AI トランスフォーメーションおよびガバナンスのリーダーシップ: Chief AI Officer の視点
Leidos の Chief AI Officer である Ron Keesing 氏との対話
このエピソードでは...
AWS Enterprise Strategist である Tom Soderstrom が、Ron Keesing 氏 (Leidos、Chief AI Officer) と、エンタープライズ AI トランスフォーメーションをリードすることについて深く掘り下げて議論します。CAIO に就任したばかりの Keesing 氏は、140 億 USD 規模の科学技術関連の大企業において、企業全体での AI 導入を推進するためのポリシー、文化、テクノロジーの形成に携わっています。防衛、ヘルスケア、民間機関向けにミッションクリティカルなソリューションを提供してきた 20 年超の経験に基づいて、モデル選定からデプロイ後のモニタリングに至るまで、あらゆる段階に堅牢な AI ガバナンスフレームワークを組み込むことが、今日では成功の鍵となっている理由を説明します。集中型のイノベーションハブと分散型のセンターオブエクセレンスのバランスに関する実践的な事例に加えて、ROI の測定、人材パイプラインの構築、規制環境における人間と AI の信頼性の高いパートナーシップの構築に関する教訓もご紹介します。
AI ガバナンスフレームワークの大規模な構築
Keesing 氏は、AI ガバナンスに関する Leidos のブループリントの概要を説明します。これは、機敏な実験サイクルと、データの出所、バイアスの軽減、セキュリティに関する妥協のないコントロールを融合させたものです。同社が、顧客と規制当局の期待に応えるために、プレイブック、自動化されたガードレール、監査対応のドキュメントを通じてポリシーをどのように運用しているのかを学びます。また、この対話では、責任ある AI ガバナンスが連邦政府調達における差別化要因となりつつある理由や、技術チェックポイントをビジネス目標と整合させることが持続可能な成長の鍵となる理由についても探ります。AI ガバナンスに大規模に取り組んでいるリーダーにとって、Keesing 氏のインサイトは、ポリシーがイノベーションを阻害するのではなく、実際には加速させ得ることを明らかにします。
パイロットから企業全体での AI 導入まで
Leidos は、個別の概念実証にとどまらず、現在、数百のプログラムでの AI の運用化に注力しています。Keesing 氏は、セキュリティ、コンプライアンス、モデルのライフサイクル管理のための共有サービスを活用しながら、ドメインエキスパートとデータサイエンティストが共同でソリューションを構築できるようにする AI 実装戦略について詳しく説明します。また、再利用可能なアセットとカスタマイズされたコンテキストを組み合わせることで長期的なメリットが生まれることを強調します。これは、アジャイルな資金調達モデルと継続的なスキルアップに支えられたアプローチです。
最終的に、この議論は、明確な AI ガバナンスフレームワークが、どのように企業における一貫性、スケーラビリティ、倫理性を備えた AI 導入の基盤となるのかを示します。最初のモデルを改良する場合でも、数千のモデルをデプロイする場合でも、このエピソードは、AI ジャーニーのあらゆる段階に対する実用的なガイダンスを豊富に提供します。
会話の文字起こし
出演者: AWS の Enterprise Strategist である Tom Soderstrom と、Leidos の Chief AI Officer である Ron Keesing 氏
Chief AI Officer の役割への期待
Tom Soderstrom:
AWS がお届けする Executive Insights ポッドキャストへようこそ。私の名前は Tom Soderstrom です。AWS の Enterprise Strategist です。今後の業界トレンドを見ていく中で、重要な潮流の一つは、生成 AI とクラウドの登場です。この 2 つは切り離せない関係にあります。クラウドなしに生成 AI を実現することはできません。
そして、こうしたテクノロジーも、それを推進し、受け入れる人々がいなければ、実際には意味をなしません。そこで本日は、新設された Chief AI Officer に任命されたばかりの、Leidos の Ron Keesing さんをお迎えして、この新しい肩書きがどのようなものであり、どのような意味を持つのかを探っていきたいと思います。Ron さん、本日はご参加いただきありがとうございます。
Ron Keesing 氏:
Tom さん、こちらこそありがとうございます。お招きいただき、光栄です。
Tom Soderstrom:
まず、Leidos について、そしてご自身や、ご経歴について少しお話しいただけますか? その後に、今の役割の詳細をお伺いしたいと思います。
Ron Keesing 氏:
わかりました。Leidos は...多くの方には馴染みがないかもしれません。当社は、いわゆる一般家庭で知られている名前ではありませんが、実は非常に大きな会社です。Fortune 300 の 1 社で、セキュリティやヘルスケアといった分野で、世界が直面する極めて難しい多くの問題を解決する役割を担っています。
