エイベックス、AWS Elemental Media Services で Da-iCE のライブストリーミングの安定配信を実現

1988 年に輸入レコードの卸売業者として日本で設立されたエイベックスは、レコードレーベル、音楽ライブ、アニメーション、映画製作、デジタルビジネスなどの事業を展開する企業に成長。現在は、革新的でユニークなエンターテインメント体験をアーティストのファンに提供しています。

2022 年に行った Da-iCE のコンサートツアーでは、ライブパフォーマンスに続いてバックステージでのトークショーを開催しました。コロナ禍のため会場に足を運べない多くのファンにもライブ体験を提供できないか検討したエイベックスは、AWS のサービスを使って Da-iCE のパフォーマンスをファンと共有するための動画配信アプリケーション『Da-iCE CUBE』を構築。同社は以前から AWS の配信サービスを全社的に利用しており、Amazon Simple Storage Service（Amazon S3）などの AWS サービスも活用していました。

Da-iCE の配信ソリューションには当初、他のベンダーや自社内のストリーミング技術を使うことを検討。しかし最終的には、ツアー初日のコンサートまでにすべてを完成させるために AWS を採用しました。「AWS でなければ、期限までにすべてを準備することはできなかったでしょう。AWS サービスを選択した最大のメリットは、そこにあります」と、エイベックスのチーフプロデューサー 三上浩由氏は語ります。AWS のソリューションは開発スピードに加えて、膨大なトラフィックにも対応できるサービスの安定性が魅力だったといいます。以前使っていたソリューションでは、今回の公演に間に合わせることは不可能でした。

同社はライブストリーミングに向け、AWS の複数のメディアサービスを使用してデジタルコンテンツを作成し、ライブ／オンデマンド型ビデオワークフローを構築。これらのメディアサービスを高いパフォーマンス、セキュリティ、開発者の利便性に対応するコンテンツ配信ネットワーク（CDN）サービス Amazon CloudFront と共に使用することで、Da-iCE の公演を時間通り、アプリケーションや映画館でライブビューイングを観ているファンに配信しました。映画館へのストリーミング配信を選択したのは、コロナ禍でも、より多くのファンにイベントを観てもらえるようにするためです。

ファンへのライブストリーミング方法として、エイベックスはまずコンサートのライブビデオフィードを取り込み、トランスコードにはテレビやインターネット接続機器に配信する高品質なストリームを作成する放送用ライブビデオ処理サービス AWS Elemental MediaLive を使用しました。「これによりエンコーディングの細部まで調整し、アプリケーションレベルで最高品質を追求できました」（三上氏）

また、動画コンテンツの準備と保護を行い、さまざまな接続デバイスに配信する AWS Elemental MediaPackage も使用。今回はコンサートをアプリケーションと映画館の両方にライブストリーミングする必要があったため、複数のストリーミングフォーマット用にオリジナル動画をパッケージ化できる AWS Elemental MediaPackage は必須でした。複数バージョンのライブストリームのグローバル配信には Amazon CloudFront を使用し、複数のデバイスで再生できるように動画を準備しました。

エイベックスは数か月にわたってアプリやライブストリーミング機能の検証を実施し、パブリックビューイング環境を数日で容易に構築できることを確認。コンサートのスケジュールに合わせ、AWS を活用して開発期間を短縮しました。

Da-iCE のライブパフォーマンスでも、アフタートークショーのバックステージでも、ライブストリーミングの中断は発生しませんでした。「AWS を使った配信ソリューションの安定性は、当社にとってもファンの皆様にとっても大きなメリットでした」と三上氏は語ります。Da-iCE や他のアーティストからファンエンゲージメントについて好意的な反応が得られているため、エイベックスは所属アーティストのライブストリーミングを今後も計画しています。さらに、同社に寄せられたファンの声によると、ライブストリームの質が高かったため、多くのファンが今後のコンサートの配信チケットもリピート購入しているといいます。

ライブストリームの範囲が広いため、エイベックスのソリューションにはスケーラビリティも重要でした。会員とチケット購入者限定のストリーミング配信には認証が必要でしたが、スムーズに導入できたといいます。「AWS の活用によってデータの高負荷に対応できるうえ、他の機能を使用した認証も含め、スケーラビリティの点でも非常にうまく機能しています」（三上氏）

エイベックスは、コストの最適化も進めています。ライブストリームは不定期に行うものであり、常に料金が発生するソリューションは不要でした。エイベックスがソリューションをテストした当時は常時稼動型のサービスでしたが、導入の際にテスト情報を使って使用スケジュールを調整しました。現在はソリューションの稼働頻度を減らして、コストを削減。つまり、サービスを利用した分だけ料金を支払う従量課金で AWS 環境を運用しています。さらに、Amazon Elastic Compute Cloud（Amazon EC2）オンデマンド料金と比較して極めて低コストな Amazon EC2 リザーブドインスタンスを利用することで、さらなるコスト削減を見込んでいます。「コンサートやライブストリームは毎日行うものではないため、必要なときだけ AWS のサービスを使えるようにして、コストを最適化できました」（三上氏）

今回構築した配信ソリューションは Da-iCE 専用でしたが、彼らとファンの間に活発で親密なコミュニケーションが生まれたことから、汎用的なインサイトも得られました。エイベックスは今回のソリューション構築で得られた知見を、他のライブストリーミングにも応用していく計画です。さらに、AWS を活用したライブストリーム機能をさらに改善し、アップデートしていく方針を固めています。ライブストリーミングで新しい体験を生み出したいと考えており、双方向型のビデオ体験をステージ上やグローバル対応のアプリで構築するマネージド型ライブストリーミングソリューション Amazon Interactive Video Service（Amazon IVS）の利用も視野に入れています。

「Da-iCE のプロジェクトは厳しいスケジュールで進めなければなりませんでしたが、AWS のサービスとベストプラクティスは、当社が求めていたソリューションに最適でした。効率性を向上し、期限にも間に合い、その後のオペレーションも含めて非常に安定したビデオ配信を実現できました」（三上氏）