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サードパーティ Cookie がなくなりつつあります: 小売業者はどのように対処すべきでしょう?

あらゆるウェブサイトは、ブラウザ上でファーストパーティおよびサードパーティの Cookie の利用同意を求めなくてはなりませんが、全てのウェブサイトが対応しているわけではありません。Cookie がどのように機能しているのか正確な知識がなくとも、Cookie によってユーザー情報が追跡されていることはご存知でしょう。Cookie とは小さなテキストファイルで、ウェブサイトがあなたについての情報を記録しています。 Cookie には、ファーストパーティー Cookie とサードパーティ Cookie の 2 種類があります。 ファーストパーティ Cookie はあなたが訪問したウェブサイトのみが設定、アクセスするもので、そのウェブサイトがユーザーを記憶していることでサイトに訪問する都度、優れたユーザーエクスペリエンスが提供されます。サードパーティ Cookie は、あなたが訪問したウェブサイトではないサードパーティによって設定され、消費者のプロファイルを作成したりターゲティング広告を提供したりするために、さまざまなウェブサイトにおける消費者の行動を追跡するものです。

マーケティング担当者にとって、潜在顧客に対するターゲティング広告にはサードパーティ Cookie が不可欠です。一方、データプライバシー擁護者の多くは、サードパーティ Cookie、特にアクセスしたウェブサイトや商品の情報を追跡するサードパーティのマーケティング用 Cookie が個人のプライバシーを侵害しているとみています。サードパーティ Cookie はまた、ハッカーがユーザー情報にアクセスするべく悪用できるセキュリティ脅威であるともみなされています。 ユーザーの追跡やプライバシー問題、セキュリティリスクの懸念が高まっていることを踏まえ、Google 社は 2023 年末までにサードパーティのマーケティング Cookie の使用を廃止することを発表しました。

Google 社の示す 2023 年 12 月という日程は、マーケティング Cookie 廃止の現時点での見込み日であることに注意してください。すでに Google 社はこの日付を一度延期しており、再度延期する可能性が大いにあります。Google 社はまた、予定を完全に覆してサードパーティ Cookie を廃することはないだろうと言う仮説もあります。いずれにせよこの件は既に俎上に上がっており、小売業者は潜在的に影響を受けるという認識を持たねばなりません。いつであろうと廃止された場合、十年来成功を収めて来た、高度にターゲティングされたデジタルマーケティングチャネルを劇的に変えてしまうからです。

ターゲティングにより効率的に顧客を特定したマーケティングを成功させるために、この変化に対して小売業者として何ができるのか、考えていらっしゃるでしょう。今回、二部構成のブログシリーズで、2 年後にマーケティング Cookie が廃止された場合に備え、小売業者が知っておくべきこと、今やっておくべきことについての我々の考えを共有します。

自社のファーストパーティデータプラットフォームを作成する

これまで小売業者は、顧客、その行動パターンや好み、セグメンテーションを理解するために、データマネジメントプラットフォームとサードパーティのデータサービスに依存してきました。サードパーティ Cookie の終焉、デバイス識別子の変更、EU 一般データ保護規則(GDPR)やカリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)といった厳格なプライバシー規制により、小売業者が潜在顧客を理解してターゲティングするために間接的な方法を利用することは、ますます困難になるでしょう。このため、小売業者は顧客に関するデータを自社で持つ必要があります。つまり、顧客を特定し理解するためのデータを収集、保存、管理するための自社データプラットフォームを構築する必要があるということです。これによりマーケティング Cookie が廃止されても外部および、間接データソースに依存しなくてすむようになります。

サードパーティ Cookie の廃止によってこの自社ファーストパーティデータ戦略は大きく進んでいますが、独自のファーストパーティデータプラットフォームを構築する理由は他にもいくつかあります:

  • 既存の自社顧客データからより多くの価値を引き出す
  • データの主権者となる
  • 顧客データ戦略の将来性を確たるものにする

これらの点をブレークダウンしていきましょう。まず既存のデータからより多くの価値を引き出す点についてです。小売業者の多くはこれまでにも、コンタクトセンターや店舗での POS トランザクション、e コマースでの購入など社内ソースからファーストパーティー顧客情報を収集してきました。しかしそれらのデータは多くの場合、各組織のさまざまなアプリケーション上でサイロ化されています。そのため既存顧客データから得られる価値を最大化することができていません。ですが既存のファーストパーティデータを戦略的に統合すれば、360 度の顧客ビューを作成することが可能です。さらに OnAudience、Lotame、Nielsen といったベンダーからのサードパーティデータも使用して顧客情報を補強、充実させれば、より深く詳細で全体的な顧客ビューを作成できます。

