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住信 SBI ネット銀行が勘定系システムのクラウド化に AWS を採用 – AWS を推奨クラウドプロバイダーに選定する同行の全ての主要システムが AWS で稼働
このブログ記事は、AWS ソリューションアーキテクトの吉澤 稔と都築 了太郎が執筆し、住信 SBI ネット銀行様が監修しています。
住信 SBI ネット銀行株式会社(以下、住信 SBI ネット銀行)は、勘定系システムの更改に向けてアマゾン ウェブ サービス(以下、AWS)のクラウド環境を採用することを決定しました。2028 年初旬の本番稼働を目指し、AWS 上での次世代勘定系システムの設計・構築が進められており、移行完了後は、同行の主要システム全てが AWS 上で稼働することとなります。将来的なスケーラビリティを見据えた、デジタルバンク向けの次世代クラウド勘定系アーキテクチャーへの移行により、3,000 万口座を超える膨大なデータボリュームへの対応が可能となるほか、今後の事業拡大にも柔軟に対応できる設計が実現されます。
今後も、AWS を推奨クラウドプロバイダーに選定する住信 SBI ネット銀行は、AWS との連携をさらに強化し、柔軟性と拡張性に優れたクラウドや最先端の生成 AI 技術などを活用して、新たなビジネス価値創出とイノベーションを加速させます。
2017 年クラウドファーストを決定、AWS への移行開始
インターネット専業銀行として 2007 年に開業した住信 SBI ネット銀行は、「銀行を超えたテックカンパニー」を目指し、最先端の IT を駆使したイノベーションにより金融サービスの変革を推進しています。住信 SBI ネット銀行は、2017 年に 「クラウドファースト」 の意思決定を行い、勘定系以外の商用システムの AWS 移行を開始しました。AWS 選定の理由として住信 SBI ネット銀行は、FISC(金融情報システムセンター)の安全対策基準への対応に関する情報や第三者による認証、内部統制、監査に関するポリシーや結果が外部に公開されていることによる信頼性の高さ、AWS の開発力、比較的容易にエンジニアが確保できることにより運用体制の構築がスムーズに進められることなどを挙げています。また、システムの職員には AWS 認定ソリューションアーキテクトの資格取得を必須としており、AWS のサービスを積極的に活用できる体制を整えています。2020 年には、オンプレミスにあったインターネットバンキングシステムの Oracle データベース(DB)を、Amazon Aurora PostgreSQL へと移行完了しました。その後、2023 年邦銀で初めて(同年 8 月時点)、AWS のアジアパシフィック (東京) リージョン(以下、東京リージョン)およびアジアパシフィック (大阪) リージョン(以下、大阪リージョン)を活用したマルチリージョンによる冗長化を実施、インターネットバンキングシステムの可用性の向上を実現しています。
モダナイゼーションへの挑戦
住信 SBI ネット銀行において、2020 年に勘定系以外の商用システムを AWS に移行完了し、インフラ面でのハードウェア調達や構築のボトルネックが解消されました。しかし、2007 年の開業以降、顧客向けサービス開発を優先し機能を集約しながら開発した結果、プログラムの構造が複雑化し、事業のさらなる拡大に支障をきたすケースも生じてきました。そこで、これらの課題を解決し、持続的な成長を実現するため、住信 SBI ネット銀行はモダナイゼーションに着手しました。内製開発でモダナイゼーションを進めるうえで、必要な専門知識などを提供する AWS の 「DevTX プログラム」 を採用しました。同プログラムには、PACE(prototyping and cloud engineering)専門チームとの伴走により、イベントストーミング手法を用いてドメイン駆動設計のファーストステップを実現し、技術的負債の解消と組織文化変革を同時に加速しています。現在、モダナイゼーションの PoC を進めるための準備をし、顧客サービス向上や事業規模拡大に合わせた拡張性の確保を目指し、インターネットバンキングをはじめ主要システムのモダナイゼーションを進めています。
勘定系システムの AWS 移行へ
2025 年 9 月、住信 SBI ネット銀行は、勘定系システムを AWS のクラウド環境に全面移行することを決定しました。住信 SBI ネット銀行は、勘定系システムの更改に向けて、2024 年より既存のオンプレミス環境の継続も含め、拡張性・信頼性・可用性・セキュリティ・費用面などを含む複数の観点から総合的に検討を重ねました。その結果、同行において AWS の豊富な導入実績がありノウハウが蓄積されていたこと、AWS スキルを持つ人材が市場に豊富であること、安全性などから、最終的に AWS への移行を決定しました。すでに運用中の東京リージョンおよび大阪リージョンの東阪マルチリージョンに勘定系システムが加わることにより、システム処理の効率化・俊敏性の向上に加え、障害発生時の迅速な切り替えや災害時の業務継続など、一層のレジリエンシーの向上を実現します。
勘定系システムの AWS 移行の検討において住信 SBI ネット銀行は、AWS が実施するオペレーショナル・レジリエンス ワークショップに参加し、AWS で実現するレジリエンシーについて理解を深めたこともその決定に寄与しました。同ワークショップを通じて住信 SBI ネット銀行は、AWS のベストプラクティスに沿ったシステム設計を行うことで、可用性と回復力が大幅に向上し、障害発生時の迅速な切り替え、災害発生時のビジネス継続性(BCP)が確保できることを確認し、AWS による設計段階から運用まで一貫したサポートにより、安全かつ効率的な移行が実現できる体制を構築しています。
AWS 上に稼働予定の住信 SBI ネット銀行の次世代勘定系システムは、現行のオンプレミスで稼働する IBM 社の NEFSS をベースとして、Amazon RDS for Db2 をはじめとする AWS のマネージドサービスに移行されます。将来的なスケーラビリティを見据え、クラウドネイティブな AWS のサービスを利用したデジタルバンク向け次世代クラウド勘定系アーキテクチャーに移行することで、3,000 万口座以上のデータボリュームに対応可能となり、さらにその後の事業成長にも柔軟に対応できる設計が実現されます。また、運用コストは約 30 %削減が見込まれており、安定性・可用性・拡張性・効率性の向上により、開発・運用のスピードと柔軟性を確保できます。
さらに、これまで住信 SBI ネット銀行は、AWS PrivateLink を活用して、他社のシステムともセキュアかつシームレスな接続を行ってきましたが、AWS に勘定系システムが移行されることで、AWS 上での他のシステムとの連携が容易になるため、サービス開発の高速化や柔軟性の向上が期待されます。これにより、新規システムの開発や機能追加の速度が大幅に向上するとともに、テスト環境の柔軟性も高まりサービス品質の向上も見込めます。その結果、BaaS(Banking as a Service)など先端技術を活用した新サービスの開発・展開が加速されることが期待されています。
住信 SBI ネット銀行株式会社 執行役員 システム副本部長 渡邊 弘様からのコメント
当行は 2017 年のクラウドファースト決定以降、段階的に AWS への移行を進めてきましたが、今回ついに勘定系システムという銀行の心臓部とも言える基幹システムの移行決定に至りました。
拡張性・信頼性・可用性・セキュリティ・費用面など、あらゆる角度から慎重な検討を重ねた結果、これまでの AWS 導入実績で培ったノウハウを活かし、3,000 万口座以上のお客様により安定的かつ効率的なサービス提供が可能になると確信しております。
全ての主要システムが AWS 上で統一されることで、システム間連携の効率化や新サービス開発の高速化が実現し、お客様により良いサービスをスピーディーにお届けできるようになります。
今後も AWS との連携を深め、生成 AI などの最先端技術も積極的に活用しながら、デジタル金融サービスのイノベーションをリードしてまいります。