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月刊 AWS 製造 2026年3月号
月刊 AWS 製造 2026年3月号
みなさん、こんにちは。AWS のソリューションアーキテクトの山田です。 このブログでは開催予定のイベントや直近1カ月に発表された製造関連のブログ・サービスのアップデート・事例などをお届けしています。国内だけでなく海外の情報も含めていますので、リンク先には英語の記事・動画も含まれていますが、解説を加えていますのでご興味あればぜひご覧ください。
先月号はこちらです。未読の方はあわせてご覧ください。 今月は、ピックアップコンテンツとして製造業における Agentic AI の活用を特集します。
ピックアップトピック – Agentic AI × 製造業
Agentic AI(エージェンティック AI)は、人間の指示に基づいて自律的にタスクを計画・実行し、ツールを活用しながら目標を達成する AI システムです。2月には Amazon と OpenAI の戦略的パートナーシップが発表され、OpenAI モデルを活用した Stateful Runtime Environment を共同開発し、Amazon Bedrock を通じてユーザーに提供することが明らかになりました。AWS 上で利用可能な AI モデルのエコシステムがさらに拡充される中、製造業においても Agentic AI の具体的な適用事例が急速に増えています。今月はその中から 4 つのコンテンツをご紹介します。
品質管理:BMW Group — AWS 上の Agentic Search でペタバイト規模のデータからインサイトを抽出
BMW Group unlocks insights from petabytes of data with agentic search on AWS は、BMW Group が AWS Professional Services と協力して構築した Agentic Search ソリューションの事例です。20 PB のデータを保有する Cloud Data Hub に対し、Amazon S3 Vectors によるセマンティック検索、Amazon Athena による SQL フィルタリング、LLM による網羅的分類を組み合わせた 3 つの検索アプローチを AI エージェントが自動的に使い分けます。エージェントのオーケストレーションには Amazon Bedrock AgentCore と AWS のオープンソースフレームワーク Strands Agents を使用しており、技術スキルに関係なく自然言語でデータインサイトを抽出できる仕組みです。製品品質データの分析を例に、製造業におけるデータ駆動型意思決定の実践例として注目の内容です。
調達:Amazon Bedrock AgentCore を使用した AI エージェントによる調達ワークフローの自動化
Automate Procurement Workflows with AI Agents using Amazon Bedrock AgentCore は、製造業の調達プロセスに Agentic AI を適用した実践的なブログ記事です。Amazon Bedrock AgentCore を活用して、コンプライアンス検証、サプライヤー推薦、財務分析、RFQ(見積依頼)管理といった複雑なマルチステップの調達タスクを自律的に処理する AI エージェントの構築方法を解説しています。
研究開発:メック株式会社の事例 — Amazon Bedrock AgentCore で研究業務を効率化
メック株式会社の事例では、AI エージェントを活用した研究業務の効率化が紹介されています。Amazon Bedrock AgentCore Runtime と Amazon S3 Vectors を利用し、ベテラン社員の検索ノウハウを AI エージェントとして実装することで、経験年数に関わらず高品質な情報アクセスを実現しています。AWS 主催のハッカソンをきっかけに約 3 週間で PoC を構築した点も注目です。
物流・SCM:Agentic AI でサプライチェーン ロジスティクスを変革
Agentic AI でサプライチェーン ロジスティクスを変革は、シンガポールの A*STAR(科学技術研究庁)と AWS ProServe が共同開発した物流エージェントの事例を中心に、AI エージェントが ERP・TMS・WMS などの複数システムからリアルタイムデータを集約し、手動検索の作業負荷を最大 50% 削減する効果が紹介されています。複数の専門エージェントが協調するアーキテクチャは、製造業のサプライチェーン管理に直接適用できる内容です。
製造関連の主要なアップデート
- 2/12
- Amazon EC2 M8azn インスタンスの一般提供開始
