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AWS IoT Core Device Location を使用して IoT ベースの資産追跡ソリューションを構築するためのパターン

はじめに

企業は、資産の追跡と管理を可能にする、位置情報ベースのシステムによる業務改善の可能性を認識しています。強固な資産追跡システムを導入することで、組織はリアルタイムの洞察を得て、情報に基づいたビジネス上の意思決定を行うことができます。AWS IoT Core Device Location の一般的なモノのインターネット (IoT) のユースケースには、次のようなものがあります。:

  • 家畜をリモートで見つけて監視
  • 車両のジオフェンシング
  • 高価値機器の追跡
  • サプライチェーンを移動する際の資産の監視
  • 紛失・盗難の低減

従来、全地球測位システム(GPS)ハードウェアは主に位置追跡の用途に使用されていました。GPS は、地球上にある GPS 受信機に時間と位置に基づく情報を提供する衛星ベースのナビゲーションシステムです。GPS 受信機は、4 つ以上の GPS 衛星と遮るもののない通信を行うと、衛星からの距離を計算し、位置を割り出します。

屋内環境では測位精度が低く、位置を局所的に検出するためにより多くのスペースと電力が必要になるため、GPS は屋外での使用に適しています。これらすべての点から、制約のあるデバイスや、屋内や地下の位置追跡などの特定のケースでは、あまり好ましくない選択肢となります。そのため、クラウドアシスト型 GNSS(Global Navigation Satellite System)、Wi-Fi、IP 逆引き、セルラーネットワークなどの新しい位置情報技術が、電力に制約のある IoT デバイスの位置データを取得するための一般的な代替手段となっています。

このブログ記事では、AWS IoT Core Device Location 機能を使用して IoT ベースの資産追跡ソリューションを構築するためのさまざまなパターンについて学びます。これらのパターンにより、お客様は GPS ハードウェアに頼ることなく、前述のジオロケーション技術を使用して IoT デバイスを追跡および管理できます。

ソリューションの概要

安全な接続と、IoT デバイスおよびアプリケーションとの間のメッセージ送信の問題に対処するために、AWS のお客様は、数十億のデバイスと数兆のメッセージをサポートできる AWS IoT Core をすでに活用しています。

ただし、クラウドアシスト GNSS、Wi-Fi、IP 逆引き、セルラーネットワークなどのテクノロジーを使用してデバイスの位置を取得するには、サードパーティのサービスと統合するためのカスタムコードを作成する必要があります。複数の位置情報技術を使用する予定で、最も精度の高い場所を選択する必要がある場合、この統合はさらに複雑になります。これらの課題に対処して統合を簡素化するには、AWS IoT Core Device Location を活用できます。

AWS IoT Core Device Location は、Semtech、HERE、MaxMind などの AWS パートナーが提供するソリューションと統合されているため、クラウドアシストの GNSS、Wi-Fi スキャン、セルラー三角測量、IP 逆引き技術を使用してデバイスの地理座標を決定できます。複数の位置情報技術を使用する場合、結果を比較し、最高の精度でをもつ位置情報結果を返します。

AWS IoT Core Device Location が位置情報を解決する方法

AWS IoT Core Device Location は、ジオロケーション技術を実装するアルゴリズムを使用して、インターネット経由で接続された IoT デバイスの位置を特定します。これらのアルゴリズムはロケーションソルバーと呼ばれます。ブログ公開時点では、AWS IoT Core Device Location は以下の位置情報技術に基づくロケーションソルバーをサポートしています:

  • クラウドアシスト型グローバルナビゲーション衛星システム (GNSS): GNSS(Global Navigation Satellite System)技術は、複数の衛星が宇宙からの信号を送信して位置やタイミングのデータを送信し、それを使って地球上の位置を正確に決定する技術です。

従来の GNSS IoT 測位ソリューションでは、センサー自体で位置を計算するため、ある程度の計算リソースが必要なため、ある程度の電力を消費します。この課題を軽減するために、クラウドアシスト型 GNSS は、通常はオンチップで実行される計算タスクをクラウドサーバーに移行し、エネルギー消費量を削減し、パフォーマンスを損なうことなくセンサーのバッテリー寿命を延ばします。

GNSS ソルバーを位置情報技術として使用するには、GNSS による位置推定をサポートしている IoT デバイスや、Teseo-Liv3 モジュールなどの GNSS エンジンを搭載したモジュールと統合された任意の IoT デバイスを使用できます。モジュールに基づいて、ナビゲーションデータフレームなどの必要なメトリックを取得し、それを GNSS ソルバーに渡して位置の詳細を取得できます。全体として、クラウドアシスト型 GNSS は屋外の位置に適しており、資産追跡のユースケースでは非常に高い精度で機能します。

