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実践企業に学ぶ生成 AI 導入の勘所 〜眠るデータを企業価値に変える〜 – AWS Local Executive Roadshow 広島編(#5/8)開催レポート

こんにちは。Amazon Web Services Japan のソリューションアーキテクト、田中 里絵 です。

本ブログは、2026 年 4 月〜5 月にかけて全国 5 拠点・計 8 回で開催した「AWS Local Executive Roadshow」シリーズの第 5 回レポートです。シリーズの背景や全体像については、初回の大阪・事業会社編レポートをご覧ください。

大阪・名古屋に続き、2026 年 4 月 27 日は広島にて、AI を自社の業務に活かしたい企業のエグゼクティブ・情報システム部門の皆様をお迎えし、「実践企業に学ぶ生成 AI 導入の勘所 〜眠るデータを企業価値に変える〜」と題したイベントを開催しました。

イベントの流れ

当日はまず、Amazon Web Services Japan のソリューションアーキテクト木村 友則から「AWS で一歩先へ!生成 AI 時代のビジネス変革の打ち手」と題したオープニングセッションをお届けしました。生成 AI が「アシスタント」から「仕事を任せられる」存在へと進化してきた流れ、人手不足という社会課題に対して AI エージェントが果たせる役割、そして AI コーディングツールの Kiro と AI エージェントプラットフォームの Amazon Quick を、デモを交えてご紹介しています。セッションの詳細については初回の大阪・事業会社編のレポートをご覧ください。

ソリューションアーキテクト木村によるオープニングセッション

写真: ソリューションアーキテクト木村によるオープニングセッション

AWS 側のセッションを通じて生成 AI 活用の全体像とイメージをつかんでいただいたあと、パネルディスカッションへと進みました。ここからは、中小企業のお客様への生成 AI 導入を支援されたパートナー企業様に、その現場で得られた知見をお話しいただきました。

事例紹介:株式会社エイチビーソフトスタジオ様 〜「完璧を待たず、まず触ってみる」現場に寄り添う生成 AI 導入支援〜

事例紹介は 株式会社エイチビーソフトスタジオ 様です。愛媛県松山市を拠点に、全社員が完全リモートで業務を行い、スタッフ全員がエンジニアという企業です。システム開発・スマートフォンアプリ開発・Web システム開発などを手がけられ、使い勝手とデザイン性にこだわったアプリケーションの制作や、障害に強いサーバー設計・運用を得意とされています。同社のサービスサイトには「小さく作るを繰り返す」という開発スタイルが掲げられており、AWS を活用したクラウド環境の構築支援も提供されています。当日は AWS 木村 (営業) がモデレーターを務め、代表取締役の影浦 義丈 様に、実際に手がけられた中小企業向けの生成 AI 導入支援についてパネルディスカッション形式でお話しいただきました。

きっかけは、属人化した問い合わせ対応

今回ご紹介いただいたのは、社員 10〜50 名程度の中小企業のお客様に対する、生成 AI を活用したナレッジ共有・業務効率化の導入支援プロジェクトです。

きっかけは、お客様社内での問い合わせ対応に多くの時間が割かれていたことでした。質問が特定の人に集中し、回答の品質も人によってばらつく。多くの企業が抱える「詳しい人に聞かないと分からない」という状態です。影浦様は「お客様に対するサポートも含め、何とかしたいというのが取り組みのきっかけでした」と振り返られました。

立ちはだかった 3 つの壁 ― 期待値・ルール・データ

実際に取り組みを進める中では、大きく 3 つの壁に直面したといいます。

1 つめは期待値の壁です。生成 AI に対する社内の温度感に差があり、影浦様は「トップの方は『ゴーゴー』という感じなんですけれども、現場の方は『何のためにやるのか分からない』という気持ちを持たれている場合もある」と語られました。その一方で、「AI を導入すれば何とかなる」「AI を入れれば 100% の結果が返ってくる」という、高すぎる期待値が生まれてしまうこともあったといいます。

2 つめはルールの壁です。生成 AI を活用する上で、どこでデータが処理されるべきかといったガバナンスの考え方や社内ルールが、そもそも全くない状態でした。

3 つめはデータの壁です。生成 AI 活用のベースになるノウハウやナレッジが、そもそもドキュメント化されていない。あるいはドキュメントにはなっていても、ファイル形式や保存場所がバラバラだったり、古い状態のまま更新されていなかったりと、活用の準備が整っていない状態でした。

