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競争的研究資金を獲得した研究者がどのようにクラウドを活用しているか
研究・高等教育機関担当事業開発マネージャー澤です。日本のほとんど研究者が競争的な研究資金を得て研究に必要な物品や役務を調達して研究を行っています。各資金のそれぞれのルール、所属する組織の調達のルールがある中、従量課金制で費用が発生するクラウドサービスを調達することに抵抗を感じる方がまだまだ少なくありません。
しかし実際にはすでに多くの研究者の方が、クラウドサービスを調達し、研究や教育に活用されています。パブリックセクターでは調達の方法をご紹介するセミナーを行ったり、実際に学術機関でどのようにクラウドがどう活用されているかについて事例を Blogでご紹介することで情報提供を行ってます。
2022年2月18日に東京農工大学 大学院工学研究院 生体信号情報学研究室の教授である田中聡久先生をお招きし、産学官連携研究員である松井亮祐様ともに、科学技術振興機構(JST)の CRESTという資金提供プログラムで採択された「脳波の機械判読によるてんかん診断・治療支援 AIの構築」のご研究課題にて実際にAWSをどのように活用されたかについてお話いただきました。(オンデマンド視聴はこちら)
CRESTとは
重要な課題の克服に向けて、独創的で国際的にも高水準の基礎研究を推進し、社会・経済の変革をもたらす科学技術イノベーションに大きく寄与する、新たな科学知識に基づく創造的で卓越した革新的技術のシーズ(新技術シーズ)を創出することを目的とした国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)の資金提供プログラム。
研究の背景とシステム概要
てんかん診断は今まで医師が一件ずつ患者の脳波を解析していく必要がありましたが、AI技術を用いて専門医の判断を学習できるシステムを構築しました。実際には脳波データを整形、その意味を学習できるシステムを開発。これにより AIが注目すべき脳波を絞り込むことができ診断医の作業負荷を減らすことを目指します。
システムの特長
多地点にある複数の施設からデータを AWS VPNを利用してセキュアに接続して収集、解析する基盤を構築。共同研究先である海外でも展開できる基盤の構築が可能となった。既存の環境と SINETクラウド接続サービスを利用して接続し、開発を継続しながら大規模解析は AWS上のコンピューティングリソースを柔軟に利用。AWS Parallel Clusterとスポットインスタンス(AWSの空き資源を利用してオンデマンドと比較して安く提供される)を組み合わせることでコスト効率よく、大規模計算を行うことが可能に。
システム図
海外も含めた多施設での利用を前提としたシステムを構築する基盤として、各国内にデータをとどめ、AWS VPNなどを利用してセキュアにデータを収集、解析できるようになりました。(東京農工大学 大学院工学研究院 田中 聡久 教授)
AWS Parallel Clusterを使うことにより、ジョブのサイズに応じて計算ノードを増減でき、スポットインスタンスの活用でコスト削減を図りながら利用できるようになり、クラウドの強みを利用することができました。(東京農工大学 大学院工学府 産学官連携研究員 松井 亮祐 様)
入札は利用見込みのサービスそれぞれについて応札者が単価を指定する単価指定型で一般競争入札が行われました。この調達方法は利用されるサービスがある程度決まっている場合、その利用量を制限することなく柔軟に契約ができる方法です。
本事例について詳細をお知りになりたい方はこちらのオンデマンドウェビナーを視聴してください。
解析システムのクラウド上での構築、クラウドの調達についてより詳細な情報をお知りになりたい方はaws-jpps-er@amazon.com にお問い合わせください。また公共機関における AWS 導入のためのお役立ちサイトもご参照ください。
【著者】
パブリックセクター 事業開発マネージャー(教育・研究担当) 澤 扶美
新卒で入社した外資系コンピュータ会社の技術者から理化学研究所にスーパーコンピュータの技師に。2018 年 10 月 AWSにエデュケーションプログラムマネージャーとして入社、2021年9月より現職。AWS カルチャーアンバサダー。公私にわたり STEM 分野で働く女性を増やす活動も積極的に行っている。大阪出身。好きな AWS のサービスは AWS Cloud9。