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Amazon Connect API を利用した自動的なエージェントの対応品質の評価
はじめに
コンタクトセンターの管理者は、エージェントと顧客のやりとりの改善に向け、エージェントのコーチングの必要性の正確な特定という課題をよく抱えています。この課題に対処するため、Amazon Connect では一連のパフォーマンス評価機能を提供しています。これらの機能により、フォーム作成と評価プロセスの両方を自動化して、エージェントの評価に必要な手動プロセスを削減できます。さらに、Amazon Connect には技術的な評価機能のパブリック API も提供しており、フォーム作成と評価プロセスの両方を自動化できるため、エージェントの評価に必要な手動プロセスをさらに削減できます。
これらのAPIを使用することで、エージェントのパフォーマンスについて、他の側面を反映する外部のデータをエージェント評価プロセスに組み込むことができ、 Amazon Connect の外部にあるシステムから取得した情報でパフォーマンスに関する洞察を補うことができます。このブログ投稿では、これらの API の使用方法について説明します。
概要
この記事では、次のシナリオを使用して、API (アプリケーションプログラミングインターフェイス) の使用方法を示します。
- AnyCompany は自動車保険会社で、コンタクトセンターに1000人以上のエージェントを擁し、保険サービスに関わる顧客からの通話を日常的に処理しています。同社では、エージェントに会社のポリシーに従い、カスタマーサービスの通話中、前向きな感情を保つことを求めています
- そのため、コンタクトセンターのスーパーバイザーは、エージェントが会社のポリシーを遵守していることを確認するために、エージェントのパフォーマンスを定期的に評価する必要があります。エージェントのパフォーマンスを評価するには、スーパーバイザーはエージェントと顧客の電話を聞いたり、チャットの記録を読んだりした後、電子フォームを使って電話やチャットでのやり取り中のエージェントのパフォーマンスに関して回答する必要があります
- ただし、コール数、エージェントの数が多く、実施される評価の数が少なすぎて、有意義な洞察を得たり、エージェントのパフォーマンスを向上させたりすることができていません。そのため、AnyCompany は、エージェントを自動的に評価し、スーパーバイザーが通話を聞いたり、通話の記録を読んだりしなくても、評価が確認できるシステムが必要です
このブログ記事では、電子評価フォームをプログラムで作成し、Amazon Connect が最近リリースした API を使用してフォームに対してエージェントのパフォーマンスを評価するソリューションについて説明します。以下の図と手順は、この記事が従うワークフローを示しています (図 1 、図 2)。
ステップ 1: API を活用して評価フォームを作成し、 Amazon Connect に保存します。このワークフローは上の図 1 に示されています。このワークフローにおける顧客とのやりとりを以下の図 2 に示します。
ステップ 2: 発信者(顧客)が既存の自動車保険のサービスを受けるために電話をかけてきます
ステップ 3: 発信者がエージェントと話し、やり取りが完了してエージェントが電話を切ると、発信者は通話後のアンケートオプションを選択し、アンケートに回答します。回答は問い合わせ属性としてキャプチャされ、その通話の問い合わせレコードに保存されます
ステップ 4: Amazon Connect が、この通話のトランスクリプトを S3 バケットに自動的にアップロードします
ステップ 5: トランスクリプトファイルがアップロードされると Lambda 関数がトリガーされます
ステップ 6: Lambda 関数が問い合わせ属性からアンケートのスコアを抽出します。また、トランスクリプトファイルから感情スコアを抽出します
ステップ 7.1: Lambda 関数が評価フォームの質問を、アンケートの質問への回答と呼び出しのセンチメントスコアで更新します。
ステップ 7.2: Lambda 関数がこの通話の評価を送信します
前提条件
この手順では、以下について理解、アクセスできることを前提としています。
- AWS アカウント
- Amazon Connect インスタンス
- Amazon Connect インスタンスで取得済みの電話番号
- AWS IAM によるポリシーとロールの作成
- Amazon S3 でバケットを作成する
- Stack を実行するための AWS CloudFormation
- Amazon Connect Contact Lens
ソリューションのデプロイ
注:この投稿では、ネストされた CloudFormation テンプレート (CFT) のセットを使用しています。メインの CFT は、他の 3 つのネストされた CFT を自動的に呼び出してデプロイを完了します。
手順の概要 : ソリューションのデプロイは、次の 2 つの手順で構成されます。
- ここから CloudFormation スタックをデプロイします
- 機能の確認 : テスト通話を行い、結果を確認します
CloudFormation スタックのデプロイ
ステップ 1: AWS マネジメントコンソールにログインします
ステップ 2: CloudFormation スタックをデプロイします
ステップ 2.1: 手順の概要に記載の 「ここから CloudFormation スタックをデプロイ」をクリックします
ステップ 2.2: 図 3 のように一意なスタック名を入力します ( 例 : create-ef-assets)
パラメータ “AmazonConnectInstanceArn” と “BasicQueueArn” は Amazon Connect インスタンスからコピーする必要があります。以下の手順では、これらを取得する方法について説明します。
ステップ 2.3: AmazonConnectInstanceARN: Amazon Connect インスタンスの ARN を取得する方法については、こちらを参照してください。ARN をコピーし、下の図 4 に示すように CloudFormation のフォームに貼り付けます。
ステップ 2.4: BasicQueueARN: Amazon Connect コンソールからキューの ARN を取得する方法については、以下の図 5 を参照してください。Amazon Connect でキューを設定していない場合は、キューの設定方法についてこちらを参照してください。Amazon Connect インスタンスが作成されると、“Basic Queue“ がデフォルトで作成されます。このブログ用にインストールしたサンプルフローでは、このキューを使用して API の使用方法を説明しています。キューを設定したら、キューの ARN をコピーして、ステップ 2.3 と同様に CloudFormation フォームの BasicQueueArn に貼り付けます。
