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セキュリティアップデートと他のユースケースのサンプルで Amazon SageMaker 地理空間機能の一般提供を開始

AWS re:Invent 2022 では、Amazon SageMaker 地理空間機能プレビューしました。この機能を使用することで、データサイエンティストや機械学習 (ML) エンジニアは、地理空間データを使用して ML モデルを構築、トレーニング、デプロイできます。Amazon SageMaker による地理空間 ML は、すぐに利用できる地理空間データ、専用の処理オペレーション、オープンソースライブラリ、事前トレーニング済みの ML モデル、Amazon SageMaker 地理空間機能を備えた組み込みの視覚化ツールへのアクセスをサポートします。

プレビュー中、お客様から多くの関心とすばらしいフィードバックをお寄せいただきました。今日では、Amazon SageMaker 地理空間機能は、新しいセキュリティアップデートと追加のサンプルユースケースで一般的に利用できるようになっています。

SageMaker Studio による地理空間 ML 機能のご紹介
使用を開始するには、クイックセットアップを使用して米国西部 (オレゴン) リージョンで Amazon SageMaker Studio を起動します。Studio で新規ユーザーを作成するときは、必ずデフォルトの Jupyter Lab 3 バージョンを使用してください。これで、SageMaker Studio のホームページに移動できるようになりました。その後、[Data] (データ) メニューを選択し、[Geospatial] (地理空間) をクリックします。

Amazon SageMaker の 3 つの主要な地理空間機能の概要を次に示します。

  • 地球観測ジョブ – 予測を行い、有用なインサイトを得るために、専用の地理空間オペレーションや事前トレーニング済みの ML モデルを使用して、衛星画像データを取得、変換、視覚化します。
  • ベクターエンリッチメントジョブ – 地理座標を読み取り可能な住所に変換するなどの操作でデータを充実させます。
  • 地図の視覚化 – CSV、JSON、または GeoJSON ファイルからアップロードされた衛星画像または地図データを視覚化します。

SageMaker Studio ノートブックですべての地球観測ジョブ (EOJ) を作成し、専用の地理空間オペレーションを使用して衛星データを処理できます。SageMaker Studio ノートブックによってサポートされている専用の地理空間オペレーションのリストを次に示します。

  • バンドスタッキング – 複数のスペクトル特性を組み合わせて 1 つの画像を作成します。
  • クラウドマスキング – 雲のピクセルと雲のないピクセルを識別して、より鮮明にした正確な衛星画像を取得します。
  • 雲の除去 – 雲を含むピクセルを衛星画像から削除します。
  • ジオモザイク – 複数の画像を組み合わせて忠実度を高めます。
  • 土地被覆セグメンテーション – 衛星画像内の植生や水などの土地被覆タイプを特定します。
  • リサンプリング – 画像をさまざまな解像度に拡大縮小します。
  • スペクトルインデックス – 対象となる特徴が豊富にあることを示すスペクトルバンドの組み合わせを取得します。
  • 時系列統計 – 同じ地域の複数の GeoTIFF の統計を時系列で計算します。
  • ゾーン統計 – ユーザーが定義した地域の統計を計算します。

ベクターエンリッチメントジョブ (VEJ) は、リバースジオコーディングやマップマッチングに特化したオペレーションを通じて位置データを充実させます。VEJ を実行するには SageMaker Studio ノートブックを使用する必要がありますが、ユーザーインターフェイスを使用して作成したすべてのジョブを表示できます。ノートブックでビジュアライゼーションを使用するには、まず Amazon S3 バケットに出力をエクスポートする必要があります。

  • リバースジオコーディング – 座標 (緯度と経度) を人間が読める住所に変換します。
  • マップマッチング – 不正確な GPS 座標を道路セグメントにスナップします。

マップビジュアライゼーションを使用すると、地理空間データ、EOJ または VEJ ジョブへの入力、Amazon Simple Storage Service (Amazon S3) バケットからエクスポートされた出力を視覚化できます。

セキュリティアップデート
GA では、AWS Key Management Service (AWS KMS) (カスタマーマネージド AWS KMS キーサポート用) と、Amazon Virtual Private Cloud (Amazon VPC) (お客様の Amazon VPC 環境での地理空間オペレーション用) の 2 つの主要なセキュリティアップデートを提供しています。

AWS KMS カスタマーマネージドキーを使用すると、お客様が独自のキーを使用して地理空間ワークロードを暗号化できるため、柔軟性が向上し、コントロールが強化されます。

KmsKeyId を使用して、StartEarthObservationJob および StartVectorEnrichmentJob で独自のキーをオプションのパラメータとして指定できます。お客様が KmsKeyId を提供しない場合、サービスが所有するキーを使用してお客様のコンテンツが暗号化されます。詳細については、AWS ドキュメントの「SageMaker geospatial capabilities AWS KMS Support」(SageMaker 地理空間機能 AWS KMS サポート) をご覧ください。

Amazon VPC を使用すると、ネットワーク環境を完全に制御でき、AWS の地理空間ワークロードにより安全に接続できます。SageMaker 地理空間オペレーションには Amazon VPC 環境で SageMaker Studio または Notebook を使用し、SageMaker 地理空間オペレーションでインターフェイス VPC エンドポイントを通じて SageMaker 地理空間 API オペレーションを実行できます。

Amazon VPC サポートの利用を開始するには、Amazon VPC on SageMaker Studio Domain を設定し、Amazon VPC コンソールで VPC に SageMaker 地理空間 VPC エンドポイントを作成します。サービス名を com.amazonaws.us-west-2.sagemaker-geospatial として選択し、VPC エンドポイントを作成する VPC を選択します。