私が就いている、Leidos のために AI 関連業務を率いるこのポジションは本当にすばらしいものです。なぜなら、当社はさまざまなミッションに携わっているからです。典型的なのは米国政府のためのもので、例えば、FAA の航空管制システムが稼働し続けるようにしています。航空交通を機能させ、安全を確保するソフトウェアを開発しているのです。また、DoD のために世界最大級の電子健康記録システムを運用しており、実際に 1,000 万人超のユーザーをサポートしています。米国内では、障害者年金の請求や診断を、どの組織よりも多く対応しています。これはヘルスケア関連ビジネスの話です。
ほかにも、とてもすばらしいいくつかの物流サプライチェーンの運営も担っています。これには、国際宇宙ステーションのための物流サプライチェーンが含まれます。
Tom Soderstrom:
それはすごいですね。
Ron Keesing 氏:
はい。さらには、米国国防総省のために世界第 3 位の規模を誇る IT ネットワークを運用しています。
このように、当社のビジネスの規模について考えるとき、データを中心とした大規模な仕事が多く、AI はそれらの仕事でまさに核となる役割を果たしています。私は AI の世界に長く携わってきました。以前、あなたが JPL にいた時の経験と私の経験を比較して話したことがありましたね。私は 1990 年代に NASA のミッションで、JPL と協力して初代の自律型宇宙船を開発していました。それを思えば、AI の世界に足を踏み入れたのはかなり昔からだと言えます。Leidos には 20 年超在籍し、幅広い AI プロジェクトを率いてきました。
Tom Soderstrom:
今日では、Chief AI Officer という新たな役職を目にするようになりました。多くの人々は、「この役割では、成功とは何を意味するのか? 期待されているのはどのようなことか?」と疑問を持つでしょう。 そこで、まずはこの役割に期待されるのはどのようなことかをお伺いしたいと思います。
Ron Keesing 氏:
私が強く信じているリーダーシッププリンシプルの 1 つで、AWS の価値観とも共有していると思うのは、オーナーシップを持つことの重要性です。私は Leidos という会社を見たときに、AI 企業として長い歴史を持ってはいるものの、AI 戦略を明確に示したときでさえ、そのオーナーシップを真に引き受けて推進する人物がいなかったのです。そこで私は、「当社には、この役割を担うポジションが必要だ。単なる技術的な視点にとどまらず、より広く企業全体の視点から当社の AI 戦略は何か、という問いに責任を持つ立場が必要だ」と声を上げたのです。
そして、私は、Leidos の包括的な AI 戦略の実行を率いる役割として「Chief AI Officer」を定義することに注力しました。実際、私は現在、その役割に注力しています。それは、AI 戦略に加えて、当社の AI ガバナンスの原則の所有および定義、企業全体として AI ガバナンスをどのように運用していくのか、ということの組み合わせです。
Tom Soderstrom:
とても興味深いですね。Amazon から学んだ重要な教訓の 1 つは...何かを成功させたいなら、シングルスレッドリーダーが必要だということです。つまり...毎日それだけに集中し、心配事はそれだけという人が必要なのです。あなたの場合は AI ですね。では、実際に職務記述書も定義したのですか?
Ron Keesing 氏:
はい、そうです。
Tom Soderstrom:
すばらしいですね。
Ron Keesing 氏:
ありがとうございます。Leidos の経営陣や取締役会からも大きなサポートを受け、この役割を現実のものとして定義できました。当社は全社一丸となって、言及したように戦略という観点で、過去 1 年間を「深い戦略的思考の年」として取り組んできました。そして、私たちは真剣に自社の将来とお客様の将来について考えてきました。なぜなら、先ほど申し上げたように、当社の主な仕事は、米国政府が遂行する最も重要なミッションの多くに対処することだからです。
この取り組みを進める中で、Leidos とお客様の両者の観点から見て、AI が当社の戦略において非常に重要であることを認識しました。その包括的な AI 戦略を実行するための単一の焦点を持つことが、単なる AI 戦略だけでなく、より広い企業全体の戦略の基礎となりました。なぜなら、当社の活動の多くはデータに依拠しており、膨大な量のデータを取り扱う大規模で複雑なシステムの構築にかかっているからです。そして、そのような種類のミッションにとって、AI は未来なのです。
Leidos のあらゆるレベルで AI 導入を推進
Tom Soderstrom:
そうですね。AI は今や「テーブルステークス」、つまり最低限必要なものですね。そして生成 AI は新たなトレンドです。先日、貴社の CEO のお話も伺いましたが、「最優先事項はスピードだ」とおっしゃっていました。 あなたは Leidos における AI のシングルスレッドリーダーとして、どのようにミッションを遂行していこうとお考えですか?
