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AWS re:Invent 2022 の振り返り — 産業・製造業界の最新情報

このブログは2022年12月13日に Scot Wlodarczak によって投稿された Recapping re:Invent – What’s new in the Industrial and Manufacturing industry を AWS Japan Solutions Architect の吉川が翻訳したものです。

AWS re:Invent 2022 が早くも終了しました。ラスベガス(re:Invent会場)では産業のデジタル変革を簡素化し加速させるのに役立つ基調講演、セッション、発表、その他のコンテンツが満載のエキサイティングな1週間が披露されました。re:Invent 2022に参加頂いた製造や産業分野のお客様は、エキスポブース、Industry Demo Tent 、さまざまなセッションで多くの見どころや発見があったと思います。もし見逃してしまっても安心してください、このブログでは re:Invent 2022 の見どころを振り返って、製造に関わる産業の皆様へご紹介します。

イベントのハイライト

一週間を通してたくさんのエキサイティングなアクティビティやイベントがありました。産業分野のお客様向けのハイライトをいくつかご紹介します。

  • SIEMENS 、Carrier 、Airbus といったお客様が AWS とどのように協力してデジタルトランスフォーメーションを推進しているかに焦点を当てたリーダーシップセッションがありました。
  • お客様は、外観検査、材料トレーサビリティ、状態ベース監視、コマンドアンドコントロールのクラウド自動化などのユースケースを紹介するスマートファクトリーマシンのデモを見ることができました。
  • “Industry Demo Tent”で行われた機械学習、産業用IoT、ロボティクスのデモでは、予防保守、デジタルツイン、ロボット群の相互運用性が注目されました。
  • 製造業のイノベーションを継続して推進する、画期的な新しい AWS サービスの発表がありました。

産業・製造関連のセッション

AWS Industrials & Manufacturing ゼネラルマネージャーの Grant Bodley は、2022 年 11 月 29 日 (月) に、 Industrials Strategy, BD, Solutions & GTM の責任者である Kathy Varma とともに、「製造業とサプライチェーン」というリーダーシップセッションを開催しました。このセッションでは、SIEMENS のデジタル・インダストリーズ・ソフトウェア担当 CEOであるTony Hemmelgarn氏が、SIEMENS がどのように産業のデジタル変革をすばやく、簡単に、そしてスケーラブルに実現しているかについて議論し、産業オートメーションと産業用ソフトウェアの世界的リーダーである SIEMENS とのコラボレーションが強調されました。その後、Kathyは Airbus の IoT プラットフォーム責任者であるVincent Denys 氏、Carrierの Sensitech & Digital Solutions 担当副社長である Alice DeBiasio 氏 、Tony Hemmelgarn 氏を招いてパネルディスカッションを行い、デジタル変革の優先事項と重要な学びを共有しました。

セッションのオンデマンド視聴はこちらから

Airbus 、Samsung 、Unox 、ハイネケン 、トヨタ 、Commonwealth Fusion Systems などのお客様と複数の産業ブレイクアウトセッションを開催しました。これらのセッションには、スマート製品と機械による新たな収益源の創出 (MFG204)、ハイネケンの新しいコネクテッド・マニュファクチャリング・ビジネスの創出(MFG203)、トヨタと CFS が AWS でエンジニアリングと設計をスピードアップ (MFG205) などがあります。

すべてのブレイクアウトセッションをオンデマンドでチェックしてください。

新しい AWS サービスの発表

火曜日、Adam Selipsky ( AWS CEO ) は基調講演で数々のエキサイティングな新発表を行いました。製造・産業分野のお客様にとって特に興味深い発表としては、AWS Supply Chain (プレビュー) 、AWS Clean Rooms (プレビュー)、Amazon DataZone (プレビュー)、AWS Application Composer(プレビュー)、AWS SimSpace Weaver などがあります。これらについては以下で説明します。Adam 氏の基調講演では、SIEMENS のデジタルインダストリーズ CEO である Cedrik Neike 氏も講演しました。氏は、SIEMENS がAWS を用いて HPC からリアルタイムシミュレーションに至るあらゆる領域で、デジタルトランスフォーメーションをどのように推進しているかについて語りました。基調講演の冒頭の Cedrik 氏の部分をチェックしてください <オンデマンド視聴はこちら>。

AWS Supply Chain

AWS CEOの Adam は、MLを活用してサプライチェーンのリスクを削減し、コストを削減するサービスである AWS Supply Chain (プレビュー) を開始しました。このサービスにより、企業はプラットフォームの変更、前払いのライセンス料、または長期的な契約なしに、サプライチェーン全体をすばやく可視化できます。AWS Supply Chain は、データを統合し、機械学習 (ML) を活用した実用的なインサイト、文脈に基づくコラボレーション機能を備え、需要計画機能を提供するクラウドアプリケーションです。AWS Supply Chain は、既存のエンタープライズリソースプランニング (ERP) やサプライチェーン管理システムに接続でき、プラットフォーム変更、前払いのライセンス料、長期契約は必要ありません。