EOJ および VEJ オペレーションにおける入力または出力に使用されるすべての Amazon S3 リソースで、インターネットアクセスが有効になっている必要があります。インターネット経由でこれらの Amazon S3 リソースに直接アクセスできない場合は、対応する S3 バケットポリシーを変更することで、地理空間 VPC エンドポイント ID によるアクセス権を SageMaker に付与できます。詳細については、AWS ドキュメントの「SageMaker geospatial capabilities Amazon VPC Support」(SageMaker 地理空間機能 Amazon VPC サポート) をご覧ください。

地理空間 ML のユースケースの例
さまざまな業界のお客様が Amazon SageMaker 地理空間機能を実際のアプリケーションに使用しています。

収穫量を最大化し、食料の安全を最大限に確保する
デジタル農業とは、高度な分析と機械学習の利用を通じて、農家が農業における作物生産を最適化できるようにデジタルソリューションを適用することをいいます。デジタル農業アプリケーションでは、農家が畑を構えている地域の衛星画像などの地理空間データを扱う必要があります。

SageMaker を使用すると、土地被覆分類用の事前トレーニング済みモデルを通じて、衛星画像内の農地の境界を識別できます。Xarvio が Amazon SageMaker Geospatial を使用してデジタル農業向けに空間データのパイプラインを高速化した方法については、AWS 機械学習ブログをご覧ください。エンドツーエンドのデジタルファーミングのサンプルノートブックは、GitHub リポジトリで入手できます。

被害の評価
自然災害の頻度と深刻さが増すにつれて、意思決定者や救急隊員に迅速かつ正確な被害の評価を提供することが重要です。地理空間画像を使用して自然災害による被害を予測したり、自然災害直後の地理空間データを使用して建物、道路、その他の重要なインフラへの被害を迅速に特定したりできます。

サンプルノートブックを使用することで、2022 年 10 月中旬にオーストラリアのロチェスターで発生した洪水に基づいて、自然災害による被害をトレーニング、デプロイ、予測できます。トレーニング済み ML モデルへの入力として、災害前後の画像を使用します。ロチェスターの洪水のセグメンテーションマスクの結果を次の図に示します。この図から、洪水が発生した地域において、被害が発生する可能性のある場所をモデルが特定したことがわかります。

地理空間セグメンテーションモデルをトレーニングしてデプロイし、GitHub リポジトリを通じてマルチテンポラル Sentinel-2 衛星データを使用して山火事による被害を評価できます。この例の対象地域は、2021 年のディキシーファイアの影響を受けた北カリフォルニアの地域です。

気候変動をモニタリングする
地球の気候変動は、地球温暖化による干ばつのリスクを高めます。米国最大の貯水湖であるミード湖の例では、気候変動による海岸線の縮小をモニタリングするために、SageMaker 地理空間機能を使用してデータを取得し、分析を実行し、変化を視覚化する方法をご覧いただけます。

ミード湖の表面積のアニメーション

この例のノートブックコードは GitHub リポジトリでご覧いただけます。

小売需要を予測する
新しいノートブックの例は、SageMaker 地理空間機能を使用して、ベクトルベースのマップマッチングオペレーションを実行し、結果を視覚化する方法を示しています。マップマッチングにより、ノイズの多い GPS 座標を道路セグメントにスナップできます。Amazon SageMaker 地理空間機能を使用すると、マップマッチングのために VEJ を実行できます。このタイプのジョブは、ルート情報 (GPS 測定の経度、緯度、タイムスタンプなど) を含む CSV ファイルを入力として受け取り、予測されたルートを含む GeoJSON ファイルを生成します。

持続可能な都市開発をサポートする
当社のお客様である Arup は、より優れたデザインを実現し、持続可能な成果をサポートするために、機械学習などのデジタルテクノロジーを使用して、熱が都市部に及ぼす影響や、地域の気温に影響を及ぼす要因を調査しています。都市部のヒートアイランド現象とそれに伴うリスクや不快感は、都市が今日直面している最大の課題の 1 つです。

Arup は Amazon SageMaker 地理空間機能を使用して、地球観測データに基づいて都市部の気温上昇の要因を特定および測定しました。このことは、クライアントからの相談に対応する同社の能力を大幅に強化しました。これにより、エンジニアリングチームは、より大きなデータセットについて、より多くの量、種類、分析結果にアクセスできるようになり、以前は不可能だった分析を実行できるようになりました。詳細については、AWS のお客様事例の「Facilitating Sustainable City Design Using Amazon SageMaker with Arup」(Amazon SageMaker と Arup による持続可能な都市デザインの促進) をご覧ください。

今すぐご利用いただけます
Amazon SageMaker 地理空間機能は、米国西部 (オレゴン) リージョンで一般提供されるようになりました。AWS 無料利用枠の一環として、SageMaker 地理空間機能の使用を無料で開始できます。無料利用枠は 30 日間有効で、ml.geospatial.interactive の 10 コンピューティング時間と最大 10 GB のストレージが無料で含まれており、月額 150 USD のユーザー料金もかかりません。

30 日間の無料試用期間の終了後、または上記の無料利用枠の上限を超えた場合は、料金ページに記載されているコンポーネントの料金がかかります。

詳細については、Amazon SageMaker 地理空間機能およびデベロッパーガイドをご覧ください。ぜひお試しいただき、AWS re:Post for Amazon SageMaker 宛てに、または通常の AWS サポートの連絡先を通じて、フィードバックをお寄せください。

Channy

原文はこちらです。