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旅行とホスピタリティ業界 AWS re:Invent 2021 ReCap

Massimo、SriHari、Stevenの3名は、2 万人以上のオンサイト参加者と 60 万人以上のバーチャル参加者とともに、AWSの年次イノベーションカンファレンス re:Invent 2021 に幸運にもオンサイトで参加することができました。ここでは顧客とパートナーが、再び対面でビジネスを協業していくという感覚に満ちていました。Local Measure社のIan-Michael Farkas氏は、「対面でつながりを持つことで、パートナーシップの形成、ミーティングの手配、AWSを取り巻くすべてのイノベーションについて学ぶ能力が加速されました 。」と述べています。

Recap:

今回のre:Invent2021では、85 以上の新サービスや新機能が発表され、旅行業界やホスピタリティ業界をリードする企業から直接話を聞く機会もありました(旅行業界とホスピタリティ業界の主な発表内容についてはこちらをご覧ください)。特に旅行業界関係者にとって必見だったのは、ユナイテッド航空の技術担当上級副社長兼最高デジタル責任者である Linda Jojoが登壇し、AWSのCEO、Adam Selipskyと基調講演のためにステージを共有したことです。

ユナイテッドはAWSを「優先クラウドプロバイダー」に指名し、Lindaは、Silicon Angle-TheCubeのインタビューでこの件に触れております。

トラベル&ホスピタリティセッションの共通テーマは、顧客エンゲージメントの向上と業務効率の改善を目的としたデータ活用でした。特に、データが旅行・ホスピタリティ業界とデジタルトランスフォーメーションの課題解決の中心であることがメッセージとなっております。また、データを資産として活用するには、データの収集、保存、配布の方法を変えるとともに、データを”石油”ではなく”水”のように扱うことが必要ということでした。これは、データは厳重に管理された場所に保管されるのではなく、豊富で、アクセス可能で、再利用可能なものであるべきという意味です。データがどのように利用されているかを理解するために、次の記事をお読みください。

ホスピタリティ・リーダーシップ・セッション

すべてのオンデマンドセッションをご覧いただけます。

満席の中、このセッションはスターバックス副社長のRajesh Naidu氏とヒルトンCIOのMichael Leidinger氏を迎えて行われ、データがどのように将来の企業成長を促進するかという点に重点が置かれました。スターバックスとヒルトンは、世界 19 ブランド、40,000 店舗となり、量、速度、種類ともにデータは増加し続けており、データ管理方法において抜本的な改革が求められてきました。

Rajesh氏は、スターバックスには 2,480 万人以上の ロイヤルティ顧客がおり、「データは顧客とつながるための基礎となる。」と指摘しています。彼は、ビジネスをサポートするためにAWS上に構築した、小売と非小売の顧客データに基づいたスターバックスのデータレイクについて紹介しました。これは、顧客と顧客の行動をよりよく理解するためだけでなく、パンデミックの中、感染、ワクチン接種、および規制データをリアルタイムで取り込み、すべてのカフェで活用できるようにするためでもありました。これらのデータと、トイレの公開可能時間などの情報をもとに、カフェの営業時間、スタッフの必要性、在庫レベルを決定したのです。現在、スターバックスでは、デジタル注文、支払い、ロイヤルティプラットフォームをAWSで実行しています。

Michael氏は、ヒルトンが応答性と予測性を兼ね備えたリアルタイムのデータエコシステムを必要としていることを述べております。ヒルトンの狙いは、グローバル企業全体で一貫したデータ利用を促進し、より豊かで正確、かつ顧客に合わせた体験を提供することです。このプラットフォームは、組織全体のデータの正確性、一貫性、安全性を確保し、ヒルトンが年間 100 万ドル以上節約することが可能となりました。また、このプラットフォームにより、可用性と稼働率を向上させ、計画停止を減らし、リアルタイムのビジネス需要に対応するためのスケールアップとスケールダウンを実現しました。さらに、運用管理の簡素化、リスクの低減、企業のセキュリティ態勢の改善、導入時間を数カ月から数日に短縮、数か月または数年ではなく、数日で新しいデータソースを取り込むなど、反復的なタスクを自動化します。これにより、コンタクトセンター向けのAmazon Connectなどのツールに情報源を一元化して使用することで、顧客エンゲージメントが向上しました。また、チャットボットシステムによって自動応答が 34 %増加し、より堅牢でカスタマイズされたFAQコンテンツの配信が可能になりました。Central Reservation System(CRS)は改善され、1 日に 5 億件以上の予約を処理できるようになりました(+ 230 %増)。この再設計により、コンテンツの配信が容易になり、ヒルトンは新しいパッケージやオファリングの作成、在庫のリアルタイム連続価格設定、リアルタイムの顧客需要に基づくきめ細かい増分価格設定等が実施できるようになりました。

