していきたいと思います。──このように、東室長による基調講演は締めくくられました。

データ共有など同省の構想へ、
AWSからも支援を継続

基調講演を受け、イベントホスト役のAWSの和田は、「さまざまな自治体、さまざまなデータ、取組、ステークホルダーがおり、価値をつくっていくことが重要であると理解しました」と述べ、最後に、クラウドとの親和性について東室長へ質問を投げかけました。

東室長は「こうした各地の取り組みにクラウドが使われるかどうかは、地域の選択に委ねられるべきだろう。しかしその際に、みんなでどうソリューションを作っていけるか、少しでも共同で使いやすいテクノロジーの選択が可能になっていけば良いように思う」とのコメントをいただきました。司会者の和田は、「データ共有のツールを豊富に持つAWSとして、地元のニーズを確認しながら取り組みに貢献していきたい」と述べ、基調講演セッションは締めくくられました。

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このブログは、アマゾンウェブサービスジャパン合同会社 パブリックセクター 統括本部長補佐(公共調達渉外担当)の小木郁夫が執筆しました。

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小木 郁夫
AWSジャパン パブリックセクター
統括本部長 補佐(公共調達渉外)
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