サードパーティデータのニュアンス

ここで、サードパーティデータソースについて細かな点を強調しておきたいと思います。これらのデータソースは現在利用可能であり、2023 年末にマーケティング Cookie が廃止されても引き続き利用できます。ただし、Cookie 駆動のサードパーティデータは変わります。どのように変わるかは、まだわかりません。Tinuiti によると、Google 社は対応負荷を軽減するための Cookie の置換とツールをテストしているとのことです。これにより「置換と次ステップがおおいに不確実なままとなるため、業界は宙ぶらりんの状態」になります。Cookie の置換に関する不確実性は我々が述べたようなニュアンスです。自社保有の情報を補強、強化するために、いつでもサードパーティデータを購入できます。消費者データソースとしてのマーケティング Cookie の廃止が、より広い意味でのサードパーティデータの世界にどのように影響するのかわかっていません。Cookie置換技術がサードパーティ Cookie のように広く採用され普及するのかもわかりません。ですから、しばらくは一緒に、この問題の動向を見ていきましょう。

とはいえ、Cookie に代わるテクノロジーが何であれ、ファーストパーティデータを所有、管理、コントロールできれば、頭を抱えている競合他社よりもはるかに有利にこの変化に対処できます。今からデータ主権者となる道を戦略的に計画しておけば、2023 年 12 月にサードパーティ Cookie が廃止されても、マーケティング Cookie に代わるテクノロジーをずっと有利に利用できるでしょう。

シリーズの 2 つ目のブログ「小売業者へ: サードパーティ Cookie 廃止の前にデータ主権者となりましょう」では、自社ファーストパーティデータプラットフォームを構築するためのハイレベルな計画について概説します。

自社ファーストパーティデータ戦略についてお考えであれば AWS がお手伝いします。今すぐアカウントチームに連絡してください。


著者について

Craig Miller

Craig Miller は、AWS Advertising and Marketing Technology チームのグローバルリーダーであり、AWS のお客様が広告およびマーケティングの潜在的な収益を獲得できるよう支援しています。Craig はインターネットの登場以来、広告とテクノロジーを革新してきました。MatchLogic、および Excite でのサードパーティ広告配信のパイオニアとしての活動から、Xandr の TV プラットフォームではプロダクトの責任者としてテレビ広告の将来に関する取り組みに至るまで、Craig は、サービスを提供する顧客の広告エコシステムの変革に役立つプロダクトとテクノロジーの戦略的な創造を目指しています。Xandr(以前の Appnexus)の前には、Appnexus のプロダクトの売り手側の製品スイートの構築を支援していました。また、Yieldex の CTO 時代には、2008 年に AWS Startup Challenge で優勝しました。MatchLogic、Excite@Home、Avaya、Clear Technology においてテクノロジーのリーダーを務めてきました。広告、予測、歩留まりの最適化、リアルタイム入札といった分野において、Craig は多数の特許を取得しています。

Chip Reno

Chip Renoは、AWS でワールドワイドに Advertising and Marketing のテクノロジーリードを務めており、企業向け Ad Tech プラットフォームの戦略、開発、展開を 10 年以上リードしています。成功した 2 つのテクノロジースタートアップの創設者兼マネージャーでもあります。現在、アイデンティティの解決、匿名のデータ共有と分析といったデジタルメディアにおける長年の課題を解決するための製品とサービスの構築、また絶えず変化するプライバシー環境においてメディアを最適化する方法に注力しています。

Vince Koh

Vince Koh は、AWS のデジタルコマースにおいてワールドワイドな戦略とソートリーダーシップをリードしています。AWS の小売業、消費財のリーダーシップチームと協力し、オンラインやソーシャル、モバイルコマースにおける新機能でいかにビジネスを変革するべきか、また顧客接点を繋げていかに統一された顧客体験を創るのか、ガイダンスを求めている企業に向け、市場開拓戦略や、革新的なパートナーソリューションの提供に取り組んでいます。Vince は 15 年のキャリアを通じて、グローバル企業と高成長のスタートアップ企業の両者に対してデジタルコマースを主導し、Direct-to-Consumer(DTC)やマーケットプレイス、小売におけるオムニチャネルイニシアチブを開発、実践してきました。AWS 以前には、Weber Shandwick においてCommerce & Conversion SVP を務めていました。また Iconix Brand Group では e コマース VP を、ベンチャーキャピタルが支援するスタートアップ(Keaton Row & Fab)ではマーチャンダイジングや戦略、運用をリードしていました。Accenture ではグローバルに小売コンサルティングプロジェクトを主導しました。コーネル大学の SC ジョンソン経営大学院で MBA を取得しています。

翻訳は Solutions Architect 杉中が担当しました。原文はこちらです。