Amazon Web Services ブログ
デジタルコマースの力を取り込む
大手小売業者は、先進的なクラウドベースのテクノロジーやサービスをどのように業界の変革に活用しているのでしょうか。
デジタルコマースの台頭
デジタルコマースの歴史は 30 年近くになりますが、新しいクラウド技術や優れたモバイルアプリ、新しいフルフィルメントの選択肢の存在が後押しになって、その成長は最近加速しています。以前にも増して、消費者がオンラインで商品を見たり、購入したりする時間が増えています。 2021 年の米国における e コマース売上は 8,700 億ドルに達し、 2025 年には初めて 1 兆ドルを超えると予想されています。
小売企業は、この貴重なパイの一部を獲得し、今後数年間のビジネスの運命を左右しかねないこの市場で後れを取らないように躍起になっています。多くの大手小売企業は、デジタルコマースに大きな投資を行ってきましたが、顧客体験を一変させるその可能性を最大限に活用することはまだできていないと言わざるを得ません。少し意外かもしれませんが、現在でも売上の 80% は依然として実店舗によるものです。
アマゾン ウェブ サービス( AWS )は、最新のクラウドベースのソリューションとサービスをシステムに搭載した次世代のデジタルアーキテクチャを使用するという e コマースへの斬新なアプローチで、小売業者の成功を支援してきました。 AWS は、この分野の主要なトレンドを探り、先進的な取り組みを行なおうとしている小売業者がスマートで競争力のあるデジタルコマースプラットフォームを構築するために取るべき 4 つの重要なステップに焦点を当てた eBook を作成しました。
デジタルコマース成功のための 4 つのステップ
1 . 俊敏で費用対効果の高いデジタルコマースプラットフォームを確立する
デジタルコマースプラットフォームを確立することは、デジタルコマースの最初のステップであり、顧客に最高のショッピング体験を提供するための基盤となるものです。レガシーアプリケーションの大半またはすべてをクラウドに移行することで、デジタルコマースへの第一歩を踏み出しましょう。 AWS を利用することで運用コストを削減し、既存の IT 投資を最大限に活用しつつ、将来を見据えたリテールアーキテクチャを構築することができます。
次に、マイクロサービステクノロジーを使用して e コマースインフラストラクチャを「分解」することで、アプリケーションを最新化し、アプリをより柔軟かつ迅速に構築できるようにします。マイクロサービスによるコンポーザブルアプリケーションを採用することで、小売業者はユーザーの購買体験を統一的にパーソナライズすることや、メンテナンスコストの削減、ビジネスの俊敏性とイノベーションをスケールアップすることができます。
「 2023 年までに、コンポーザブルアプローチを採用した組織は、新機能の実装速度で競合他社を 80 %上回るだろう。」–ガートナーリサーチ レポート、 2020 年 6 月
2 . コンバージョンを高めるために、顧客体験を強化する
どのような e コマースサイトでも、目指すところは魅力的で楽しいカスタマーエクスペリエンスを通じてコンバージョンを増加させることです。これを実現する最善の方法の 1 つは、購入までのすべてのステップでストレスを減らすことです。例えば、時間のかかるページの読み込みを減らす、ログインの必要性を減らす、検索をより速く簡単にする、購入するまでに必要なページ数を減らすなどといった、簡単なことから始められます。パーソナライゼーションは、売上を伸ばすもう一つの方法です。例えば、Amazon Personalize を使用すると、開発者は機械学習( ML )を使用して、精度の高いレコメンデーションとインテリジェントなユーザー特性の分類を行う仕組みを迅速に構築して展開することができ、小売業者は ML 技術を使用して、特定の商品のおすすめ、パーソナライズされた商品のリランキング、ダイレクトマーケティングなどを行うことができます。
AWS と AWS のパートナーでは、小売業者が様々なオンライン顧客体験を展開できるよう支援します。例えば、 AWS パートナーであるObsessは、実際の店舗の 3D ウォークスルーを提供し、買い物客が実際に店舗にいるかのように商品を閲覧できるバーチャルストアの設計と展開を支援するリーダー企業です。さらに、 AWS と AWS のパートナーがサポートする新しい没入型リテール体験では、AR(拡張現実)を使用して、顧客が仮想的に「購入前に試す」ことができます。このような「購入前に試す」オプションは、自宅に家具を置くことから、化粧品や眼鏡の使用感をプレビューすることまで、多岐にわたります。
AWSのパートナーである Hexa は、小売業者に対して、モバイルデバイスを使って 3D で商品の視覚化したり、バーチャル試着を行ったりするソリューションを提供しています。 Hexa の AR 機能は、オンラインショッピング体験を向上させるために設計され、仮想的に購入前の試着体験をするという没入感のあるインタラクションを消費者に提供します。没入感のあるオンラインショッピング体験は、消費者の信頼を高め、コンバージョン率を上げて収益を増やすことにつながります。
3 . デジタルコミュニケーションとチャネルを拡大するツールや技術で、より多くの顧客にアプローチする
