Amazon Web Services ブログ

全ての研究者にクラウドを ~競争的研究費でクラウド利用料の支出が可能であることが明確化されました~

こんにちは!
アマゾン ウェブ サービス (以降、 AWS とする) でキャプチャーマネージャ(調達戦略支援)を担当している岡野です。

普段はクラウドの購入/調達に関するお悩みを解決するためのご支援をしております。

今回は日々研究者の方々に対して技術支援を行っているシニアソリューションアーキテクトの櫻田と一緒に、研究者の皆さまにぜひ知っていただきたいニュースをお伝えしたく、記事を書いてみました。

皆様の研究活動のお役に立てれば幸いです。

thumbnail-compefund-cloud

競争的研究費の直接経費からクラウド利用料の支出が可能に


研究領域におけるクラウド活用の事例が見られるようになってきているものの、競争的研究費でクラウドを利用できるのかどうかお悩みになってクラウド利用を躊躇したことはありませんか。

実はこの度政府において、「競争的研究費における各種事務⼿続き等に係る統⼀ルールについて」の改正が行われ、競争的研究費の直接経費からクラウド利用料の支出が可能であることが明確化されました(注1)。
具体的には、「府省共通経費取扱区分表」にクラウド利用料が明記されています(注2)。

この見直しにより、競争的研究費においてクラウドを利用できること並びにどの費目で申請すればよいのかが明確になり、研究者が直面していたクラウド利用に対する心理的ブロッカーや利用可否に係る確認の手間等が解消されることになります。
研究者にとっては、研究に必要な IT の仕組みをクラウドを活用して迅速に作りやすくなります。

日本の研究領域におけるクラウド利用を牽引するリーダーも本件についてコメントされています。

競争的研究費でクラウドが利用できることが明確化されたことは研究者にとって非常に朗報です。あらゆる研究分野においてクラウド利用が進むことで、研究DX が加速することが期待されます

合田 憲人 氏
国立情報学研究所 クラウド基盤研究開発センター長 アーキテクチャ科学研究系
教授

研究者が競争的研究費申請の入り口で悩むことなく、クラウドを利用した研究に集中できる環境が整備されたことを非常に喜ばしく思います

井上 弘士 氏
九州大学 大学院システム情報科学研究院 情報知能工学部門 教授

クラウド利用料見積もり時のポイント

A women with a calculatorでは、実際に競争的研究費を申請する際に、AWS のクラウドサービスはどのように見積もればよいのでしょうか?

金額感については Web ページ内に試算例がありますが、より細かな AWS の費用は Web ページに公開されており、AWS 料金見積もりツールにて試算頂くことが可能です。

ここではどのように考えて行けば良いのか、研究領域でよく使われる例をもとにご紹介します。

サーバーは使う分だけ柔軟に

まず研究用途で一番分かりやすいのは仮想サーバの利用でしょう。
AWS では Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) のサービスがこれにあたります。

使用する CPU アーキテクチャ、vCPU 数、メモリ、GPU 等のアクセラレータの種類によって時間単価が異なります。これらを利用する時間とそれらにアタッチするディスクの使用量で概算が算出可能となります。

ここで少しだけ考え方の変革が必要となります。
これまで手元に機器を購入していた場合では、その購入したリソースを何時間フルに利用しているのかを特に気にせず最大ピークで考えていたかと思います。

AWS は利用した分の料金となりますので、例えば本実験以外のプログラム作成時や論文執筆時等には巨大なリソースが必要無いのであれば、その期間は少ない vCPU やメモリのインスタンスに変更したり、あるいはリソースを停止してコストを減らしていくことが出来ます。
本実験でリソースが必要になったときには、一度に使うリソースを増やして実験にかかる時間を減らすこともできます。

このように実際の利用時には柔軟にリソースの利用ができますので、まずどのくらいの計算リソースを何台x何時間分が最低限必要であるかを決めて、先に紹介した見積もりツールなどで試算していきます。