AWS Clean Rooms

産業装置メーカーの方々にとって特に興味深かったのは、AWS Clean Rooms (プレビュー) の立ち上げでした。これまで、装置の利用者は、生産情報を保護するために、装置の利用状況に関するデータを装置メーカーと共有したがらないことがよくありました。AWS Clean Rooms を使用すると、装置メーカーとその顧客・パートナーは、基礎となるデータを共有したり公開したりすることなく、組み合わせたデータセットの照合、分析、コラボレーションを簡単かつ安全に行うことができます。このサービスは、機器メーカーが、利用企業のデータセットにアクセスして、機器がどのように使用されているかをよりよく理解し、メンテナンスアラームをトリガーし、さらに優れた次世代製品の開発に活かすために非常に有用です。利用企業はデータ自体を公開せずにデータセットを共有できるため、機密と考えている情報を保護できます。両当事者は、この「秘密の」データ交換の恩恵を受けます。

Amazon DataZone

産業に関わる企業に関連するその他の発表としては、Amazon DataZone (プレビュー) があります。このサービスにより、組織の境界を越えて大規模なデータの検索と発見が簡単になります。データのガバナンスとコンプライアンスポリシーを適用しながら、あらゆるデータをパーソナライズして表示できる統合データ分析ポータルを通じて、データプロジェクトのコラボレーションが可能になります。

AWS Application Composer

AWSは、複数の AWS サービスからサーバーレスアプリケーションを構築できる AWS Application Composer(プレビュー) をリリースしました。Application Composer を使用すると、開発体験を向上させるために、利用者は初期のラフスケッチから始めて、デプロイ可能なコードを作成し、それらを現在のワークフローに統合してことができます。

AWS SimSpace Weaver

さらに、AWS SimSpace Weaver (一般提供中) は、複雑で大規模なシミュレーションの世界を構築できる新しいマネージドサービスです。複数の Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) インスタンスが、シミュレーションの基盤となるコンピューティング、メモリ、ネットワークを管理するため、開発者はシミュレーションの構築に時間を割くことができ、しかもオンプレミスソリューションの数分の一のコストで済みます。

AWS IoT TwinMaker の機能強化

最近1 か月間の他の重要な産業関連の発表には、AWS IoT TwinMaker (一般提供中) の複数の機能追加と改善が含まれます。AWS IoT TwinMaker には、施設や設備の建設業務の最適化、生産量の増加、設備・装置の性能の向上に役立つデジタルツインを構築するために必要なツールが用意されています。複数のソースからの既存のデータを使用したり、様々な設備・建物などの仮想表現を作成したり、既存の3Dモデルを実世界のデータと組み合わせたりできるため、デジタルツインを活用して、より速く、より少ない労力で業務の全体像を作成できます。AWS IoT TwinMaker が AWS IoT SiteWise とのアセットの同期をサポートするようになったため、AWS IoT SiteWise のお客様は、アセットやアセットモデルを AWS IoT TwinMaker に簡単に取り込むことができます。

Amazon Athena データコネクタ (一般利用可能) と AWS IoT SiteWise および AWS IoT Events のアラームコネクタ (パブリックプレビュー) もご利用いただけます。Amazon Athena データコネクタを使用すると、お客様は Amazon Athena データストアのデータを AWS IoT TwinMaker に接続して、デジタルツインにコンテキストと情報を追加できます。お客様は、メンテナンス記録、シフトスケジュール、電気料金などの表形式のデータをデジタルツインの機器に紐付けることができるようになりました。このデータコネクタは完全に AWS で管理されており、お客様はデータコネクタを作成して装置などを示すエンティティに紐付け、必要なデータをデジタルツインに取り込むだけで簡単に使い始めることができます。
さらに、AWS IoT SiteWise と AWS IoT Events のアラームコネクタにより、お客様はカスタムデータコネクタを実装しなくても、アラームデータを AWS IoT TwinMaker のデジタルツインに添付できるようになりました。オペレーターは、AWS IoT TwinMaker を搭載した Grafana ダッシュボードでアラームのステータスを視覚化し、アラームのしきい値を直接設定できます。この統合により、オペレーターはワークスペース内のアクティブなアラームを簡単に特定し、アラームの感度を調整できます。また、TwinMaker シーンコンポーザーに Camera Viewサブモデルの選択( Sub-model Selection )をリリースしました。これら 2 つの機能により、お客様は AWS IoT TwinMaker で複雑な 3D モデルを簡単に操作できるようになります。最後に、TwinMaker ナレッジグラフ( Knowledge Graph ) の機能公開により、お客様はデジタルツインにクエリを実行し、さまざまなデータソースからのデータをコンテキスト化し、実世界のシステムについてより深い洞察を得ることができます。その結果、お客様は根本原因分析などの機能を実行する時間を節約し、より多くの情報に基づいたビジネス上の意思決定を行うことができます。詳細については、AWS IoT TwinMaker 製品ページをご覧ください。

おわりに

2022年、AWSは、re:Invent はIT開発者の会議以上のものであることを披露しました。 デモンストレーション、産業用ユースケース、オペレーションテクノロジー(OT)に焦点を当てたセッション、SIEMENS などの主要パートナーとのコラボレーション、産業分野のお客様のデジタルトランスフォーメーションの簡単にすることを目的とした産業用サービスローンチなど、産業用OTの参加者は re:Inventでも豊富なコンテンツを見つけることができます。私たちは来年皆様とラスベガスでお会いできることを楽しみにしています!それまでは産業における AWS ウェブページ(AWS for Industrial)で詳細をご覧ください。