  • セルラー三角測量: セルラー接続を備えた IoT デバイスが 3 つ以上のセルタワーからの信号を使用し、3 つ以上のタワーからの距離に基づいて IoT デバイスの位置を推定するのに役立つ技術です。

セルラー三角測量を位置情報技術として使用するには、追加のハードウェアを気にせずに、セルラー接続を備えたあらゆる IoT デバイスを使用できます。IoT デバイスがセルラー接続をサポートしていない場合は、LTE Standard EC20 R2.1 などのセルラーモデムを使用できます。これらのセルラーモデムには、モバイル国コード(MCC)、モバイルネットワークコード(MNC)などの必須フィールドを取得する AT コマンドセットが付属しており、セルラーベースのソルバーに渡す必要があります。

  • Wi-Fi 測位システム (WPS): WPS は、Wi-Fi 対応のセンサーやデバイスが近くの Wi-Fi アクセスポイントの情報をスキャンして、デバイスの位置を特定できるジオロケーション方式です。デバイスは Wi-Fi ネットワークに接続する必要はありませんが、利用可能かを確認し、信号強度を測定できる必要があります。Wi-Fi ホットスポットのデータベースは、モバイルデバイスの位置情報と Wi-Fi ホットスポットの MAC アドレスの関連づけによって作られます。。WPS の平均精度は10m 〜 100m の間で変化し、屋内での追跡に適しています。

Wi-Fi 測位システムを位置情報技術として使用するには、追加のハードウェアを必要とせずに、Wi-Fi 対応のセンサー/デバイスを使用できます。IoT デバイスがセルラー接続をサポートしていない場合は、Telit WE310F5 などの RF モジュールを使用できます。各 RF モジュールには、Wi-Fi ベースのソルバーに渡す必要があるアクセスポイントをスキャンするための AT コマンドセットが付属しています。

  • IP 逆引き: IP ジオロケーション技術とも呼ばれ、IP ベースのジオロケーションデータベースによって IP アドレスから地理的位置を解決します。

IP 逆引きソルバーを使用すると、IPv4 または IPv6 の標準パターン、または IPv6 16 進圧縮パターンのいずれかの形式を使用して、IP アドレスを入力として使用して位置を特定できます。次に、デバイスが置かれている都市や国などの追加情報を含む、解決済みの位置推定値を取得します。

IoT デバイスはネットワーク下に配置されるため、位置情報を取得できるソルバーを使用して IP アドレスを持つことになります。IP 逆引きは正確な情報が得られないため、特定の世帯や住所の特定や位置特定を目的とした検討は行わないでください。

以上のように様々なジオロケーション技術について理解することで、ビジネスやエンジニアリングの制約の中で技術を選択することができます。ジオロケーション技術が決まれば、それをどのように IoT デバイスに組み込むかを計画することができます。次に、デバイスがサポートするプロトコルに基づいて資産追跡システムを構築するために使用できる 2 つの異なるアーキテクチャパターンについて説明します。 :

パターン 1: AWS IoT Core for LoRaWAN + AWS IoT Core Device Location

Architecture diagram showing how to resolve device location using AWS IoT Core for LoRAWAN and AWS IoT Core Device Location

AWS IoT Core for LoRaWAN では、サードパーティの Wi-Fi および GNSS ソルバーを使用して、シームレスにポジショニングを有効にして LoRaWAN デバイスの位置を特定できます。つまり、サードパーティのリゾルバーから位置情報データを取得してルーティングするために、追加のコードレイヤーを記述する必要はありません。ブログ公開時点では、サードパーティのソルバーとのこの統合は、LoRa Edge チップを搭載した LoRaWAN デバイスでのみ機能します。以下に LoRaWAN デバイスに資産追跡ソリューションを実装する方法を示します。:

  1. LoRaWAN デバイスを AWS IoT Core for LoRaWAN に追加する際、ポジショニングを有効にして、デバイスが GNSS および Wi-Fi スキャンデータと通信できる位置情報 FPort を追加します。LoRaWAN デバイスがアップリンクメッセージを送信すると、メッセージに含まれている Wi-Fi および GNSS スキャンデータが、位置情報フレームポートを使用して AWS IoT Core for LoRaWAN に送信されます。
  2. AWS IoT Core for LoRaWAN は、トランシーバーからのスキャン結果に基づいて計算されたソルバーから推定デバイス位置を取得します。位置情報が Wi-Fi と GNSS の両方のスキャン結果を使用して計算された場合、AWS IoT Core for LoRaWAN はより精度の高い推定位置を選択します。
  3. リゾルバーから受信した位置情報データに基づいて IoT ルールがトリガーされ、位置情報アクションがトリガーされ、地理座標が Amazon Location Service にルーティングされます。Amazon Location Service では、地図や対象地点の追加、リソースの追跡、ジオフェンシングモデルの定義、デバイスの位置情報の視覚化を行うことができます。