小売業者が最新のクラウドベースのデジタルコマース・プラットフォームでモダナイズを進める中、次の課題は、いかにしてさらに多くの顧客を取り込むかという点です。より多くの人にアプローチするために、小売業のデジタルマーケターは、多様なアプローチを追求する必要があります。ターゲット層に応じて、デジタル広告、 e メールマーケティング、テキストメッセージ、ソーシャルメディア上のコンテンツなどを活用することが考えられます。パーソナライゼーション、 ML 、高度な分析技術などのテクノロジーの助けを借りて、小売業のマーケターは適切なメッセージを適切なタイミングで適切な顧客に届けることができるようになります。
新規顧客のもう一つの大きな未開拓源は、潜在的な価値が大きいソーシャルコマースの領域です。現在、 Facebook 、 Instagram 、 YouTube 、 TikTok のアクティブユーザー数は月間 30 億人を超えています。パートナーやベンダーのシステムを拡大しようとしている小売業者なら、今こそベンダーが Amazon のように有料で製品を販売できる、費用対効果の高いデジタルマーケットプレイスの設立を検討する時です。デジタルマーケットプレイスは、ブランドのリーチを幅広い潜在顧客に広げるための優れた方法です。
「 2020 年、米国では、 BtoC の e コマース売上の 57% がマーケットプレイスを経由して流れている。」
–フォレスター・フォーキャスト・レポート、 2021 年 3 月号
4 . 完璧なフルフィルメントと簡単な返品で、顧客の期待に応える
堅牢なデジタルストアを構築し、モダンで魅力的なショッピング体験で新しい顧客を獲得したとします。しかし、顧客はその後も長い間、あなたの会社を使い続けてくれるでしょうか。それは、顧客が望むあらゆる買い物方法をどれだけうまくサポートしているか、そして注文をどれだけ効率的に処理できるかにかかっています。つまり、お客様にとって適切な商品を適切な場所に適切なタイミングで届けるという、基本的なことを日常的にカバーすることが重要です。
コンタクトセンターの改革は、顧客満足度とロイヤルティに即座に影響を与えるための良いチャンスです。小売企業は、 AWS を利用することで、数分でクラウドコンタクトセンターを立ち上げ、人工知能と ML の技術によって対話をパーソナライズし、初日からエージェントの生産性を向上させることができます。一貫して優れた注文処理を行うために、小売業者は新しいクラウドベースのシステムを構築し、在庫レベルを正確かつほぼリアルタイムで可視化し、チャネル全体でより機敏なロジスティクス機能を提供することができます。 AWS とそのパートナーを利用することで、小売業者は、オンデマンド配送や定期配送、オンライン購入と店舗での受け取り、カーブサイドピックアップなどを可能にする統合クラウドプラットフォームを構築できます。
Sainsbury’s 、 Zappos 、Morrisons などのトップ小売ブランドが、どのように AWS を利用して業務をモダナイズし、これまでにない顧客体験を提供しているかについては、電子書籍「 Navigating the new world of digital commerce in retail 」をダウンロードしてご覧ください。
翻訳は Solutions Architect 塚本が担当しました。原文はこちらです。
著者について
David Dorf
AWS のワールドワイドリテールスペシャリストとして、小売業向けソリューションの提供を中心に活動しています。以前は、Infor Retail 、 Oracle Retail 、 360Commerce 、 Circuit City 、 AMF Bowling 、 Schlumberger のリテール&バンキング部門において、様々なテクノロジーを用いたリテールシステムの開発に携わっていました。 NRF-ARTS の技術標準に数年間携わり、現在も Retail Orphan Initiative の慈善活動を支援しています。バージニア工科大学とペンシルベニア州立大学で学位を取得。
Vince Koh
Vince Koh は、 AWS のデジタルコマースに関する世界的な戦略およびソートリーダーシップを担当しています。 AWS のリテールおよび CPG リーダーシップチームと連携し、オンライン、ソーシャル、モバイルコマースの新しい機能でビジネスを変革する方法と、統合されたコマース体験を生み出すために点を結ぶ方法についての指針を求めている消費者企業のために、市場参入戦略と革新的なパートナーソリューションの形成と提供に取り組んでいます。 Vince は、 15 年のキャリアを通じて、グローバル企業や高成長新興企業のデジタル・コマースをリードし、 DTC 、マーケットプレイス、オムニチャネル・リテールのイニシアティブを開発・実行してきました。AWS入社前は、 Weber Shandwick のコマース & コンバージョン担当 SVP、 Iconix Brand Groupの e コマース担当 VP、ベンチャーキャピタルが支援する新興企業( Keaton Row と Fab )でマーチャンダイジング、戦略、オペレーションを担当、アクセンチュアではグローバル小売コンサルティング・プロジェクトを主導しています。コーネル大学 SC ジョンソン経営大学院で MBA を取得。