データは置いた分だけ課金

次に研究データの保管や共有について考えてみましょう。

研究を推進していくと研究データ量も増えてきます。これまでは最終的に予想されるデータ量を最初から確保して試算していたことと思います。

一方、例えば Amazon Simple Storage Service (Amazon S3) であれば、データを置いた分だけの課金となるため、まだ利用していない分のコストがかかりません。
また 3 箇所以上にデータの複製が隔地保存される構成であるため、例えばオンプレミス 1 拠点でデータを保管しておくよりもより安全に研究データを置くことが可能であると考えられるでしょう。
Amazon S3 の利用料は、期間をいくつかに区切って段階的にデータが増える想定で試算してみるのも良いでしょう。

マネージドサービスを有効活用

さらに仮想サーバや研究データの保管・共有以外の用途を考えてみましょう。

例えばデータベースを使う、多数の IoT デバイスからデータを集取する、機械学習の基盤を使うなどといった場合には、AWS の様々なマネージドサービスを活用していくことが有効です。

マネージドサービスとはいわゆる部品としての多くのサービスを組み合わせて利用していくものです。
マネージドサービスを活用することで、より研究自体に集中していくことができます。これらも上記で紹介した見積もりツールから試算が可能です。

試算に関してよくあるお問合せ

試算をして頂いているお客様からの質問で多いのが、ネットワーク転送料金に関わる見積もりについてです。

利用される形態によって異なるため、このコストで試算するというのはお伝えしづらい点ではありますが、多くのお客様では最大で全体の利用料の 10% 程度をこのコストとして試算されていらっしゃいます。

SINET 接続機関である場合には、AWS アカウントの持ち方にもよりますが、このコストをさらに低減するプログラムもございますので、お問い合わせください。

最後に : コストを抑えた AWS 活用の Tips

AWS クラウド料金について見積りツールで試算し、それを元に研究計画をたて、実際に AWS を研究で活用いただくことになった場合の TIPS を少し本ブログの最後に紹介しておきましょう。

まず EC2 ですが、利用していない時にはこまめに停止をしていただく、余剰なサイズのリソースを使わずできるだけ vCPU やメモリを使い切るサイズにすることが基本となりますが、研究分野では Amazon EC2 スポットインスタンスの活用も視野に入ってきます。

詳しくはスポットインスタンスのページをご覧いただくとして、例えば HPC のような大規模にリソースを使い、計算の中断などが発生しても途中から再開できるような仕組みをとっているような場合には、AWS の利用されていないリソースがオンデマンド価格よりも低価格で提供されるスポットインスタンスを活用し、同じコストでさらに計算を回すことができるでしょう。

また1年や3年といった期間一定の計算リソースを常に使い続けるような場合には、AWS Savings Plans 等を活用してコストを下げていただくことも可能です。

研究期間終了後に研究データをオープンデータとして公開する計画をされている場合もあるでしょう。その場合には AWS Open Data Sponsorship Program 等を活用し公開かかる負担を減らして頂くことも可能であると考えられます。

AWS には 200 を超えるサービスがあるため、自分達の研究にどのマネージドサービスを組み合わせていったら良いのか迷われる場合もあるかもしれません。

また、公共機関ならではの買い方や調達方法でお悩みの場合もあるでしょう。そのような場合には、AWS の公共営業チームへお気軽にお問い合わせいただければ、ディスカッションをさせていただき、より最適な組み合わせを一緒に見つけていけることと思います。

本ブログに関連する内容として「大学・研究機関向け AWSの買いかた・支払いかたシリーズ」の動画も公開しておりますので是非ご覧ください。

(注1) 競争的研究費における各種事務手続き等に係る統一ルールについて(令和5年5月24日改正)
(注2)e-Rad 府省共通研究開発管理システム「配分機関からのおしらせ(2023/5/31):『競争的研究費における各種事務手続き等に係る統一ルールについて』の改正について」


関連情報

サイト、問い合わせ

資料

関連投稿


この記事を書いた人


岡野 聡子
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 パブリックセクター
キャプチャーマネージャー(調達戦略支援)
“皆様のクラウド購入/調達に関するお悩みを解決するためのご支援をしております”

Photo of Takeshi Sakurada
櫻田 武嗣
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 パブリックセクター
シニアソリューション アーキテクト
“業務や研究内容に適したシステム構成のディスカッション等を通して技術面から皆様にご支援をしております”