Amazon Location Service を使用して LoRAWAN デバイス用のジオロケーションソリューションを作成する方法の詳細については、アセットトラッキングソリューションをサポートする新しい AWS IoT Core デバイスの位置情報機能の紹介に関するブログ投稿をご覧ください。

パターン 2: AWS IoT Core + AWS IoT Core Device Location

Architecture diagram showing how to resolve device location using AWS IoT Core and AWS IoT Core Device Location

このパターンが機能するためには、地理位置情報を特定するための特定の測定データを返すインターフェイスがデバイスに必要です。これらの測定データには、MAC アドレス、GNSS スキャン情報、セルラー測定データ、IP アドレスなどがあります。

パターンに慣れるには、GetPositionEstimateAPIを理解することが重要です。AWS IoT Wireless API の一部として、GetPositionEstimate API アクションは上記のリストから 1 つ以上の測定データを入力として受け入れます。この入力は AWS IoT Core Device Location に渡され、最終的に最も精度の高いソルバーを選択してデバイスロケーションを報告します。位置が解決されると、推定位置情報が GeoJSON 形式で返されます。

このパターンでは、AWS IoT Core に安全に接続され、MQTT、HTTP、WebSocket などのプロトコルを使用して通信するデバイスに資産追跡ソリューションを実装する方法を学びます。これらのプロトコルでは、AWS IoT Core は AWS IoT Core Device Locationとのサードパーティ統合のみをサポートし、デバイスの位置を特定するために Lambda 関数の構築が必要です。この Lambda 関数は、ペイロードを GetPositionEstimate API で受け入れられる形式に変換し、最終的には位置情報データに基づいて処理します。

以下の手順では、特に MQTT、HTTP、WebSocket などのプロトコルを使用して、AWS IoT Core を使用するデバイスに資産追跡ソリューションを実装する方法を示します。

  1. デバイスは、MAC アドレス、IP アドレス、GNSS スキャンデータ、およびセルラーベースの測定データの1 つ以上を含むペイロード測定データを、トピック経由で AWS IoT Core サービスにパブリッシュします。
  2. AWS IoT Core ルールエンジンは、トピックからペイロードデータを取得し、それを Lambda 関数に送信して地理位置情報を解決します。
  3. Lambda 関数はペイロードを取得して変換し、GetPositionEstimate API を呼び出して推定したデバイス位置を取得します。位置が GeoJSON 形式で取得されると、Lambda 関数はそれを別のトピックにパブリッシュします。
  4. Lambda 関数から受信した位置情報データに基づいて IoT ルールがトリガーされ、位置情報アクションがトリガーされ、地理座標が Amazon Location Service にルーティングされます。Amazon Location Service では、地図や対象地点の追加、リソースの追跡、ジオフェンシングモデルの定義、デバイスの位置情報の視覚化を行うことができます。

上記のパターンを試してみたい場合は、「新しい AWS IoT Core Device Location 機能の使い方」のブログ投稿をご覧ください。

まとめ

この記事では、AWS IoT Core Device Location の使用方法と、それによってサポートされる基本的な位置情報技術について学びました。また、AWS IoT Core を使用して資産追跡ソリューションを構築するためのさまざまなパターンについても学びました。さまざまな位置情報技術を使用することで、GPS ハードウェアに頼ることなく、ビジネスやエンジニアリングの制約を克服することができます。

この記事は Vishal Gupta によって書かれた Patterns for building IoT based asset tracking solutions with AWS IoT Core Device Location の日本語訳です。この記事は ソリューションアーキテクトの戸塚 智哉が翻訳しました。

著者について

Vishal Gupta

Vishal Gupta は AWS India のシニアソリューションアーキテクトです。Vishal は AWS デジタルネイティブビジネス (DNB) のお客様と連携し、戦略的テクノロジーの採用を通じてお客様のビジネス変革を支援することに情熱を注いでいます。仕事以外では、新しい目的地への旅行や家族との時間を楽しんでいます。

翻訳者について

戸塚智哉

戸塚 智哉

戸塚 智哉は、製造・小売業界のお客様中心にご支援しているソリューションアーキテクトです。IoT やデータ活用領域で、お客様の課題や解決策を引き出すワークショップを提供し、ビジネスを加速させることを得意としています。プライベートでは、パデルというスポーツを仲間と楽しんでいます。