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福井県と共同で実現する安全な道路情報提供 – 株式会社ほくつう様の AWS 活用事例
本ブログは 株式会社ほくつう様と Amazon Web Services Japan 合同会社が共同で執筆いたしました。
みなさん、こんにちは。AWSアカウントマネージャーの井沼です。
昨今の異常気象により、日本の地方自治体では、市民の安全を確保するために道路状況の可視化が重要な課題となっています。
特に豪雨や豪雪など気象条件が厳しい地域では、リアルタイムの道路情報が県民の安心・安全な生活に不可欠です。
今回は、福井県様と株式会社ほくつう様が共同で取り組まれた「みち情報ネットふくい」の AWS を活用した事例をご紹介します。
お客様のサービス概要
「みち情報ネットふくい」は、福井県内に設置された300を超えるカメラから、リアルタイムの渋滞状況や冬期間の除雪状況を県民に提供するウェブサイトです。
国や自治体向けの総合防災情報プラットフォームを提供し、多種多様な情報通信システムの設計・システム開発・施工・メンテナンスまでのワンストップサービスを手掛ける株式会社ほくつう様が、福井県土木部道路保全課様からの依頼を受けてシステムを構築されました。
「みち情報ネットふくい」は道路管理者の垣根を超えた一元的な交通状況の把握のために、国土交通省やネクスコ、市町、隣接県である滋賀県とも連携を進め、公開するカメラ画像を大幅に増加させています。
従来の課題と背景
福井県は過去に多くの豪雨災害や雪害を経験しています。こうした状況下で、県民が安全に生活するためには、リアルタイムの道路情報が不可欠です。
しかし、従来のシステムでは、全てオンプレミス環境で実現しており、以下のような問題に直面していました:
1.[伸縮性] 悪天候時のアクセス集中に伴うカメラ画像の表示遅延
2.[信頼性] システム障害時における長時間停止のリスク
3.[俊敏性] 配信サーバーのリソース調達に要する時間
解決策の検討と AWS 採用理由
これらの課題を解決するため、ほくつう様は柔軟に拡張が可能な俊敏性を持つクラウドサービスへの移行を検討されました。
複数のクラウドプロバイダーを比較検討した結果、AWSサービスの持つ高い信頼性と伸縮性、豊富な実績とそれに伴う情報量の多さからAWSの採用を決定されました。
実装の詳細
採用した AWS サービスとその役割
「みち情報ネットふくい」のシステム構築には、以下のAWSサービスが活用されています:
・Amazon Elastic Compute Cloud (EC2):ウェブアプリケーションの実行環境として利用
・Amazon Simple Storage Service (S3): システム全体のログデータの収集・保存に活用
・Amazon CloudFront:画像データなどのコンテンツの高速配信を実現
システム構成の概要
今回の刷新により、画像の配信環境の全てをオンプレミスからAWSに切り替えています。
システムは、カメラから送信される画像データをAmazon CloudFrontを通じて配信することで、アクセス集中時にも安定的にレスポンスできる構成となっています。
特筆すべき点として、東京リージョンと大阪リージョンの両方に同一の環境を構築し、マルチリージョン構成を採用しています。
Amazon CloudFrontのオリジンフェイルオーバー機能を活用することで、プライマリのサーバーにアクセスできない場合は自動的にセカンダリに切り替わる仕組みを実装しており、ダウンタイムを最小化させています。
この構成により、アクセス集中時でも安定したパフォーマンスの提供および、サーバー障害などのシステムトラブル時においてもサービスを継続できる高信頼性を実現しています。
カメラからの画像収集は引き続きオンプレミスを併用していますが、将来的にはこちらもAWS化を検討しています。
(画像配信環境の構成イメージ )
導入効果
AWS クラウド基盤の導入により、以下の効果が得られました:
1.ピーク時の表示時間遅延解消 (1分以上 → 最大5秒以内、高負荷でも遅延無く表示)
2.従来環境と同等のコストで高い信頼性を実現
3.急増する需要に対して俊敏にリソース拡張を実現 (2週間 → 数分)
お客様の声
福井県土木部道路保全課様の声
「道路は県民の生活や経済活動を支える欠かせないインフラです。『みち情報ネットふくい』は、そうした重要な情報を県民やドライバーの皆様にリアルタイムで分かりやすく提供できる、重要な仕組みです。AWSに移行してから、アクセスの集中しやすい冬の期間においてもリアルタイムで画像表示ができるようになり、県民の方々により一層安心してご活用いただけるようになりました。今後も、より多くの方に活用いただけるよう、さらなる機能強化を図ってまいります。」
株式会社ほくつう様の声
「従来、道路情報はそれぞれの機関が個別に公開しており、災害時などに一目で全体状況を把握できる仕組みがありませんでした。そうした不便さや県民の不安を解消したいという思いが、今回のシステム開発の原動力となりました。国・県・市町・高速道路といった異なる管轄の情報を一括して確認できる『みち情報ネットふくい』は、まさに“生活の安全・安心”を支えるインフラとして、県民に寄り添うことを意識して構築したものです。従来の環境ではシステム構築に半年以上かかるところを、AWS のクラウドサービスを活用することで約 1 か月という短期間で迅速に対応することができました。さらに、AWSのマルチリージョン構成を採用することで運用負荷軽減と高い信頼性を同時に実現することができました。」
今後の展望
ほくつう様と福井県土木部道路保全課様は、今後もAWSのサービスを活用して「みち情報ネットふくい」の機能拡張を計画されています。具体的には、AI を活用した道路状況の自動分析や、より詳細な気象情報との連携など、県民の安全をさらに確保するための取り組みを検討されています。
また、このシステムの成功事例を基に、他の地方自治体への展開も視野に入れており、地域の安全確保に貢献する取り組みを拡大していく予定です。
まとめ
本事例は、AWSのクラウドサービスが地方自治体の公共サービス向上にどのように貢献できるかを示す好例です。特に災害時など、情報が最も必要とされる緊急時にこそ真価を発揮するシステムの構築は、市民の安全を守るという公共サービスの本質的な価値を高めるものと言えるでしょう。
AWSの柔軟なスケーラビリティと高い信頼性を持つサービスは、今後も多くの地方自治体が直面する課題解決に貢献していくことが期待されます。
株式会社ほくつう(右から):社会インフラ事業本部 事業統括部 部長 山口 博文 様 営業部 社会インフラ営業課 西野 茜 様
営業部 社会インフラ営業課 森 将光 様
Amazon Web Services Japan : アカウントマネージャー 井沼 孝輔(左)