- 第5世代 AMD EPYC プロセッサを搭載し、最大 5 GHz のクロック周波数を実現する M8azn インスタンスが一般提供開始となりました。M5zn と比較して最大 2 倍のコンピューティング性能、4.3 倍のメモリ帯域幅、10 倍の L3 キャッシュを提供します。東京リージョンを含む 4 リージョンで利用可能で、製造業における CAE シミュレーションや設計最適化のワークロードに大きな恩恵をもたらすインスタンスタイプです。
- 2/17
- Amazon EC2 Hpc8a インスタンスの一般提供開始
- 同じく第5世代 AMD EPYC プロセッサを搭載する Hpc8a インスタンスが一般提供開始となりました。192 コア、768 GiB メモリ、300 Gbps の Elastic Fabric Adapter(EFA)ネットワーキングを備え、前世代 Hpc7a と比較して最大 40% 以上の性能向上を実現します。こちらのブログでインスタンスの詳細が説明されています。また、CAE アプリケーションを含むパフォーマンスの技術詳細ブログも公開されており、ANSYS Fluent で約 50〜59%、Siemens StarCCM+ で約 36〜44%、ANSYS Mechanical で約 45%、LS-DYNA で約 51% の性能向上(いずれも Hpc7a 比)が報告されています。計算集約型のシミュレーション、エンジニアリングワークロード、密結合 HPC アプリケーションに最適です。
- 2/27
- Amazon と OpenAI が戦略的パートナーシップを発表
- Amazon が OpenAI に 500 億ドルを投資し、OpenAI モデルを活用した Stateful Runtime Environment を共同開発し、Amazon Bedrock を通じてユーザーに提供する戦略的パートナーシップが発表されました。ピックアップトピックでもご紹介した通り、Agentic AI の基盤がさらに強化されます。
直近で開催予定のイベント・セミナー
- AWS re:Invent 2025 re:Cap 製造業界編(オンデマンド配信中)
- NVIDIA GTC 2026(3/16〜19、サンノゼ)
- NVIDIA GTC 2026 が3月16日から19日にかけてサンノゼで開催されます。AWS は Booth #921 にて、フィジカル AI アプリケーションや Agentic AI など 6 つのドメインにわたる展示を行います。
- Hannover Messe 2026(4/20〜24、ドイツ・ハノーバー)
- 世界最大級の産業技術展示会 Hannover Messe 2026 が4月20日から24日にドイツ・ハノーバーで開催されます。約 4,000 社の出展者が自動化、デジタル化、エネルギーシステムにわたる産業変革を展示する予定です。AWS もスマート生産やフィジカル AI に関する展示を行います。開催に先立ち、ブログでの事前情報公開も予定しています。また、日本人スタッフも現地に参加し、展示内容のご紹介を行いますので、ご来場予定の方はぜひお立ち寄りください。
- AWS re:Invent 2026(11/30〜12/4、ラスベガス)
- AWS re:Invent 2026 が11月30日から12月4日にラスベガスで開催されることが発表されています。
事例のご紹介
製造業に関連する事例や、ブログによる技術詳細説明です。ピックアップトピックでご紹介した BMW Group の Agentic Search 事例やメック株式会社の AI エージェント事例もあわせてご覧ください。
- 日産が AWS と協業し SDV 開発を加速
- 日産自動車が AWS 上に構築した Nissan Scalable Open Software Platform による Software-Defined Vehicle(SDV)開発の加速について紹介されています。車両ソフトウェアのテスト実行時間を 75% 短縮し、世界中の 5,000 人以上の開発者を統一された開発エコシステムで接続しています。自動車産業における次世代ソフトウェアプラットフォームの構築事例として、製造業全般にも示唆に富む内容です。
- Toyota Motor Europe が Amazon Bedrock でメインフレームモダナイゼーションを加速
- Toyota Motor Europe が Deloitte および AWS Generative AI Innovation Center と連携し、Amazon Bedrock を活用して保証処理用レガシーメインフレームアプリケーションのソースコードからドキュメントを自動生成する取り組みが紹介されています(英語記事)。製造業では長年稼働してきたレガシーシステムの近代化が共通の課題であり、生成 AI を活用したアプローチとして参考になります。
製造関連ブログのご紹介
今月もたくさんのブログが公開されました。
- 1/28
- AWS Well-Architected Modern Industrial Data Lens で製造ワークロードを加速
