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住信 SBI ネット銀行、Amazon Bedrock AgentCore を活用した AI 銀行サービス「NEOBANK ai」で顧客体験を革新

このブログ記事は、AWS ソリューションアーキテクトの都築 了太郎と AWS テクニカルカスタマーソリューションマネージャ井元 祐希が執筆し、住信 SBI ネット銀行様が監修しています。

住信 SBI ネット銀行株式会社(以下、住信 SBI ネット銀行)は、Amazon Bedrock AgentCore を中核とした AI エージェントの機能を活用し、AI 銀行サービス「NEOBANK ai」のベータ版を公表いたしました。

「NEOBANK ai」は、アマゾン ウェブ サービス (以下、AWS) の生成 AIサービスを活用した革新的な銀行サービスで、「d NEOBANK 住信 SBI ネット銀行アプリ」内において、自然言語による対話を通じた銀行手続きを可能にします。本ブログでは、住信 SBI ネット銀行の「NEOBANK ai」による新たな顧客体験向上への挑戦とAWS の先進技術について、活用方法の解説を交えてご紹介します。

新たな顧客体験の創出に向けた挑戦と、求められるシステム要件

住信 SBI ネット銀行が「NEOBANK ai」の開発に着手した背景には、生成 AI の技術革新によってデジタル金融における新しい UI/UX の可能性が広がり始めていることがあります。“画面遷移を辿りながら操作する”従来の体験から、ユーザーが“やりたいこと(意図)を伝えるだけで必要な手続きが立ち上がる”体験へと移行していくことを、住信 SBI ネット銀行は将来のパラダイムシフトとして予見していました。

その未来像を先取りする形で、金融サービスにおける次世代インターフェースの実現を目指した意欲的な取組が「NEOBANK ai」です。日常的に利用される振込、明細確認、各種手続きといった領域においては、メニュー階層をたどる従来型 UI だけでは、ユーザーの意図に沿ったスムーズな体験を提供しにくい場面があります。住信 SBI ネット銀行では、こうした課題に対して、ユーザーの意図に応じて必要な確認項目や安全な手順を動的に提示できるアプローチが、より直感的な体験につながると考えました。

その実現を支える UI 概念のひとつとして、住信 SBI ネット銀行は主体的に「ジェネレーティブ UI」を採用しています。

「NEOBANK ai」では、アプリ内でのテキスト入力に加え、音声・画像を含むマルチモーダルなインプットを受け取り、AI エージェントが意図を解釈したうえで、照会・分析・手続き案内に必要な“その場で立ち上がる UI”を生成します。これにより、ユーザーは直感的かつ効率的に銀行サービスを利用できる体験の実現を目指しました。

本 AI エージェント技術活用に向けた主要なシステム要件として、以下4点ありました。

1. スケーラブルな AI エージェント実行基盤

数百万ユーザーを抱える大規模アプリケーションにおいて、スケーラブルかつ安定した AI エージェント実行基盤の構築が求められていました。ピーク時には多数のユーザーが同時に AI エージェントとやり取りすることが想定されるため、自動スケーリング機能を備え、負荷変動に柔軟に対応可能な基盤が不可欠でした。

2. 実行モデルを切り替えられる柔軟性

日々新たな AI モデルが登場する中で、タスクごとに品質・コスト・パフォーマンスを最適化していく必要があると考えました。そのため、特定のモデルに依存するのではなく、要件に応じて実行対象のモデルを柔軟に切り替え可能なアーキテクチャが求められていました。

3. AI エージェントの可視性

開発環境での検証および本番環境での運用において、AI エージェントの実行プロセスがブラックボックス化することを防ぎ、説明可能性を確保することを重要視していました。AI エージェントが顧客からの自然言語入力をどのように解釈し、どのようなプロセスを経て応答を生成したのかを把握できるよう、実行プロセスの可視性を高める必要がありました。

4. AI セキュリティ対策

社外向けの大規模サービスとして安心・安全な AI 活用を実現するため、AI サービス特有の攻撃的なプロンプトや、銀行取引と関連性のないトピックを検知・制御する仕組みが必要とされていました。これにより、不適切な利用を防止し、セキュリティと信頼性を確保する必要がありました。

AI エージェントシステムのアーキテクチャ

住信 SBI ネット銀行が構築した「NEOBANK ai」では、前述の 4 つのシステム要件を満たすため、AWS の生成 AI をはじめとする複数のサービスを組み合わせたアーキテクチャを採用しています。本セクションでは、各要件に対応するアーキテクチャ上のポイントと、採用した AWS サービスの役割をご紹介します。