Ron Keesing 氏:
私のミッションの核心的な目標は、あらゆるレベルで AI を Leidos の DNA に真に浸透させることです。どういうことか、ご説明しましょう。
Tom Soderstrom:
ぜひお願いします。詳しく聞かせてください。
Ron Keesing 氏:
Leidos は長年 AI 企業として活動を続けています。実際、過去 20 年間で画期的な AI 関連のいくつかの取り組みに参加しています。2004 年には自律走行車を実証した DARPA Grand Challenge に携わり、米海軍のために初代の自律型船舶も構築しました。長年にわたって、米国政府のために、自律性と AI に関する数多くのエキサイティングなブレークスルーの最前線に立ってきました。そのため、当社は企業として AI をどのように活用すべきなのかはわかっていますが、それらの AI に関する取り組みは常に、集中的で個別のプロジェクトであり、すべての業務の一環として行っているものではありません。
今後の課題は、当社が持つ AI の専門知識をどのように活用するのかということです。一例としては、AI Accelerator と呼ばれる組織に体現されている、真のロケットサイエンティストの才能を挙げることができます。その才能を活かし、組織のあらゆるレベルで AI の卓越性を発揮できるハブアンドスポークモデルをいかに構築していくのかが課題です。なぜなら、生成 AI がもたらす機会を拡大し、活用していくことは、もはや中央集権的な組織だけでは不可能だからです。組織全体に AI の能力を浸透させる必要があります。
そして、私はそれよりもさらに深く考える必要があると思っています。当社が目指すワークフォースの未来を考えるとき、それは単に、優秀な AI 科学者やエンジニアをいかに確保するのかという問題だけではありません。 日々の業務において AI を活用して働くことができるワークフォース全体をどのように育成していくのか、真剣に考える必要があります。
この職務を適切に遂行する上で気づいたことの 1 つは、社内のあらゆる AI リソースを自分が所有することはできないということです。私の役割は、組織全体で行われているすべてのことを統合することです。私は実際に業務を組み立てるために、社内全体からの多大な支援を得て、社内の全員が行っているすべての作業を統合し、統一された方法で実行する一連のイニシアティブを実行してきました。
つまり、オーナーシップというよりも、ビジョンを示し、既に進行中のさまざまな取り組みを明確かつ着実に調整およびオーケストレートしていくことが重要です。先ほどおっしゃったように、生成 AI に関する実験の開始やパイロット運用への熱意は非常に高まっているからです。そして、それはすべてすばらしいことです。ある時点で、何に資金を投入し、何を追求し、何に投資し、世界クラスのレベルを目指すのかどうか、どこに真の価値があると考えるのかを決めなければなりません。
ですから、私の役割は、会社全体で全員の活動を調整し、当社が統一された体制で業務を遂行するようにすること、ビジョンを明確にし、会社としてどこへ向かうべきかを明確にすること、そして、その方向へと集団的な動きを導き、迅速に目標を達成できるようにすることであると考えています。
Tom Soderstrom:
すばらしいですね。少し物議を醸す発言をしますが、ご意見を伺いたいと思います。誰もが COE を設ければ、それだけでセンターオブエクセレンスだと考えてしまいます。優秀な少人数のグループが必要です。しかし、センターオブエクセレンスを設けると、そのメンバーは自分たちが優秀であると思い込み、他の全員がそれらの人々を嫌って独自のセンターオブエクセレンスを設け、影の COE や影の IT が生まれます。そうではなく、センターオブエンゲージメントを設立し、潮流を生み、すべての船が浮かべるようにすべきです。そして、あなたが行っているのは、まさにそういうことのように聞こえます。間違っているでしょうか? それとも、ご同意いただけますか?
