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メディア&エンターテインメントでの5GとAWS Wavelengthの活用

ライブ制作における5GとAWS Wavelengthの活用

5Gモバイルサービスが導入で、広帯域化、低遅延化、ネットワークスライシングが実現され、メディアやエンターテインメントでは次のような新しい形の顧客体験の提供に繋がることが期待されています。

  • 拡張現実(Augmented Reality)や仮想現実(Virtual Reality:VR) – これらはしばしばXRと総称されますが、5Gネットワークの機能とモバイル・エッジ・コンピューティング(MEC)を組み合わせることで、これらのタイプのサービスをより柔軟に提供することができます。シーンはネットワーク上でレンダリングされ、XRコンテンツはローカルでのグラフィック処理を最小限に抑えてヘッドセットに直接配信することができます。
  • ビデオストリーミング – ビデオとオーディオをより高速に、より高品質で配信できるようになったことで、よりインタラクティブなビデオを大画面でストリーミングできるようになります。
  • ゲームストリーミング – 位置情報サービスやモバイルゲームが新しいジャンルのゲームを生み出したように、5GとMECの機能は、新しいタイプの低遅延ゲーム体験を可能にします。高品質のゲームコンテンツは、前もってダウンロードする必要がなく、性能の低いデバイスに直接ストリーミングすることができます。

これらのユースケースは地域や市場ごとに異なるスピードで成熟し、コンシューマー向け、プロフェッショナル向け、エンタープライズ向けの各ユースケースにおいて、エンドユーザーの体験を徐々に向上させていくと考えられます。

リモート制作での5Gとエッジ・コンピューティングの活用

5Gによる動画配信の議論ではコンテンツの配信と、それによって実現される品質、ビットレート、ユビキタス性の向上によく焦点が当てられますが、この記事では5GネットワークとAWS Wavelengthエッジコンピューティングの組み合わせにより、コンテンツ制作方法、特にスポーツ、ニュース、ライブエンターテイメントなどのライブイベントの制作方法をどのように変えることができるかをご紹介します。

ライブイベントの制作には、従来より中継車(OBトラック)やスタッフを現地に派遣してイベントを制作しています。そして番組はコントリビューション・フィードを介して中央の拠点に送られ、衛星や固定の専用線、携帯電話回線を使って配信されています。このような制作体制では大規模な設備投資が必要となり、その設備は1週間のうちほとんどの日が待機状態となってしまいます。

リモートプロダクションにAWSを利用すれば、必要なときに必要なだけインフラを用意できるので、使った分だけコストとなります。また、機器の調達サイクルに縛られることがないため、リスクを抑えて新しい制作技術を試すことができ、イノベーションを加速させることができます。

5GとWavelength Zonesを利用したエッジ・コンピューティングが加わることで、クラウドベースのリモートプロダクションにおけるネットワークのレイテンシーが軽減され、固定回線や衛星接続の必要性が減ります。また、5Gにはネットワークスライシング機能が搭載されているため、コンテンツプロバイダーは必要なときにネットワーク容量を確保することができます。

4K Ultra-HD解像度での制作が拡大し、各カメラが12 Gbpsの持続的な帯域を必要とするようになると、複雑で大規模な制作において、非圧縮ビデオを使用してすべてのカメラフィードを5Gで伝送することは期待できません。しかし、圧縮率が高く低遅延のJPEG XSなどの映像コーデックが開発されたことで、中小規模の映像制作では5Gで伝送が現実的になってきています。これにより、イベント会場に機材やスタッフを運ぶ必要がなくなりロケ地でのセットアップも簡単になります。

 

Video cameras connected via 5G network tower to Amazon Virtual Private Cloud with EC2 instances in a Wavelength with arrows from the Wavelength Zone to AWS Elemental media services, EC2 instances, and Amazon S3 buckets in an AWS Region. Arrows from the AWS Region to Amazon CloudFront for distribution to consumer devices. Local Crew media production users connected to the Wavelength Zone via the 5G network, or Remote Crew staff connected to the AWS Region