トラベル・リーダーシップ・セッション

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本セッションでは、旅行の次のフェーズを構築するため、2019 年に 5200 万人の乗客を運んだカナダ最大の航空会社エア・カナダや、2019 年には 1 億 6200 万人の乗客を運んだ世界第 3 位の航空会社ユナイテッド航空などのフラッグシップ航空会社が、顧客エンゲージメントと業務効率化のためにどのようにデータを活用しているかをテーマとして話しました。

エア・カナダのCIOであるMel Crocker氏は、同社のロイヤリティ・プログラムであるAeroplanが、顧客エンゲージメントを再構築するための礎となっていることを紹介しました。同社は、旅客サービスシステム(PSS)、顧客関係管理システム(CRM)、ロイヤルティシステムなどのバックエンドシステムとの抽象化レイヤーを活用し、データを相互参照しつつ、ウェブサイト、モバイルアプリ、アナリスト、データエンジニア、機械学習(ML)/人工知能(AI)のエンジニアがAPI経由でアクセスできるようにしました。これにより、ウェブサイトの会話が 60 %以上改善され、トランザクション処理時間が 32 %短縮されました。また、ミドルウェアAPIをサードパーティに公開することで、Uberやスターバックスなどの小売業者のプログラムへの統合も可能になりました。現在、小売業者はエアカナダのモバイルアプリを使用して、ゲートでのプロモーション、お菓子、持ち帰り食品の購入機会を提供し、お客様からはお金、マイル、またはその両方の組み合わせで支払う選択肢を提供することができるようになっています。これにより、特典のアップセルが 19 %増加し、マージン支払の選択が 27 %増加しました。

次に、ユナイテッド航空のSVP、Jason Birnbaum氏は、ニューアークリバティ国際空港(EWR)を 2万台以上のIoTデバイスとカメラで計装し、機器の位置を監視した方法を紹介しました。これには、レッカー車、ケータリング、清掃、給油、飛行機、そして車椅子、人員、乗客などの地上設備が含まれています。これにより、ユナイテッド航空は地上設備購入費を 1億2000万米ドル以上、人員の「捜索時間」を 130万時間以上節約することができました。さらに、ゲートの距離、ラウンジの混雑、ゲート、チェックイン、セキュリティエリアでの長蛇の列について、ユナイテッド航空からお客様と情報提供することができるようになりました。これにより、リソースやスタッフ(ゲート係員や警備員など)のスケジュールをより良く調整できるようになり、オペレーションが改善されました。

顧客とのハンズオン

顧客主導のセッションでは、参加者は特定の業界のユースケース、ソリューション、ビジネス成果を深く掘り下げることができます。それには以下が含まれます:

  • ハワイアン航空とアクセンチュアは、Amazon Connectを使用した最新のクラウドベースのコールコンタクトセンターの詳細を共有しました。
  • エクスペディアグループは、機械学習と人工知能がどのようにグローバル旅行を豊かにするか共有しました。
  • パートナー基調講演においてSlalomとRigadoのスマートキッチンが注目を集めました。
  • Brinker社(Chili’s Grill & Bar、Maggiano’s Little Italy、It’s Just Wings)は、Teradataによってスケジュール管理を最適化し、顧客満足度を向上させました。
  • Taco Bellは、イベントドリブンアーキテクチャによる次世代アプリケーションの構築方法について議論しました。
  • スターバックスは、サステナビリティの取り組みについて提供しました。
  • Rappiは、Amazon DocumentDBを活用して、配送の急増に対応する方法について説明しました。
  • パナソニックアビオニクスが監視・セキュリティハブの仕組みを公開しました。
  • ユナイテッド航空は、アーキテクチャのベストプラクティスを用いてクラウドの成果を上げる方法として、50 年前のメインフレームで稼働する最も重要なアプリケーションへの取り組み、それらをAWSネイティブソリューションに移行した例を紹介しました。パンデミックによって「 10 年の進歩を 1 年未満で達成した」ようにイノベーションが加速したと強調しております。
  • デルタ航空は、20 年以上の歴史を持つコンタクトセンターのためにAmazon Connectを選択し、世界中で数千のエージェントを管理し、9 以上の言語をサポートし、年間 2 億人以上の顧客にサービスを提供していることを紹介しました。「Amazon Connectは私たちのビジネスを大きく変えました。」と語っており、顧客に対して合理化されたルーティング、優先順位付け、適切なエージェントに適切なタイミングで紹介することができ、わずか 10 分でコンタクトセンターを立ち上げることができたと説明しております。