Ron Keesing 氏:
同意します。当社はまさにそのように考えています。実際、当社が行っているのは、Accelerator 組織で育った真のリーダーたちを何人か選び、これらの人々を社内全体のセンターに配置することで、組織全体で連携を生むということです。
集中型の能力を育てた後、それぞれが独自に動くことほど悪いことはありません。スケールも、一貫性も得られません。
Tom Soderstrom:
たしかに、それではせっかくのリソースが完全に無駄になりますね。
Ron Keesing 氏:
まさにそのとおりです。そのため、この組織全体の連携をいかに維持するのかが、私の計画や実行、そして組織全体に分散させた AI 能力の開発において、非常に重要です。すばらしいことに、当社には、この組織に何年も在籍し、次のステップに進む準備ができている人材がいることです。これらの人々にとって、これは、キャリアを成長させ、さまざまな組織で働き、どのようにリーダーシップを発揮し、拡大して、それらの組織の成長を支援できるのかを理解するための絶好の機会となります。
Chief AI Officer の成功を測定する方法
Tom Soderstrom:
すばらしいですね。さて、いよいよ難しい質問です。Chief AI Officer としての成功をどのように測定しますか? Chief AI Officer になろうとしている人は皆、「では、どのようにすればよいのでしょうか。秘訣を教えてください」と言うでしょう。 どのように測定するのでしょうか? 成功の基準は何ですか?
Ron Keesing 氏:
これらのソリューションの開発と、その開発の成功を測る上で重要なのは、AI を通じて実際にパイプラインのどの程度に影響を及ぼしているのかを検証することです。
そのため、当社はこれを非常に明確に測定しています。現在進行中のすべての取り組みを追跡しています。例えば、先ほどお話しした AI イニシアティブなども確認しています。そして、これらのイニシアティブ内でパイプラインのどの取り組みが開発中のテクノロジーを活用しており、どのような影響を及ぼしているのかを明確に追跡しています。 最終的には、このような貢献が新規案件の獲得にどの程度役立っているのか、さらに詳しく検証したいと考えています。 例えば、提案が採用される際に、それらが当社の強みとして認識されているのかどうか、ということです。 これがパイプラインの側面です。
会社が測定したいもう 1 つの重要な点は、そして誰もが Chief AI Officer の役割に期待していることは、組織としての生産性向上にどのように貢献しているのか、 どのように効率性を高めているのか、ということです。 これは私にとって非常に興味深いトピックです。なぜなら、今日の AI を取り巻く真の課題の 1 つは、例えば生成 AI を活用して特定のワークフローの効率を高める方法は理解できても、その効率性をどのようにビジネスの改善につなげていくのかがまだ明確ではないからです。これは何を意味するのでしょうか? 例えば、AI をコーディングアシスタントとして活用する例を考えてみましょう。
AI はコーディングアシスタントとして適切に活用するとすばらしいテクノロジーとなりますが、例えばソフトウェアデベロッパーの効率が 30~40% 向上したとすると、ソフトウェアデベロッパーの数が 30~40% 減るのでしょうか? それとも、よりセキュアなソフトウェアを開発しますか? あるいは、これまで手を付けることができなかったレガシーの技術的負債のいくつかの解消に取り組みますか?
このように考えると、一部の組織は金銭的なインパクトを測定したいと考えるでしょう。人員削減をする場合には測定は簡単ですが、ほとんどの組織ではそうはいかないと思います。人間と AI の良好なパートナーシップを築いていく中で、より多くの仕事ができるようになったり、以前は十分に対処されていなかった問題を解決したりできるようになるでしょう。そして、率直に申し上げて、このような影響を測定することは難しくなります。私は潜在的に削減された労働時間を測定していますが、その労働時間を実際に企業がどのように投資するのかは、企業次第です。
Tom Soderstrom:
興味深いですね。
生成 AI コーディングがコンプライアンスにどのように役立つのか
Tom Soderstrom:
私もそうだったように、あなたは厳しい規制が課される企業に身を置いており、コンプライアンスチェックを受けなければ、取り組みを進めることができませんね。つまり、金額よりも、チェックマークが必要となりますよね。
Ron Keesing 氏:
わかりました。
Tom Soderstrom:
多くの場合、コンプライアンスチェックはシステムが構築された後に行われます。そのまま待ち続けることもしばしばあります。この点について、ぜひご意見を伺いたいのですが、私は生成 AI とコーディングアシスタントがこの点で役立つと思っているのです。例えば、生成 AI を利用したソリューションのうち、27% が採用され、社内用、あるいはお客様向けに、本番に導入されました。しかし、セキュリティとコンプライアンスをコードに組み込むことができれば、コンプライアンスサイクルを短縮してチェックマークを獲得できるので、それはコスト削減になりますし、測定可能でもあります。これについてはどのようにお考えですか?