5Gネットワークタワーを介して接続されたビデオカメラは、Wavelength Zone内のEC2インスタンスを持つAmazon Virtual Private Cloudに接続され、Wavelength ZoneからAWSリージョン内のAWS Elementalメディアサービス、EC2インスタンス、Amazon S3バケットに矢印で接続されます。AWSリージョンからAmazon CloudFrontへの矢印があり、コンシューマーデバイスへの配信が可能となります。現地制作スタッフは、5Gネットワーク経由でWavelength Zoneにアクセスし、リモートスタッフはAWSリージョンにアクセスします。

 

上の図は映像の切り替え、音声のミキシング、グラフィックスをWavelength Zoneのインスタンス上で行うことで、5G上でコントリビューションを行うことができることを示しています。制作は、5Gネットワークに直接接続されたローカルスタッフか、AWSリージョンを介して接続されたリモートスタッフによって行われます。

遅延が少ないことがメリットとなるスポーツプロダクションでは、ローカルスタッフによる操作の切り替え時の遅延を最小限に抑えることができます。一方、音楽ライブや複数のカメラを使ったニュースイベントなどの制作現場では、多少の遅延時間の増加というデメリットよりも、制作スタッフをリモートで集中的に配置することがより重視されることもあります。ローカルスタッフとリモートスタッフを組み合わせることも可能です。

Wavelength Zoneで制作を行った場合、一部の番組フィードをAWSリージョンに戻し、パッケージ化やコンテンツ保護、関連会社へのファンアウト、編集・合成などを行うことができます。さらに、番組出力をWavelength ZoneでエンコードしてCDNに直接配信し、最終消費者に超低遅延でビデオストリーミングすることも可能です。

また追加のISOアングルやクリップをWavelength Zoneで記録し、イベント中にAWSリージョンに流してハイライトやパッケージ作成に利用したり、イベント終了後にまとめてログやアーカイブに残したりすることができます。

Wavelength ZoneのGPUインスタンスのグラフィックス機能は、新しい制作フォーマットの可能性を広げます。複数の固定カメラからのビデオフィードをつなぎ合わせて、実際のカメラを動かさずに、オペレーターが仮想カメラを使ってイベントをあらゆる角度から見ることなどが考えられます。

今後の展開?

お客様はネットワークのカバレッジと帯域幅の確保はしばらくの間、懸念事項であり続けると捉えられており、それによって5G制作に適したイベントの種類が決まってきます。ネットワークの普及率が高い都市部の固定会場で開催されるイベントが、この新技術を最初に利用すると考えるのが妥当でしょう。セーリングやノルディックスキーなど、人口密度の低い地域で行われる分散型のイベントは、それよりも後での利用となるでしょう。

また、ネットワークスライシングで容量を確保する際、どのような商用モデルやプロビジョニングモデルが利用できるかについても課題が残ります。メディア企業は、数日、あるいは数時間にわたる個々のイベントのために、特定のサービスレベル要件(SLR)でスライスを提供することを好むでしょう。

これらの課題はいずれ解決されるはずです。5GとWavelengthをライブプロダクションに導入することで、遠隔地でのクラウドプロダクションがより多くのプロダクションに利用されるようになるだけでなく、メディア企業が新しいプロダクションフォーマットを実験したり、革新したりする能力も向上します。

AWSは、コンテンツ制作のための最も包括的なクラウド機能を提供することで、スタジオ・放送局のお客様が運用上の負担を軽減し、制作により多くの時間を割けるよう支援します。詳細は https://aws.amazon.com/media/content-production/ をご覧ください。

 


参考リンク

AWS Media Services
AWS Media & Entertainment Blog (日本語)
AWS Media & Entertainment Blog (英語)

AWSのメディアチームの問い合わせ先: awsmedia@amazon.co.jp
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翻訳は BD山口が担当しました。原文はこちらをご覧ください。