3 つの壁をどう乗り越えたか

これらの壁に対する影浦様の実際のアプローチをお話いただきました。

AI への期待値の壁を乗り越えるために、実際に AI に触れてもらい、何ができて何ができないかを肌感をもって理解してもらうことに取り組まれました。ただ、「ツールをポンとお渡しして『やってください』と言っても、なかなか難しい」と感じられたため、社員の皆様に向けたハンズオンを定期的に開催し、生成 AI への理解を高める機会を作りました。あわせて、活用のノウハウがどうしても各人それぞれに蓄積されてしまうという課題に対しては、各自の使い方や「結果が良かった・悪かった」を発表してもらう場を設け、QA を通じて全社的にノウハウを蓄積していく方法をとり、その実施にあたっての支援も行ったということです。

ルールの壁については、いきなり「まずはルールを作ってください!」とお伝えしてもプロジェクトが進みづらい、という前提に立ち、まず影浦様が叩き台となる基準を用意し、それをベースにお客様とやり取りしながら細かく積み立てて運用ルールを作っていかれました。

そして特徴的だったのが、データの壁への対処です。ドキュメント化されていない属人的なノウハウを「ゼロから文章を書いてください」と言ってもなかなか書けない。そこで影浦様が試したのが、AI でインタビューをさせて、ドキュメントの種を引き出すという方法でした。継続的に改善するには、人のインタビュアーを常に用意するのは難しい。そこで AI を活用してインタビューからドキュメント化までを一貫して行える仕組みを構築したといいます。このとき影浦様が強調されたのは、ツールの新しさそのものではなく使い手の側でした。「生成 AI を結局利用するのは人間なので、人間がどれだけ詳細な指示を与えられるか。これが肝になってくると思います」。AI をうまく動かすためのドキュメントづくりを、AI 自身に手伝わせる。データが整理しきれていない中でも、まず一歩を踏み出すための現実的な工夫です。

取り組みの成果と、残る課題

取り組みの結果、問い合わせ対応の時間が削減され、特定の人への負荷集中が緩和されました。加えて、回答品質のばらつきの是正など、いくつかの成果を得ることにつながりました。

またさらなる成果として、ドキュメント化の「文化」が根づき始めた、という点もありました。それまでは様々な知見が暗黙知になりがちでしたが、AI への取り組みを続けるなかで、少しずつドキュメントに残し、展開していこうという文化につながりつつあるということです。この文化が広がっていくことで、他の業務でも「生成 AI を使ってみたい」という社員様が新しく出てくるなど、新たなユースケースの創出にもつながり始めています。

一方で、文化の定着には時間がかかること、AI の回答精度を上げながら改善し続ける必要があること、勉強会はやっているものの個人ごとの定着度や使い方にばらつきが残ることなど、継続的なフォローの重要性も語っていただきました。

参加者へのアドバイス ― 「触ってみないと分からない」

AI は進化も早く、また企業の課題も様々であるため、AI の活用方法の見定めには「やはり触ってみないと分からないことが多い」と述べられたうえで、「データにしてもセキュリティのルールにしても、完璧に全て揃えてからではなく、今あるもので、まず小さく始めて触ってみることが大切」と述べていただきました。

また、生成 AI の社内展開について、「個人で進めるのではなく、ハンズオンや勉強会、共有会のような場で、全社的に・チームでノウハウを共有しながら進めていただくと、取り組みが定着しやすくなる」と語られました。

株式会社エイチビーソフトスタジオ 影浦様、AWS 木村によるパネルディスカッション

写真: 株式会社エイチビーソフトスタジオ 影浦様、AWS 木村 (営業) によるパネルディスカッション

まとめ

セッション後には参加者同士のグループワーク・ディスカッションやネットワーキングの時間を設け、自社の AI 活用における課題について活発な議論が交わされました。アンケートでは「他業種の方のお話を聞く機会が少ないため大変参考になった」「少人数で密に意見交換ができた」といった、参加者同士の交流を評価する声を多くいただきました。参加者の皆様も、ご自身に近い背景を持つ地元企業の取り組みを情報交換したり、その場で相談しあったりできており、AWS もその輪に参加させていただけてとても有意義な時間だったと感じております。

このブログシリーズでは、本イベントの開催レポートを各拠点の開催順にお届けしていきます。今回お届けした広島編に続き、次回は福岡編を予定していますので、どうぞお楽しみに。

そして読者の皆様へ──もし本ブログを読んで「うちの会社の取り組みもぜひ発信したい」「AWS と一緒に自社の眠るデータを価値に変えたい」「AI で日本をもっと元気にしていきたい」と感じていただけたなら、ぜひ担当営業、あるいはお近くの AWS メンバーまでお気軽にお声がけください。

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執筆者

Amazon Web Services Japan 合同会社 ソリューションアーキテクト 田中 里絵