ステップ 2.5: S3BucketName: 通話録音が保存されている S3 バケットの名前。次に示すようにインスタンスページに移動します。通話録音を保存する S3 バケットは、「データストレージ」→「通話記録」の下に表示されます。 (下の図 6 を参照)このフィールドに必要なのはバケット名だけです。例 – amazon-connect-beXXXXXXXXXX (下の図 6 を参照してください。最初の「/」より前にあるものはすべてS3バケット名の一部であり、 CloudFormation テンプレートへの入力として指定する必要があります)
図 7 のように CloudFormation テンプレートに貼り付けます。
ステップ 3: 次のページで “次へ” をクリックし、もう一度 “次へ” をクリックします
ステップ 4: 次のページの一番下までスクロールする
ステップ 4.1:「AWS CloudFormation によって IAM リソースがカスタム名で作成される場合があることを承認します。」のチェックボックスをオンにします。
ステップ 4.2:「AWS CloudFormation によって、次の機能が要求される場合があることを承認します: CAPABILITY_AUTO_EXPAND」のチェックボックスをオンにします。
ステップ 4.3: “スタックの作成“ をクリックします。
ステップ 5: AWS CloudFormation テンプレートがすべてのリソースを作成するのに 5 ~ 10 分かかる場合があります。完了すると、ステータスが CREATE_COMPLETE と表示されます。
注意:
これはネストされた CloudFormation テンプレートです。メインスタックは他の 3 つのスタックに依存しています。以下の図 8 は、これらの各スタックによって作成されるリソースを示しています。必要なのはベーススタック (install_ef_api_assets.yml) を実行することだけです。他のスタックはベーススタックによって自動的に呼び出されます。
ステップ 6: このブログ記事は Amazon Connect Contact Lens を使用しています。Amazon Connect インスタンスにログインし、 Contact Lens が有効になっていることを確認します(下の図 9 を参照)
機能のテスト
このセクションでは、CloudFormation テンプレートによってデプロイされたアセットの概要を説明し、その結果をテスト、検証します。
CloudFormation テンプレートによってデプロイされたアセット
アセット 1: 評価フォーム:
ステップ 1: コンソール内の評価フォームに移動し、CloudFormation テンプレートによって作成されたフォームを探します (下記の図 10 と図 11 を参照)
ステップ 2: “バージョン 1” をクリックして評価フォームを開き、作成された質問を確認します (下の図 12 を参照)
アセット 2: コンタクトフロー
「フロー」セクションに移動し、テンプレートによって 2 つのフローが作成されたことを確認します (図 13)
結果のテストと検証
ソリューションをテストする方法は以下の通りです。
ステップ 1: リンク先の手順で、BasicContactFlow で終わる問い合わせフローに電話番号を割り当てます
ステップ 2: ユーザーを作成し、リンク先の手順で Basic Routing Profile に割り当てます
ステップ 3: リンク先の手順で、エージェントとしてコンタクトコントロールパネルにログインし、ステータスが Available であることを確認します
ステップ4: 上記のステップ 1 の電話番号に顧客として電話をかけ、CCP 経由でエージェントとして電話に出ます。45~50秒以上会話を続けてください。この後、以下の手順に従ってください。
ステップ 5: エージェント側で電話を切り、 Available に戻ります
ステップ 6: 顧客側で通話を続けてください。次のようなアンケートのメッセージが流れます。
“How did we perform, on a scale of one to five. One being bad and five being amazing.” (私たちの対応を 1 から 5 で評価してください。悪ければ 1 、素晴らしければ 5 を選んでください)
ステップ 7: 顧客側の電話のキーパッドで 1 から 5 までの数字 (3 など) を押します。
ステップ 8: システムからの返答 “Thank you for rating us 3. Good bye.” (3 の評価ありがとうございました、さようなら)を確認し電話を切ります
ステップ9:1~3分待ってから、図 14-a に示すようにコンタクトの検索に移動し、かけた通話を検索し、通話を開いて詳細を表示します
ステップ 10: 連絡先の詳細ページには、コンタクトが評価され、評価が自動的に送信されたことが表示されます。図 14-b を参照してください。また、評価に割り当てられたスコアも表示されます (この場合は 10%、下の図 14-c を参照)。
API 呼び出しシーケンス
通話が終了すると、図 15 の順序で評価フォーム API が呼び出されます。
クリーンアップ
評価フォームによるコンタクトの評価にはコストがかかります。さらに、電話の着信や Contact Lens に関する費用もかかります。Amazon Connect の料金はこちらに記載されています。今後課金されないようにするには:
ステップ 1: 電話番号とコンタクトフローの関連付けを解除します
ステップ 2: コンソールから「電話番号を表示」に移動します (図 16)
ステップ 3: このテストで使用した電話番号を選択します (図 17)
ステップ 4: 問い合わせフローの横にある「x」をクリックして、電話番号を問い合わせフローから切り離し (図 18)、「保存」をクリックします
訳注 : 電話番号の維持にもコストが発生します。電話番号をこのテストのために取得した場合は、電話番号のリリースを検討してください
ステップ 5: AWS CloudFormation のスタックを削除し、作成したリソースを削除します
結論
スコアリングと評価は、エージェントの品質を管理するためのコンタクトセンターの運営に欠かせないものです。このブログ記事では、Amazon Connect API を使用して評価フォームを作成し、問い合わせを評価、送信する方法の例を示しました。評価に関する API の全リストはこちらをご覧ください。
翻訳はテクニカルアカウントマネージャー高橋が担当しました。原文はこちらです。