Ron Keesing 氏:
まったくそのとおりだと思います。そして、例えばコードのセキュリティを強化し、デリバリーを改善することが、実際に真のビジネス価値を生み出す方法の 1 つです。また、価値実現までの時間についての言及がありましたね。これは今、非常に興味深い分野です。なぜなら、ソフトウェア全般に言えることですが、作成したものはすべて 6 か月から 1 年以内に陳腐化してしまうからです。つまり、何かを 6 か月間棚に置いたままにしておくと、その価値の半分が失われてしまうのです。デリバリーのスピード、デプロイのスピードは非常に重要で、特にこの点に言及されたのは興味深いですね。
多くの人が、コード AI は座ってコードを記述するのに非常に役立つと考えています。実際、当社の経験では、DevOps ライフサイクル全体にわたってより広範囲に適用することで、最も価値が高まります。これらすべてのコンプライアンスチェックをスピードアップするにはどうすればよいのか、 すべての品質管理をスピードアップし、できるだけ早くデプロイにつなげるにはどうすればよいのか、というような問いに対応できます。 ですから、特にソフトウェアの観点から言えば、価値の多くは、デプロイにかかる時間やコンプライアンス達成までの時間の短縮にあるという点に強く同意します。間違いありません。
Tom Soderstrom:
コード AI の導入と利用状況はどのように測定しますか?
Ron Keesing 氏:
当社のデベロッパーがコード AI とコード AI アシスタントをどのように活用しているのかを観察すると、実に興味深いパターンが見えてきます。コード AI アシスタントがあれば、デベロッパーがコーディングにかける時間は短くなり、AI が代わりに処理してくれると思われがちですが、実際には大規模に展開してみると、コーディングアシスタントを活用することで、デベロッパーはコーディングに費やす時間が増えていることがわかりました。かける時間が実際に減っているのは、パッケージの作成、受け入れ基準の作成、単体テストの記述、ドキュメントの作成といった作業です。
そして、このような方法で支援するコーディングアシスタントを介入させることで...
Tom Soderstrom:
まさにそのとおりです。
Ron Keesing 氏:
...デベロッパーは突然、それを本当に受け入れるようになります。そして、それが少しでもコーディングスキルの向上に役立つのであれば、それはすばらしいことです。ソフトウェアデベロッパーからコーディングの部分を奪おうとすると、大きな抵抗にあいますが...
Tom Soderstrom:
そうですね。元ソフトウェアデベロッパーとして考えると、うれしくありませんよね。
Ron Keesing 氏:
まさにそのとおりです。そうではなく、コーディングアシスタントを、デベロッパーが行う、より広範な作業にどのように組み込んで、コードのコンテキスト化を支援できるのかを考えるのです。特に当社が属する業界では、ほとんどのデベロッパーは、数十年前のレガシーコードを含んでいる可能性のある巨大なレガシーコードベースを使用して作業しています。そして、これらのデベロッパーの時間の多くは、そのコードの機能を理解することに費やされています。ですから、コーディングアシスタントがレガシーコードベースでの作業の方向性を定め、実際に効果的に作業するのを支援できるなら、デベロッパーはこれを喜んで使用すると思いませんか? コーディングアシスタントは作業をより容易にしてくれ、やりたくない作業を取り除いてくれるのです。
Tom Soderstrom:
そのとおりだと思います。興味深い点の一つは、ここで技術的負債について触れられていることです。技術的負債は現実のものです。資金調達は非常に困難です。では、どうすればそれを解消できるのでしょうか? 私は AI が役立つと思います。クラウドでは Infrastructure as Code を使用できます。これは、サーバーをどのようにスピンアウトするのかを文書化できることを意味します。それにより、このグループが保守し続けなければならなかったであろう古いサーバーを、データセンターから排除できるのです。
これがハードウェア面の話です。そしてソフトウェア面では、古いコードが問題となります。それを取り除くにはどうすればよいでしょうか? デベロッパーは他の作業だけを行いたいと考えることも多いでしょうが、古いコードを取り除く作業は欠かせません。生成 AI とコーディングアシスタントは、おっしゃるとおり、それらのコードを理解し、場合によっては翻訳して移行するのに役立ちます。そうすれば、コードをクラウドに移行でき、デベロッパーは他の作業に取りかかることができます。それが理想的です。これについてどのようにお考えですか? 可能だと思いますか?