また、85 以上の新しいサービスと機能のリリースに、AWS Amplify StudioローンチパートナーであるQSRSoftが含まれていました。これにより、モバイル/Webアプリの迅速な作成が可能になります。

AWS Travel and Hospitality Competency Partnersの発表では、パートナーのNLX、Local Measure、TCSが表彰されました。NLXはメインステージでConversational AI Partnerとして表彰され、Local Measureはコンタクトセンターの専門知識でリーダーシップを発揮し、Amazon ConnectのGlobal Service Delivery Partnerを受賞、Tata Consulting Services(TCS)はTravel and Hospitalityを含む 8 以上のコンピテンシーと 5 つのサービス提供検証を受けて、AWSの 2021 Rising Star Partner of the Year (GSI) – USに選出されています。

EXPO会場では、参加者がコーヒーを楽しみながら革新に満ちたデモンストレーションを体験できました。ServerlessチームはServerless Point-of-Sale (POS)のデモを行い、GitHubでコードを公開しました。Vistryは、リリースされたばかりのAmazon Outpost Servers(2 Uおよび 1 Uフォームファクタ)上で動作するカフェのオペレーションを完全に観察するためのComputer Vision(CV)のデモを行いました。そして、ビルダーズラボでは、IoTを利用して完璧なカクテルを科学的に調合する方法を紹介しました。17 時を過ぎると、re:Invent参加者の間で交流の機会を楽しむことができました。

来年も皆様のお越しをお待ちしております。

AWS re:Invent 2021 のニュースについては、トラベル&ホスピタリティのトップ発表のまとめをご覧ください。発表内容、基調講演、リーダーシップセッション、体験談など、re:Invent 2021の全リストをご覧いただけます。

業界の洞察は、AWS Travel & Hospitality Blogをご覧ください。

―著者について―

Steven M. Elinson

Steven M. Elinson は、Amazon Web Services (AWS) のグローバルインダストリープラクティスである Worldwide Restaurants and Food Service の責任者で、クラウド導入を加速させる顧客をサポートしています。今日のレストランは、最適化された資産、高い利用率、予測分析、品質、健康、安全基準の遵守など、運営上の効率性を保ちながら、パーソナライズされたシームレスな接続によるゲスト体験を提供する必要があります。Stevenは、信頼できるアドバイザーとして、30年にわたる幅広い知識と経験を活かし、こうしたゲストエクスペリエンス(トップライン)と業務効率(ボトムライン)の向上を推進しています。彼の経験は、オペレーション、トレーニング、サプライチェーン、テクノロジー、新しいコンセプトの創造など多岐にわたり、レストランのコンセプトの創造と販売も経験しました。パデュー大学にてホテル、レストラン、ツーリズムマネジメントの理学士号を、フロリダ国際大学にて経営学修士号を取得しています。

Massimo Morin

Massimo Morinは、航空会社やホスピタリティ業界で 20 年以上、開発者、アナリスト、製品デザイナー、ビジネス開発者として経験を積んでいます。航空会社の価格設定、流通、収益管理、eコマースなどを主な専門分野としています。マサチューセッツ州ボストンを拠点に、現在はAWSのグローバルな旅行/航空分野でのエンゲージメントを担当しています。ヴェネチア大学でソフトウェア工学を学び、MITで交通/航空ビジネスとマネジメントの修士号を取得しています。イタリア出身の料理が好きで、世界中を旅しています。

SriHari Thotapalli

SriHariは、AWSのホスピタリティ部門におけるワールドワイドテクノロジーリーダーであり、AWSクラウドを活用した旅行業界やホスピタリティ業界のお客様のイノベーションを支援し、顧客体験の向上や業務効率の改善を実現することを使命としています。また、AWSの社内チームやISV、GSIが技術資産やリファレンスアーキテクチャ、ソリューションを作成できるよう、トラベル&ホスピタリティの技術フィールドコミュニティをリードしています。AWS入社前は、ホスピタリティ、CPG、小売、ヘルスケア業界で 20 年以上にわたり、デジタル戦略、データ&分析戦略、エンタープライズアーキテクチャの役割を担い、予約、ホテル運営管理、収益管理&流通、顧客マスターデータ管理、ヘルスケアAI、サプライチェーン最適化の製品を構築してきました。北イリノイ大学でコンピュータサイエンスの修士号を取得しています。

翻訳はソリューションアーキテクトの程が担当しました。原文はこちらです。