1. スケーラブルな AI エージェント実行基盤

住信 SBI ネット銀行が構築した「NEOBANK ai」において、AI エージェント実行基盤の要件を実現するため、AI エージェント機能をスケーラブルに実行可能なマネージドサービスである Amazon Bedrock AgentCore Runtime が採用されています。フロントエンドからのリクエストは、 Amazon API Gateway を経由してセキュアに受け付けられます。API Gateway の後段では、AWS Lambda がリクエストの認証・前処理および Amazon Bedrock AgentCore Runtime へのルーティングを担います。Amazon Bedrock AgentCore Runtime は負荷に応じた自動スケーリングを備えており、ピーク時に多数のユーザーが同時に AI エージェントとやり取りする場合でも、安定した応答を維持できます。この構成により、利用状況に応じた柔軟なスケーリングと高いコスト効率を両立しています。

2. 実行モデルを切り替えられる柔軟性

Amazon Bedrock AgentCore の活用により、さまざまな基盤モデルへのアクセスが可能となり、必要に応じて外部モデルを統合できる柔軟性を確保しました。この設計により、将来的なモデルの技術進歩や、実行タスク・コスト・性能といったビジネス要件の変化にも対応でき、実行モデルを柔軟に切り替え可能なアーキテクチャを実現しています。「NEOBANK ai」では、このモデル切り替えの柔軟性を活かし、処理の特性に応じて以下異なる AI モデルを使い分けています。

  • ž意図理解・行動決定処理:お客さまの発話から意図を理解し、振込用 UI を描画するといった行動を決定する処理では、チャットボットとしての素早い応答速度を重視し、軽量・高速な推論に適した AI モデルを使用しています。
  • žガードレール判定処理:不適切な応答を防止するためのガードレール機能では、判定精度を優先し、高精度な分類・判定に強みを持つ AI モデルを採用しています。

このように、モデルの推論性能と生成速度のバランスを用途ごとに最適化することで、素早い応答速度と高い回答品質の両立を実現しています。

3. AI エージェントの可視性

また、AI エージェントの可視性要件を満たすために Amazon Bedrock AgentCore Observability を採用しています。これにより、AI エージェントがお客さまからの自然言語入力をどのように解釈し、どのようなプロセスを経て応答を生成したのかについて、エンドツーエンドの包括的な可視性を確保しています。具体的には、開発環境における検証・デバッグだけでなく、本番環境における品質監査や性能傾向の評価にも活用されており、AI エージェントの実行プロセスがブラックボックス化することを防いでいます。

4. AI セキュリティ対策

社外向けの大規模サービスとして安心・安全な AI 活用を実現するため、複数のレイヤーでセキュリティ対策を講じています。

まず、AI 固有の攻撃に対する対策として、プロンプトインジェクションや銀行取引と関連性のないトピックを検知・制御するガードレールを実装しています。前述のとおり、このガードレール判定には高精度な分類・判定に強みを持つ AI モデルを採用し、検知精度を高めています。

加えて、API Gateway を通過したリクエストに対し、Amazon DynamoDB を用いてクライアントごとのレートリミットを設定・制御することで、過剰なリクエストによるサービスへの影響を防止しています。また、お客さまから入力される自然言語情報の保存にも DynamoDB を活用し、監査証跡の確保に役立てています。

住信 SBI ネット銀行株式会社 執行役員渡邊 弘様からのコメント

「当社は、顧客体験の革新を最重要課題として位置づけ、生成 AI 技術を活用したお客さま向けサービスの高度化に継続的に取り組んでまいりました。その取組の一環として、このたび Amazon Bedrock AgentCore を採用し、NEOBANK ai を通じて、より質の高いサービスをお客さまに提供してまいります。特に、従来のルールベースの仕組みに代えて AI エージェントを活用することで、お客さまとの対話がより自然で、付加価値の高いものになることを期待しています。

セキュリティや可用性といった金融機関として不可欠な要件を満たしながら、同時にイノベーションを実現できる AWS のプラットフォームは、当社のデジタルトランスフォーメーションを推進するうえで欠かせないパートナーです。

今回のシステム構築を通じて得られた知見やノウハウは、今後のさまざまなサービス開発にも積極的に活かしていく所存です。今後も、AWS の豊富なマネージドサービス群と進化を続ける生成 AI 技術を活用し、お客さまに真に価値あるデジタル金融サービスを迅速に提供し続けることで、金融サービスのイノベーションをリードしてまいります。」