Ron Keesing 氏:
間違いなく、一定の範囲では可能です。少なくとも現状では万能薬ではありませんが、AI がすばらしい成果を上げてくれている実例があります。Infrastructure as Code への言及がありましたね。当社には Infrastructure as Code に長けた人々がいて、私たちは皆、これらの人々を尊敬し、高く評価しています。ほとんどの人は詳しくありませんから。実際、よくできたコーディングアシスタントは、エキスパートではない人々でも Infrastructure as Code の作業の多くを行えるようにするのに非常に役立つことがわかっています。
例えば、社内でコーディングアシスタントが最も多く導入されている部門の 1 つは、CIO 部門です。そこでは、生成 AI コーディングアシスタントを使用して、実際に多くの新しい Infrastructure as Code を記述しています。まさにあなたがおっしゃるとおりです。 これにより、いくつかの技術的負債に対応し、すべてのシステムを手動で設定する時間を減らすことができます。また、クラウドに移行し、より最新の方法で運用して、問題のより重要な部分に取り組むための余力を確保できます。これらは IT システムの運用方法を真にモダナイズおよび変革するものであり、私たちはより効率的に作業できるようになります。
Tom Soderstrom:
すばらしい事例ですね。AI、あるいは、もし使用しているのであれば特に生成 AI が、既にビジネスに利益をもたらしている事例は他に何かありますか?
Ron Keesing 氏:
すばらしい質問ですね。というのは、私たちは非常に嬉しく思っているからです。私たちは皆、ChatGPT や他の生成 AI システムをいろいろ試してきましたが、それらを使えばすばらしい成果を上げられるはずだというのは直感的にわかりますよね? しかし、実際にビジネス価値を継続的に生み出す事例を見つけるのは、はるかに難しいのです。
私がビジネス価値を見出している分野の 1 つは、一般的な IT サービスのプロビジョニングプロセスの変革です。これは従来、非常に手作業が多いプロセスです。先ほども申し上げたように、Leidos は米国政府の大規模なネットワークを管理しており、巨大なヘルプデスクと従来型のサポートインフラストラクチャを備えています。そして実際、ほとんどの人々は IT システムが故障した際に誰かに電話する手間をかけたくはないと考えています。
Tom Soderstrom:
そうですね。
Ron Keesing 氏:
まず第一に、IT システムが自己修復して問題解決してくれることを望んでいます。あるいは、自ら対応しなければならない場合でも、チャットベースのアシスタントのようなものが即座に問題を解決してくれることを望んでいます。
当社は、ユーザーの満足度をはるかに高めるような態様でカスタマイズされた IT サービスサポートを提供する、生成 AI チャットボットの活用で大きな成功を収めています。私は週に少なくとも 2、3 回は IT サポートエージェントに問い合わせています。Leidos 社内で使用している非常に強力で大きな成功を収めているツールがあり、現在、多くの政府機関のお客様のためにロールアウトしているところです。
Ron Keesing 氏:
さまざまな意味で最も変革を期待しているのは、生成 AI によるデジタルエンジニアリング、設計、システムエンジニアリングの分野です。この変革で、従来はほとんどが手作業で行われていたプロセスの多くを処理できるようになります。しかし、そこからどれほどの成果が得られるかは、まだ結論が出ていないと思います。
Tom Soderstrom:
なるほど。今日ではスケールアップが課題となることが多いですが、規模が大きくなればそれだけ困難を伴いますからね。また、非常に複雑なシステムエンジニアリングタスクなどに取り組む場合には、多くのことを追跡する必要があります。そして、AI は大量の詳細を追跡するのが得意です。
AI ガバナンスの未来に関する Keesing 氏のアドバイス
Tom Soderstrom:
AI の未来はどのようになるとお考えですか?