- 製造業のデジタルトランスフォーメーションを加速するための新しい AWS Well-Architected Modern Industrial Data Lens が公開されました(英語記事)。モダンな産業データアーキテクチャ(MIDA)基盤の構築、産業データカタログの実装、データメッシュアーキテクチャ、ナレッジグラフによるデジタルスレッド、コンピュータービジョンによる品質検査の 5 つのシナリオをカバーしています。ホワイトペーパーもあわせてご参照ください。
- 2/6
- VAMS における NVIDIA Isaac Lab を使用した GPU アクセラレーション型ロボットシミュレーショントレーニング
- AWS が提供するオープンソースの Visual Asset Management System(VAMS)は、3D モデルやシミュレーション環境などのビジュアルアセットをクラウド上で一元管理するためのソリューションです。今回、NVIDIA Isaac Lab との統合により GPU アクセラレーテッドな強化学習に対応しました。AWS Batch でスケーラブルな GPU コンピューティングを活用し、ロボットアセットのシミュレーショントレーニングからポリシー取得までをシームレスに実行できます。先月号で特集したフィジカル AI の実践的な開発基盤として注目のコンテンツです。
- 2/18
- AWS で NVIDIA Cosmos world foundation models を実行
- 自律走行車、ロボティクス、スマートファクトリー向けのフィジカル AI 開発に必要な合成データを大規模に生成するための NVIDIA Cosmos ワールドファウンデーションモデル(WFM)を AWS 上でデプロイする方法を解説した日本語ブログです。Amazon EKS を使用したリアルタイム推論と AWS Batch を使用したバッチ推論の 2 つの本番環境向けアーキテクチャが紹介されています。製造業におけるフィジカル AI のデータパイプライン構築に参考になる内容です。
- 2/19
- 「導入しても使われない」を解決する ― 三菱電機 電力ICTセンターが Kiro と GitLab で実現した開発ワークフローの標準化
- 三菱電機 電力システム製作所 電力ICTセンターが、AI コーディングアシスタント Kiro と GitLab を組み合わせて開発ワークフローの標準化に取り組んだ事例です。Kiro の Steering(常時適用のグラウンドルール)、Powers(動的に呼び出されるワークフロー定義)、MCP(外部ツール連携)の 3 層構造を活用し、「ドキュメントを読まなくても、AI に聞けばワークフローに沿った開発ができる」仕組みを実現しています。製造業のソフトウェア開発効率化に関心のある方にぜひご覧いただきたい内容です。
- 2/25
- Agentic AI でサプライチェーン ロジスティクスを変革
- ピックアップトピックで詳しくご紹介しています。Agentic AI によるサプライチェーン物流の変革について、マルチエージェントアーキテクチャの設計パターンを含めて解説したブログです。
- 3/3
- 三菱電機のエンジニア 33 名が 3 日間で体感した AI 駆動開発の可能性 — AI-DLC Unicorn Gym 座談会
- 三菱電機 電力システム製作所 電力ICTセンターで開催された「AI-DLC Unicorn Gym」の座談会記事です。33 名のエンジニアが 3 日間にわたり、AI 駆動開発ライフサイクル(AI-DLC)を体験。5 チームがそれぞれ実際の業務課題(既存業務システム改良、IoT プラットフォーム改善、ダッシュボード開発など)に取り組み、AI を開発の中心的な協力者として活用する手法を実践しました。製造業における AI 駆動開発の組織的な導入事例として参考になります。
- 3/4
- コネクテッドモビリティワークロードの DR 戦略 パート 1: バックアップとリストア
- コネクテッドモビリティ(CM)のワークロードにおける災害復旧(DR)戦略について解説するシリーズの第 1 弾です。車両接続、データ取り込み、可視化コンポーネントに対するバックアップとリストアの DR 戦略を、AWS Connected Mobility Reference Architecture に基づいて詳述しています。自動車製造業のお客様にとって、コネクテッドカーサービスのレジリエンス確保に役立つ内容です。
最後まで読んでいただきありがとうございました。いかがだったでしょうか?今月は Agentic AI の製造業への適用を中心に、幅広いアップデートをお届けしました。このような形式で毎月最新の情報を製造業の皆様にお届けして参ります。月刊 AWS 製造ブログを今後ともよろしくお願いします。それでは、また来月お会いしましょう!
著者について
AWS のソリューションアーキテクトとして、製造業のお客様を中心にクラウド活用の支援を行っています。製造業における業務課題解決や新規ビジネスにおけるクラウド活用の可能性をお客様と一緒に探求しています。