Ron Keesing 氏:
それでは、今度は私が少し物議を醸す質問をさせてください。
Tom Soderstrom:
もちろん。ぜひお願いします。
Ron Keesing 氏:
この分野にとって、今は非常に興味深い時代です。なぜなら、今日の私たちの働き方を考えてみると、あらゆるプロセスが、人間によるテキストの生成と消費という前提に基づいているからです。つまり、人間がテキストを生成し、人間がテキストを消費するのです。さて、私たちは AI をますます活用し、AI がそのようなテキストの究極の生成者となる時代に入りつつあります。そして最終的には、その反対側で、そのようなテキストを AI がますます多く消費するようになるのです。
当社の業務において、これが具体的にどのようなことを意味するのか、例を挙げて見てみましょう。当社は、米国政府から仕事の依頼を受けるための提案書を書きます。ご想像のとおり、当社も他の人々と同じように AI を使用しています。当社は、AI を活用して提案書作成プロセスを効率化し、改善する方法を模索しています。もちろん、おっしゃるとおり、人間が最初の草稿を書き、それを繰り返し修正していくことになりますが、AI は今後、この分野でますます優れた能力を発揮していくでしょう。一方で、当社のお客様は、ますます多くの提案書を受け取りながら、対応に割くことのできる人員がより少なくなっている中で、どのように AI を活用してこれらの提案書を読み解いていくのかを検討し始めています。
Tom Soderstrom:
非常に興味深いですね。
Ron Keesing 氏:
そうでしょう?
Tom Soderstrom:
はい。
Ron Keesing 氏:
そこで、極端な例を考えてみましょう。私たちは一連の知識の塊 (ナレッジチャンク) を作り、それを AI システムに入力すると、そのシステムがすばらしい提案書を生成します。お客様側では、当社の提案書を読み取ってナレッジチャンクを抽出する AI システムを使用し、そのナレッジチャンクを何らかの方法で比較して、誰を採用するかを決定するでしょう。そして、当社とお客様は両方とも、AI システムを使用したおかげで生産性が大きく向上したと評価するでしょう。しかし実際には、これらの AI システム自体は本質的な価値を生み出したわけではありません。というのも、テキストとしての符号化や復号化だけが行われているに過ぎず、それが実際に活用されているわけではないからです。
実は非常に興味深いのは、私たちが作り上げてきたこれらのワークフローが、組織内だけでなく組織間においても採用され、テキストが知識伝達の手段として使用されているという点です。私たちは AI を活用してこのやり方を変革することに大きな期待を抱いていますが、実際に本当の意味での価値を生み出すには、まずそのプロセスがどのように機能しているのかを見直し、テキストが、私たちが今日考えているような情報交換のための手段ではなくなるかもしれないことを理解する必要があります。
Tom Soderstrom:
とても興味深いですね。あなたも私も、これまで数多くの大規模な提案書を作成してきましたが、実際に提出された内容は当初作成した内容のほんの一部に過ぎません。つまり、多くの時間を無駄にしてきたということです。
Ron Keesing 氏:
そうですね。
Tom Soderstrom:
その断片を再利用したりできるでしょうか? AI が手助けしてくれる可能性もありますね。非常に興味深い点です。
Ron Keesing 氏:
現状のシステムではまだ遠い未来の話ですが、実際のところ、私は既に人々が AI に指示して箇条書きを作成させ、それに基づいて E メールを作成させたり、さらに相手側でも AI に指示して、その E メールを読ませて要点にまとめさせたりする、という例を目にしています。つまり、このようなワークフローは既に採用され始めているのです。そして、今後ますます、私たちは「本当はどのように働きたいのか」を自問自答する必要があるでしょう。
例えば、入札者を選ぶときにそれがどのように機能する可能性があるのかを考えると、もしかすると、口頭でのプレゼンテーションを行い、アイデアを提示する人と実際に会うシステムに移行するようになるかもしれません。500 ページに及ぶ長大な提案書は、もはや技術的にそれほど意味をなさないからです。
あなたが今おっしゃったことで、多くのスタートアップが「なるほど、それなら自分も書ける」と思ったでしょう。 それがこれから起こることだと思います。まだ初期段階です。とてもエキサイティングな時期です。視聴者の皆さんがこれを見て、Chief AI Officer になりたいと考えているかもしれません。どのようなアドバイスを送りますか? Chief AI Officer になりたい人に 3 つアドバイスするとすれば、どのようなアドバイスをするでしょうか? もっと多くても構いません。
Ron Keesing 氏:
それでは、現状を踏まえてアドバイスしましょう。
Tom Soderstrom:
そうですね。
Ron Keesing 氏:
今、AI の世界で組織を前進させたいと考えているなら、最初にお伝えしたいアドバイスは、データに真摯に注力することです。非常に多くの組織は AI を活用して何を達成できるかについて大きな期待を抱いていますが、それらの組織のデータは、いわゆる AI 対応の状態ではありません。そのため、解決したい課題を実際に AI で解決する機会を得られないでしょう。
データを改善しようとする試みは、10 年にも及ぶ長い取り組み、すなわち、成果の出ない苦行に変わってしまうことがよくあります。そのため、その方法には非常に注意を払う必要があります。つまり、AI が働き方を変革する可能性を最大限に引き出すような方法で、自社のコアビジネスプラクティスを体現するデータ製品の AI 基盤レイヤーをどのように構築するのかを考える必要があります。
2 つ目のアドバイスは、AI と人とのパートナーシップについて真剣に考えることです。AI をめぐる議論の多くは、「AI は人間の仕事を奪うのか? 人間は不要になるのか?」という議論に終始しがちです。
私たちは皆、この言葉を耳にし、そして実際に目にしています。そして、あなたや私と同じくらい長く AI に携わってきた人間なら誰でも、成功する AI プロジェクトは、ほとんどの場合、人間の得意分野と機械の得意分野を融合させることで成り立っていることを知っています。そのため、真に相乗的なパートナーシップを築き、AI の仕組みを人間と AI システムの相乗的なパートナーシップとして捉えることが成功の鍵なのです。
AI システムの仕組みを実際に改善するために得られる最も重要なデータの多くは、人間が実際に AI システムとインタラクションすることによって得られます。ですから、人間と機械のパートナーシップを中核的な構成要素として捉えることは、独自の AI ソリューションの構築方法を考えているすべての人に強くお勧めしたいものです。
3 つ目は、いわばガバナンスの立場に立つことです。私が知る多くの組織は、AI をどのように統制するか、また、革新性とガバナンスを両立させるにはどうすればよいかという課題に取り組み始めています。 私は、このバランスポイントを見つけるには、AI リスクと、その発生原因および管理方法をしっかりと理解することが重要であると考えています。
ガバナンスの注意やリソースを、リスクの低い AI ユースケースに集中させてはいけません。人々に実験をさせ、迅速に取り組めるようにして、何がうまくいくかを見極めさせ、常に限られたガバナンスリソースを、ビジネスリスクをもたらす現実的な問題に集中させましょう。さらに、AI ガバナンスの実践をより広範なリスク管理の実践と連携させ、実際のビジネス原則に基づいたものにしましょう。
Tom Soderstrom:
とてもすばらしいですね。Amazon の「One-Way Door」の意思決定と「Two-Way Door」の意思決定という原則についてお聞きになったことはありますか?
Ron Keesing 氏:
いいえ。正直なところ、存じ上げません。
Tom Soderstrom:
「One-Way Door」の意思決定は、最高レベルのエグゼクティブだけが下せるものです。当社が新しいリージョンを設けるには、数十億 USD の費用がかかります。大きな決断です。ほとんどの意思決定は「Two-Way Door」の意思決定です。ドアをくぐっても、すぐに戻ってくることができます。あなたがおっしゃっていることはまさにこれに当てはまります。リスクの専門家に大きなことを任せ、人々には低リスクの実験を任せるということですよね。ほとんどのことにおいてリスクを下げることができれば、非常に迅速に前進することができますから。
Ron Keesing 氏:
はい。まさにそのとおりです。
Tom Soderstrom:
すばらしいアドバイスだと思います。この非常に興味深い会話に心から感謝します。今後も多くの機会を持てることを楽しみにしています。そして、これからその成功の形がどのようになっていくのかを見届けるのも楽しみです。まだ初期段階ですから。
Ron Keesing 氏:
間違いありません。
Tom Soderstrom:
もし皆さんが AI Officer で、Chief AI Officer のような立場での生活がどのようなものかを知りたい場合は、Ron に連絡してみてはいかがでしょうか。
Ron Keesing 氏:
はい。
Tom Soderstrom:
どうもありがとうございました。
Ron Keesing 氏:
Tom、ありがとう。
当社の活動の多くはデータに依拠しており、膨大な量のデータを取り扱う大規模で複雑なシステムの構築にかかっています。そして、そのような種類のミッションにとって、AI は未来なのです。
Leidos、Chief AI Officer、Ron Keesing 氏